(令和3年8月31日(火曜日)11時59分 於:本省会見室)

冒頭発言

ケリー米国気候問題担当大統領特使との会談

【茂木外務大臣】今、ケリー特使が来ておりまして、その会談が若干延びましたので、会見の時間も若干遅れましたことをお詫び申し上げます。
 先ほど、訪日中のケリー米国気候問題担当大統領特使と会談を行ったところであります。
 内容ですけれど、会談で私(大臣)から、気候変動問題は、世界にとって極めて重要な課題であり、COP26、更にその先を見据えて、米国と共に世界の脱炭素化に向けた取組をリードしていきたい。また、野心的な排出目標を実現するにはイノベーションが重要であり、日米両国で協力していきたいと、このように述べました。
 これに対して、ケリー特使から、米政権の気候変動分野におけるこれまでの取組、そして自身の今後の活動予定について説明があったところであります。
 ケリー特使、この後、中国を訪問されると、こういう予定でありますが、中国を含みます主要排出国や途上国の排出削減の取組のために、協力することが重要であることも議論しました。
 中国、世界最大のCO2排出国、そして世界第2位の経済大国ということでありますから、それに見合った責任というのをしっかり果たしていくよう働きかけていくということは、極めて重要だと思っております。
 日米は世界の脱酸素化に向けて、日米気候パートナーシップや日米豪印の場を含めて、引き続き、緊密に協力・連携していくということで一致をいたしました。私(大臣)からは以上です。

アフガニスタン情勢(現地からの自衛隊の撤収)

【NHK 山本記者】アフガン情勢について伺います。米国のバイデン米大統領が、米国軍のアフガニスタンからの撤退を完了したと発表しました。この受け止めを伺いたいのと、今後、現地に派遣している自衛隊ですけれども、撤収させていくという運びになるんでしょうか、お願いいたします。

【茂木外務大臣】米軍については撤収をしたということでありますけれど、未だ各国、例えば、それぞれの国の大使館の現地職員であったりとか、様々、出国を希望されている人が現地に残っていると。その方々の安全な退出については、しっかり支援をしていくと、こういったことも、昨日の夜行われましたG7+カタール、トルコ、そしてEU、NATOの閣僚会合でも、合意をしたところでありまして、引き続き現地の情勢も見ていかなければなりません。
 そして、カブール空港周辺がどういった形で、空港の管理もそうでありますけれど、その周辺もどう安全が確保されていくか、こういったことも見つつ、安全な退避のために、どういう手段が取りうるのかということで考えております。
 ある意味、8月31日、一つの、軍を中心にした退避オペレーションというフェーズから、新しいフェーズに入っていくんだと考えておりまして、自衛隊においても、そういったフェーズ転換の中で判断をされる問題だと思っております。

アフガニスタン情勢(駐日アフガニスタン大使館のステータス)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 最近のアフガニスタン情勢を踏まえ、現在の駐日アフガニスタン大使館及び大使のステータスを確認させてください。

【茂木外務大臣】こちらのアフガニスタンの駐日本大使館の状況、それから大使のステータスがどうなっているかという質問だと思いますが、現状、アフガニスタン側から特段の連絡というのは受けておらず、駐日アフガニスタン大使館及び駐日アフガニスタン大使のステータスに変更はない、このように考えております。

アフガニスタン情勢(日・中東関係に及ぼす影響)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 大臣は中東を長期にわたって訪問されました。報道では、とても実りある訪問であったと承知しています。そこで質問なのですが、アフガニスタン情勢は、日本とサウジアラビア、イラン及びトルコを始めとする中東諸国との関係にどのような影響を及ぼすでしょうか。

