(令和2年5月22日(金曜日)15時06分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)感染症危険情報の引き上げ

【茂木外務大臣】2点あります。まず感染症の危険情報の引き上げについてであります。新型コロナウイルス感染症は,現在,新興国や途上国を中心に依然として感染拡大が継続しておりまして,警戒が必要な状況が続いております。
 22日現在,188か国・地域で500万人以上の感染が確認され,全世界の死亡者数は32万人以上となっております。このような状況を受け,1万人当たりの感染者数等を含む様々な状況を総合的に勘案して,新たに11か国の感染症危険レベルを「レベル3(渡航中止勧告)」に引き上げます。
 具体的には,アジアではインド,パキスタン,バングラデシュ,中南米ではアルゼンチン,エルサルバドル,欧州・中央アジアではキルギス,タジキスタン,中東・アフリカでは,アフガニスタン,ガーナ,ギニア,南アフリカであります。この結果,合計111か国・地域が「レベル3」となります。
 この感染症危険情報レベルの引き上げを受けまして,今後,法務省,厚労省を含みます関係省庁間で調整の上,国家安全保障会議,及び,新型コロナウイルス感染症対策本部での議論等を経て,入国拒否対象地域の追加,検疫強化等を含めます,水際措置が講じられることになります。

(2)航空機等が停止された地域における邦人の出国・帰国

【茂木外務大臣】もう一点,邦人の出国・先国の関係でありますが,これまでに出国・帰国をされた方は,9,800名に上ります。引き続き出国・帰国を希望されている方が,25か国で約190名となっておりまして,これらの方々のうち,約90名の方は今月中に出国・帰国予定となっております。
 特に本日は,ネパールから民間チャーター機によりまして,約60名が出国する予定であります。

日韓関係(輸出管理の運用見直し,旧朝鮮半島出身労働者問題)

【読売新聞 大藪記者】日韓関係についてお伺いいたします。韓国内では,日本が輸出管理厳格化措置の撤回に向けた道筋を,今月末までに示さない場合,GSOMIAを破棄すべきだとの声も出ておりますが,これをどのように考えられますでしょうか。
 また,徴用工問題をめぐりましても,日韓両国から寄付金を募るという文喜相(ムン・ヒサン)国会議長案が廃案になるなど,解決策が見えていない状況でありますが,日韓関係の改善に関しまして,どのように打開を目指しますでしょうか。

【茂木外務大臣】まず最初の質問でありますが,これまでも繰り返し述べてきているところでありますが,輸出管理措置の見直しにつきましては,輸出管理制度の整備であったり,その運用実態に基づいて行われるべきものでありまして,日韓GSOMIAとは全く別の問題である,これは何度も繰り返してきているとおりであります。
 そして二つ目のご質問は,旧朝鮮半島出身労働者問題についてでよろしいんですね。
 他国における立法府の議論,これがどうなっているかということについて,コメントは控えたいと思いますが,いずれにしても,旧朝鮮半島出身労働者問題について,韓国側に対しまして,国際法違反の状態の早期是正を引き続き強く求めていくと,この方針に変わりありません。

中国全人代の開幕(国防予算)

【読売新聞 大藪記者】中国の全人代についてお伺いいたします。中国の今年の国防予算が前年比6.6%増でした。コロナで経済が打撃を受けている中でも,軍備拡張を続ける姿勢と言えますが,こういった中国の対外姿勢についての受け止めをお願いいたします。

【茂木外務大臣】中国の国防予算,これは今年だけではなくて,長期にわたりまして高い伸び率で増加を継続しておりまして,こういった防衛費を含みます中国の国防政策や軍事力については,特に透明性を一層高めていくことが望まれていると考えております。
 政府として引き続き重大な関心を持ちながら,関連の動向を注視していくとともに,安全保障分野における対話や交流を通じて,中国に対して国防政策の透明性向上を働きかけていきたいと思います。

新型コロナウイルス(感染症危険情報の引き上げ,査証の効力停止措置の延長)

