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2022年6月13日

日米欧中韓の特許庁(五庁)は、2022年6月9日、欧州特許庁主催の下、第15回五庁長官会合をテレビ会議形式で開催しました。本会合では、五庁長官がSDGs達成に向けた知財の役割について、意見交換を行いました。また、五庁と五庁ユーザー団体との協働10周年を祝し、過去10年の五庁協力の成果を振り返るとともに、ユーザー団体との今後の更なる協力強化に合意しました。さらに、新技術・AI分野の協力に関する作業ロードマップに基づく初のプロジェクトとして、日本国特許庁が提案した、AI関連発明に係る五庁の審査実務に関する資料収集プロジェクトの立ち上げに合意しました。

1.背景

五庁への特許出願(2020年:約278万件)は、世界の特許出願件数(2020年:約328万件)の約85%を占めています。
 
五庁は、2007年から長官会合を継続して開催し、審査結果の相互利用、手続の簡素化、審査の質の向上といった課題について、複数の作業部会等(WG1:分類関連、WG2:情報関連、WG3:審査関連、StatWG:統計関連、PHEP:制度運用調和関連)で検討を行ってまいりました。また、2012年からは、五庁ユーザー団体との会合も行っており、今年で五庁と五庁ユーザー団体との協働10周年を迎えました。
 
今次会合は、欧州特許庁主催の下、テレビ会議形式で開催されました。

2.会合の結果

(1) SDGs達成に向けた知財の役割

五庁は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標7、目標9及び目標17に着目し、グローバルな課題に対する知財制度の貢献に関して議論しました。
 
SDGsの目標7及び目標9を念頭に、クリーンで安価なエネルギーに関する革新的なソリューションと産業界の取組について意見交換し、知財制度が発明者にインセンティブを与え、研究開発を支援することにより、気候変動を緩和する技術の開発において、重要な役割を果たしていることを改めて確認しました。また、特許制度が豊富な技術関連情報へのアクセスを提供することによって、グリーンイノベーションの傾向を特定したり、エネルギー転換の状況について考察したりすることを可能とし、政策立案や投資に役立っているという認識を共有しました。
 
また、SDGsの目標17に関連して、五庁と五庁ユーザー団体を含む五庁の枠組みは、SDGs達成に貢献する強力なパートナーシップであるとの共通認識の下、グローバルな課題の解決及び社会経済成長促進のため、五庁がイノベーションを一層推進していくことに合意しました。
 
さらに、日本国特許庁からは、気候変動対策技術を俯瞰できる、特許検索式と紐付けられた技術区分表である「Green Transformation Technologies Inventory(GXTI)」をまもなく公表する予定であることを紹介するとともに、その活用の可能性について述べたところ、他庁から大きな期待が示されました。

(2) 五庁協力の成果とユーザー団体との更なる協力強化

五庁は、2012年に開催された五庁長官会合に五庁ユーザー団体を招待し、それ以降ユーザー団体との会合を開催しています。今次会合では、これまでの成果と今後の協力関係について議論しました。
 
五庁と五庁ユーザー団体との協働開始以降、日本国特許庁が提唱したグローバル・ドシエにより、審査官及び出願人が特許審査の進捗に関する情報を無料かつ1か所から検索できるようになりました。また、二庁間の取組であった特許審査ハイウェイは、より迅速かつ効率的に特許を取得できるようにする五庁の包括的な取組として実現されたほか、制度運用調和の議論は、各庁の審査実務の透明性と予見可能性を向上させてきました。
 
今後も五庁とユーザー団体との協働により、高品質なサービスとユーザーフレンドリーな国際的特許環境を確保すべく、ユーザー団体から新規プロジェクトの提案を受けることなどを通じて、五庁とユーザー団体との協力を強化していくことに合意しました。

(3) AI関連発明に係る新規プロジェクトの立ち上げ

五庁は、日本国特許庁が提案した、AI関連発明に係る五庁の審査実務に関する資料収集プロジェクトの開始に合意しました。
 
本プロジェクトは、昨年6月に日本国特許庁が主催した五庁長官会合にて合意した、新技術・AIの協力に関する作業ロードマップの法的側面に関して具体的な作業を進めるべく、五庁が合意した初のプロジェクトです。本プロジェクトでは、五庁がAI関連発明を審査する際に適用する条文や参照される審査基準等の情報を収集し、五庁ウェブサイトにて公開することが予定されています。このプロジェクトを通じ、五庁の審査実務の透明性の向上、ユーザーがAI関連発明について各庁に出願し、権利を取得する際の予見可能性の向上が期待されます。

3.参加者

  • 日本国特許庁(JPO): 森長官 ほか
  • 米国特許商標庁(USPTO): ヴィダル長官 ほか
  • 欧州特許庁(EPO): カンピーノス長官 ほか
  • 中国国家知識産権局(CNIPA): 申局長 ほか
  • 韓国特許庁(KIPO): イ庁長 ほか
 (オブザーバー)世界知的所有権機関(WIPO): ヨルゲンセン事務局次長 ほか

図1:五庁長官会合の様子(手前:森長官)

図2:五庁長官及びヨルゲンセンWIPO事務局次長

担当

特許庁 総務部 国際政策課長 福田
担当者: 袴田、岩井

電話:03-3581-1101(内線 2568)
03-3580-9827(直通)
03-3581-0762(FAX)

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