財務省・新着情報
1日時 令和3年10月19日(火)13:27~15:10
2場所WEB会議(財務省第3特別会議室を含む)
3出席者(懇談会メンバー)
秋池玲子 |
ボストン・コンサルティング・グループ 日本共同代表 |
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秋山咲恵 |
株式会社サキコーポレーションファウンダー |
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江川雅子 |
一橋大学大学院経営管理研究科 特任教授 |
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翁百合 |
株式会社日本総合研究所理事長 |
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角和夫 |
阪急電鉄株式会社代表取締役会長 |
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田中直毅 |
国際公共政策研究センター理事長 |
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田辺国昭 |
国立社会保障・人口問題研究所所長 |
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広瀬道明 |
東京ガス株式会社取締役会長 |
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山本清 |
鎌倉女子大学教授、東京大学名誉教授 |
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座長吉野直行 |
慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長 |
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(敬称略、五十音順) |
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(財務省) 矢野事務次官、新川官房長、住澤主税局長 |
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(国税庁) 大鹿長官、日置審議官、本多監督評価官室長 |
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(事務局) 水口政策立案総括審議官、伊藤政策評価室長 |
4議題
令和2事務年度国税庁実績評価(案)について
5議事録
○吉野座長
それでは、時間よりちょっと早いんですが、皆様お集まりのようですので、差し支えなければ、ただいまから第72回財務省政策評価懇談会を開催させていただきたいと思います。
前回に引き続きまして、新型コロナウイルス感染症の感染防止のために、委員の皆様にはウェブ会議とさせていただいております。音声が聞こえにくいとか、何かのトラブルがございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。
開会に先立ちまして、本懇談会の委員であられました小林喜光委員が御退任され、代わりまして、今回より、東京ガス株式会社取締役会長の広瀬道明委員をお迎えすることになりました。
最初ですので、広瀬委員より一言御挨拶いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○広瀬委員
ありがとうございます。ただいま御紹介をいただきました広瀬でございます。今回から参加をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
○吉野座長
どうぞよろしくお願いいたします。また活発な御議論をお願いしたいと思います。
それでは、議題に入らせていただきたいと思います。
本日は、昨年7月から本年6月までの国税庁の令和2事務年度の実績評価書に関します御議論でございます。
まず、水口政策立案総括審議官から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○水口政策立案総括審議官
水口でございます。よろしくお願いいたします。
資料共有させていただいておりますが、国税庁の令和2事務年度実績評価ということで、概要資料をご覧ください。令和2事務年度ですが、新型コロナウイルス感染症が業務に様々な影響を及ぼしたわけですけれども、この点を中心に3点申し上げたいと思います。
まず最初に、5ページでございますが、こちらは、国税庁の使命と実績目標の体系図です。大小7つの実績目標、6つの業績目標、合わせて13の項目がございます。今回の評定結果につきましては、「S 目標達成」が2項目、「A 相当程度進展あり」が11項目ということでございますが、今事務年度におきましては、「酒類業の健全な発達の促進」「国際化への取組」「広報・広聴活動等の充実」、この3項目につきまして、主として新型コロナウイルス感染症の影響などから、測定指標が目標に達成せず、括弧書きが昨年度の評定でございますが、SからAにランクダウンしてございます。この3項目につきましては、12ページで評定理由の詳細を記載してございます。
次に、7ページを御覧ください。今般の評価における留意点を記載してございます。令和2事務年度におきましては、先ほど申し上げましたように、新型コロナの影響が継続したことを踏まえまして、感染症の影響といったやむを得ない事情により目標未達だったものにつきましては、代替として実施した事務の実施状況など、他の事情も総合的に勘案して評価を行いました。この方法により評価を行い、評定を維持したものが6項目ございますが、13ページから16ページにおきまして、その評定理由の詳細を記載してございます。
第3に、少し飛びまして、17ページをお願いいたします。この業績目標の「電子申告等ICTを活用した申告・納税の推進」という目標でございますが、そのうちの下にございます2番目の施策、「国税庁ホームページ『確定申告書等作成コーナー』の利用促進」の評定の部分は「b 進展が大きくない」となってございます。これは、新型コロナの影響という事情により目標未達成となったとまでは言いにくいものの、この施策が全体の一部にとどまっており、そして、重要度の高いもう1つの上にあります施策「e-Taxの普及と利用満足度の向上」の評定が「a 相当程度進展あり」であったことなどを総合的に勘案いたしまして、評定を「A 相当程度進展あり」としてございます。
以上、全体を通じて一言申し上げますと、令和2事務年度は新型コロナウイルスの影響が継続する中で、国税という調査、徴収等の現場を抱える組織として、業務の優先順位づけを行いながら、リソースの再配分も適切に行いつつ、政策目標の達成に向けて、実施方法も含め様々な工夫を凝らしながら、柔軟に、かつ機動的に業務を実施してきた、そういう事務年度であったのではないかと思います。
次に、18ページ、19ページでございますけれども、こちらは、前回6月の懇談会でも委員の御関心が高うございました国税庁のデジタル化への取組として、「納税者サービス等の充実」、「業務の効率化・高度化」等に関する令和2事務年度におけるデジタル化の主な取組を一覧表としてまとめてございます。
以上が令和2事務年度の国税庁実績評価の概要の御説明でございます。
最後に20ページの資料2でございます。こちらは6月の懇談会で御意見いただいた令和3事務年度の国税庁実績評価の事前分析表の中で、当時集計ができていなかった項目、具体的にはe-Taxの利用状況に関する所得税と消費税の測定指標の部分でございますが、これについて御報告をするというものでございます。今回、併せて利用率の算定方法の見直しも行ってございまして、この目標値について、見直し後の算定方法により算出したものがこの3年度の目標値として現在記載しているものでございます。
私からの説明は以上でございます。
○吉野座長
ありがとうございました。
それでは、いつものように、御意見を皆様からお伺いしたいと思います。そして、最後に財務省、国税庁の側から発言をいただくこととさせていただきます。
本日は角委員が途中退席されるということですので、角委員から御発言いただき、その後、あいうえお順にさせていただきたいと思います。
それでは、角委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○角委員
どうも御配慮いただきまして申し訳ありません。阪急の角でございます。
まず、令和2年度の評定結果につきましては、ただいま御説明がありましたように、幾つかの項目で悪化はしておりますけれども、全てコロナの影響でございまして、これはやむを得ないと考えます。
また、租税に関する啓発活動に関する理解度、満足度につきましては、非常にすばらしい高い評価を得ておられることに対してはいいと思うんですけれども、国税庁のホームページの税務大学校へのアクセス件数が少し減少傾向になっているのはなぜなのかなということで、もしホームページが改善できるのであれば、する必要があるのではないか。
それと、学校におきます租税教育の強化について少しお願いしたいと思います。小学校は中学年と高学年で社会の授業がありまして、中学校では公民的分野、高等学校では現代社会、政治経済で実施されておりますけれども、大学で、教職へ行かれる方は別としまして、ほとんどそういう教育をなされていないという中で、例えばリベラルアーツですとか、社会課題の認識ですとかということで、税の歴史とか、世界の動静とか、日本の現状を教育していただく、知っていただくということをしていただければありがたい。