【NHK 木村記者】まず5月末で期限を迎える発給済みのビザの効力停止などの入国制限についてですけれども,こちらは5月末以降はどのようにされるのでしょうか。
 また今日の感染症危険情報ですけれども,これはもう,この会見をもって引き上げたという理解でよろしいですか。

【茂木外務大臣】まず感染症危険情報の引き上げについては,本日,先ほど引き上げたということで結構です。
 それから6月以降,現在の水際措置等々どうするかということを,現段階で確定しているわけではありませんが,国内で感染の状況,収まりつつあると言っても,まだ注意が必要な状況と,これは変わっていない,こんなふうに考えておりまして,このまますぐに6月1日をもって,この水際対策を終了するということは想定できないと思っております。

中国全人代の開幕(香港情勢)

【日本経済新聞 溝呂木記者】中国全人代について関連でお伺いします。香港について,国家への反逆行為などを禁ずる香港版国家安全法が議題になります。日本政府は「一国二制度」の下で,自由で開かれた香港の繁栄が重要だと強調されてこられました。「一国二制度」を骨抜きにするとの評価もありますが,今回の動きをどのようにご覧になっていらっしゃいますでしょうか。対応について,どのようにお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】全人代,今日から始まったばかりでしょ。これから詳細な議論というのは行われるのだと思いますので,それについて関心を持って,注視をしていきたいと思っておりますが,これまでも申し上げているとおり,香港は,我が国にとって,緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーでありまして,「一国ニ制度」の下で,自由で開かれた香港が安定的に繁栄していくことが重要であると,このことを改めて強調したいと思います。

新型コロナウイルス(出入国規制の緩和)

【テレビ朝日 大石記者】入国制限の緩和についてお伺いさせていただきます。大臣は先日の委員会でも,ビジネスマンや専門家の方,次に留学生や労働者,次に観光客といった,段階を分けて緩和を実施するというお考えを示されていましたが,現状の検討状況を聞かせていただければと思います。
 また,その入国拒否に当たっては,感染症危険情報と連動させる形を現在とられていますが,緩和に当たっても同様の措置となる見通しでしょうか,併せてお伺いできればと思います。

【茂木外務大臣】具体的な,感染症危険情報の引き下げであったりとか,人の往来の再開の検討を進めているという事実はありません。その上で,まずはそういったことを進めるためには,先ほども申し上げましたが,日本での感染拡大の収束,これが必要だと考えておりまして,同時に海外の状況をもう少ししっかり見極めた上で,各国や地域の渡航が安全か否かについて,相手国における感染状況,また,医療提供体制等々様々な情報を総合的に勘案して,どのようなアプローチが可能か検討していきたいと思っております。
 考え方としては,仮に出入国管理,緩和をする場合でも,当然一遍に全部開けますということにはならない。段階を分けることになると思っておりまして,例えば,第一段階として,これは決まっているわけではありませんが,ビジネス上の経営者層,恐らく日本経済の再稼働を本格的にする上では,そういった人たちが必要になってくるのだと思います。また専門人材,こういう必要不可欠な人材から始めると。次に例えば留学生,恐らく一般の観光客の方というのはかなり先になるのではないかと,こんなふうに考えられると思います。
 国についても,収束しつつある国のグループから順次実施をしていくと,全世界が一遍にとか,「危険情報2」のところは全部と,こういう形にはならないと思っているところでありまして,また,その場合に相手国との間で相互に緩和ができればより望ましい,そんなふうに思っているところであります。人の往来でありますから。
 もう少し状況見た上で,検討そして判断をしていくということになりますが,こういった形で,人の往来の再開というものは,分野と国のマトリックスと,こういったもので考えていくことになるのではないかなと思っております。

【東亜日報 キム記者】関連なんですけれども,来週,東京とか他の地域も,緊急事態宣言が解除される可能性があると思いますけれども,特に韓国と中国とか,隣の国のビジネスマンを中心的に,入国緩和のやりとりもありそうと聞いていますけれども,入国制限緩和措置は緊急事態宣言と共に解除する可能性もありますか。

