経産省・新着情報
2022年2月3日
本ガイドラインの活用により、電力システムに加え、熱/ガスのシステムに拡張されたエネルギーシステム全体におけるシステムコンポーネント間でやりとりされる情報の流れが可視化され、エネルギー事業者等によるシステム設計の意志決定や関連する標準開発の支援等が可能となります。本規格の普及により、我が国の技術が活かせるスマートエネルギー市場の普及促進が期待出来ます。
1.提案の目的・背景
2050年カーボンニュートラル実現に向け、情報通信技術を活用して効率的に需給バランスをとり電力の安定供給を実現する「スマートグリッド(電力送配電網)システム」においては、エネルギーを効率的に活用するための熱/ガスシステム間との連携がますます必要になっています。
一般的に大規模なシステムを構築するためには、関係者間での共通認識、共通言語が必要となりますが、スマートグリッドシステムにおいては、広くシステムを表示する際に使われているスマートエネルギーグリッドアーキテクチャモデル(以下、「SGAM」)の概念がその一つです。
一方で、SGAMについては、既に電力システムでは使用されているものの、熱/ガスシステムまでは拡張されておらず、昨今のコージェネレーション(熱電併給)システムに代表される熱/ガスを用いたエネルギーシステム全体への展開の必要性に鑑み、拡張されたSGAMの指針が望まれていました。
このような中、今回、IEC/SyC/Smart Energyシステム委員会※1において、日本提案により、IEC SRD 63200 Definition of extended SGAM smart energy grid reference architecture model が承認・発行されました。
2.国際規格の内容
SGAMは、エネルギーシステム内にある様々なコンポーネント間の情報交換等をモデル化する際に使用できる3次元のアーキテクチャフレームワークです(図1)。
- ドメイン軸:エネルギーグリッドの5つの異なる領域[発電、送電、配電、分散型エネルギーリソース、および需要家]
- ゾーン軸:電力システム管理の6つの階層レベル[市場、企業、運用、ステーション、フィールド、およびプロセス]
- レイヤー軸:情報交換の5つの側面[ビジネス、ファンクション、インフォメーション、コミュニケーション、コンポーネント]
図1 SGAMフレームワーク(3次元キューブ) [IEC63200より引用※]
本規格は、この従来のSGAMに、電力システムに加え熱/ガスを用いたエネルギーシステムに拡張することを目的として、フレームワーク要素、関連するオントロジー※2、およびモデリング手法を定義するものです。
各コンポーネントの配置により、熱/ガスシステムまで拡張することで、熱システムと電気システム間、ガスシステムと電気システム間の相互作用を考慮したエネルギーシステム全体把握が可能となります。
本規格をコンポーネントレイヤに活用した例を図2に示します。
- 図2 コンポーネントレイヤにおける熱/ガス/電気の相互作用例 [IEC63200より引用※]
3.期待される効果
本ガイドラインにより、エネルギーシステムの全体把握が出来、様々な場面での活用や効果が見込まれます。
具体的には、異なるビジネスステークホルダー間の意志決定、責任所在の明確化、異なるシステム間の相互作用を加味したシステム設計、異なるビジネスステークホルダー間の情報交換のモデル化、複数のシステム情報交換が複雑化したユースケースのマッピング等が考えられます。
本規格を活用することにより、アーキテクチャ上で熱/ガスまで拡張されたエネルギーシステムの全体把握が可能となり、日本の高い技術を生かす市場が広がり、様々な日本企業の積極的な海外展開が促進されると期待されます。
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