私は、縁がありまして、大阪大学で、年1コマですけれども、約10年間講義をしております。その中で、必ず社会課題として、こういう状況にあるということを講義しているんですけれども、消費税が全て社会保障に使われていることすら知らない学生が存在します。そういうこともありますので、高校生用の教材にもその辺のことをきっちりと明記していただければありがたい。
2点目は、マイナンバーカードですけれども、マイナポイント事業の効果がありまして、ようやく約40%まで来ました。ただ、これは4月までの措置でございましたので、2月から4月の3か月間で1,400万枚の登録があった。ただし、5月以降は激減状況にあります。ただ、自治体によりましては、例えば石川県の加賀市は約70%達成をされています。そういった自治体もありますので、ぜひそれを横展開していただければと思います。
それと、目標としては、来年度中がほぼ全国民にという計画でございますので、健康保険証としての利用もスタートしておりますし、コロナ対策として、例えば給付金をするということが決まりましたときに、前回のようなことなく、スピードアップをしてやるということからしまして、交付金受取口座の義務づけをぜひとも早期に御検討いただきたいと思います。
ただ、2022年にこの銀行口座の義務づけということはなかなか難しいと思いますので、取りあえず暫定措置として、再度新マイナポイントを再開していただきまして、新規に登録していただく方については例えば5,000ポイント、そして、口座登録を併せてやってもらいまして、合計1万ポイントとか、既にカードを取得した方については、口座登録をすることによって5,000ポイントというふうなインセンティブをつけていただければどうかなと思います。
最後3点目、財政の健全化でございます。骨太方針2020でプライマリーバランス黒字化が一旦消えてしまいましたが、今年は再度明記されたことにつきましては非常によかったと思います。全ての団塊世代が75歳以上になる2025年にPB黒字化、ただし、コロナの影響の検証を行い、目標年度を再確認するというふうに記されております。いずれにいたしましても、明記されたことは非常によかったと思います。
当面コロナ対策あるいは経済対策につきましてはやむを得ないと思いますが、ただし、早期に昨年の分も含めまして償還方法についての議論をスタートしていただくべきだと思います。本来であれば、EUのように、補正予算措置と同時に償還計画を決めるべきだとは思いますけれども、そうなっていないのであるならば、選挙も終わり、参議院選挙が終わった後には、きちっと償還計画を出していただけるような御準備を今からお願いしたいと思います。
ちなみに、東日本大震災の復興予算は32兆円でした。そして、復興増税は約4割の12.4兆円です。したがいまして、残りの部分は株式を売るとか、あるいは予算の調整の中で足らずをということは、ちょっとこれは苦しいように思います。今度はこの東日本の32兆に比べまして、次元の違う補正が出されているわけですので、これにつきましては、消費税の増税は避けられないと思います。
その理由といたしましては、私は1番に挙げたいのは、30年間社会保障と国債費、この2つの国家予算を除いて、全ての予算がほぼ1990年、30年前と同じ予算の額であるということです。そうなりますと、当然のことながら、諸外国はどんどんいろいろな意味で予算をGDPの成長に合わせて増やしていっているわけですので、科学技術ほか国際競争力がかなり厳しい経過を来しております。
また、人口減少も日本は他国に比べて非常に早く進展するわけです。例えばフランスのような、3歳児から幼児教育というか、3歳から学校に入ったのと同じ対策を国が打つことによって、フランスは見事に出生率を改善したわけですけれども、そういったことも今の状況ではできない。前回申し上げましたように、それにカーボンニュートラル、11月1日からCOP26が開催されますけれども、このカーボンニュートラルの問題、あるいは防衛予算につきましての増強要請を考えますと、消費税率を上げるしか方法はないと考えます。
以前、野党の一部が海外の事例を参考に消費税率の引下げを要求したシーンがございました。イギリスにおいては、2020年7月に20%を一旦5%にしましたけれども、12月には12.5%、イギリスは御承知のように財務大臣の判断で決められるわけです。そして、来年の4月には20%に戻すということになっております。また、ドイツにつきましても、昨年7月に19%から16%にダウンしましたけれども、今年の1月には19%に戻しております。野党は、今回の選挙におきましての争点に消費税の減税を言う野党が多いわけですけれども、ポピュリズムの極致としか言いようがないと思います。
現在約20兆の消費税を社会保障に投入しても、不足分が約20兆円あるということは、その20兆円が毎年後世へのツケに回っているということを国民の皆さんにぜひとも認識してもらうようなことが必要ではないかと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
○吉野座長
角委員、貴重な御意見をどうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、あいうえお順に秋池委員から、1人6分ぐらいでお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○秋池委員
今回の評価ですけれども、いずれも公平につけられていると思います。極端に都合よく評価するでもなく、だからといって、過剰に下に振れ過ぎるということもなくて、コロナ禍の評価として公平な評価がなされたと感じています。
頂いている資料で、12ページからの5.の資料というのはとてもいい資料だと思っております。この変化があったもの、それから、一般的な評価と異なる判定をしたものというのが示されているのは意味があると思っておりまして、これを見ることで振り返りをすることができるという意味で、経営のツールといいますか、マネジメントのツールとして大変優れていると考えています。こういったものを拝見するときに、コロナの影響だったとはいえ、どうしても悪くなったものを中心に見てしまうところがあるのですけれども、よくなったことの理由も味わってみるというのは、また、この先、そのよさを別の場面でも別の工夫をしながら、アレンジを加えながらになりますが、継続していくということにおいて意義があると考えます。
また、もう一つ忘れてはいけないと思いますのは、とりわけ国税庁のような前線でのお仕事をお持ちの組織におきましては、非常に困難なコロナ禍であったと思います。そういった中で、同じ評価を続けているとか、S評価を続けているというのは、実は称賛に値する部分もあると思うのです。ですので、変わらなかったものの裏にどういう努力があったのかということについては、それはそれで、各場所で味わってみる必要があるのではないだろうかと考えます。普通にできただけでも称賛に値するお仕事というのがきっとあったのではないかと考えるからです。
それから、もう一つですけれども、今感染者が減ってきています。また第6波が来るのだとか、いろいろな議論がありまして、コロナが完全になくなるということはしばらくないのかもしれないのですけれども、それでも感染が抑えられて、それから医療体制が整っていく中で、普通の暮らしが戻ってくるとなったときに、また国税庁の仕事が、過去2年間と違って、旧に復してくる部分があると思います。そのときに、全く元に戻すのがいいのか、コロナ禍でオンラインなど様々な工夫をしながら、デジタルなども含めて工夫していたものを新しい形で取り込んだ新たな仕事のやり方を見出すのがいいのか、ただ復旧するということだけではなくて、新しい方向に向かっていくようなお取組がなされることが大事だと思います。
国税庁さんの仕事でそういうことは恐らくないかとは思うのですけれども、例えば一般的なオペレーションの仕事などでは、モードが戻ったときにちょっとトラブルが起こったりするということはあります。流れ作業でやっておられるわけではないので、そういうことは起こらないかとは思いますが、国税庁が組織理念にも掲げておられるように信頼されるということが前提にあって、財政健全化に向けた動きというのが取り得るということになりますので、その辺りは気をつけて見ていっていただけるとよろしいかと思いました。
以上でございます。
○吉野座長
秋池委員、どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして秋山委員、お願いいたします。
○秋山委員
秋山でございます。ありがとうございます。
私から3点申し上げたいと思います。
1点目は、この2年間、コロナ禍の中で、特に前線の皆さんをはじめとして、大変御苦労があった中での評価ということがこの2年続いております。その中で、評価についても着実な対応が進んできているなと今回受け取っております。今回のこの2年間で我々が経験したことを踏まえると、今後のために1点ぜひ考慮いただくといいのではないかと思うのが、当然のことながら、評価というのは、あらかじめ目標を立ててその達成度をなるべく客観的に測るということが大切なわけです。
何か環境の大きなやむを得ない変化があったときに、特に前線の皆さんを含めて、それを乗り越えるために最善の努力をされた措置を取ったということに対して、しっかりとプラスの評価をするということ、このことが何か問題が起きたり変化が起きたり課題に直面したときに、職員の皆さん一人一人の前向きな努力を鼓舞するということにつながると思いますので、変化に応じて最善な措置を取ったということについて、プラスの評価をするんだということを一つの方針としてお示しいただくということも大切ではないかというのが1点目です。
