外務省・新着情報

令和4年5月2日
プライユット首相との少人数会合に臨む、岸田総理大臣の様子 日・タイ首脳会談(少人数会合)(写真提供:内閣広報室)
日本、タイ、両国の関係者を拡大して行われた、日・タイ首脳会談全体会合の様子 日・タイ首脳会談(全体会合)(写真提供:内閣広報室)
プラユット首相に語りかける、岸田総理大臣の様子 日・タイ首脳会談(写真提供:内閣広報室)

 5月2日、現地時間午後4時10分(日本時間午後6時10分)から約2時間15分、タイ王国を訪問中の岸田文雄内閣総理大臣は、首相府において、プラユット・ジャンオーチャー・タイ王国首相兼国防大臣(H.E. Mr. Prayut Chan-o-cha, Prime Minister and Minister of Defense of the Kingdom of Thailand)と少人数会合を含む首脳会談を実施したところ、概要は以下のとおりです。会談後、両首脳は署名式及び共同記者発表に臨み、その後、プラユット首相主催の歓迎夕食会が行われました。会談には、磯﨑内閣官房副長官他が同席しました。

1 冒頭

 岸田総理は、プラユット首相及びタイ国民からの温かい歓迎に感謝の意を表し、国際秩序の根幹をめぐる歴史の岐路に立っている中、「自由で開かれたインド太平洋」の実現や、ロシアによるウクライナ侵略、南シナ海情勢、ミャンマー情勢などの地域・国際情勢への対応において、タイとの連携を強化したい旨述べました。また、日タイ修好135周年である本年、プラユット首相と共に戦略的パートナーであるタイとの友好関係を更に発展させたい旨述べました。これに対し、プラユット首相から、総理の訪問を歓迎する、世界は様々な課題に直面しており、岸田総理と共に日タイ両国の関係を更に強化し、地域・国際情勢への対応について緊密に協力していきたい旨発言がありました。

2 二国間関係

(1)安全保障・法務分野
 両首脳は、「日タイ防衛装備品・技術移転協定」の署名を歓迎し、今後、具体的な移転案件の協議を進めていくことで一致しました。また、「日タイ刑事共助条約」の締結に向けて、正式交渉会合を開催すべく、調整を加速させることで一致しました。

(2)未来に向けた経済関係強化
 岸田総理から、日タイの未来に向けた経済関係強化として、サプライチェーン強靭化を含む経済安全保障分野での協力の推進、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」等を通じた脱炭素化や、5Gをはじめとするデジタル、スマートシティ、ヘルスケアの分野において協力していきたい旨述べました。また、「アジアゼロエミッション共同体構想」も紹介しました。これに対し、プラユット首相から、これらの分野での関係強化に取り組んでいくとし、日本企業からの更なる投資への期待が表明されました。両首脳はまた、こうした分野における協力についても、策定中の「日タイ戦略的経済連携5か年計画」に反映させていくことで一致しました。

(3)新型コロナ対策
 岸田総理から、新たに新型コロナ対策のための500億円の円借款による財政支援と、水際の検疫体制強化のための機材支援を決定し、新型コロナを乗り越え、両国の活発な往来が再開されることを期待する旨述べました。プラユット首相からは、日本によるワクチン供与を含む新型コロナ対策支援への謝意とともに、日本人観光客の来訪など活発な往来や経済活動の再開への期待が示されました。

3 地域・国際情勢

(1)ウクライナ情勢
 岸田総理は、ロシアによるウクライナ侵略は、明白な国際法違反であり、国連憲章に反し、またASEAN憲章とも相容れず、厳しく非難する、力による一方的な現状変更は絶対に許容してはならない旨述べました。これに対し、プラユット首相から、ウクライナ情勢に関するタイの立場について説明がありました。両首脳は、いかなる地域においても、主権や領土一体性の侵害や力による一方的な現状変更は認められないこと、また、大量破壊兵器による威嚇やその使用への反対で一致しました。岸田総理は、タイが人道支援を行う決定をしたことを高く評価し、プラユット首相からは、引き続き追加的な人道支援を行う旨発言があり、日タイ両国が、この分野でも連携していくことで一致しました。

