厚労省・新着情報

日時

令和4年3月17日(木)
14:00~16:00

場所

オンライン会議
事務局設置場所:AP虎ノ門会議室C

出席者

委員

五十君部会長 朝倉委員 雨宮委員 北本委員(途中参加)
上間委員 及川委員 大西委員 尾島委員
亀井委員 工藤委員 白井委員 吉村委員
砂川委員 松本委員(途中退席) 櫁柑委員 脇田委員

参考人

鈴木富山市保健所生活衛生課長 八幡国立感染症研究所主任研究官

事務局

三木食品監視安全課長 今川食中毒被害情報管理室長
他3名  

議題

(1)令和3年食中毒発生状況について
(2)令和3年に発生した主な食中毒事件について
(3)その他

議事

 
○高橋食中毒被害情報管理室長補佐 定刻となりましたので、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会」を開会いたします。本日、司会を務めさせていただきます食品監視安全課食中毒被害情報管理室の高橋と申します。よろしくお願いいたします。
 本年度におきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、オンラインでの開催とさせていただきます。また、本日の内容は、動画配信していることを申し添えます。
 開会に当たりまして、三木食品監視安全課長から御挨拶を申し上げます。
○三木食品監視安全課長 皆さん、こんにちは。食品監視安全課長の三木でございます。日頃より、委員の皆様には食品安全行政に御理解、御協力をいただきまして、誠にありがとうございます。また、本日は新規に委員になられた先生もいらっしゃるということですので、よろしくお願いいたします。
 今日は、この議題にあります中で、富山市保健所の鈴木課長、国立感染症研究所の八幡先生におかれましては参考人として御参加いただいております。ありがとうございます。
 また、皆様御承知のとおり、先ほども説明ありましたが、新型コロナ感染症については、21日にまん延防止については終了するという報道もありますけれども、こういうことでございますので、このような形での開催ということで御了承いただければと思います。
 今日の議題については、議事次第にありますように、令和3年の食中毒発生状況の報告と、主な食中毒事件ということで、富山市で発生しました牛乳による食中毒について御報告させていただくということを予定しております。
 新型コロナの関係で飲食店の営業時間が制限されたり、人数の制限があったり、さらに、今日もマスクの着用、手洗いの徹底等、いろいろ感染予防対策が取られている中で、食中毒をどういうふうに統計的に考えたらいいのかということもございますので、本日は委員の先生方にいろいろ御意見を頂戴いたしまして、今後の食中毒対策につなげていきたいと考えております。
 本日はよろしくお願いいたします。
○高橋食中毒被害情報管理室長補佐 ありがとうございました。
 次に、委員の一部改選がございましたので、事前にホームページに掲載させていただいていますけれども、委員名簿を御覧ください。
 本年度、今般の部会で新規委員に就任された方を御紹介させていただきます。新規委員の方におかれましては、一言御挨拶いただければ幸いです。本年度、新規委員となられました東京都福祉保健局健康安全研究センター所長、吉村和久委員、お願いいたします。
○吉村委員 皆様、今年度から委員になりました東京都健康安全研究センター所長の吉村です。よろしくお願いいたします。
○高橋食中毒被害情報管理室長補佐 ありがとうございました。
 また、本日は参考人としまして、富山市保健所 鈴木生活衛生課長、国立感染症研究所 八幡主任研究官に御出席いただいております。
 本日の部会は、16名の委員のうち、北本委員におかれましては公務の都合で途中から入られる予定であること、また松本委員におかれましては15時を目途に退席される予定となっておりますが、薬事・食品衛生審議会の規定に基づき、本部会は成立していることを御報告いたします。
 また、今回、オンライン会議となりますので、オンライン会議の進め方について少し説明させていただきます。円滑な進行のために、次の点について御対応いただきますようお願いいたします。発言者以外はマイクをミュート設定にしていただくようお願いいたします。発言されたい場合は、画面下のリアクションのところから「手を挙げる」のマークを使用して発言の意思をお伝えください。「手を挙げる」のマークを事務局のほうで確認しましたら、部会長または事務局より指名させていただきます。指名された方はミュート設定を解除して御発言をお願いいたします。また、お手数ではございますが、発言の冒頭でお名前をお伝えいただくようお願いいたします。発言が終了いたしましたら、再びミュート設定をお願いいたします。