それから2点目、コロナの影響もありましたが、この2年間、この会議においてもキーワードになったのが、デジタル化ということだと思います。今回の資料にもよくまとめていただいて、その取組などをより深く理解することができたことを感謝申し上げたいと思います。
その上でなんですけれども、デジタル庁も発足をしたという中で、今後さらに行政サービスのデジタル化ということは進んで、かなり加速もしていくと思われます。今回の評価書の中で言うと、1-1-5「税務行政の適正な執行」の施策の5番目のところに行政サービスのデジタル化というのがあります。今回は国税庁ということで国税の話が中心ではありますが、今後デジタル化が進んで、行政サービス全般のデジタル化が進んでいったときには、納税者から見たときには、国税も地方税も、それ以外のいろいろな場面で納税する税金も、全て自分が納税者として納める税金であるということで、この辺りの手続が今後ばらばらになったりですとか、そういうことをなるべく避けていくということを考慮するべきだと思います。
この辺りはデジタル庁や総務省との役割分担というのはあると思いますが、翻って、国税庁が持つ税務行政の適切な執行ということにおいて、ぜひリーダーシップを発揮して、取りまとめなどにも適切な助言、協働をしていただきたいというふうに希望しております。これが2点目です。
それから3点目、今般成立した岸田内閣で、新しい資本主義という新しいテーマが掲げられています。これのポイントは、分配機能をこれまでよりも強化するということになろうかと思いますが、この分配機能というのを施策としてどうやって実現していくのかということを考えたときには、やはりマイナンバーというものが重要な役割を果たすことになると思います。そういった意味で、現時点で普及率が40%になるということは大変に意義のあることです。新しいものの普及を考えたときに、30%を超えるということが一つの大きな目標になるのが通常ですので、ようやく40%を迎えるということは、大きなステップを踏むことができたというふうに評価をしております。
そして、分配機能に関しては、マイナポイントなどを使うことが、もしかしたら給付つき税額控除に近い機能を果たすということも考えられるのではないかと思います。併せて財政の観点から、この分配機能の強化がばらまきにならないようにするというためにも、一人一人のいろいろな状況を情報として、データとして把握した上で、必要な人に必要なだけの分配が行くという仕組みをこれからつくり上げていくということが大変重要になると思っておりますので、この辺り、今回の目標には間に合わないと思いますが、今後の目標設定において御考慮いただきたいと思っております。
以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして江川委員、お願いいたします。
○江川委員
どうもありがとうございます。コロナ禍の大変な中で、対面での対応も含めて業務を遂行してこられた国税庁の皆様に、心から感謝申し上げます。
一部やむなく評価が下がっているものもあると思いますが、その中で本当に健闘されたと思うので、全体として評価は妥当だと思いますし、しっかりやっていらっしゃると思います。
評価書の内容を踏まえて2点、それから、社会の新しい課題に対応する税制ということで3点申し上げたいと思います。
1点目は、大目標の2つ目で「酒類業の健全な発達の促進」ということで、これは評価もAになっています。しっかりやっていただいていると思いますが、御案内のように、日本酒は海外で今とても人気が高まっていますので、ここは引き続き力を入れていただきたいと思います。当然和食、観光などとの相乗効果もあると思いますので、既にやっておられると思いますけれども、農水省、外務省、あるいは観光庁、そういったほかの省庁とも連携して、効果的に促進ができるように引き続き取り組んでいただければと思います。それが1点目です。
2点目は、デジタル化、マイナンバーカードについてで、これは問題意識は角委員、秋山委員と同様です。例えば1-2-3のe-Taxの利用率も上がっているので、一定の進捗はあると思いますが、デジタル化というのは非常に重要だと思いますし、デジタル庁も発足したことでもあるので、ぜひ力を入れていただいて、マイナンバーカードがしっかり活かされるようにしていただきたいと思います。
それから、新しい社会課題に対して、税制を見直していくという観点で3つありますが、1つ目は、ESGに関する対応です。現在機関投資家の間で環境・社会のバランスを考慮した投資というのが急成長していて、企業経営でもそれをしっかり取り入れていくということが求められています。現在役員報酬を業績や株価に連動させるばかりでなくて、ESGの要素に連動させることを検討する企業も増えていますが、業績連動報酬として、損金算入の要件を満たさないということから、金額を抑える傾向があると聞いています。平成29年度の税制改正で損金算入の対象となる業績連動給与の範囲が拡大されていますけれども、いま一度ESG経営の浸透を図る観点から、ESG要素に連動させる役員報酬についても適切な検討を行っていただけるとありがたいと思います。
2点目は、人材の流動性を促すような税制です。今般改訂されたコーポレートガバナンス・コードでも、中核人材の多様性が重要だということで、その中で転職者も増やしていきなさいということが言われています。ただ、日本の今までの給与体系や税制は、長く勤めることを前提につくられてきたので、人材の流動性に対してはハードルになっていると思います。ですから、この辺りは退職に係る税制などを総合的に見直していただいて、できるだけ人材の流動性が高まっていくことを支援するような、そういう仕組みにしていただければと思います。
それから3つ目は、イノベーションをさらに促進するための取組の検討をお願いできたらと思います。最近、新しい技術を利用したスタートアップ企業が増えていますが、そのいちばんの課題は売り上げを伸ばすことです。そこで、例えば大企業からの調達の一部をスタートアップに振り向けることを促すために、例えばスタートアップからの調達に関しては税制優遇をするとか、そういったこともお考えいただければと思います。
既に中小企業を対象とした支援策というのは相当やっておられると思いますが、スタートアップはまた違うカテゴリーなので、例えば設立されてから何年以内の企業とか、そういう形で区別することもできるのではないかと思います。政府の資金で産業投資、ファンドをつくったり、あるいは補助金を出したりというような政策も行われておりますけれども、そういうときにいつも問題になるのが、どうやって対象企業の評価をしてスクリーニングするかということなんです。
ですが、こうして民間企業の調達の中に組み込むことによって、実際のユーザーあるいはカスタマーである企業がスタートアップの製品・サービスを評価して、よいものを拾い上げていくということが自然にできます。社会全体としても市場メカニズムを通じて、コストをかけずによい製品・サービスを出している会社に資源を振り向けるということができるという観点から、意味があるのではないかと思います。
以上、よろしくお願いいたします。
○吉野座長
江川委員、どうもありがとうございました。
引き続きまして、翁委員、お願いいたします。
○翁委員
翁でございます。それでは、幾つか申し上げたいと思います。
国税庁がコロナ禍でも、皆様おっしゃっていますように、職員の皆様が大変よい仕事をなさっていることについて、大変すばらしいと思っております。こうした地道な仕事こそが、徴税とか財政の信頼に結びつくのだと思っております。
それから、納税のデジタル化についても徐々に進みつつあるということは一定の評価をしております。課題もいろいろあるのかなというふうには思っております。e-Taxについて、実は私自身、相続の関係で納税をしたんですけれども、とにかく相続人のハンコがたくさん要るんですが、そのハンコがなくなったということで随分楽になったという感じがいたしました。一方で、たった1つの書類がe-Taxに対応していないということで、最終的に紙で出すことになったと聞いていて、その意味では、どういうところにまだネックが残っているのかということを1つずつ地道に解決して改善していってほしいと思っております。
その一方で、先ほど秋山委員がおっしゃったかと思うんですが、行政の仕事自体を大きく見直すことによって、デジタル化の効果というのはすごく変わってくるのではないか、もっと効果が出てくるところがあるのではないかと思っていますので、そういう点もしっかり分析をしていっていただきたいと思います。
また、シンガポールでも、行政のデジタル化のKPIを利用者の利便性というところに非常に大きく置いております。そういう意味で、利用者にとって使いやすいということをしっかりと念頭に置いて、デジタル化を一層進めていっていただきたいと思っております。
最初、御説明いただいたように、SからAになったものというのは、いずれもコロナによって対面での対応が難しくなったものが多いように見受けられます。ただ、広報につきましては、いずれにしましても、内容を見ますと、租税の役割とか、税意識の重要性とか、こういった啓発活動ができなかったということですけれども、むしろオンラインでやることによるメリットというのもあるのではないかと思っています。むしろ気軽に視聴できるプログラムで、より多くの人に考え方を伝えていく、啓発活動をしていく、そういった方向にも、コロナ後ということを考えたら、元に戻るのではなく、そういった工夫もぜひこれを機に進めていっていただきたいと思います。