【茂木外務大臣】先々週を中心にして、10日間ほど、エジプトから始まりまして7か国、そしてパレスチナを入れますと8地域ということになると思うんですが、訪問をしてきました。
 ちょうど、その時期にアフガン情勢が緊迫をすると、恐らく米国だけではなくて、様々な国が想定していた以上のスピードで、事態が変化していくという中での訪問になりまして、私(大臣)もエジプトから始まって、各国で情勢分析等々、また、中東の近隣国としてどういったことに懸念を持っているかと、こういったことも連日議論しましたし、また、邦人の退避、更には現地職員の退避のオペレーションもありましたので、連日、本省とも連絡を取りながら、10日間過ごしてきたわけでありますけれど、アフガニスタンの安定、これは中東地域及び国際社会の平和と安定にとって、引き続き重要な課題であると考えております。
 中東を訪問した際に、中東地域の大国であります、またアフガニスタンと強い結びつきのあるトルコであったり、またイランとの間で、現下のアフガニスタン情勢が更なる不安定要因にならないように、連携していくことで一致をいたしました。
 よく聞かれた声は、このタリバーンの動きによって、他の地域、アフガニスタン以外のテロ組織にも誤ったメッセージ、こういったものが伝わるというのは良くない、そういったことに対する懸念というのも、多く聞かれたところでありまして、それはちょうど私(大臣)がヨルダンに行ったときに、G7の外相会合、オンラインでも行いましたが、そこでもそういった中東諸国の懸念というものは共有をしたところであります。
 アフガニスタン、これが再びテロの温床になることを食い止めて、現地で続きます人道上の危機、これを回避して、女性等の権利を守っていくために、中東諸国を含みます関係国とも緊密に連携をしていきたいと思っております。
 まさに今、状況は動いております。間違いなく。1か月前の状況、半月前の状況、今の状況、それぞれ違っているわけですから、これから2週間後にどういうことが起こっていくのかと。
 タリバーンとも様々な国が、やり取りをやっております。そういった内容についても聞いておりますけれど、それが実際に言葉だけではなくて、どう行動に移されるか、こういったものも見極めながら対応していきたい、そんなふうに思っております。
 一つは、先ほど申し上げたような、まだ日本だけではなくて、多くの国で現地職員等々、海外に出たいと、こういう方がいるわけでありまして、こういった方々の安全な退避、これを支援していく、こういったことは、引き続き最重要な仕事だと、こんなふうに考えております。
 また、今、アフガニスタンの日本大使館、日本だけではなくて多くの大使館が一時閉鎖という状況でありまして、今、仮の事務所を、私(大臣)も訪問してきましたが、トルコのイスタンブールに置いておりますけれど、今、各国で議論しておりますと、やっぱり政治的なプレゼンス、これは恐らくカタールのドーハになってくるだろうと。これはタリバーンが政治事務所を置いているところでもありまして、そこでいろいろなコミュニケーションが行われるということになると思いますので、日本としても、イスタンブールから拠点をカタールの方に移動すると、岡田大使もそちらに移動するということを検討していきたいと、こんなふうにも考えております。
 更には、そのテロ対策ということを考えたときに、タリバーンがテロ組織との関係を断ち切る、こういったことが極めて重要だと考えておりまして、そのためにも国際社会がワンボイスで、きちんとそういったことを訴えかけていかなければならないと思っております。
 そして、人道上の問題、食料が不足する、そして避難民・国内避難民、こういったものが大量発生するという中で、国際機関であったりとか、NGOの人道支援要員、この安全、そしてまたアクセスというものが確保されるということが、まずは重要だと思っておりますし、恐らくワンショットで、1か月で全てが片付くという問題ではないと思っています。
 そういった意味では、人道支援等々は、長期的・継続的な取組が必要になってくるんじゃないかなと考えておりまして、今後のアフガンの情勢進展、こういったものを見ながら、人道支援についても、関係国とよく連携しながら取り組んでいきたいと、こんなふうに考えています。

アフガニスタン情勢(自衛隊の派遣)

【朝日新聞 菅原記者】ちょっと早いかもしれませんが、現時点でお伺いできればと思うんですが、アフガニスタンの自衛隊の派遣について、政府によって派遣が決まったのは23日でしたけれども、外務省から防衛省に対する派遣の依頼のタイミングが適切だったかどうか、あるいは依頼をもう少し早める必要があったかどうか、現時点のご所見あれば伺えますでしょうか。