 では、ここからの議事進行は五十君部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○五十君部会長 それでは、早速議事に入りたいと思いますが、その前に事務局から配付資料の確認をお願いします。
○高橋食中毒被害情報管理室長補佐 配付資料の確認をさせていただきます。
 資料は、事前に厚生労働省のホームページでも掲載しておりますが、議事次第、委員名簿。さらに、資料1としまして「令和3年食中毒発生状況(概要版)」、資料2「令和3年食中毒発生状況」、資料3-1「富山市内の学校給食で発生した集団食中毒について」、資料3-2「富山市の学校給食における牛乳を原因とする食中毒事例疫学調査解析」、資料3-3「富山市集団食中毒の原因食品からの原因物質調査と大腸菌分離株の病原性について」、そして、最後に資料4「食品等のリコール公表情報」。以上となります。もし資料の不足等がございましたら、画面下のリアクションのところから「手を挙げる」のマークを使用してお知らせいただければと思います。
○五十君部会長 よろしいですか。
 それでは、議事に入りたいと思います。初めに、報告事項になりますが、(1)「令和3年食中毒発生状況」につきまして、資料1及び資料2に基づきまして御報告をお願いします。まず、令和3年食中毒発生状況について事務局から御説明願います。
○高橋食中毒被害情報管理室長補佐 それでは、資料1、資料2について事務局から御説明いたします。2つ資料がございますけれども、資料2につきましては全体の詳細なデータで、その中の主なものを資料1に抽出しております。この場では資料1を用いて御説明いたします。
 2ページ目にお進みください。食中毒の事件数・患者数の推移(全体)を示した資料です。
 上段の表を御覧ください。令和元年から令和3年までの食中毒の事件数と患者数と死亡者数を表にしています。令和3年の発生状況につきましては、事件数が717件、患者数は1万1080人、死亡者数は2人という状況です。
 下のグラフを御覧ください。平成13年以降の食中毒発生状況の推移で、赤の棒グラフが事件数、青の折れ線が患者数となっております。グラフからもお分かりになるかと思いますけれども、事件数・患者数ともに、令和3年につきましては直近20年で最も低い数字となっております。
 3ページ目を御覧ください。先ほどのページは食中毒全体のもので、こちらは、患者数が2名以上の事例についてまとめたものです。同じように赤い棒グラフが事件数、青の折れ線グラフが患者数です。2人以上の事例につきましても、過去20年間で最も低い数値となっているところです。
 次の4ページ目を御覧ください。こちらは、患者数500人以上の事例、いわゆる大規模な食中毒を上段に表で示しています。下段は死亡者が発生した食中毒事例を示しております。
 まず、上段の大規模な食中毒ですけれども、令和3年は2件発生しております。
 1つ目が、富山市の乳処理施設で製造された牛乳によるもので、患者数がおよそ1900人というものです。こちらにつきましては、次の議題のところで富山市保健所さんをはじめ、参考人の皆様から詳細を御報告いただくこととなっております。
 それから、2つ目、岡山県の倉敷市の仕出屋で発生した事例ですけれども、4日間にわたって調理・提供された仕出し弁当を喫食したことによって起こったものです。病因物質名はノロウイルスのGIIで、患者数は2545名となっております。原因となった施設は、1日当たり1万食以上提供する大規模な施設で、調理従事者も60名ほどいる施設でした。
 食中毒の発生の原因としましては、複数の従業員から患者と同じノロウイルスが検出されていて、従業員からの食品の汚染と考えられております。また、体調不良の方が作業に従事していたことなど、管理体制の不備も報告されているところです。ノロウイルスによって患者数が2000名を超える食中毒が起きたのは、2012年に広島市の仕出屋で起きて以来、およそ10年ぶりという状況となっております。
 次に、下の表の死亡者が発生した事例ですけれども、1つ目として、北海道の小樽市保健所管内で、自宅付近で自生していた有毒植物であるイヌサフランを食用のギョウジャニンニクと誤って採取して喫食したことにより、1人亡くなっております。
 もう一つは、沖縄県の特別養護老人ホームで4月13日に提供された春雨の和え物が原因食品で、サルモネラ属菌、パラチフスのB菌が検出されているのですけれども、これによって1人亡くなっております。原因食品である和え物を含め、提供されたメニューに使用した原材料の複数の野菜から同じ菌が検出されていて、さらに調理従事者からも同じ菌が検出されており、その汚染の経路は特定されておりませんが、原材料の洗浄不足、殺菌不足、交差汚染といったところも食中毒の原因として考えられています。サルモネラ属菌による食中毒で死者が出たのは、2011年以来のこととなっています。