そのほかも、国際化の取組については、開発途上国への技術協力がAになっていたり、日本産の酒類の輸出促進もAにはなっておりますが、こういうものについて何をリアルでやって、何をオンラインでやっていくかということも考えて、ウィズコロナでの効果的なやり方ということを考えていただくといいかなと思っております。
税意識の重要性ということに関しましてですが、以前トヨタの豊田社長が、税金を納めることが社会貢献であり、企業の存続の一番の使命であるということを発言されておられました。今SDGsということで、企業の社会的な貢献ということが大きく注目されて取り組んでいるわけですけれども、多くの企業にとっても、納税がSDGsの1つなんだと、トヨタの社長がおっしゃっているような、そういうふうな意識を持っていただけるようにしていくということが本当は大事なのではないかと思っております。
その前提としては、しっかりと税金が無駄なく、将来のために、未来のために使われているんだということが腑に落ちるようになっていくということが、広報の面だけでなく、財政全体としても必要な取組になっているのではないかと思っておりますので、その点をぜひお願いしたいと思っております。
また、政権が代わって、財政の在り方について、コロナ後ということで、コロナ対策で必要な方に必要な支援をしていくということに加えて、グリーン、デジタルというトランスフォーメーションを進めていく上で、財政がどうしても必要になっていくということは分かるんですが、中長期的に見た財政の在り方ということについて非常に注目も集まってきていると思います。そういった点で、しっかりとこれから議論が深まるといいなというふうには思っております。
この点、1つ単年度処理の見直しということが議論に上がっているんですが、これがいいほうに行く必要があると考えております。例えば中期的視点に立ち、今までのように予算が余るから各省庁で消化しなければという意識で無駄に使われてしまうということが直っていくということであればよいと思うのですが、安易に単年度から多年度になっていくことがすごく先送りになってしまったり、そういう方向にならないといいと思っております。
また、10兆円のファンドをつくったりということが出てきております。これも長いタームで財政を考えるということの1つなんだろうとは思うんですけれども、本当に必要な予算であれば、しっかり税金を取って、それで充てればいいことなのではないかと思っております。10兆円のファンドというのは規模が大きく、市況の変動のリスクにさらされる部分が大きいわけです。国債を発行して財政融資の大半を株式運用に充てて、その収益を毎年何千億円という金額を文教予算に充てていくというやり方について、多角的に、もちろん政策目的の重要性は私はよく理解するんですけれども、御検討いただくといいのではないかと考えております。
以上でございます。
○吉野座長
翁委員、どうもありがとうございました。
それでは、田中委員、よろしくお願いいたします。
○田中委員
国税庁の現場の士気が維持されていることは、国民の1人として大変誇るべきことだと思います。これに関連して、近頃、矢野次官が発言されたことについて、私なりの見解を少し申し上げたいと思います。なぜならば、国税庁をはじめとして、行政の現場の士気は大丈夫だという前提での御発言だと思うからです。
私は、矢野発言の背景に2つの楽観主義、2つの悲観主義、そして、2つの経済兆候があると思っています。楽観主義の一番大きなものは、国民主権の実質についての信頼を矢野さんは失っていないということだと思います。現職の公務員が発言する。もちろん、現職の公務員は国民に対する奉仕者ですから、その立場で、歴代内閣が行ってきた、そして、議会における野党勢力の人たちが発言することについて物申すということは、一般的に言えば、担当大臣あるいは内閣から注意を受ける。あるいは君はもう要らないと言われるという可能性は、もちろんあるわけです。
しかし、その内閣は国民主権、すなわち国民の監視下にあるわけで、我々は議院内閣制を取っておりますから、選挙を通じて我々の代表者を選び、代表者が首班を選んで、そして、内閣をつくってもらう。こういう手続ですから、国民主権とはすなわち、我々はその時々の内閣について厳しい目でこれを監視し続けているということです。これがありさえすれば、すなわち、国民主権の実質が保持されているならば、国民に対する奉仕者としての現職の公務員の発言の範囲について、勝手に制限する必要はない。ここの全体のメカニズムについて、矢野さんは楽観主義をお持ちだと私は思います。
もう一つは、こうした発言があっても、財務省の現場あるいは国税庁の現場において、士気が下がることはない。ここも楽観主義があったと思っています。
2つの悲観主義ですが、まず第一には、現在の政治勢力、保守あるいは革新と一般的には呼び習わされているわけですが、この政治勢力についての悲観主義はやはりあったんだろうと思います。それはどういうことか。保守とは、世界的に見ても、社会秩序の根底的な揺らぎを起こすようなことについては一つ一つ潰していく。これが保守主義の保守主義たるゆえんであります。ところが、我が国において、そうしたものが見られない。果たしてこれでサステーナブルなのか、持続するのか。もしこれが崩れたときには、社会秩序の根底が揺らぐわけですから、我々は本当の意味での保守主義者をいわゆる保守政党に送り込んでいないのではないか。そういう意味で、我が国の保守主義あるいは保守勢力、現有保守勢力についての悲観主義があるのだろうと思います。
今回は、野党についても発言されていますので、本来ならば、明日を見定めるための現状改革を行うはずの革新という勢力が、果たしてそれに値する仕組みを取ってきたのかどうか、あるいはそういう思い、まなざしがあったのかどうか、ここについても私は矢野さんに悲観主義があったんだろうと思っています。
もう一つの悲観主義は、人ごとではありません。日本における言論と言ってもいいでしょう。言論人の力量についての悲観主義だと思っています。言論人がもう少しまともならば、こんな状態になっているわけはないのに、あまりにも非力だと。こういう人たちにいつまでも発言を代行してもらうわけにはいかないので、自分が前に出ようという思いがあったと思います。ここでは、私なども赤面せざるを得ない。昔は1年に2冊出すこともあったんですが、トランプ登場後の状況の中で4年ほど本を出版していません。本当にねじを巻いて取り組もうと思っていますが、いずれにしろ、私は言論人の力量に対する悲観主義があったんだろうと思料します。
矢野さんの背中を押したのは、多分2つの経済兆候が出たからだと思います。1つはクラウディングアウト、1つはトリプル安です。クラウディングアウトは、財政のお金が出過ぎると、民間投資が押し出される。メカニズムとしては金利の上昇だということだったんですけれども、御存じのように、金利はそういう推移をたどってはいません。日本の民間企業の国内投資について言えば、ヒューマンキャピタルに対する投資も含めて、完全にクラウドアウトされています。それは財政赤字の累積によって、我々の将来の姿、あるいは日本市場の見通しについて、決して楽観はできないと考えた経営陣が、少なくとも海外の会社を買うとか、海外において投資をするということは別にして、国内投資について極めて慎重な態度を取っている。結果としてクラウドアウトが起きた。はね飛ばされたのは民間投資。理由は財政規律の大幅な緩み。この現状に対する判断があったんだろうと思います。
もう一つは、トリプル安と言われる日本総売りの懸念です。日本銀行がQQEに入った理由は、異常円高の是正でした。しかし、今日は異常な円安になる可能性が出てきていますし、その過程において、ついに日本の債券も売りがちだということになります。株式についても同様のことが考えられます。既に起き始めていると考えてもいいでしょう。トリプル安という現状がこの財政規律の大幅な緩みの中において起きる懸念がある。クラウドアウトとトリプル安、この前兆が出てきたことが矢野さんの発言の背景にあったと私は思っています。
これだけだと、何だ、評論家だなという話で、評論家というと、私は長くやっていますので、評論自体を総体として決して軽んじるつもりはありません。矢野さんがそういう発言をされたので、一緒にやろうなんていうことは言いません。共に進んで別個に撃つ。これが本来の姿です。しかし、それにしても、矢野さんの発言は、現状の中において大変的確なものだったと思いますし、背景にある国民主権の実態についての信頼感、これが感じられて、私は大変うれしいと思っています。
以上です。
○吉野座長
田中委員、どうもありがとうございました。
引き続きまして、田辺委員、お願いいたします。
○田辺委員
何点かコメントを申し上げたいと思います。
まず第1点目は、今回の評価のある意味の一番の難しさというのは、コロナの影響をどういう形で処理するかということに尽きるのだろうと思います。国税庁のやり方は、数値目標自体は維持しつつ、それに対してプラスアルファの総合的な判断を加えて、その理由をできるだけ明らかにして、評価結果というものの正当性を得ようというやり方だったと思っております。
これに対して、ほかの独法、それからほかの省庁は別のやり方をおこなっているものもございます。1つは、数値目標自体を変更するというものであります。例えば緊急事態宣言が出ているときには活動ができなかった。例えば展示に来た人の数とかいうのが、開いている日数の分を変えて、その分だけ目標値を変えて達成できた、できないという判断をするというのは一つのやり方だと思っております。
2番目に、ほかのやり方として目にしたものは、結果だけではなく、その中で何をやったかという、ある意味二元軸にして評価するというものであります。つまり、結果のほうはできなくて影響があったわけですけれども、ただ、組織として手をこまねいて何もやっていなかったというわけではない。新しい様々な試み、を行ったという部分を評価軸の部分に加えて、それで結果と、それから、何をやったという部分を併せて評価するというやり方もあるのかなということです。
