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令和4年2月17日

日本は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、民主主義国家は近隣国への影響力行使を狙う中国などの国々を勢いづかせることのないよう、強硬路線を敷くべきだとの見解を示した。林外相は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、「仮にウクライナ国境で何らかの事態が発生する場合、その結果はアジアにおける他の誰かの計算に影響を与えるかもしれない」と述べた。「この問題については揺るぎない姿勢が必要だ」と語った。

日本は長年、東シナ海で日本が支配し中国が領有権を主張する島々及び中国が領有権を主張する台湾を念頭に、中国が軍事力を用いてアジアの現状を変更する動きをけん制してきた。林大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性と比較し、それが現実になれば「力による現状変更になる」と述べた。

中国が香港の民主化運動を鎮圧し、近年台湾付近を飛行する中国軍機が増加していることから、日本の中国に対する懸念は深まっている。台湾を巡る紛争は、台湾沿岸からわずか70マイルしか離れていない島を有する日本にほぼ確実に影響を与えるだろう。米国が台湾防衛を支援することを選択した場合、主要な在日米軍基地も巻き込まれることになる。ウクライナと同様、米国は台湾防衛のための条約を締結していない。

中国外交部は、ウクライナと台湾の類似の可能性について直接コメントすることを控えた。中国は、ウクライナ問題は対話によって解決されるべきだとしている。中国は、日本はアジアにおける軍国主義の源であると非難してきた。台湾総統府は12日、台湾の状況はウクライナ危機とは「根本的に異なる」と述べたが、台湾はいかなる脅威に対しても警戒しており、台湾軍はウクライナの動向を注視していると述べた。

早稲田大学の中林美恵子教授(政治学)は、ウクライナ侵攻の可能性に対する米主導の同盟諸国の対応は、アジアに影響を及ぼすと述べた。「もし米国が強固で非常に強い行動を取らない場合は、中国が台湾や他の場所対して何かしら行動できると見なすだろう」、「中国は、米国をこれ以上恐れる必要はなくなる。そして、それは北朝鮮についても同様だ」。

林大臣の発言は、日本が2014年のロシアによるクリミア併合後に比べ、欧米諸国とより緊密に連携する意思があることを、これまでで最も明確に示すものである。日本は同年、一部のロシア人やロシア系組織を制裁したが、ロシアとの関係を維持するため、米国や他の国々よりも控えめな措置であった。

日本はロシアから石油と天然ガスを輸入しており、1945年にソ連が奪取した係争中の島々を巡って対話を続けたいと考えている。2012年から2020年まで在任した安倍元総理は、それらの島々を取り戻し、また、ロシアのプーチン大統領と中国の密接な連携を阻止することを期待して、プーチン大統領と20回以上会談した。

これらの努力は実を結ばず、日本政府は、ロシアと中国の軍艦が昨年、合同で日本を周回したように、ロシアと中国の軍事協力関係が一層強まる兆しを懸念している。林大臣は、「日本に非常に近い場所で両国が演習を行うことに対し、我々は重大な懸念を有している」と述べた。

林大臣は、ロシアとの関係でバランスを保つのが難しく、対話継続を望むが、ウクライナへの侵攻に強く対処しなければ影響は広範囲に及ぶ可能性があると指摘した。「かかる事態が発生する場合、中国だけでなく、どの国にも影響を与え得る」として、中東や南米が不安定化しかねないと述べた。

林大臣は、外交努力を通じてウクライナ危機が解決できるとの考えに変わりはないとした上で、民主主義の世界では交渉の意志を示すジェスチャーとして右手で握手を求めつつ、もう一方の手には剣を用意していることを明確に示すべきだと語った。

林大臣は、日本は欧米の対ロシア制裁に加わる可能性があるが、独自の措置を講じることもあり得ると述べたが、具体策について言及しなかった。岸田総理は15日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、その後、制裁について他のG7諸国と調整すると述べた。

バイデン政権の関係者によると、制裁の対象となり得るのはVTB銀行などロシア最大の政府系銀行数行で、ロシア国債の新規発行の取引禁止や、高度なマイクロエレクトロニクスなど主要分野の輸出規制が含まれる可能性があるという。

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