 次の5ページに進んでください。こちらは、年齢階級別の食中毒の患者数について、過去3年間の傾向を見ているものです。青色のグラフが令和3年ですけれども、令和3年につきましては、20~29歳のところで最も患者が多くなっております。世代別で見ていきますと、5~9歳、10~14歳につきましては、学校・保育園関連の大規模な食中毒によるところで影響があるのと、20代~50代のところまでの青色のグラフにつきましては、先ほどの仕出しを食べていた世代というのがこの辺りに入っているところが患者数に影響している状況です。
 次の6ページ目を御覧ください。こちらは、月別の食中毒事件数と患者数の発生状況です。こちらも3か年の傾向を見るというものです。上段のものが事件数、下段が患者数となっています。
 事件数につきましては、令和3年では3月、それから10月から12月にかけて多く発生しています。
 下段の患者数につきましては、患者数が500人を超える事件が発生した4月と6月につきましては青色の棒グラフが突出していますが、その他の月では低くなっております。
 特に、令和3年につきましては、1月上旬から9月末にかけて、日本のいずれかの地域で緊急事態宣言やまん延防止措置といったことがなされていた状況ですので、その中で手洗いの徹底など、個人衛生の意識の向上だったり、あとは人の集まる機会が減少していたり、飲食店の営業時間の短縮などもあって、これらのことが食中毒の発生に影響している一つの要因とも考えております。なお、この緊急事態宣言やまん延防止措置の期間と該当地域につきましては、特に触れませんけれども、この資料1の最後の4ページのほうにまとめております。
 それでは、次の7ページ目を御覧ください。こちらは、病因物質別事件数の月別発生状況です。向かって右側が令和3年のデータです。細菌によるものが青色、ウイルスによるものが赤色、緑色が寄生虫となっております。緑色の寄生虫は特にアニサキスですけれども、通年発生している状況で、月別では3月が最も多くなっております。それから、青色の細菌について、例年ですと夏場が多くなって冬場は下がってくるところですが、令和3年につきましては、夏場よりも10月以降のほうが多く発生している状況です。それから、赤色のウイルス、主にノロウイルスですけれども、ウイルスは1月、2月と流行する時期について、過去2年と比べると発生が特に少なくなっているところです。
 次のページに進んでください。8ページ目です。先ほどの資料は全体版ですけれども、今度は患者数が2人以上の事例です。2人以上の事例で見ますと、特に緑色の部分、アニサキスがメインになるのですけれども、寄生虫による食中毒が2人以上の事例では大幅に減少している状況です。
 次のページを御覧ください。こちらは、病因物質別の患者数の月別発生状況です。赤がウイルス、青が細菌です。向かって右側が令和3年のデータです。4月の赤色のところ、ウイルスによる患者数の増加が見られますが、これは先ほどお話ししましたノロウイルスが病因物質の仕出し弁当によるもの。それから、6月の青色の細菌による食中毒の伸びについては、牛乳による食中毒の発生が影響しているところです。
 次の10ページ目を御覧ください。今度は円グラフで、原因施設別事件数の全体の割合を示しています。飲食店によるものが最も多く、およそ4割を示しています。次いで、原因施設が不明、家庭という状況です。例年、飲食店が原因施設として最も多く報告されている状況です。
 次の11ページ目を御覧ください。原因施設別の事件数の割合で、今度は2人以上の食中毒事件の割合を示しております。2人以上の事例ですと、先ほどの全体では飲食店がおよそ4割だったのが、2人以上となりますと飲食店が5割を超えてくる状況です。一方で、不明と家庭が2人以上の事例では減少している状況です。
 12ページを御覧ください。今度は、原因施設別の患者数全体の割合で、順番としては、仕出屋、飲食店、製造所、事業場が多く占めておりますけれども、特に仕出屋、製造所につきましては、大規模な食中毒により患者数が多く発生しておりますので、この影響がこのグラフに表れている状況です。
 次の13ページは、2人以上の食中毒の事例ですけれども、これにつきましては前ページと傾向としてはほぼ同じですので、次に進ませていただきます。
 14ページは、原因食品別の事件数の全体の割合で、魚介類が最も多くなっています。次いで、その他が28%ほどとなっておりますけれども、その他につきましては、例えば3月10日に食べた食事あるいは3月10日に食べた夕食といったように、個々の食品が特定されたわけではないのですけれども、大まかに把握されたものが3割弱という状況になっています。次いで、不明が2割5分という状況です。