ただ、今回の国税庁さんのこのコロナの処理に関しては、これでよかったのではないのかなと私自身は思っているところでございます。
2番目は、それと関わるのですけれども、例えば出てくる中では、滞納処理であるとか、それから、税務の調査に入る件数というのは、ある意味非接触型でどうやるかというのが突きつけられた問題なのだろうと思います。オンラインの調査でどこまでできるのか、現場まで行く回数を減らしつつ、どこまでうまく滞納の処理ができるのかということは、この1年間2年間で非常に大きな経験の蓄積というのがなされたのではないのかというのが私の素直な感想であります。
例えば調査のやり方というものは、オンラインでもかなりのことができるというのは恐らくお分かりになったと思いますし、それから、調査の対象であるとか、調査の観点というようなもの、そのプライオリティを変えるということで、ある意味レパートリーを今回かなり増やせたのではないのかなと思っている次第です。そうなってまいりますと、恐らくこれは、コロナが収束した後もこういったノウハウの広がり、レパートリーの広がりというのを活かしつつ、今後の税務行政に活かしていくという方向にあるのではないか。単に、この2年間のやり方というのは、もうこれは臨時的な措置で終わりという形ではなく、さらにその上に積み重ねていくだけのものがあるのではないかと思っております。
何が言いたいかというと、これはきちっと残しておいたほうがいいのではないか。何をトライアルしたのか、何を頑張ったのかと。評価書を読むより、むしろ事前説明を受けたときに、こういうことをやったのですというのを聞いて、ああ、そうだったんだというのが、すとんと落ちるところがありましたので、できればそういう部分というのを文字に残しておいていただければいいのかなと思った点が2番目です。
3番目は、皆様お触れになりましたけれども、マイナンバーカードの利用に関してです。これは、e-Taxが、企業とかいうレベルになると話は違うのかもしれませんけれども、国民レベルに関しては、e-Taxの利用というのが一番基盤にあるのではないかと私自身は思っております。40%の人がマイナンバーカードを持って、それでどうするということを考えてゆくと、まずe-Taxからスタートして、ほかのものに広がっていくというのは、今後たどっていくところなのではないかと思っております。
例えば、マイナンバーの健康保険証としての利用というのはこの10月にスタートしているのですが、準備できている診療所、病院というのは、たしか5%とか、そのぐらいでスタートしていまして、ある意味、まだまだという部分がございます。ただ、これが使えるようになりますと、例えば税のところで健康の医療に幾らぐらいかかったというところを自動的に処理できる形で楽になりますので、そういうデジタルで処理できるものが増えることによって、その積み重ねの効果というのがある意味インセンティブになってくるのではないか。その点でもe-Taxは先行していますので、これに対するインセンティブをより強く働かせるという意味でも頑張っていただければと思っている次第でございます。
ラストは、4番目でありますけれども、最近、例えば窓口業務の信頼感とかランキング表というのは、私自身もあまり数字で見ておりません。昔、税務の窓口というのは実際に調査をすると、一番いいという満足度が高いものだったわけであります。これは、ありていに言うと、税務行政に対する国民の信頼というのはかなり高い。このコロナ禍におきましても、やはりこれが維持されてきたのだろうと思っております。
税務行政に対する信頼というのが、税を支払うということに対する国民のある種の信頼感につながっていく。この信頼が壊れますと、例えば財政再建で増税したいであるとか、さらには支出をどこか削りたいというときに、税の納めている者の信頼がないと、支出や増税するというような形の動きが非常に難しくなりますので、この信頼感というものを今後とも維持していただければと思っている次第でございます。
以上、4点ほど申し上げました。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは、今日から御参加の広瀬委員、お願いいたします。
○広瀬委員
意見、質問を3点ほど申し上げさせていただきたいと思います。
初めてなので、あまり具体的なことは、そこまで考えが及びませんので、今回の評価について感じたことを1つお話しさせていただきます。
今回は、一部の指標がコロナの影響を受けて、自ら評価を下げられたということについては、これはやむを得なかったということで、私は率直に受け止めたいと思っております。国税庁の使命はいろいろあると思いますが、この評価制度では、徴税そのものよりも、何となく国民をはじめステークホルダーに対するサービスという側面に焦点を当てているように思うわけです。
そうなると、コロナによっていろいろなサービスが制限されてしまったと受け止めております。その分、デジタルの活用が重要になってくるわけですけれども、これをきっかけに、そうした面でのサービスの充実が図られることが非常に重要だと期待しております。先ほど皆様からお話がありましたように、アフターコロナあるいはウィズコロナにおいても、ぜひこういう面での充実は必要になってくるのではないかと思っております。今回の評価が、5万5,000人か5万6,000人か、国税庁の方がいらっしゃると思いますが、全ての方が共有するというのは難しいと思います。少なくとも管理者の皆さんがこの結果を共有されて、次のステップに進んでいただくことが大事なのではないかと思っております。
2点目ですが、これは質問です。初めてでございますのでお聞きしたいのは、実は、最近企業でも、自ら評価をするということが非常に大事になってきておりまして、取締役会などでも、取締役が自ら取締役会の在り方を評価するということになって、自ら評価をするということがいろいろな世界で大事になってきているわけです。結果として、SとかAというのはもちろん大事なのですが、むしろ、そういうプロセスがこの評価制度では非常に大事なのではないか。
特に目標をつくっていく過程で、どういうふうなプロセス、どういうふうな人たちがそこに参加をしてこういうふうな目標になるのか。あるいは評価の段階でも、それはどういうふうなプロセス、あるいはどういうふうな組織、どういうふうな方たちが関わってそういう評価に至ったのか。その辺が非常に大事で、むしろこの評価制度というのはそこに大きなポイントがあるのではないか。
これは、何もたくさんの人が関わり合えということではなくて、むしろ評価のための評価というか、評価そのものにあまりコストと時間をかけて、評価が独り歩きするというのも非常に問題でありますので、その辺のバランスが非常に難しいと思いますが、財務省のこの評価制度というのはどういうふうなプロセスあるいは考え方でやられているのか。初めてなもので、1つお伺いしたいと思います。
3点目は、財政についてであります。確かに今は異常時ですから、コロナのためにいろいろな給付金とか支援というのは大事だと思いますが、昨年、コロナによって、恐らく70兆近い補正が組まれていると思います。これ自体、異常事態なわけです。当面はやむを得ないと思いますが、今の財政状況を考えると、これは、今までも危機だったわけですが、さらにそういった危機感というのが高まってきているのではないかと思います。
今の時点で、財政再建とかプライマリーバランスを言うのは非常に難しいとは思います。したがって、今、そういった財政再建とかプライマリーバランスの旗をさらに強く振れとは申し上げませんが、少なくとも財政再建の旗はこれからも掲げておくべきではないかと思いますし、場合によったら、これまで以上に高く掲げておく必要があるのではないか。
何となく財政については無力感というか、あるいは麻痺というか、あまりびっくりしなくなっているようなことになりつつあるのではないかということについて、私は非常に危機感を持っております。そういう面で、必要な発信はこれからもしていくべきだと思っておりますし、コロナがある程度落ち着いたら、今度はそれを返していかなくてはならないわけで、その辺については、財務省として、これからも必要な発信はやっていくべきではないかと思っております。
以上でございます。
○吉野座長
広瀬委員、ありがとうございました。
続きまして、山本委員、お願いいたします。
○山本委員
ありがとうございます。山本でございます。
時間もあまりないようですので、2点ばかり申し上げたいと思います。
1点は、国税庁として、コロナ対応として、納税者に対するサービスといいましょうか、施策として、私が思うには、一番頑張れたのは、納税猶予と申告期間の延長の措置だったと思っております。問題は、それに対してどれぐらいの国税庁さんのほうでマンパワーが要ったのかどうか。あるいは猶予措置を受けられた方、あるいは申告期限の延長でどれぐらいの納税者等がそれに対応できたのかということについて、ぜひ情報を追加していただけると非常にありがたいということがあります。
と申しますのは、逆に言えば、例えばイギリス等においては、そういった納税猶予なり措置をあまり審査をやらずに、ある程度税が入らないという見込みを向こうの財務省なり大蔵省も予測して、早期な措置を優先するような措置をしたわけです。しかし、日本は多分そうではなかったと思いますから、今後、猶予措置を受けられた方について、将来延納なり、あるいはそれを超えるような事態になるのかということをどれぐらい想定されるのかというのが分かれば、せっかくの機会ですからお教えいただくとありがたいというのが1点でございます。
