外務省・新着情報

令和3年11月16日

1 概要

 10月31日(日曜日)から11月13日(土曜日)の間、英国グラスゴーにおいて、国連気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)、京都議定書第16回締約国会合(CMP16)、パリ協定第3回締約国会合(CMA3)、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)第52~55回会合(注)が開催された。我が国からは、岸田文雄内閣総理大臣が世界リーダーズ・サミットに出席し、2030年までの期間を「勝負の10年」と位置づけ、全ての締約国に野心的な気候変動対策を呼びかけた。また、山口壮環境大臣が2週目の閣僚級交渉に出席したほか、外務省、環境省、経済産業省、財務省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、金融庁、林野庁、気象庁の関係者が参加した。
 2週間にわたる交渉の結果、COP24からの継続議題となっていたパリ協定6条(市場メカニズム)の実施指針、第13条(透明性枠組み)の報告様式、NDC実施の共通の期間(共通時間枠)等の重要議題で合意に至り、パリルールブックが完成した。
 加えて、議長国・英国の主導で実施された各種テーマ別の「議長国プログラム」では、我が国から、それぞれの分野における取組の発信や実施枠組みへの参加等の対応を行った。

(注)新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年及び2021年に予定されていた第52回から第54回会合の実施が延期され、第55回会合との合同開催となった。

2 世界リーダーズ・サミット

 岸田総理は、11月2日、首脳級会合である世界リーダーズ・サミットに出席した。本会合は、パリ協定を採択した2015年のCOP21以降、初めての首脳級会合となった。同サミットでは、130か国以上の首脳によるスピーチが行われ、今後の世界的な気候変動対策の推進に向けた各国の取組が表明された。
 岸田総理から、2030年までの期間を「勝負の10年」と位置づけ、全ての締約国に野心的な気候変動対策を呼びかけたほか、新たな2030年温室効果ガス削減目標、今後5年間での100億ドル資金支援の追加コミットメント及び適応資金支援の倍増の表明、グリーンイノベーションの推進、グローバル・メタン・プレッジへの参加等の我が国の気候変動分野での取組の発信を行った。岸田総理のスピーチでの新たなコミットメントには、多くの参加国・機関から高い評価と歓迎の意が示された。
 また、国連事務総長、英国、米国、豪州、ベトナム、インド、カナダ、欧州委員会、モンゴル、スリランカ、キルギス、エクアドル、クウェート、アイスランドとの二国間・二者間会談を実施した。

3 交渉結果概要

(1)COP・CMP・CMA全体決定

 COP決定(1/CP.26)、CMP(1/CMP.16)及びCMA決定(1/CMA.3)では、科学的知見、適応、適応資金、緩和、資金支援、技術移転、キャパシティ・ビルディング、ロス&ダメージ(気候変動の影響に伴う損失及び損害)、取組の実施、関連主体等との連携を含む内容が合意された。同決定文書は、最新の科学的知見に依拠しつつ、今世紀半ばでの温室効果ガス実質排出ゼロ及びその経過点である2030年に向けて野心的な緩和策、適応策を締約国に求める内容となっている。
 決定文書の交渉に当たり、我が国からは、パリ協定の1.5度努力目標の追求は、国際社会が一致団結して取り組まなければならない課題であり、全締約国に取組を求めることが必要であること、今後の2030年までの「勝負の10年」における全締約国のさらなる行動を呼びかける内容とすべきこと、必要に応じて、1.5度努力目標に整合的な強化されたNDC及び長期戦略の提出を求める文言が必要であること等を提案した。

(2)パリ協定第6条(市場メカニズム)

 パリ協定6条については、国際的に移転される温室効果ガス削減量の二重計上防止のルール、京都議定書下のCDM(クリーン開発メカニズム)活動/クレジットの扱い、6条を通じた適応支援、クレジットの算定手法等が交渉の焦点となった。これらのうち、二重計上の防止については、我が国が打開策の一つとして提案していた内容がルールに盛り込まれ、合意に大きく貢献した。その他、京都議定書下のCDM活動/クレジットについては一部をパリ協定に移管すること、適応支援についてはその方法が決定された。パリ協定6条の実施指針が採択され、パリルールブックが完成された。