 その他が多くなる理由としましては、保存食といったものがなくて検査できない場合。それから、例えばノロウイルスのように、従業員由来で食品全般を汚染させてしまったような場合には、個々の食品の特定につながらずに、いついつの食事といった形で報告されてくるケースが多くなっております。参考までに、その他で報告された事件というのは、令和3年はおよそ200件ありまして、そのうちの140件は飲食店が原因となっています。
 次の15ページに進みます。2人以上の原因食品別の事件数の割合ですけれども、前のページと比べますと、3割あった魚介類が7%ほどと減少しています。それから、2人以上の事例になりますと、不明が前のページで25%ほどあったのですけれども、こちらも8.8%と、減少している状況です。何月何日の食事といったその他の部分が半数以上を占めている状況になります。魚介類と不明の減少につきましては、1人だけの患者の事例、特にアニサキスで多いのですけれども、アニサキスにつきましては原因不明や、魚介類で報告されているので、それがこの2人以上の事例に影響している状況です。
 次の16ページを御覧ください。原因食品別の全体の患者数の割合で、こちらも何月何日の食事といった、その他に該当するものがおよそ6割となっております。乳類及びその加工品のところも多く見えますけれども、これは牛乳による大規模食中毒に影響されています。
 次の17ページが2人以上の事例ですけれども、こちらも16ページとほぼ傾向としては同じですので、次の18ページに進みます。病因物質別の事件数について、平成13年からの推移となります。これまでの発生状況を折れ線グラフで示しておりますけれども、病因物質としましては、これまで発生の多かったものを代表的に示しております。少しピンク色のアニサキス、オレンジ色のカンピロバクター、薄い水色のノロウイルス、この3つによる事件数がここ数年、上位を占めている状況です。数値としては、いずれも少し減っている状況です。
 次の19ページに進みます。こちらは、病因物質別の患者数の推移です。少し薄い水色のところがノロウイルスですけれども、平成13年以降、ノロウイルスが継続して多い状況で、令和2年に関しましては紫色の病原大腸菌、これは大規模な食中毒が令和2年は2件ほど発生しておりますので、そこで患者数が逆転した状況ですけれども、令和3年につきましては、再びノロウイルスが最も多くなっております。
 それから、下のほうのほかの細菌のところですけれども、動きがないように見えますので、この細菌について抽出したものが次のページになります。紫色の病原大腸菌は令和3年も多くなっておりますが、これは大規模食中毒の影響もあります。それから、少し濃い水色のウエルシュ菌、令和3年の患者数は1900人ほどで、事件数は30件ほど発生しております。患者総数のおよそ2割を占めている状況です。ほぼ例年、1000人を超える患者が発生していて、1件当たりの患者数が多くなる傾向があります。
 令和3年のウエルシュ菌による食中毒につきましては、報告されている事例では下痢型がほとんどという状況で、その発生の原因としましては、調理してから喫食までの温度管理がなされていなかったり、喫食までの時間が長かったり、あとは、調理してから冷却されるものが速やかに冷却されていなかったりといったことが食中毒発生の原因として挙げられております。
 次の21ページ目を御覧ください。病因物質別の事件数を割合で示した円グラフです。令和3年、717件のうち、アニサキスが半数近くで、以下、カンピロバクター、ノロウイルスと続いております。
 次の22ページに進みます。今度は、患者数が2人以上の事件数の割合を示しています。前ページの全体版と比べますと、アニサキスが減少して、カンピロバクター、ノロウイルス、ウエルシュ菌が増えております。
 次の23ページ目を御覧ください。病因物質別の患者数の割合を円グラフにしたものです。患者数の割合としては、ノロウイルスが4割ほどと最も多く、次いで病原大腸菌、ウエルシュ菌という順となっております。
 次の24ページです。患者数が2人以上の食中毒における患者数の割合ですけれども、前ページ同様の状況ですので、次の25ページに進みます。25ページは、摂食場所を家庭とする食中毒事件の月別発生状況です。過去4年間の比較ですけれども、令和3年は青色のグラフです。令和2年同様に、令和3年も家庭で食事をする機会が増えたと考えられますので、食中毒の発生状況について、家庭で食べた場合の事件を確認してみましたが、どの月で特に多いといった目立った傾向はなく、また令和3年が家で食べたものが多いといった傾向は確認されていない状況です。
