外務省・新着情報

令和4年3月31日
講演する三宅外務大臣政務官

1 概要

  • (1)3月25日(金曜日)、外務省は、「グローバル・ビジネス・セミナー グリーンエネルギー最前線 革新的環境イノベーションとしての洋上風力、水素と地方創生」をオンラインで開催(共催:経済産業省、協力:内閣府、JETRO)しました。
  • (2)本セミナーでは、対日直接投資の推進をテーマに、再生可能エネルギーの柱とされる洋上風力と脱炭素の切り札と呼ばれる水素ビジネスに焦点をあて、国内外企業関係者、在京大使館、駐日経済団体・商工会議所関係者、政府・地方自治体関係者等約250名が参加の下、日本での投資拡大の展望および地方の魅力について活発な議論が行われました。(プログラム(PDF)別ウィンドウで開く

2 開会の辞、基調講演

  • (1)冒頭、三宅外務大臣政務官から開会の辞として、気候変動問題の対応に不可欠な脱炭素社会の実現のためには、エネルギー供給構造の変革にとどまらず、産業構造、国民の暮らし、そして、地域経済の在り方など、社会全体の大変革が必要である旨説明しました。また、カーボンニュートラルな経済社会の実現に向けた取組は同時に新たな時代の成長エンジンとなるため、グリーンエネルギー分野への投資を早急に増やすことが重要である点を強調しました。続いて、昨年6月に決定された「対日直接投資残高を2030年までに80兆円へと倍増し、GDP比12%とする」との目標について説明し、同時に対日投資の促進は生産性向上を通じた経済成長や、地域経済の活性化に貢献するという点が重要である旨説明しました。最後に、投資環境整備を含む対日直接投資促進のための政府の取組を紹介しました。
  • (2)その後、フランチェスコ・ラ・カメラ国際再生可能エネルギー機関(IRENA)事務局長による基調講演が行われ、最初にCOP26で合意した気温上昇抑制1.5度目標への道筋に対するIRENAの見解を述べました。脱炭素化のためには技術革新を伴う電化とエネルギー効率化が鍵となり、またそうした技術革新は現在のコロナ禍による不況の克服にもつながる旨説明がありました。太陽光や風力発電の技術はエネルギー転換の柱となっている点、洋上風力、中でも浮体式洋上風力に関する技術の進展は極めて重要である旨述べました。また、水素の活用は、多くの国において、特に船舶、航空機や重工業分野において、新たな脱炭素化策として注目されている旨述べつつ、この分野におけるIRENAの研究について説明がありました。エネルギー転換の社会経済への影響として、IRENAの試算では2050年目標までに全世界で4,300万人の雇用が創出される旨の説明があり、IRENAは本年「日本のエネルギー転換の社会経済的フットプリント」を公表予定である旨述べました。本基調講演に続いて、三宅政務官とラ・カメラ事務局長との対談が行われ、ウクライナ情勢を受けてエネルギー安全保障の重要性等について議論がなされました。

3 個別講演の概要

モデレーター:上田悦紀 一般社団法人日本風力発電協会国際部長
 ア 登壇者 西田光宏 資源エネルギー庁戦略企画室長
 テーマ(1)「第6次エネルギー基本計画」
 冒頭にウクライナ情勢に関連し、日本の対ロシアへのエネルギー自給率は10%強とOECD加盟国の中で最も低い水準であるが、日本としても今後G7諸国と歩調を合わせて対ロシア制裁に対応していく旨の説明がありました。また、日本は再生可能エネルギーの導入が遅れていると言われるが、太陽光発電の導入量は世界でトップクラスである点を述べるとともに、洋上風力については、2030年までに約6GWの導入を目指しており、そのための海域利用に関する法整備等を勧めてきている旨の説明がありました。また、2050年のカーボンニュートラル目標達成には、水素サプライチェーンの確立が鍵である旨の説明がありました。
 
 イ 登壇者 山田睦 BWイデオル社 カントリーマネージャー
 テーマ(2)「日本の洋上風力発電参入の魅力と期待」
 BWイデオル社が浮体式洋上風力に関するエンジニアリング会社と事業開発会社としての長年の経験を基に、2018年から北九州沖やフランス大西洋沖での浮体式洋上風力発電システムの実証プロジェクトに参加してきている経験、またスコットランドの大規模入札案件を落札した経験等を紹介しながら、日本周辺海域は浅瀬が少ないため、浮体式洋上風力が適している点、今後は日本の浮体式洋上風力を先行している海外勢に遅れを取らないように少しでも早く商業化していくことができるかが鍵であるとの説明がありました。
   
 登壇者 上田悦紀 一般社団法人日本風力発電協会国際部長
 「近況のビジネス交流会」
 日本風力発電協会が行っている取組について、日本企業は洋上風力について高い技術力を有するも経験が少ないため海外企業の経験が参考になり、一方で海外企業は日本市場への参入をめざすも日本との関係性が少ないため、双方においてニーズが結びつき、ビジネスマッチングに成功した事例について紹介がありました。近年は洋上風力分野への注目が高まっており、欧州へ視察団を派遣したり、セミナーを開始する等の取組を実施しており、海外企業との提携が進みつつある旨説明がありました。
 
 ウ 登壇者 遠藤英樹 千代田化工建設株式会社理事兼電力・エネルギーシステムプロジェクト部長
 テーマ(3)「再生可能エネルギーを活用した水素製造と水素サプライチェーン」
 洋上風力は、電力源地域と需要地域が異なる点や気象条件に左右される旨述べつつ、安定的な供給に向けた解決策の一つとして、洋上風力の余剰電力と水を活用した水素製造と水素の移送・貯蔵技術(SPERA)についての説明があり、また千代田化工建設株式会社がブルネイと川崎市で行っている事業について紹介がありました。また、水素サプライチェーンのコストが高く、供給業者によるコスト削減に向けた努力と政府による初期段階でのインセンティブ導入の重要性について述べました。


4 地方自治体の概要

講演者 簗脇太地 五島市産業振興部再生可能エネルギー推進班係長
 テーマ:「2050年ゼロカーボンシティに向けた海洋エネルギーの取組み」
 五島市の再生可能エネルギーの実績(風力や太陽光発電、電気自動車等)について説明しつつ、同市の電力自給率が56.3%に達している旨述べました。浮体式洋上風力発電の商用・実用化に向けた経験として、2014年に浮体式洋上風力発電の余剰電力から水素製造に成功し、水素燃料電池船を活用している点について、また2024年に浮体式洋上風力発電ウィンドファーム事業を開始予定である旨の説明がありました。また、こうした取組は同市の雇用創出や環境保全にもつながっている点を強調しました。

5 閉会の辞

 永井克郎内閣府大臣官房審議官(経済財政運営担当)兼対日直接投資推進室長
から、これまでコロナ禍にて経済社会活動が閉塞的な状況であったが、今後再生可能エネルギー分野をはじめとする対日直接投資の活性化によって変革していきたい旨述べられました。また、2030年に対日直接投資残高を80兆円と倍増させ、GDP比12%にする目標に向けては、日本が魅力的な市場として存在すること、外国企業や海外の投資家を引きつけるようなビジネス環境の整備そして地域の強味を活かした誘致戦略や外国企業と地域企業のマッチングといった取組を強化していく必要があり、政府としても引き続き制度改革や予算措置を通じてしっかり対応していく旨の説明がありました。


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