それと、国税庁さんは、基本的には非常に頑張っておられて、私はすばらしいとかねがね思っておるんですが、しかし、評価ですから、1点だけ申し上げます。昨年も申し上げたんですが、残念ながら、現場の職員の方が業務上知り得た情報漏えいというのが現実には起こっておるわけです。これは納税者に対する信頼性を保持するという点で、今後、漏えい事件がないようにどういった対策をされるおつもりなのかどうかという点が1つです。
それと同時に、よく独立行政法人等で問題になるんですが、これはささいな例だと思うんですが、個人情報保護に対して不適切な扱いのものが依然として、これは結構あるということでございますものですから、一種の内部統制として、内部統制のプロでもあるわけですから、どういった対策を立てておられるのかということについて確認をしたいということでございます。
総じて評価としては、非常にすばらしいし、総合評定についても私は異議はございません。財政赤字については少し意見があるんですが、時間の関係上、省略させていただきます。
以上でございます。ありがとうございました。
○吉野座長
山本委員、ありがとうございました。
それでは最後に、私からも何点かコメントをさせていただきたいと思います。
まず1つは、評価書が非常に工夫されていて、見やすいところが随分多くなっていると感じました。
または、デジタル化のところで、ちょっと違う視点ですけれども、eコマースとか、様々なものがデジタル化されてきますから、そのデータをしっかり把握できれば、その収入あるいは取引がどれぐらいあったかということが相当厳密に分かってくると思います。そういう意味では、デジタル庁や国税庁により、情報収集の精度を上げて、税の捕捉が簡単になってくることを望みます。
換言すればデジタルなデータを活用することによって、実態的なお金の動きを把握すれば、格差の是正ということにもつながると考えます。
2番目は、マイナンバーカードですけれども、昔アメリカで勉強したときに、学生証の番号が自分のソーシャルセキュリティナンバーでした。そうすると、毎回試験のときに自分で番号を書いていましたので忘れられない番号となりました小学校、中学校、高等学校、大学と、学生の番号をマイナンバーカードの番号にすれば、いつでも使えるようになると思いまして、いろいろ省庁の垣根はあると思いますが、そういう形のやり方もあるのかなと思います。
e-Taxの利用度についてなんですけれども、別のところで、金融経済教育がどういうふうに日本で進んでいるかというのをやったときに、都道府県別のランキングを出したんです。そうしたら、47番目に来た都道府県などは、地元の新聞にこれは本当にショックであると書かれて、一生懸命金融経済教育をやろうとされました。
私は、都道府県別のランキングなどを出すというのは、別に差別をするのではなくて、エンカレッジするという意味では非常にいいのではないかと思います。e-Taxの利用率などに関しても、都道府県別に出していただくと、低いほうの県の方々は、どうしたらもっとみんなが使ってくれるんだろうと利用率を上昇させる方向になると思います。
それから、デジタル化の際に、ある省庁で、デジタル化と称して、今まで冊子であったものをただPDF化してデジタル化と言っています。これは、全然デジタルになっていないんです。ところが、こういう言い方のデジタル化というのが多いわけです。恐らくデジタルな社会での必要なデータと、既存の紙でやったときに必要なデータ項目と、違うと思うんです。だから、それを紙の状況での情報をデジタルでも取ろうという形になりますので、デジタル化の場合に必要な発想を変えないといけない部分が、アナログからデジタルにあるのではないかと思います。
最後は、先ほどの江川先生等の御意見もありますけれども、新しい税というのも考えてこないと、税収が増えないと思います。その意味では、環境分野での環境対策施策の税というのはものすごく大きな新しい税になると思います。もちろん、デジタル課税もそうです。これだけ各国とも財政赤字が増えてきているわけで、今回COP26のグラスゴーなどでは、環境の問題がクローズアップされています。それを解決するための一つの施策としての環境税というのをもっと発信していただいて、全世界的に同じ税率で、二酸化炭素とかプラスチックにかける。
こういう形になりますと、全ての企業が同じ割合で税を負担することになりますから、税引後のリターンとリスクというのがきちんと出てくるわけであります。そういう意味では、日本にリードしていただいて、こういう様々な環境の会議のときに、環境税の在り方、しかも、それを全世界で同じ税率で課していく。こういう形で、各国ともこれから税収が必要なわけですから、そう進めていただきたいと思います。
最後、構造問題によって起こされている財政赤字と、コロナのような一時的な大ショックによって引き起こされている財政赤字というのはきちんと区別しておかなくてはいけなくて、日本はコロナ後でも、高齢化という大きな構造問題というのは解決できないわけであります。この部分の財政赤字を低くするには、慶応大学の清家塾長がおっしゃっていた生涯現役でなるべく働き続けて、給与は生産性に応じた給与にして、それで社会に貢献し、社会保障、年金に頼らない。そういう社会にしない限り、構造問題として蓄積される財政赤字はたまっていくと思います。そういう意味では、構造的部分、シクリカルな部分、こういうものをきちんと見ながら、そして、新しい税も考えた議論を進めていただけるようになればいいと思います。
これで私の意見を終わらせていただきまして、全員の皆様から御意見をいただきました。
それでは、財務省と国税庁のほうから、御回答あるいは御発言をいただきたいと思います。
最初に、水口政策立案総括審議官からお願いいたします。
○水口政策立案総括審議官
水口でございます。委員の皆様、大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
私のほうから、政策評価の観点から幾つか発言させていただきたいと思います。
広瀬委員から御質問がございました。財務省の政策評価と申しますのは、財務省が所掌する主要な業務を網羅的・全体的に把握して、財務省の使命や政策目標は何なのかということを国民にしっかりと明らかにし、そこで定量的・定性的目標等を設置しつつ、その実績を毎年度評価・公表するというプロセスでございます。そのプロセスにおいては、財務省、今回は国税庁の実績評価でございますが、全部局において、次官、長官、各部局長も含めて、所掌する主要な政策について何ができて、何ができなかったかということを懇談会の委員の皆様のご意見も伺いながら、しっかりと組織全体で議論するというプロセスでございますので、そういう意味で、政策のPDCAを回す非常によい機会になっているものと考えます。
また、財政に関するお話を何人かの委員の先生からいただきました。政策評価の視点から2点ほど申し上げますと、まず一点目として、骨太の方針2021で、2025年度のPBの黒字化等を目指す財政健全化目標を堅持するということと、本年度内に感染症の経済財政への影響を検証し、目標年度の再確認を行うこととされております。令和2事務年度の財政の総合目標はC評価でございましたが、その要因の分析と見直しに向けて、次の年度の財務省の政策評価の実施計画等の策定、恐らく来年3月頃かと思われますが、遅くともその実施計画に適切に反映していくということになると思います。
もう一点、翁委員から、10兆円ファンドの話をいただきました。財投分科会でも財政融資資金の償還確実性等、いろいろと御議論をいただいているものと承知しております。財務省の政策評価におきましても、例えば令和3年度の政策目標において、財政投融資の資金の供給にあたっては、償還確実性等を精査し、必要な資金需要に的確に対応していくとなっておりますので、政策評価の今後のプロセスにおいても、本件も含めて確認しつつ、全体としてしっかり政策のPDCAを回せるように取り組んでいきたいと思います。
以上でございます。
○吉野座長
引き続きまして、大鹿国税庁長官、それから、最後に矢野事務次官からお願いしたいと思います。
○大鹿国税庁長官
国税庁長官の大鹿でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、委員の皆様方から大変貴重な御意見、そして大変温かいコメントを賜りまして誠にありがとうございます。多岐にわたる質問でしたので、全てにおいて的確に答えられるか分かりませんが、お答えしていきたいと思います。まず、個別の質問の前に総括的なコメントを私の方から申し上げたいと思います。
多くの委員が御指摘になられましたとおり、今回の令和2事務年度の国税庁の実績評価につきましては、まさに新型コロナウイルス感染症が通年で国税行政に影響を与えたという中で、当初の指標では測定が困難となった取組をいかに評価すべきか、また、一部のアンケート調査の結果をより上位概念の目標達成の評価にどこまで反映すべきか、こういった点が大きなポイントでした。国税庁内でもしっかりと議論いたしました。これまでの懇談会でいただいた委員の皆様のアドバイスを踏まえながら、決して甘くなることなく、他方で実態に即したものでなければならないということで、知恵を凝らして評価をさせていただいたところでございます。本日、多くの委員の皆様から、もっともな評価内容である、あるいは形式的でなく総合的に判断したことに納得感があるといった御意見をいただきまして、大変心強く感じた次第でございます。
2点目は行政のデジタル化でございますが、御案内のとおり、国税庁は本年6月に「税務行政のデジタルトランスフォーメーション~税務行政の将来像2.0~」を公表いたしました。DXを国税行政における当面の最重要課題に位置付けているところです。この税務行政の将来像2.0でお示ししているのは、いわば将来のイメージ、ビジョンでありますが、本事務年度におきましては、このビジョンをプランに変えるということを目標に掲げておりまして、いつまでに何ができるのか、そしてあまり長いスパンではなく、より短期的な2~3年程度のスパンで何をしていくのかということを、工程表としてしっかりと描いて公表して取組を進めていきたいと考えています。
