冒頭発言

【河野外務大臣】昨年に続いてミュンヘン安全保障会議に出席いたしました。「防衛協力」に関するパネル・ディスカッションに出席して,ルールに基づく国際秩序を守るために,日本,アメリカ,欧州を始め,志を共にする国が一層協力を強化すべきということを訴えました。欧州における安全保障に関する議論では,どうしても大西洋を中心に議論が行われることになりがちでありますが,地球儀を俯瞰する立場から,安保を考えるという日本のメッセージをしっかり出せたのではないかと思います。
また,日露,日韓を始め,多くの参加各国の外務大臣とのバイ会談を行うことができました。ドイツ,スロベニア,スロバキア,スペイン,昨日がエジプト,ラトビア,リトアニア,そして夜が,日仏独加4カ国の外相の非公式夕食会ということで,スロベニアでしたか11年ぶりの外相会談というものもありました。そういう意味で,大勢の外務大臣が集まるこういう安保会議のような場を使って,バイ会談をしっかりやっていくというのも非常に重要だと思っております。
 また,先ほどロシアのラヴロフ外務大臣と,1月のモスクワの会談に続いて,平和条約について2回目の交渉を行いました。1回目の交渉で日露双方の考え方を具体的に議論し,また,その後の首脳同士の時間をかけての会談を踏まえて,双方が受入れ可能な解決に向けて今日はかなり突っ込んだやり取りをしました。近く,首脳特別代表間の会合・交渉を行うこと,その後なるべく早くラヴロフ外務大臣に訪日をしていただいて,交渉をするということで,訪日の調整をすることで一致をいたしました。それから,安保協議を近く行うことで一致をいたしましたので,これについての調整を始めたいと思います。また,4月2日,日本において,秋葉事務次官とチトフ第一外務次官との間で第15回目の日露戦略対話を行うことで合意をいたしました。国益を背負っての交渉になるため,時に激しいやりとりが行われることになりますが,お互い今回で9回目,今年に入ってラヴロフ外相にお目にかかるのは3回目で就任以来9回目ということになりますので,激しいやりとりにはなりますが,胸襟を開いた率直な話し合いが出来ていると思っております。

質疑応答

【記者】日露外相会談ですが,北方領土の主権を巡る歴史認識の問題ですとか,安全保障面での隔たりなどその辺の溝は埋まった会談だったのでしょうか。

【河野外務大臣】交渉について,中身については差し控えたいと思います。会談の中のやりとりについては対外的に明らかにしないということで合意をしております。1月の会談の後,ロシア側から会談の中でのやりとりだという形で様々発言があったことは非常に残念に思っておりますが,双方合意をして中身については外へ出さず静かな環境でやろうということで合意をしております。

【記者】会談を受けての手応え,感触をお願いします。

【河野外務大臣】70年かけてやってきていることですから,そう一朝一夕に解決するということではありませんが,これはもう双方二人三脚で粘り強く一緒にゴールにたどり着けるように,お互い努力をしていきたいと思います。

【記者】日韓外相会談についてお伺いします。韓国側の発表で,会談で韓国議長の発言について日本側は言及しなかったと言っておりますが,この点についていかがでしょうか。

【河野外務大臣】今回の日韓の外相会談の中では,少し時間をとって,私が初当選した頃よく山本一太参議院議員と韓国を訪問した時に,当時国会議員だった金民鍋(キム・ミンソク)議員が韓日議連の先輩方,あるいは朴泰俊(パク・テジュン)さんのような首相を経験した日本のことに非常に詳しい韓国の先輩方のところに連れて行ってくれて,そうした先輩の話を伺ったということを会談の中で申し上げました。特に朴泰俊さんは群馬県の渋川高校出身で,山本一太参議院議員の直接の先輩になりますから,山本一太議員がもう朴泰俊(パク・テジュン)さんの前で直立不動で話を聞いて,さあ,というような話も出しました。韓日議連の先輩方は非常に人格・見識に優れ,日韓両国の間が困難に直面した時にはしっかりと前に出てきて問題解決に努力をされてきた,そういう先輩方を見ておりますから,今回もこの朝鮮半島出身労働者の問題についてとりまとめをされている李洛淵総理を,外交部と韓日議連といわば車の両輪のようにとなって支えていると思っていたところ,このような発言があって大変驚くとともに,残念に思いますということを申し上げ,外交部にはしっかりとこの件で対応してくださいということを,この件については謝罪と撤回ということを再三申し上げておりますから,言わんとすることはしっかりとご理解をいただいたと思いますし,韓日議連がやはりかつてのように難しい状況になった時にしっかりと前に出てきてくださる,そういう方が出てきて欲しいと思います。そういう意味で今回の発言は本当に残念に思います。」
 そういう話を会談の中でさせていただいて,韓国側の皆さんよく聞いてくださっておりましたので,しっかりとメッセージは伝わっていると思っておりますし,是非,かつての難しい状況になった時に日韓議連,韓日議連それぞれしっかりと前に出て話し合いをしてくださった,そういう状況を取り戻したいと思います。日韓議連の額賀会長には先日も韓国に足を運んでいただいて先方と色々話をしてきていただいております。こういう状況の中で両国関係をしっかりマネージして参りたいと思っております。

【記者】日露交渉の件ですけれども,先ほどラヴロフ外相の来日を調整したいということですけれど,調整中なので難しいかもしれませんが,時期について例えば例年いわれているラヴロフ外相の誕生日である3月に来日しているということもあって,その前後で調整したいというお考えなのか,その辺の時期についていかがでしょうか。

