(令和3年9月7日(火曜日)11時12分 於:本省会見室)

冒頭発言

外務省幹部人事

【茂木外務大臣】まず、今朝の閣議で、外務省の幹部人事、承認をされました。今週金曜日、10日付で発令する予定です。今回の外務省の幹部人事、これまでも様々な要素を検討して決定をしてきましたが、特に2点、政策の継続性と更なる進展、そして、女性や若手人材の積極的な登用、こういったものを重視いたしました。
 人事の概要について、この後、資料をお配りいたしますが、主要な人事として、中南米局長に小林麻紀・東京オリンピック・パラリンピック組織委員会広報局長を当てることにいたしました。平成2年入省組からは初めての局長ということになります。
 また、中東アフリカ局長には長岡寛介・中東アフリカ局審議官に就任をしてもらいます。今、アフガニスタン情勢が非常に流動的である、こういった中にあって、豊富な中東経験、そして業務の継続性を踏まえたものであります。また、国際情報統括官には山内弘志・総合政策局審議官、軍縮不拡散科学部長には海部篤・前儀典長、また南部アジア部長には加納雄大・総括審議官をそれぞれ就任させます。
 今回交代する幹部にも、それぞれの担当分野で本当にいい仕事をしてもらったと、このように思っております。また私(大臣)を支えてもらったと、感謝をしているところであります。今後も大使等の役職で、引き続き日本の顔として、活躍してもらうことを期待いたしております。
 引き続き、新しい体制の下で、外務省一丸となって多岐にわたる外交課題に全力を尽くしてまいりたいと考えております。私(大臣)からは以上です。

北方領土問題(経済特区構想)

【朝日新聞 相原記者】先週ロシアのウラジオで開かれた、東方経済フォーラムについて伺います。その後、大臣の先週の会見の後に、プーチン大統領が、北方領土に日本を含めた外国企業の誘致を認めるような、そういう経済特区構想というのを表明しました。この構想に対する大臣の評価と、あと今後の対応を教えてください。

【茂木外務大臣】まず、今回の東方経済フォーラムにおいて、プーチン大統領が日本との平和条約がないことはナンセンスだと、こういう話をしておりまして、平和条約交渉を継続していくということを明言したわけであります。
 政府として、領土問題を解決して、平和条約を締結するとの基本的な方針の下、引き続き、粘り強く交渉していきたいと思います。
 そしてご指摘の点でありますが、「ロシア法令」に基づくことを前提として、北方四島を含む地域の経済開発に関する「特恵制度」を導入すること、そして日本企業及び第三国企業にそのような経済開発の関与を広く呼びかけること、これは北方四島に関する日本の立場であったり、これまで首脳間の合意に基づき、日露間で議論してきた北方四島における共同経済活動の趣旨とは相容れないものだと考えております。
 このような日本側の立場については、これまでロシア側に対して累次に亘って申入れしてきたにもかかわらず、今般、ご指摘の発表、これが行われたことは遺憾であります。今回の発表を受けて、3日の日にロシア側に対して、改めて日本立場につき、申入れを行いました。
 共同経済活動、これは双方の法的立場を害することなく実施することで一致をしているものでありまして、日本としては、このような形で共同経済活動の実施に向け、今後ともロシア側との協議を建設的に行っていきたいと考えております。
 そして、そういった協議も行いながら、平和条約締結に向けた環境整備も一緒に進めていきたいと思っております。

サンフランシスコ講和条約から70年

【毎日新聞 宮島記者】サンフランシスコ講和条約についてお伺いします。明日、日本が国際社会への復帰を果たしたサンフランシスコ講和条約の署名から70年を迎えます。早期講和、軽武装、経済優先路線は、戦後日本の繁栄の土台になったかと思いますけれども、足元では、米中新冷戦と呼ばれる時代になってきました。迂遠な話で恐縮なんですけれども、講和条約締結の意義と、今後の日本のあるべき姿について、ご所見をお伺いできますでしょうか。