【茂木外務大臣】まず申し上げたいのは、これはバイデン大統領もご自身おっしゃっていたように、例えば11日で政権が崩壊すると、こういったことは全く予想していなかったと、これが現実だと思います。他の政府もマスコミも含めて、こういう展開をいったいどれだけの方が予想していたのか。いや、私は予想していたという人はいるかもしれませんけれど、少なくとも私(大臣)の知っている範囲において、主要国でこういう速い展開を予想していたという人はいません。
 そういった中で、アフガニスタンの治安状況、急速に悪化すると、政府としては在留邦人の迅速かつ安全の退避、最重要目標として、加えて、大使館、JICAの現地職員についても、できる限り退避できるように、これは8月の上旬からでありますけれど、チャーター機を利用できないか、また、自衛隊機の派遣も含めて、邦人等の退避計画の策定に着手をしたわけであります。
 しかし、8月15日、タリバーンの攻勢によりまして、米国すら予想しなかったスピードでカブールが陥落をするということが起こりまして、民間機の運航が制限されるなど、カブール空港の機能が著しく制限されたわけであります。一方で、米国は撤退期限を延長しないということを決めましたので、極めて厳しい日程の中での、退避計画を進める必要があったと、これは事実であると思っております。
 民間機は運航停止したものの、従来からアフガニスタンに軍を派遣した国々、NATOの関係国とか、そういったところは軍用機を活用して、退避オペレーションを継続したわけでありまして、米国を始めとする関係国と連携して、まず館員と、館員についても大使館員についても相当危険が切迫しておりましたから、これにつきましては海外の軍用機、これを利用させていただいて、退避をする。同時にその関係国と連携して、輸送の安全確認した上で、自衛隊機の派遣、極めて速いスピードで、それは軍隊を派遣している国というのもいるんですから、そこと比べた場合にどうかということでありますけれど。それとか、過去の日本の実績等々と比べて、意思決定という意味であれば、迅速な派遣というのは決定して、実際にイスラマバードまで派遣をされたと、そしてイスラマバードとカブールの間のスロットもきっちりと取ると、こういうオペレーションを行いまして、あとは撤退期限というのは決まっています。実質的に、いつまでにやらなくてはというのは決まったわけですから、そこの中で最も安全な日、最も安全な手段、そしてそのタイミング、そこでの退避オペレーションを行うということで進めてまいりました。そこまで問題があったとは思っていません。ただ残念ながら26日の日に、想定を全くされないと言いませんけれど、ほぼ、想定される可能性の、それほど直近では高くなかった、空港での自爆テロ等々が起こるということでありまして、タリバーンの検問所も、何十台という車が滞留をしておりました。
 では、そこに、日本の手配をした輸送手段、多くの人数の人が行ったときに、どういう危険が起こり得るかということを考えたときに、あそこで、そのまま突っ込むという判断はできなかったと思います。私(大臣)はすべきではなかったと思っております。
 結果的に、次の日、更に空港の治安も悪くなり検問も厳しくなって、現地職員については、未だ退避できていないと、こういうような状況続いておりまして、状況を見ながら、今後もそういった現地職員等の退避、この支援については、全力を尽くしていきたいと思っておりますが、状況が変化、刻一刻と変化する中で、日本として取りうる手段を考え、最終的には自衛隊も決して遅かったとは思いません。十分、退避に間に合うタイミングで行き、スロットも取り、輸送手段も確保し、そして、オペレーションを進めたわけですけれど、そういった事案が起こったということでありました。起こった事案については、強く非難をしたい、ああいった犠牲者を出した事案については、強く非難したいと思いますが、同時にああいう事案が起こったことによって、退避を希望していた、アフガンの方々が、実際にまだ退避できない状況でいるということについては残念であると思っています。

アフガニスタン情勢(自衛隊法の制約)

【時事通信 近藤記者】関連でお伺いします。今回の退避オペレーションですけれども、根拠法となった自衛隊法の制約で、思うような活動ができなかったのではないかと、法改正の必要性に言及する与党からの声も上がっているんですけれども、そこの点について大臣のお考えをお願いします。

【茂木外務大臣】それは、よく、自衛隊においても、また政府においても、国会においても議論すべきことだと思っておりますけど、現行の法制において、では、カブール空港から自衛隊が出て、例えばカブール市内にいる邦人であったりとか、外国人を空港まで連れてこられると、そういう任務が付与できるかというと、残念ながらできていないというのが現実だと思います。

アフガニスタン情勢(茂木大臣の中東外遊の影響)

【朝日新聞 菅原記者】確認で伺わせてください。カブールの陥落から、自衛隊の派遣の決定に至るまで、大臣や担当の局長が中東の外遊に出ておられるタイミングでしたけれども、外に省庁の幹部が出ていることによって、一連の事態に対応する影響が出たかどうか、あるいはその外遊を中断するなんていう判断というのはあり得たかどうか、ご所見を伺います。

【茂木外務大臣】何時代のことを言っているんですか。明治時代ですか。Wi-Fi通じてないんですか。飛行機の中でも通じますよ。毎日、連絡とっていました。
 よほど、中東の主要国と連絡を取りながら、現地の情勢がどうなのか、トルコとしてどんなことができるのか、また、カタールとしては一番タリバーンと関係が深いという中で、今、タリバーンが何をしようとしているのか、そういったことを直接聞くと、どちらがメリットがあったかと。通信上の障害はなかったと思っております。
 昼夜ですから、寝る時間、違う部分があるかもしれませんけど、比較的私(大臣)は起きていますし、こういうときに必要なときに寝ることはありません。
 海外に行っているから連絡が取れないと、それはちょっと今の時代と違う発想じゃないでしょうか。

【朝日新聞 菅原記者】承知しました。そうしますと省庁としての判断、意思決定の過程に、特にそれによって差し障りがあったというわけではないというお考えですか。

【茂木外務大臣】今申し上げたとおりです。