外務省・新着情報

令和4年3月18日

 3月16日、外務省と北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの共催により、日本・中央アジア・コーカサス諸国外交関係樹立30周年記念事業「中央アジア・コーカサスにおける環境問題と日本の役割」(「中央アジア+日本」対話・第7回専門家会合)が開催され、政府、学術関係者、企業関係者等125名が参加する中で、中央アジア及びコーカサス各国と日本の専門家の間で意見交換が行われました。

 冒頭、德田修一中央アジア・コーカサス担当外務省特別代表による冒頭挨拶及び本会合の意義と「中央アジア+日本」対話の取組に関する説明について、武田善憲外務省中央アジア・コーカサス室長が代読し、続く川端良子東京農工大学農学研究院准教授による基調講演では、アラル海問題と人々の生活に関する川端准教授の研究成果と国際協力についての発表があり、アラル海の縮小に伴い、塩分濃度が上昇していく中で特に貝類の死滅がカルシウム濃度の上昇につながっているメカニズムや、環境保護と塩害による耕作地の減少や砂塵の被害を受ける住民の生活を両立させるために試みられている、薬草や茶の栽培、養蚕、干し柿作りといった取組が紹介されました。

 パネルディスカッション・セッション1「中央アジア及びコーカサス地域の水・土壌と社会」では、日本から、峠嘉哉東北大学助教が、アラル海問題についての陸水循環モデルに基づくシミュレーションと実際の観測成果を活かし、土地の塩分濃度にあわせ栽培品種を変えていくことで土地への塩分濃縮を防ぎ持続可能な農業を行う取組を紹介するとともに、田中賢治京都大学准教授から地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)を通じたアラル海周辺地域の実時間情報と塩生植物の積極的利用による持続可能な農業に向けた取組別ウィンドウで開くにつき紹介がありました。また、シャフカット・ウスマーノフ・ウズベキスタン水資源灌漑・水問題研究所研究室長、マラト・ナルバイェフ・アラル海救援国際基金カザフスタン事務局次長、ロザ・ベルケリエバ国家水利委員会付属トルクメン水利科学プロジェクト研究所主任専門家から、灌漑や水資源利用をめぐる各国の置かれた状況の概要、人口増加や気候変動に伴う水資源の逼迫といった問題や農業排水をめぐる技術的課題、そして、アラル海流域の地域協力の重要性の指摘や日本を含む国際社会との協力への期待が示されました。

 パネルディスカッション・セッション2「気候変動と山岳環境の持続可能な将来」では、奈良間千之新潟大学教授から、氷河湖決壊に関する研究成果の発表があり、中央アジアでは南アジアに比べ、氷河湖の規模自体は小さいが、居住地近くで多くの氷河湖が短期間に形成・決壊され、被害が多く発生しており、ソフト面での対策が適している一方、現地住民からは堤防の建設等ハード面での対策を望む声が強く、意思疎通が重要である旨指摘がありました。次いで、シュシャニク・アスマリャン・アルメニア科学アカデミー生態・人類圏学センター学術担当副所長から、リモートセンシングを用いた植生状況の把握と国際協力、エセントゥル・ヌルベコヴィチ・ジャマロフ・キルギス天然資源・生態系・技術監督省気候変動ファイナンスセンター副所長から気候変動対策と日本との協力に望む点、アザット・オスモノフ同省生物多様性特別自然保護区域課長からキルギスの氷河の概況、カモリッディン・ナジルゾーダ・タジキスタン環境保護委員会水文気象庁雪氷学センター副所長から同国の氷河の状況につき説明がありました。また、稲垣文昭秋田大学講師から、SATREPSを通じたヒートポンプ技術を用いたタジキスタンのエネルギー効率改善プロジェクトの紹介別ウィンドウで開く、田邉秀樹国際協力機構(JICA)東・中央アジア部次長からは中央アジア・コーカサス諸国の国境を越えた協力の重要性についてのコメントがありました。

 パネルディスカッション・セッション3「日本と中央アジア・コーカサス地域の協力:二国間クレジットの地域的潜在性」では、佐藤盟信外務省気候変動課課長補佐から日本の気候変動外交について、宇賀まい子環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室主査から、二国間クレジット制度の概要について、石原雅美公益財団法人地球環境センター企画官から二国間クレジット制度の活用事例と持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献についてそれぞれ説明した後、マイア・ツフヴァラゼ・ジョージア環境保護・農業省気候変動課庁からジョージアの気候変動対策の取組と国際協力につき発表がありました。その後の議論では、経済産業省からJCM実現可能性調査と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による実証事業を通じて二国間クレジット制度の利用を促進していきたい旨発言があったほか、ロウジャン・ジャファロフ在京アゼルバイジャン大使館参事官から、日本との協力に対する期待が表明されました。



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