【茂木外務大臣】ありません。

外交青書(露外務省報道官の発言)

【朝日新聞 二階堂記者】ロシアのザハロヴァ報道官が,今年の外交青書について,「北方領土は我が国が主権を有する島々だ」とした記述などに関連して反論しました。今日の衆議院外務委員会でも大臣の方で,日本の立場に変わりはないというご答弁があったと思いますけれども,改めて昨年と記述を変えた理由と,ロシア側の反論に対する受け止めをお願いします。

【茂木外務大臣】様々な国際的な発言がありますので,一つひとつの発言についてコメントすることは控えたいと思いますが,政府として領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針の下で,引き続き粘り強く取り組んでいく考えであります。
 ロシア側,ラヴロフ外相とはこれまでも何度にもわたって議論を進めているところでありまして,もちろん考え方の違いはあると。しかしですね,56年の共同宣言,これを踏まえて,平和条約交渉を加速させると,こういう首脳間の合意に基づいて平和条約交渉をするということで基本的に一致をしておりますので,その点では齟齬はない,そんなふうに思っております。
 外交青書,これはある意味,その時々変化をしている国際情勢,こういったものも踏まえて,その年次における日本外交の概要についてお伝えをすると,こういう趣旨で作っている話でありまして,全体像として日本外交がどうであるのかと,こういうのを見ていただくのが基本的に重要なのではないかなと思っております。
 ミケランジェロのダビデ像,これを見ると,頭部が大きいんですね。左の膝は若干小さいんだと思います。それは下から見上げたときに,いかにリアルな人間の姿に近いかと,こういうことで天才ミケランジェロが描いているわけでありまして,そこで頭が大きいとか膝が小さい,こういう議論より,いかにこれが人間というものをリアルに表しているかと,こういった形で見るのが正しい見方だと思います。

新型コロナウイルス(在日外国人の再入国)

【朝日新聞 二階堂記者】別件になるんですけども,今日の衆議院外務委員会でのご答弁に関連してなんですけれども,入国拒否の影響で,親を亡くされた在日の外国人の方が,再入国の許可を得られないということで,その帰国を断念したというニュースが取り上げられていて,法務省の所管だとは思うんですけれども,大臣も,人道上配慮が必要な方については許可する方向で考えたいというご答弁があったと思います。「特段の事情がない限り」という留保が付いていると思うんですけれども,大臣のこのご答弁というのは,肉親を亡くされた方が,一時帰国する場合は,再入国もありうべしというふうなことで理解してよろしいんでしょうか。

【茂木外務大臣】ミケランジェロのダビデ像について追加の質問かと思って,構えていたんですが。特段の事情の関係でありますけれども,これはまさに法務省において最終的には判断をすると,こういうことでありますが,今後の対応として,当然これまでもそうでありましたが,人道上の配慮と,こういったものが必要だと思っておりまして,基本的にそれぞれ,そういう人道上の課題を抱えている方に対して丁寧に対応すると,その上で必要な人道上の配慮は行っていくと,それに尽きると思っておりまして,完全にこのケースだったらいいですよと,このケースは絶対駄目ですよということを,私(大臣)の立場で申し上げるつもりはございません。

外交青書(日露関係)

【朝日新聞 二階堂記者】先ほどのミケランジェロ像に関係してなんですけども,これは,要するに今おっしゃったのは比喩だと思うんですけれども,もちろん日本外交の全般についての比喩でもあると思うんですけれども,ロシアに関連する,日露関係に関連する記述についても,去年と変わったところがあるようには見えますけれども,実質的には去年の記述と日本の立場が変わっていないというご示唆とも受け取りましたけれど,それで理解は正しいでしょうか。

【茂木外務大臣】二つありまして,一つは,北方領土に対する我が国の立場,また,平和条約交渉を進める上での我が国の方針,これは全く変わっておりません。一方で,外交青書をどう書くか,それについては先ほど申し上げたように,現下の国際情勢も踏まえて,そこの中で,年次の日本外交,これがどうであったかということについて,その概要を分かりやすくお伝えすると,こういった形で作っているということです。