平成24年9月24日
法務省人権擁護局
 人権委員会設置法案に関し,「人種や信条等を理由に不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的での文書配布等も禁じているが,これでは北朝鮮による拉致問題への抗議活動も不当な差別とされかねない。」とのご意見があります。
 しかし,このご意見は,本法案を誤解したものと考えられますので,補足して説明します。

 本法案では,「人権侵害行為」と「識別情報の摘示」という2つの行為が禁止されています(第2条)。
 上記ご意見における「北朝鮮による拉致問題への(文書配布等による)抗議活動も不当な差別とされかねない」との主張が,そのどちらに当たるとする趣旨かは不明ですが,このような抗議活動は,そのどちらにも当たりません。

「人権侵害行為」に当たらないこと

    「人権侵害行為」とは,特定の者の人権を違法に侵害する行為です(Q&A,Q7参照)。
 北朝鮮当局による日本人の拉致問題は,我が国の国家主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり,文書配布等によってこれに抗議する活動は,正当な抗議活動であり,およそ「特定の者」の人権を「違法に侵害」する行為に当たるものではありません。したがって,このような抗議活動が「人権侵害行為」に当たらないことは明らかです(Q&A,Q9参照)。

「識別情報の摘示」に当たらないこと

 「識別情報の摘示」とは,(1)人種,信条,社会的身分等についての共通の属性を有する不特定多数の者に対する一定の不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的で,(2)当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を,(3)文書の頒布・掲示その他これらに類する方法により公然と摘示する行為をいいます(Q&A,Q10参照)。
 北朝鮮当局による日本人の拉致問題に文書配布等により抗議する活動は,およそ(1)から(3)までの要件を満たす行為ではなく,「識別情報の摘示」に当たらないことは明らかです。

「北朝鮮当局による拉致問題等」に関する人権啓発活動

 現在,法務省人権擁護局では,人権啓発を所掌しています。「北朝鮮当局による拉致問題等」については,平成23年4月の閣議決定により「人権教育・啓発に関する基本計画」にも人権課題の一つとして追加され,当局も啓発活動の年間強調事項として「北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう」を掲げ,各種啓発活動に取り組んでいます。
  人権啓発は,人権委員会の所掌事務とされており(第6条第2号),人権委員会発足後は,人権委員会が,人権啓発に関する人権擁護局の事務を引き継ぐことになります。

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