【茂木外務大臣】丁度明日で締結から70年ということになるわけですね。今日7日だよね? ということは、明日だね。明日9月8日で、丁度70周年を迎えるということで、やはり歴史的な決定だったと、こんなふうに思っているところであります。戦後復興を遂げ、また、国際社会の一員に復帰をすると、こういった意味で大きな条約の締結だったと、このように考えております。
 日本は、サンフランシスコ平和条約を受諾することによりまして、主権を回復して国際社会に復帰したわけであります。そして、この条約は今日に至るまで、戦後秩序の基本的な枠組を提供しているものと理解いたしておりまして、戦後の日本は、この枠組の中で平和と繁栄を実現してきたと、これは間違いない事実だと思います。
 ただ、当時と比較して、今日、国際情勢、これも大きく変わっていると、当時はちょうど、冷戦構造が始まると、こういう状況でありましたが、違った形で違う構造で、日本を取り巻きます安全保障環境、今、厳しさを増しているところであります。国際社会、予見をしていた以上のスピードで、歴史的変動期にまた入っておりまして、安全保障、先端技術、デジタル、様々な分野で、パワーバランスの流動化というのが見られるわけでありまして、一方で、新型コロナ対応とか気候変動、こういうことでは、国際社会が一致して、協力して対応しなくてはならない、こういう課題も大きく浮かび上がってきているのは事実だと思っております。
 日本として、こういった様々な動きと、これを先取りしながら、私(大臣)が申し上げている、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を、幅広く戦略的に展開をしていきたいと、そのように考えております。
 サンフランシスコ講和条約をはじめとします、国際的な法的な枠組みを遵守をすると、我々が確立してきた共通の価値観に基づきます様々なルール、こういったものを遵守すると同時に、新たな時代の流れ、これに対応した今後の世界的なルール作り、こういうものを日本として、更に主導していきたい、こんなふうに考えております。

アフガニスタン情勢(アフガニスタン難民の受入れ)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 アフガニスタンについて伺います。米軍の撤退後も国外退避を望むアフガニスタン人は多い中で、報道によれば、米国は確か5万人だと思いますが、アフガニスタン人を受け入れるとしており、他国もアフガニスタン人を受け入れるとしています。日本はアフガニスタン難民を受け入れる予定はありますか。

【茂木外務大臣】今、アフガン、様々な課題を抱えております。そこの中でも、最優先の課題、これは出国を希望する現地職員などの安全の確保、そして、迅速かつ安全な出国の実現であると考えておりまして、その上で、今後、日本に入国を希望するアフガン人に対する対応については、個々の方々で置かれている状況も違ってきます。そういった状況と、これに配慮しながら検討、対応していきたいと思っております。まずはきちんと出国できると、そのために日本としてやるべきことはやっていくということです。

アフガニスタン・パラリンピック選手の出国

【時事通信 近藤記者】東京パラリンピックに出場したアフガニスタンの2選手に関してですけれども、昨夜、羽田からパリ行きの便に乗って出国したという一部報道があります。これについて事実関係と、安全な出国に向けて日本政府として、受入国との調整など、何か支援などされたのかお願いいたします。

【茂木外務大臣】パラリンピックにつきましてては、IPC等が中心になって運営をされたと、アフガニスタン人の選手の来日に当たっても、IPCがサポートを行ったと承知をいたしておりまして、詳細につきましてはIPCの方にお尋ねいただければと思います。

自民党総裁選が外交に与える影響

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 人事に関するご発言の中で日本外交の継続性についてお話があったかと思いますが、近々、自民党総裁選が実施され、その後衆議院議員選挙が行われます。日本政府の要職の顔ぶれが大幅に変わることもあり得る中で、日本外交が日頃から直面している重要な国際課題にどのように対応されますか。

【茂木外務大臣】自民党の総裁選、これも予定をされておりまして、その後、新総裁が選ばれ、そして、その人間が新たな総理になり、組閣をされるということだと思いますが、自民党において、外交安全保障問題について、誰が総理・総裁になっても大きな変更はない、こんなふうに考えております。
 今の国際環境については、同様の認識をそれぞれ持っていると思いますし、日本外交、日米同盟、これを基軸にする。そして今、様々なパワーバランスの変化の中で「自由で開かれたインド太平洋」、この実現に向けて、様々な国々と、また様々な分野での協力を進める、このことでも一致をしていると思っております。
 更には気候変動の問題、そして何よりも、いま世界的に広がっているこのコロナ、COVID-19に対して、どう国際的に協調しながら、これを乗り越えていくか、こういう課題についても、基本的な方向性、政策の方向性が変わることはない、こんなふうに考えております。