こうした観点から、先般の6月の懇談会において、令和3事務年度の国税庁実施計画からは、実施計画の中の実績目標(小)の1つに「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」を追加しました。この実績目標の下に「納税者利便の向上」と「業務の効率化・高度化」を2本柱として掲げておりますので、これを業績目標として個々の施策に取り組み、適切に評価していくことを考えております。
以下、個々の御質問・御指摘に対してお答えいたします。
まず角委員から、税務大学校のホームページへのアクセス件数が、ある年度から急激に減っているということを御指摘いただきまして、これは調べますと確かにそのとおりでありまして、平成30年度から、それまで1,900万件のアクセスがあったものが、740万件程度に大幅に減少して、その後回復はしておりますが、令和2年度では1,000万件台ということになっています。これは平成30年4月に国税庁のホームページをリニューアルする際に、トップページに税務大学校のリンクを表示しなくなったことが大きく影響していると考えています。今申し上げましたとおり近年では件数は徐々に回復していますけれども、この状況も踏まえながらホームページの構成の改善や、当然のことながらコンテンツの充実にも努めていきたいと考えています。
それから、租税教育に関しては大学における租税教育の重要性の御指摘がございまして、全くそのとおりでございます。租税教育について、私どもは学校教育を中心に、社会全体で継続的、段階的に取り組んでいくべきものだと認識していまして、各地域において国税当局だけでなく、地方税当局、教育関係者、あるいは税理士会等の関係民間団体等と連携して、講師の派遣でありますとか、税に関する作文の募集、あるいは教材の作成などを行っていただいています。それから大学への講師派遣でありますが、確かに小学校・中学校・高校と比べますと、回数、あるいは人数、受講者数は少なくなっています。令和2年度はどのクラスにおいてもコロナの影響で半減近い状況になっていますが、例えば、令和元年度を見ると1,200回を超える派遣をしておりまして、また受講者数も88,000人となっており、私どもとしては大学における租税教育の充実も大変重要な課題として取り組んでいます。特に講師派遣だけでなく、実際に国税職員の大学教授への人材供給といったことも行っていますし、また、御指摘のありました教育の内容、こういった点についても、より学生の関心や理解が高まるような内容を検討してきたいと思っています。
それからデジタル化に関連してマイナンバーカードの普及の話が多くの委員からございました。マイナンバーカードの普及は政府全体で取り組んでおりますので、具体的な普及策については国税庁の立場では申し上げる立場にありませんけれども、当然のことながら税務行政においてもマイナンバーカードを利用すれば、まずe-Taxの利用が促進されますし、それから率直に申し上げて、所得把握の正確性あるいは税務調査の効率化が向上するものだと考えておりますので、国税庁としても積極的にマイナンバーカードの普及に努めているところでございます。例えば、市町村からの要請を前提にしますけれども、税務署が開設する確定申告会場にマイナンバーカードの申請コーナーを設置しまして、来場者に対して取得の申請を積極的に勧奨しているほか、法人会や青色申告会等の関係民間団体に対して、各団体の会員企業の役員の方や従業員の方への取得勧奨を依頼するといった取組を、地道ではありますけれども進めております。
それから多くの委員から御指摘がありましたが、一昨事務年度から続いているコロナ禍での税務行政の対応、これが通常モードに戻ったとき、あるいはポストコロナといわれる時代になっても続けていくべきものがあるのではないかとの御指摘がございました。私どもも全く同じ認識でございまして、例えば、コロナ禍によって対人接触型の調査あるいは徴収、私どもは外部事務と呼んでいますが、こういった事務は抑制せざるを得なかったということで、件数は大幅に減少しておりますけれども、1件当たりの申告漏れの所得金額の把握あるいは1件当たりの追徴税額は大幅に増加しておりまして、件数の減少を補って余りあるとまではいきませんけれども、半分程度は補っているというような状況でございます。
そこには様々な創意工夫がございまして、例えば、安全性を前提にですけれども、納税者サイドのWeb会議システムを利用させていただくとか、納税者の了解を得た上で資料あるいはデータを持ち帰らせていただいてより深度ある検討を行うとか、そういったことを行った結果、私どもとしてはかなりのノウハウの蓄積ができつつあると思っております。また、こういった調査や徴収だけでなく、実際の業務の仕事としての働き方についても、今回のコロナ禍によってそれまであった働き方改革の動きを加速せざるを得ない状況になりました。また、多様性を尊重して、そして国税職員においても今や3割程度が女性職員となって、子育て中の方もいらっしゃいますので、テレワーク環境の整備といったところも強力に進めているところでございます。これはコロナ禍が終わっても引き続き推進していく、働き方改革に即した対策は行っていくというふうに考えております。
それから、酒類業についての御指摘が江川委員からございました。コロナ禍において酒類業者の方は非常に大きな影響、甚大な影響を被っているわけですが、家飲み需要とよく言われますけれども、家飲み需要を上回る飲食店での消費の減少がございまして、経営的には大変厳しい状況が続いていると認識しております。ただし、そういった中にあっても御指摘がありましたとおり、海外での日本酒の人気がうなぎのぼりといっていい状況でございまして、ここ近年、10年程度輸出金額はずっと伸び続けてきておりますが、今年に入っても1月から8月までの累計で既に昨年2020年の輸出金額の総額を上回っているという状況でございまして、農水省からも非常に期待が持てる農水産品だと評価をいただいております。私どもとしては農水省あるいはクールジャパン、それからJFOODOといった関係機関と緊密な連携をとって、そして財政当局の理解もいただいて、業界振興型の補助金も多額にいただいて酒類振興あるいは国内の酒類業の構造転換といった点を後押ししているという状況でございます。
それからe-Taxについて、翁委員から御自分の経験も踏まえた話がありました。相続税については税理士関与が多いので、私どもとしてはこのe-Taxの利用率がもっと上がる余地があるというふうに見ておりますが、確かに御指摘のとおり、添付書類が多いですとか、あるいは電子的に送付できる容量との関係とか、それから相続人が多い場合は相続人の把握といったいくつかのネックがあります。そういった関係から利用率が低迷しているという状況ですけれども、ここは一つ一つ解決をして、そして電子的な申告を更に進めていきたいと考えています。伸びしろがあるところだと思っています。
それから広瀬委員から、政策評価は評価することのみならず、評価のプロセスあるいは活用のプロセスが大事だとの御指摘がございました。国税庁の場合で申し上げますけれども、この実績評価書については、国税庁の幹部だけではなくて、各国税局・各税務署の幹部に対しても、会議等の場において、評価結果を十分に説明した上で、翌期の事務計画に反映させる、そういう形でPDCAサイクルを意識して事務運営に取り組むように機会あるごとに指示しているところです。したがってこの評価書については公表後速やかに各国税局あるいは各税務署に送付して、そして全職員を対象とする研修資料を作成してこの資料に基づいた研修を実施していますので、そういった形でPDCAサイクルを5万6千人職員全体が共有できる形をとっていきたいと考えております。
それからe-Taxの都道府県別、吉野委員から御指摘をいただきました。御指摘のとおり都道府県別でいろんな資料を公表することによって、ピアプレッシャーというんでしょうか、そういった効果が働くのではないかといった御指摘だと思いますけれども、都道府県別ではありませんが、今般、地域別の利用率の公表を国税庁内で検討しまして、主たる税目である所得税、法人税、相続税、この3税目については国税局別のe-Tax利用率の公表を行うこととしました。47都道府県ではありませんけれども、12局別でe-Taxの利用率の公表を、先般10月18日、つい先日公表したわけですけども、確かに御指摘のとおり、やはり地域的な特殊性といいますか特徴は見てとれるということでありまして、3税目を通じて例えば熊本国税局管内、これは九州の南4県が管轄区域になりますけれども、ここはe-Taxの利用率が全国平均よりもゆうに高い、相続税に至っては21%ということでかなり高い利用率を示しておりますので、こういったことを示して、少なくとも各国税局の施策の展開にはいい影響といいますか、後押しができるのではないかと考えています。これを踏まえて、さらに都道府県別で集計・公表するかどうかということについては、マンパワーの問題もありますので、納税者の方あるいは税理士等の方々の反応、そういったことも踏まえて検討していきたいと考えております。
答弁漏れがあるかもしれませんが、以上でございます。
○吉野座長
ありがとうございます。
それでは、住澤主税局長、お願いいたします。
○住澤主税局長
ありがとうございます。
時間も限られておりますので、手短に、税制について個別に御指摘いただいた点についてお答えしたいと思います。