(3)透明性枠組み

 透明性枠組みについては、CMA1で採択された実施指針に基づく各国の温室効果ガス排出量の報告及びNDC達成に向けた取組の報告様式が交渉の論点となった。交渉の結果、我が国が主張を行ってきた、全締約国に共通の項目・表で排出量の報告を行うこと、また比較可能な表形式でNDC達成に向けた取組の報告を行うことが決定された。また、キャパシティ・ビルディングを含む報告のための支援のあり方についてはCMA4で新たな議題の下継続して議論することが合意された。

(4)NDC実施の共通の期間(共通時間枠)

 パリ協定の締約国は、自国が決定する貢献(NDC)として温室効果ガス削減目標を作成し、5年毎に国連に通報することとなっている。一方で、実施期間を2031年以降とするNDCの共通の時間枠については、何年先の目標を設定するかについては規定がなく、共通時間枠を検討することが決まっていた。交渉の結果、全締約国に対し、2025年に2035年目標、2030年に2040年目標を通報(以降、5年毎に同様)することを奨励する決定が採択された。

(5)適応・損失と被害(ロス&ダメージ)

 適応では、適応に関する世界全体の目標(GGA:Global Goal on Adaptation)の実施に向けた取組についての議論が行われ、今後はGGAについて議題を設定して議論していくこと、今後2年間の作業計画「GGAに関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」を開始することが決定された。
 ロス&ダメージについては、サンティアゴ・ネットワークの機能及び技術支援を目的とする資金の提供について議論が行われ、来年春の補助機関会合において、グラスゴー対話を立ち上げ、議論を継続することが決定された。

(6)気候資金

 気候資金は、長期気候資金、2025年以降の新規合同数値目標、資金に関する常設委員会、資金メカニズムに関する事項等の幅広い議題について交渉が行われた。特に、多くの途上国からは、先進国による2020年までの年間1000億ドル資金目標が未達成であることへの批判があるとともに、長期気候資金と2025年以降の新規合同数値目標に関する議題では、意見の隔たりが大きく閣僚級での議論が行われた。
 上記交渉の結果、長期気候資金に関する議題は、2025年の気候資金に関する情報が公表される2027年まで議題を継続することとなった。また、今次会合では特に適応支援の重要性が提起され、先進国全体で2025年までに適応支援を2019年の水準から倍増することを求める旨の文言が決定文書に記載された。さらに、2025年以降の途上国支援に関する新たな数値目標については、今次会合で議論を開始し、今後の議論のプロセス等について交渉を行った結果、本件に関する協議体を立ち上げ、2022年から2024年にかけて議論することとなった。

(7)その他

 定期レビュー、グローバル・ストックテイク、技術開発・移転、キャパシティ・ビルディング、農業、研究と組織的観測、対応措置の実施の影響(気候変動対策の実施による社会経済的な影響)、気候変動とジェンダー、気候エンパワーメント行動(ACE:Action for Climate Empowerment)等の幅広い交渉議題について議論が行われた。なお、ACEについては、今後の10年間の教育・普及啓発等の実施事項等を定めた「気候エンパワーメント行動に関するグラスゴー作業計画」が採択された。
 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)下の構成機関に所属する委員の選挙が行われ、今回改選となっていた日本人委員6名が再選された。また、次回COP27をエジプトが主催することで合意され、2022年11月7日から18日の日程で開催される。
 なお、COP/CMP/CMAの下で交渉が行われた3つの議題において、3名の日本代表団員が共同ファシリテーターとして任命され、同議題における交渉をリードした。

