(令和3年7月3日(土曜日)14時01分 於:リトアニア)

冒頭発言

 G20外相会合のイタリアに続きまして、エストニア、ラトビア、最後にここリトアニアを訪問しています。今年から来年にかけて、日本とバルト三国は友好100周年を迎えます。この機会に、日本の外務大臣として史上初の三国歴訪を実現しました。
 ゴールデンウィークに訪問した中・東欧諸国に続いて、バルト三国の地政学的重要性を意識した戦略的外交を展開しているところであります。今回の歴訪の主要目的の一つは、「自由で開かれたインド太平洋」に対するバルト三国の理解と支持を確固たるするものにありました。
 EUは4月の「インド太平洋における協力のための戦略」に基づいて、9月にはその詳細版となります「共同コミュニケーション」の議論を今進めているところであります。このタイミングで、私からインド太平洋に関する日本の考え方や取組を説明して、バルト三国それぞれから力強い支持を得たことはタイムリーであったとこのように考えております。
 また、地域情勢を議論する中で、力による一方的な現状変更の試みに対する深刻な懸念もしっかりと共有いたしました。基本的価値を極めて重視をしているバルト三国が、「自由で開かれたインド太平洋」の強力な支持国として、EUの中で建設的な役割を果たしてもらえる、そういった強い手応えを感じたところであります。
 各国の日本への期待、これも大きく、これは安全保障だけではなくて、更に経済であったりとか、様々な分野に及びますが、例えばICTの先進国でありますエストニアとはサイバー・デジタルの分野、ラトビアとはインフラの分野、リトアニアとはライフサイエンスとエネルギーの分野で協力を強化していくことで一致をいたしました。欧州統合の深化に資する地域横断のインフラ事業、これが今進んでいるところでありますが、こういった事業への日本企業の参画も含め、日本としてこの地域にしっかりと関与していく意思、これも明確にさせていただきました。
 この記者会見の後にですね、杉原千畝(ちうね)記念館を訪問します。強い信念を持って何千人ものユダヤ人の命を救った杉原元副領事に改めて深い敬意を表しつつ、記念館の維持・運営を担ってきた「杉原『命の外交官』基金」に対して外務大臣表彰を授与いたします。
 「包容力と力強さを兼ね備えた外交」の推進。今回のバルト三国歴訪でも、日本外交への大きな期待というものを実感いたしました。そして、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、各国との連携を確固たるものとできたことは大きな成果であったと考えております。

質疑応答

【記者】大臣も冒頭で強調されましたが、「自由で開かれたインド太平洋」というこの構想をですね、今回、このバルト三国で打ち込むことができたということは、今後の日本外交のあり方にとって、どういった意味を持つのか。今回のこの三カ国訪問の総括的な意味でですね、成果としてはどんなことをあげられるでしょうか。

【大臣】まずですね、「自由で開かれたインド太平洋」についてでありますが、これは2016年にですね、TICADVIの際に日本が提唱した考え方でありますが、この5年間、この考え方、更にはこの考え方の基であります協力というのはQUADであったり、またASEAN、そして欧州各国との間で進んできていると考えております。また私が今年の1月日本の外務大臣として初めて出席をいたしましたEUの外務理事会においても、「自由で開かれたインド太平洋」の考え方を詳しく説明をしたところでありますが、その際、そのEU各国、27か国全てから発言していただく時間はなかったので、それぞれの地域の代表に発言をしてもらう、こういう形をとったわけでありますけど、その中で特にバルト三国からですね、その1月の時点においても「自由で開かれたインド太平洋」これについてはですね、明確な強い支持が示され、大変心強く思ったわけですけれども、今回はそれぞれの国を訪問してですね、具体的にこの議論を深めることができた。また、今後ですね、EUという枠組みで、またそれぞれの国との間で具体的な協力を進めていこうということで一致できたことは非常に大きかったと思っております。
 バルト三国、初めて訪問いたしまして、実感していることは、非常にこの三国、これまでの歴史もあってですね、自由であったり、民主主義、人権、法の支配、こういった基本的価値を遵守している国ということでありまして、このような国々とルールに基づく、自由で開かれた国際秩序を更に推進をしていく、こういったことを確認できたことは大きな成果であったとこんな風に考えております。

【記者】バルト三国の外務大臣と、FOIPやインフラ投資などについて、大臣がお話される中で、三か国が中国に対する見方、どのような見方、どのように見方を変化させているというふうに御覧になりましたでしょうか。

【大臣】まずですね、ユーラシア大陸、地図の上で見てもらいますとですね、中国と日本のある位置関係、更にはバルト三国とロシアの位置関係、置かれている地政学的な環境、これは極めて類似をしているというところでありまして、そういった中でですね、東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試み、更には、香港、新疆の人権状況と、これは率直に申し上げてバルト三国にとってもですね、他人事ではない、こういう問題がありまして、日本が有する懸念についてもですね、強い共感が示されたところであります。
 今申し上げたようにですね、現在の国際情勢というものをですね、自由で開かれたインド太平洋の文脈の中で私から説明をしたところでありますが、おそらくEUが9月にも発表いたします、インド太平洋に関する共同コミュニケーション、これは4月に作ったものをですね、更に詳細にするということでありますが、その中においても日本とEU、更にはバルト三国の共有する懸念であったりとか、対応方針、これがしっかり反映されるのではないかなとこのように感じております。