まず、秋山委員から、ばらまきにならないように何らかの分配施策を行っていく上で、マイナンバーカード、マイナンバーの活用ということで御指摘がございました。確かに重要な視点だと思います。効率的なセーフティネットを構築していく上で、所得の把握でありますとか、あるいは資産の把握という面で、こういったものをどういったふうに活用していくのかは今後の検討課題だと考えております。
それから、江川委員から、ESG連動型の役員報酬の損金算入の問題について御指摘がございました。単なる利益処分と区別する上で、この業績連動型の役員報酬の損金算入については、その基準が事前にきちんと確定をしていて、客観性や透明性が担保されているということがポイントになりますが、また関係省庁から要望がございましたら、税制改正のプロセスで検討していきたいと考えております。
それから、退職金税制の問題、人材の流動性が高まっていく、あるいは高めていかなければならない中で見直しが必要との御指摘でございますが、まさに御指摘のとおりだと考えております。今後さらに議論を進めてまいりたいと考えております。
それから、イノベーションを促進していく観点から、スタートアップからの調達も税制優遇の対象にという御指摘だったと思います。前半部分が聞き取れませんでしたので、御趣旨と違っていたら恐縮でございますが、この点については、必ずしもスタートアップからの調達ということに着目した制度ではございませんが、2年前に、企業からスタートアップ企業に対する出資を行った際に、所得控除の対象とするという意味でのオープンイノベーション税制というのが創設をされておりまして、税制としては極めて異例のものでございます。
こういったイノベーションを進めていくというのは、企業家本来の仕事ではないかという面もございますが、いずれにしても、このオープンイノベーション税制のこれまでの効果がどういうことだったかという政策評価も行いながら、今年度末に期限が到来しますので、今後議論していきたいと考えております。
それから、環境関連の税制について、吉野座長から御指摘がございました。御指摘のあったような国際的な調和の取れた取組ということも含めて、経産省、環境省が現在検討を進めており、今後、議論を行ってまいりたいと考えております。
以上です。
○大鹿国税庁長官
DXにつきまして少し補足をさせていただきたいと思います。
先ほど令和3事務年度からの実績目標の中にDXを入れて取り組んでいくということを申し上げましたが、何人かの委員が御指摘になられたとおりでありまして、私ども、税というのはやはり国民生活に極めて密接に関わっておりますので、税務行政上のデジタル・トランスフォーメーションというのが、いわば、国民から見て非常に分かりやすい行政サービスだろうというふうに認識しております。したがって、私どもの意気込みとしては、行政部門のフロントランナーとなるべく取り組んでいきたいというふうに思っております。
特に納税者との関係では、納税者の利便性の向上ということで、これは今までも取り組んでいますけれども、引き続き、税務署に行かなくても申告から納税までが済むような、そういったシステムの構築を図っていくということをスローガンに掲げておりまして、これは毎年のように色々な施策が今後出ていく予定になっております。
一方で、私どもの税務調査あるいは徴収、そういった部内の税務行政の仕事の仕方もデジタル化していく必要があるということであります。ただ、こちらの方は一朝一夕に転換できるというものでは、現実問題としてはありませんので、いくつか乗り越えて行くべき課題があろうと思っています。その課題について少し御紹介させていただきます。
一つは、我々が使っている現行の業務システム、国税総合管理システム、KSKというシステムを使っていますけれども、これは、いわば書面による処理を前提としたシステムになっておりまして、これを刷新する必要があるということであります。いわば旧世代型のシステムでありますので、このシステムを刷新して、税目横断的な、あるいはオープンシステムと呼んでいますけれども、色々な入手した情報をそこに取り込んでいってそれを更に分析可能にしていく、そういったシステムを構築したいと思っています。これが令和8年度の運用開始、少し先になりますけれども、ここを目指して、今現在開発作業を進めているところです。
それからもう一点は、このデジタル・トランスフォーメーションを進めていく上での課題の一つは、デジタル人材の確保・育成であろうということです。税務行政は従来、我々の言葉でいうと内部事務、申告書の入力や相談といった内部事務と、調査・徴収といった外部事務に分かれていますが、これだけではなくて、データを活用していく、そういうシステムを開発して、あるいはそのシステムを上手く活用して調査先の選定等を効率的に行えるような、そういった人材を育成していく必要があろうと思っています。そのためには事務フローも理解していて、そして調査・徴収の実地の事務の経験もあって、そして統計学であるとかあるいはデータ解析そういった分野の知識もある、そういった人材を今後育成してく必要があるということであります。これについては、採用の段階から少し工夫が必要であろうというふうに考えております。
もう一点は、やはり地方公共団体と足並みを揃えて進めてまいりませんと、国税だけがデジタル化ができても、結局、納税者の方にとっては、利便性は向上しないということになりますので、地方税当局と連携して、足並みを揃えて進めていくということが大事だと思っています。したがって国税庁では地方税当局、あるいは社会保険当局、それからシステムベンダーも含めて定期的な意見交換を行って、仕様の共通化、そういった課題について取り組んでいるところです。これは納付の面でも同じことが言えまして、地方税当局との連携は税の納付の面でも重要ですし、それから金融機関とも定期的に意見交換を行って、キャッシュレス納付の実現に向けて、それぞれの当局が金融機関を含めてですけれども、連携して歩調を合わせていくという取組を、今現在行っているところであります。こういったことで、一気に、このコロナ禍を機会に、税務行政のDXを図っていきたいというふうに考えているところであります。
○吉野座長
ありがとうございました。
最後に、矢野事務次官、お願いいたします。
○矢野事務次官
本日は、お忙しい中御出席をいただきまして、多くの貴重な御意見をいただきまして誠にありがとうございました。
今回から広瀬委員に御参加をいただきました。今後ともどうぞよろしくお願いをいたします。
新型コロナウイルス感染症の影響、また、デジタル化、グローバル化の影響もありまして、経済社会の構造変化が加速し、税務行政を取り巻く環境も急速に変化をしております。それに応じて税務行政の課題も変化しており、こうした政策課題に対して、国税組織を挙げて様々な取組を行い、その時々の課題に適切に対応していく必要があると存じております。
本日の説明にもありましたけれども、国税庁におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、従来どおり実施できなかった施策につきましても、代替事務の実施により、可能な限り上位目標に沿って取り組んだところではあります。今後とも現状の評価に甘んじることなく、これらの変化に的確に対応しまして、これまで取り組んできた組織や業務の改革を着実に進めますとともに、新たに生ずる課題にも適切に対応してまいりたいと考えております。
1点だけ、田中委員から御指摘をいただきましたので、1つだけ申し上げます。財務省といたしまして、政府の説明責任を果たすことの必要性を強く反省し、自戒をしておりますということと、それから、財務省の使命として、国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐというのを掲げております。これは内部部局だけではなくて、外局である国税庁も含めてですけれども、その使命をしっかり果たすべく、今後とも謙虚にひたむきに取り組んでまいりたいと存じます。舌足らずですが、申し添えさせていただきます。
政策評価につきましては、国民の皆様の視点に立って説明責任を果たすことができますように、本日委員の皆様からいただきました様々な御意見を踏まえまして、各種の政策や施策についての必要な見直し、改善をしっかりと行っていきたいと考えておりますので、引き続き御指導のほどよろしくお願いをいたします。
本日は、どうもありがとうございました。
○吉野座長
今日は、貴重な御意見をどうもありがとうございました。財務省が歳入と歳出、日本の全体を見ているわけですから、後世代にとっても、いい財政であるということは、やはり国にとって最も重要なことであると思います。財務省の方々はいろいろな発言、いろいろなことで矢面に立たされますけれども、行政として見られる省庁は財務省しかありませんので、ぜひ皆さんに頑張っていただいて、後世代にも引き続きサステーナブルな国というものがずっと持続できるようにお願いしたいと思います。
今日は非常に積極的に皆様から御意見をありがとうございました。ちょっと時間をオーバーしてしまいましたけれども、次回の懇談会は来年の3月頃を予定しておりまして、議事内容といたしましては、財務省の令和4年度の政策評価実施計画、これを主に議論させていただく予定でございます。また、具体的な日程、それから議題につきましては、改めて事務局から御連絡させていただきたいと思います。
また、本日の懇談会の議事内容につきましては、各委員に御確認をいただいた後に、財務省のウェブページで公表させていただきたいと思っております。
財務省、国税庁におかれましては、本日の委員の先生方からいただきました御意見を踏まえ、しっかりとPDCAサイクルを回していただきたいと思っております。
今日は、活発な御議論をありがとうございました。これで第72回の政策評価懇談会を閉会させていただきます。
──了──