4 閣僚級二国間会合等 

 山口環境大臣は、米国、ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、エジプト、EU、フランス、インド、シンガポールの計10か国・地域の閣僚級及び代表と二国・二者間会合を行った。各会合では、パリ協定第6条(市場メカニズム)の実施指針の合意に向けた提案等、交渉議題の合意に向けた議論を行ったほか、我が国の2050年カーボン・ニュートラルに向けた取組の紹介、2030年までの「勝負の10年」における気候変動対策の在り方等について意見交換を行った。

5 議長国プログラム 

 議長国プログラムでは、野心的な気候変動対策、イノベーション、森林・土地利用、資金、エネルギー、ユース・エンパワーメント、自然環境、適応・ロス&ダメージ、ジェンダー、科学、運輸、都市・地域等のテーマが日ごとに設定され、関係イベントが開催された。
 イノベーション・イベントでは、電力・陸運・鉄・水素・農業の各分野での2030年に向けた取組を示す「グラスゴー・ブレークスルー」が立ち上げられ、我が国は招待を受けていた4分野に参加した。また、我が国は、森林・土地利用イベントでは、世界的な森林減少対策の推進を図る「森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言」 に署名するとともに、その実現に向けた「グローバル森林資金プレッジ」に参加し、約2.4億ドルのコミットメントを行ったほか、「コンゴ盆地森林支援共同声明」、「森林・農業・コモディティ貿易(FACT)対話」にも参加した。続く、運輸イベントでは、国際海運分野において温室効果ガスを排出しないゼロエミッション船が運航されるグリーン海運回廊の開設を目指す「クライドバンク宣言」及び国際航空分野の2050年CO2排出ネットゼロに向けた業界の取組を考慮した長期目標設定を目指す「国際航空気候野心連合」に参加し、それぞれについて斉藤鉄夫国土交通大臣からビデオメッセージを発信した。また、ユースに関するイベントに参加し、気候教育を含む環境教育に関する日本の取組を紹介。適応イベントでは、閣僚級セッションにおいて、適応コミュニケーションの提出、資金支援、AP-PLAT(アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム)を通じた支援や人材育成等について発信した。

6 我が国の取組の発信・サイドイベント 

(1)ジャパン・パビリオンでの発信

 我が国は、COP26会場であるScottish Event Campusにおいて、ジャパン・パビリオンを設置し、会合期間を通じて、我が国の企業等による脱炭素化に向けた先進的な技術や市民・若者等による取組の展示(実地で12件、バーチャルで33件)に加え、31件のセミナーを実施し、会場及びオンラインにて発信した。
 それらの展示やセミナーは、我が国の2050年カーボン・ニュートラルの目標に向けた取組と、アジア・太平洋地域を中心とした脱炭素移行支援の取組の、二つの軸を据えて発信を行った。具体的には、我が国の都市・地域を基盤とした日常に根付いた多様で複層的な取組の推進により、脱炭素社会、気候変動に適応した社会、循環型社会を構築していくビジョン、福島における脱炭素社会と復興まちづくりを同時実現する先進地の創出にむけた取組、企業や大学、NGOや若者団体などによる脱炭素化のアクションや政府との協働、さらに都市・地域レベルの脱炭素化を国際的に波及させていく取組、アジアにおける企業等の排出量把握を促進する地域ガイドライン作成の取組など、我が国の国内外における取組を幅広く発信した。また、「東京ビヨンドゼロウィーク in グラスゴー」と題し、エネルギー移行に向けた様々な経路(パスウェイ)、イノベーション、アジアなどへのエンゲージメントの重要性について発信する複数のセミナーを実施。

(2)その他公式サイドイベント等における発信

 公式サイドイベントの「地域気候ウィーク・グローバル・ハイレベルイベント」では日本がホストしたアジア太平洋気候ウィークの意義及び世界に向けた資金支援について紹介。その他、「短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)閣僚会合」等を通じて、代替フロンのライフサイクルマネジメントの重要性等について発信した。


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