~人権侵害に対する法務省の人権擁護機関の取組~
法務省の人権擁護機関(以下「人権擁護機関」という。)は,人権侵犯事件調査処理規程(平成16年法務省訓令第2号,以下「処理規程」という。)に基づき,人権侵害を受けた者からの申告等を端緒に人権侵害による被害の救済に努めている。
平成23年(暦年)における人権侵犯事件の取組状況は,以下のとおりである。
○新規救済手続開始件数 22,168件 (対前年比2.2%増加)
○処理件数 22,072件 (対前年比2.7%増加)
【新規救済手続開始件数からみた特徴】
(1) 学校におけるいじめに関する人権侵犯事件の増加
3,306件(対前年比21.8%増加)
(2) 児童に対する暴行・虐待に関する人権侵犯事件の増加
865件(対前年比12.2%増加)
(3) 社会福祉施設における人権侵犯事件の増加
203件(対前年比 5.2%増加)
1 人権侵犯事件数(開始件数・処理件数)の動向
(1) 開始件数(図1)
新規に救済手続を開始した人権侵犯事件数は22,168件であり,対前年比で472件(2.2%)増加した。
(内訳)
◆ 公務員・教育職員等による人権侵犯事件数が5,141件(対前年比402件 (8.5%)増加)
◆ 私人間の人権侵犯事件数が17,027件(対前年比70件(0.4%)増加)
(2) 処理件数(図2)
処理した人権侵犯事件数は22,072件であり,対前年比で572件(2.7%)増加した。
(内訳)
◆ 公務員・教育職員等による人権侵犯事件数が5,106件(対前年比498件(10.8%)増加)
◆ 私人間の人権侵犯事件数が16,966件(対前年比74件(0.4%)増加)
処理内訳別にみると,措置の内容としては,「援助」(注1)が20,921件(全処理件数の94.8%)で最も多く,次いで「要請」(注2)が166件(0.8%),「説示」(注3)が96件(0.4%),「調整」(注4)が81件(0.4%),となっている。
また,特に重大・悪質な事案に関して,文書をもって是正を求める「勧告」をした事件が1件,関係行政機関に対して,文書をもって適切な措置の発動を求める「通告」をした事件が1件となっている。
このほか,「措置猶予」(注5)が58件(0.3%),「侵犯事実不存在」が57件(0.3%),「侵犯事実不明確」が569件(2.6%),「啓発」(注6)を行ったものが122件(0.6%)ある。
(注1)法律上の助言を行ったり,関係行政機関や関係ある公私の団体等を紹介すること。
(注2)被害の救済又は予防について実効的な対応ができる者に対し必要な措置を執るよう求めること。
(注3)相手方の反省を促し善処を求めるため事理を説き示すこと。
(注4)被害者と相手方との話合いを仲介すること。
(注5)事案の軽重や反省の程度,懲戒の有無等を考慮して措置を講じないこと。
(注6)事件の関係者や地域社会において,事案に応じた啓発を行うこと。
(3) 特別事件
新規に救済手続を開始した人権侵犯事件数のうち,特別事件(処理規程第22条に規定されている重大な人権侵犯事件)の件数は1,437件で,前年に比べて131件(8.4%)減少した。
2 人権侵犯事件の類型別新規救済手続開始件数の動向
暴行・虐待事案は5,127件(対前年比7.1%増加)で,全事件類型別の中で最も多く全事件数の23.1%を占め,依然として憂慮すべき状況で推移している。
このうち,いわゆる社会的に弱い立場にあるとされる女性,児童,高齢者,障害者を被害者とする事件の割合が85.9%(4,405件)と非常に高い割合を占めている。
(2) 住居・生活の安全関係事案(図3,5)
住居・生活の安全関係事案は3,732件(対前年比4.0%減少)で,全事件数の16.8%を占めている。
このうち,相隣間における騒音等の相隣関係から生じる事件の割合が50.0%(1,866件)と半数を占めている。
(3) 強制・強要事案(図3,6)
強制・強要事案(注)は3,283件(対前年比7.9%減少)で,全事件数の14.8%を占めている。
(注) 強制・強要事案とは,家庭内における強制・強要やセクシュアル・ハラスメント,ストーカー行為等を含む。
(4) プライバシー関係事案(図3,7)
プライバシー関係事案は1,788件(対前年比2.1%増加)で,全事件数の8.1%を占めている。
このうち,インターネット等によるものの事件の割合が44.4%(793件)を占めている。
3 特徴的な動向
学校におけるいじめ(注)に関する人権侵犯事件数は,3,306件(対前年比21.8%増加)で,昨年に引き続き過去最高となった。
この中には,いじめに関する学校の対応について不満を抱く被害児童の母親と学校との関係を修復するなどの「調整」を行った事案が含まれている。(別添1事例5)
(注)学校におけるいじめに関する人権侵犯事件とは,いじめに対する学校側の不適切な対応等の事案であり,学校長等を相手方とするものであって,いじめを行った加害児童・生徒を相手方とするものではない。
(2) 児童に対する暴行・虐待に関する人権侵犯事件の増加(図9)
児童に対する暴行・虐待事案に関する人権侵犯事件数は865件(対前年比12.2%増加)で,3年連続で過去最高となった。
この中には,義父から性的虐待を受ける被害児童が,母親とともに祖父母宅に一時避難するに至るなどの「援助」を行った事案が含まれている。(別添1事例3)
(3) 社会福祉施設における人権侵犯事件の増加(図11)
高齢者施設,知的障害者更生施設等の社会福祉施設における人権侵犯事件数は203件(対前年比5.2%増加)で3年連続で過去最高となった。このうち,高齢者福祉施設職員によるものが69件(事件割合34.0%)で,前年に比べ46.8%増加している。
この中には,知的障害児施設における入所児童に対する不適切な行動制限事案について,「説示」を行った事案が含まれている。(別添1事例8)
4 添付資料
(2) 人権侵犯事件統計資料(平成23年1月~12月)(別添2) 〔PDF〕
(3) 「女性の人権ホットライン」の利用状況について(別添3) 〔PDF〕
(4) 「子どもの人権110番」の利用状況について(別添4) 〔PDF〕
(5) 東日本大震災に関する法務省の人権擁護機関の取組状況について(別添5) 〔PDF〕
(6) 教育職員関係事件の推移(図10)
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