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2022年4月27日

特許庁は、令和4年4月27日に、将来の市場創出・拡大が見込める最先端分野である「GaNパワーデバイス」の技術テーマについて、特許情報等を調査・分析した報告書を取りまとめました。
調査の結果、GaNパワーデバイスの分野において日本が最多の特許出願数となっており、特に縦型GaNパワーデバイスについては、その製造に必要なバルク結晶分野で活発な活動が行われていることが分かりました。

パワーデバイスは、鉄道や自動車等の車両等、様々な分野で応用されていますが、パワーデバイス素材の中でもシリコン(Si)結晶基板を使ったパワーデバイスでの特性改善が限界に近づきつつあります。窒化ガリウム(GaN)の材料特性は、バンドギャップはSiの約3倍の大きさで、絶縁破壊電界はSiの約11倍です。このため、GaNデバイスはSiデバイスと比べて、ドリフト層の厚さを薄くでき、熱損失の原因となるオン抵抗を小さくできるというメリットがあります。

GaNパワーデバイスの出願人国籍・地域別の出願件数(ファミリー件数)の動向をみると、日本国籍は全体の43.9%を占めています。次いで中国籍、米国籍、欧州籍、韓国籍と続きます。合計出願件数は、日米欧出願人からの出願数が減少したため、2012年をピークにその後の3年間は減少傾向にありましたが、2016年以降は中国籍からの出願が大幅に増加して、全体としては再び増加傾向に転じています。

GaNパワーデバイスには横型と縦型があり、縦型GaNパワーデバイスの実現に当たっては、縦型GaNパワーデバイスの製造に必要となるバルク結晶のコスト力、実用化に耐える品質の確保にかかっており、技術開発の進展次第という状況です。日本はバルク結晶分野において特許出願や論文発表で世界的に活発な活動をしており、コスト削減のブレークスルーと高信頼性を実現するバルク基板の研究開発推進が期待されます。縦型GaNパワーデバイスについては、理論的に優位性のある低オン抵抗、高耐圧、大電流特性を、具体的な数値として早期に明確にする必要があると考えられます。

1 対象技術・背景

  • パワーデバイスは鉄道や自動車等の車両等、様々な分野で応用されており、省エネルギー化を目指して性能向上が求められている。
  • パワーデバイス素材の中でもシリコン(Si)結晶基板を使ったパワーデバイスでの特性改善が限界に近づきつつある。GaNデバイスはSiデバイスと比べて、ドリフト層の厚さを薄くでき、熱損失の原因となるオン抵抗を小さくできる。
  • 本調査の調査対象とする技術において、要素技術については、材料から製品に至る物の流れに沿って整理した。
  • 材料については、エピ用基板、エピ層及びその間に挿入するバッファ層のそれぞれに特有の材料技術に加え、材料の組合せにも注目した。
注)赤字の項目は平成28年度調査時の技術俯瞰図に対し追加された技術区分である。

(2)調査結果:全体動向

  • ファミリー件数の合計は15,008件であり、日本国籍は6,582件で全体の43.9%を占める。次いで中国籍、米国籍、欧州籍、韓国籍と続く。
  • 合計ファミリー件数は、日米欧出願人からの出願数が減少したため、2012年をピークにその後の3年間は減少傾向にあったが、2016年以降は中国籍からの出願が大幅に増加して、全体としては再び増加傾向に転じている。

3 調査結果:応用分野

  • 日本国籍出願人については、自動車に係る出願が最も多く、次いで携帯端末、基地局、家電機器、電力一般、パソコンの順となっている。
  • 米国籍出願人については、携帯端末に係る出願が最も多く、次いでパソコン、自動車、レーダとなっている。
  • 欧州籍出願人、韓国籍出願人については、それぞれ自動車、携帯端末に係る出願が最も多い。
  • 中国籍出願人については、自動車に係る出願が最も多く、次いでレーダ、航空・宇宙、基地局、軍用となっている。
  • 軍用は、中国籍、米国籍、韓国籍出願人の順でファミリー件数が多く、航空・宇宙でも、中国籍、米国籍出願人の順でファミリー件数が多い。各国の力の入れ様が応用分野の傾向から分かる。

4 調査結果と今後の展望

  • GaNパワーデバイスには横型と縦型があり、縦型GaNパワーデバイスの実現に当たっては、バルク結晶のコスト力、実用化に耐える品質の確保にかかっており、技術開発の進展次第という状況である。
  • 日本はバルク結晶分野において特許出願や論文発表で世界的に活発な活動をしており、コスト削減のブレークスルーと高信頼性を実現するバルク基板の研究開発推進が期待される。縦型GaNパワーデバイスについては、理論的に優位性のある低オン抵抗、高耐圧、大電流特性を、具体的な数値として早期に明確にする必要がある。

参考 特許出願技術動向調査とは

「特許出願技術動向調査」は、世界中の特許情報を、論文情報等と併せて分析して各国や各企業の研究開発動向を把握し、企業・大学・研究機関等が開発戦略・知財戦略を策定するために実施しています。調査においては、有識者からなる委員会の助言等を踏まえ、日本の技術的な強み等を分析し、日本の企業・大学・研究機関等が目指すべき研究開発の方向性を示しています。

調査は、新市場の創出が期待される分野、国の政策として推進すべき技術分野を中心に、今後の進展が予想される技術テーマを選定し、行います。

令和3年度は、「GaNパワーデバイス」、「教育分野における情報通信技術の活用」、「手術支援ロボット」、「ウイルス感染症対策」、の4の技術テーマを対象とした特許出願技術動向調査を実施しました。


(参考図)調査のイメージ

​公表日

2022年4月27日(水曜日)

関連資料

担当

特許庁総務部企画調査課長 仁科
担当者:宮崎、四垂、青柳

電話:03-3581-1101(内線2155)
03-3592-2910(直通)
03-3580-5741(FAX)

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