(2)その他の地域情勢
 岸田総理大臣から、東シナ海・南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みや経済的威圧に対して、強く反対する旨述べました。また、両首脳は、北朝鮮情勢についても意見交換し、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き連携していくことを確認しました。両首脳は、ミャンマー情勢についても意見交換を行いました。岸田総理大臣から、3月のASEAN議長特使のミャンマー訪問は事態打開に向けた第一歩であり、今後もASEANの取組を後押ししていく、ミャンマーの隣国であるタイの役割は重要であり、事態打開に向けたタイの積極的な役割を期待する旨述べました。プラユット首相からは、人道支援の重要性を始めとして、ミャンマー情勢に対するタイの立場に関して説明がありました。両首脳は、事態の打開に向けて引き続き緊密に連携していくことで一致しました。

(3)メコン、ASEAN及び国際場裡における協力
 岸田総理から、日メコン協力についてACMECS開発基金に1.5億円拠出した旨述べ、プラユット首相から謝意が表明されました。両首脳は、引き続き、メコン地域の発展のために緊密に連携していくことで一致しました。また、岸田総理は、ASEAN協力について、来年は日ASEAN友好協力50周年であり、日本での特別首脳会議にて将来の日ASEAN協力のビジョンを打ち出したい旨述べ、プラユット首相は、ASEAN対日調整国として日本のイニシアティブを支持し、協力していく旨述べました。
加えて、岸田総理から、本年タイが議長を務めるAPECの成功に向けて、日本はBCG経済を含めたタイの優先課題を全面的に支持する旨述べました。これに対しプラユット首相は謝意を述べ、両国はAPECの成功に向けて緊密に連携していくことで一致しました。また、国連安保理改革や核軍縮・不拡散の分野でも協力していくことで一致しました。

(参考)署名案件

1. 日タイ防衛装備品・技術移転協定(協定英文 別ウィンドウで開く和文 別ウィンドウで開く
(1)概要
 日タイ両政府が参加する国際の平和及び安全に寄与するための事業、共同研究、共同開発及び共同生産に係る事業又は安全保障協力及び防衛協力の強化のための事業等の実施のために必要な防衛装備品及び技術に関する法的枠組みを設定するもの。
(2)署名者
 日本側:梨田和也・駐タイ日本国大使
 タイ側:シリチャイ・カンジャナボディ・タイ王国軍司令部統合兵站部長

2.新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援借款
(1)概要
 新型コロナウイルスの感染が拡大するタイにおいて財政支援を行うもの。ポストコロナも見据えた保健医療体制の強化、新型コロナウイルスの影響を受けた貧困・脆弱層及び中小企業への支援の促進を図られ、同国の経済・社会の安定及び開発努力の促進に寄与することが期待される(円借款供与限度額:500億円)。
(2)供与条件は以下の通り。
 (ア)金利:年0.01%
 (イ)償還期間:15年(4年の据置期間を含む)
 (ウ)調達条件:一般アンタイド
(3)署名者
 日本側:梨田和也・駐タイ日本国大使
 タイ側:アーコム・トゥームピタヤーピシット財務大臣

3.新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援計画
(1)概要
 新型コロナウイルスの感染が拡大するタイにおいて、スワンナプーム国際空港、国境4か所の検疫所及び国境付近病院等を対象に、検疫・国境管理及び感染症の診断・治療のための機材の整備を行うもの。新型コロナウイルス感染リスク抑制と経済活動再開の両立が図られ、同国の経済・社会の安定及び開発努力の促進に寄与することが期待される(供与額:5億円)。
(2)署名者
 日本側:梨田和也・駐タイ日本国大使
 タイ側:ウリーラット・チャルーントー・タイ国際協力機構(TICA)局長
















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