【河野外務大臣】森外審,モルグロフ次官の間の交渉もありますので,そうした状況を踏まえながらこれから調整していきたいと思います。

【記者】【記者】3月のラヴロフ外相の来日というのも排除しないというお考えでしょうか。

【河野外務大臣】次はラヴロフ外務大臣が訪日して交渉をやりましょうということですので,まず特別代表間の交渉を踏まえて今後の日程を決めていきたいと思います。

【記者】森外務審議官とモルグロフ次官の会談は,例えば月内を目指すとかこの辺はいかがですか。

【河野外務大臣】近く行いたいと思います。

【記者】ラヴロフ外相が今,会見で平和条約締結に向けて期限はないという発言をしました。この話は今日の会談の中でありましたでしょうか。

【河野外務大臣】会談の中でどういう議論になったかということを対外的に申し上げるのは差し控えます。

【記者】逆に今,ラヴロフ外相が期限がないと言ったことについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

【河野外務大臣】交渉に関する日本側の立場,方針というのを対外的に申し上げるのも差し控えております。

【記者】これまでにも,外務大臣あるいは特別代表,首脳間で継続的に交渉を続けているわけですけれども,交渉を続ける中で一歩二歩でも前に進んでいるという実感はありますでしょうか。

【河野外務大臣】70年間続いている問題ですから,そう簡単に一足飛びに前へというわけにはいかないのかもしれませんけれども,両首脳が交渉を加速化しようということで合意をし,首脳間・外相間でしっかり議論をしてきております。そこはスピードは別として,前へしっかり進めていると申し上げて良いと思います。

【記者】徴用工に関してですが,韓国側が今のところは政府間協議に回答していないということですが,次の仲裁委員会の方に進むというお考えはあるのでしょうか。

【河野外務大臣】今回も協議にしっかりと応じてくださいという申し入れはしていますので,私としては韓国側が粛々とこの協議に応じてくれるだろうと思っております。

【記者】会談の中で回答の期限を区切ったりすることをお伝えしているのでしょうか。

【河野外務大臣】今後日本側がどのようにやるかということは今の時点で対外的には申し上げたくはないと思います。

【記者】先ほどのラヴロフ外相の来日の件ですが,ラヴロフ外相も次の交渉は日本でやることで合意したということでよろしいでしょうか。

【河野外務大臣】交互にやりましょうという元々の原則がありますから,ラヴロフ外相が次は日本に来て交渉しましょうということで,特別代表の交渉の様子を見ながらそこは調整していきたいと思っております。

【記者】なるべく早くというところも向こうも同じ思いだということでしょうか。

【河野外務大臣】まず特別代表の交渉がどのようになるかということがありますから,それを見極めた上でなるべく早いタイミングで調整をしようということであります。

【記者】大臣,冒頭で日露間の貿易高について言及されていましたが,今日の会談の中で貿易高について話題に出たのでしょうか。

【河野外務大臣】会談の中身ついて対外的に申し上げるのは差し控えます。

【記者】特別代表間の交渉の場所については決まっているのでしょうか。

【河野外務大臣】どこでもよろしいんだと思います。それは決めた日程にどこにいるかということになろうかと思います。

【記者】韓国議長の件ですけど,大臣の説明を聞いていると,昨日の会談の中で大臣の発言として,謝罪と撤回を求めたのかというのがよくわからなかったというのと,抗議したという認識は大臣としてはお持ちなのですか。

【河野外務大臣】これまでもう韓国側に,この件については謝罪と撤回を求めるということは再三再四申し上げておりますので,もうこの件について外交部にしっかりと対応を求めるということはそういうことだ,というのは先方もよく理解をしているはずでございます。それは知らない,ということにはならないんだろうと思いますが,この件についてですね,どうだこうだというよりも前に,今,日韓の最大の問題は旧朝鮮半島出身労働者の問題ですから,この件について,韓国側が,情緒的な問題と法的な問題とおっしゃっていますが,これはもう法的な問題ですから,その情緒的なものは別として,法的にしっかりと対応してくださいというのが今,日韓両国の間の一番の問題でありますので,そのことについてしっかり協議に応じていただくということ,それから,李洛淵国務総理が対応策のとりまとめをされているわけですから,そこについてしっかりとした対応策を取って欲しいということを申し上げました。それが,今回の日韓外相会談の中で,一番の日本側からのメッセージということになろうかと思います。

【記者】大臣,前回のラヴロフ外相との会談の後に,翌週に総理の首脳会談を控えていたわけですけども,会談後に手応えはあったとおっしゃっていましたが,今回はいかがだったでしょうか。

【河野外務大臣】先ほど申し上げましたとおり,70年かかっているものですから,一足飛びにゴールに行くということにはなかなかならないかと思いますが,少なくとも着実に前進していると思います。

【記者】前回,米朝首脳会談1回目があったときは,その直後に日米韓の外相会談やっておりますけれども,今,日韓関係がこういう中で,次,米朝首脳会談2回目行われた後に,日米韓の外相会談というのは行いたいとお考えなんでしょうか。

【河野外務大臣】日米韓,日米,なるべく早期に行いたいと思いますが,この28日というのは,予算審議との絡みもありますので,そこはどういう形にするか,国対その他ともしっかり話していきたいと思います。

【記者】先ほどの徴用工判決についてなんですけれども,情緒的な問題だからやりにくい,もしくは進みにくい,難しいという発言が康京和長官からあったのですか。

【河野外務大臣】詳細について申し上げるのは差し控えますが,情緒的な問題と法的な問題はしっかりと分けて,法的な問題についてきちんと対応をしてくださいと申し上げました。

【記者】康京和長官から情緒的な問題という発言はあったのですか。

【河野外務大臣】先方の発言について言及することは差し控えたいと思います。