 次のページを御覧ください。26ページです。こちらは、先ほど原因施設として最も多かったものが飲食店と説明しましたので、飲食店における過去4年間の食中毒事件の発生状況を比較しているもので、青色の棒グラフが令和3年です。特に、3月、10月、11月、12月が令和3年は多くなっていて、背景事情として、10月以降、緊急事態宣言も解除されていた時期であったり、あとは3月につきましても一時的に緊急事態宣言が解除された時期もあって、そういった時期は飲食店における食中毒の事件が多めに発生している状況です。
 次の27ページです。こちらは、飲食店を原因施設とした食中毒のうち、アニサキスについて、過去4年間の食中毒の月別発生状況を示したものです。青色が令和3年で、3月が特に増加しております。この3月が特に増加している原因というのはつかめていないところですけれども、3月に23件、アニサキスによる食中毒が発生しております。報告されている案件として、不明として上がってくる案件も多いのですけれども、その中でも3月は、メニューのうちにさばが含まれている事例というのが10件ほど含まれておりまして、そこまでは確認できている状況です。
 次の28ページを御覧ください。飲食店を原因施設とした食中毒のうち、カンピロバクターによる食中毒に関しての月別の発生状況の比較です。カンピロバクターにつきましても、特に10月以降で多く発生している状況です。
 次の29ページを御覧ください。飲食店を原因施設とした食中毒のうち、ノロウイルスによる食中毒について4年分のものをグラフ化したものです。青色のところで、ノロウイルス自体、過去と比較しますと大幅に下がっている傾向となります。特に、1月、2月、大きく下がっております。
 次のページを御覧ください。30ページです。こちらは、感染性胃腸炎の発生状況について、国立感染症研究所のホームページから引用しているものですけれども、青色の折れ線が2020年から2021年シーズンの感染症の発生状況、赤色の折れ線が2021年から22年にかけての感染症の発生状況ですけれども、いずれも低いところでおさまっておりまして、ノロウイルス等の感染症自体が少なくなっているところが、ノロウイルスによる食中毒の発生の減少にもつながっているのではないかと考えております。新型コロナウイルス感染予防対策として、手洗いやうがいの徹底、マスクの着用、人が集まる機会の減少といったところが影響しているのではないかと考えているところです。
 それから、31ページですけれども、令和3年は令和2年同様にテイクアウト形態の食事が増えたこともありますので、原因施設が飲食店または仕出屋で、持ち帰って家で食べた場合の食中毒の発生状況を示しているものですけれども、特に令和3年、持ち帰りで多く発生している状況というのは確認されておりません。
 ここまでが主な資料となっていて、次からが参考資料となります。参考資料につきましては、細かく説明する予定はありませんけれども、ページ数でいきますと、41ページ、「乳処理施設の監視指導の徹底について」ということで、この後、富山市保健所さんをはじめとしまして、牛乳による食中毒について御報告いただきますけれども、令和3年8月に、その食中毒を受けて、厚生労働省のほうから「乳処理施設の監視指導の徹底について」という通知を都道府県や政令指定都市等向けに発出しておりまして、衛生管理の徹底をお願いしている状況です。
 資料1の食中毒の発生状況について、駆け足ではございましたが、事務局からは以上です。
○五十君部会長 御説明ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明に関しまして、御質問等ございますか。ネットからの御発言のある方は「手を挙げる」ボタンを押していただければ、こちらから御指名させていただきます。いかがでしょうか。
 砂川委員ですか。
○砂川委員 お疲れさまです。国立感染症研究所実地疫学研究センターの砂川です。
 1点質問と1点コメントです。ノロウイルスによる食中毒の事件数が減少しているということで、新型コロナ対策の影響もあって全般的に減っているのだろうと思うのですけれども、調理従事者を原因とする食中毒が、倉敷の事例はありましたけれども、全体として割合が減っているようだとか、そういった所見があるかということが質問です。
 あと、コメントとしては、最後のほうで、感染性胃腸炎ということで、ノロウイルス、サポウイルスの情報をお話ししていただきましたけれども、感染性胃腸炎が入口ではありますが、この情報は病原体サーベイランスに関する情報なので、感染性胃腸炎と、ちょっと丸め過ぎかなと。それよりは、ノロウイルス、サポウイルスの動向と言っていただいたほうが、聞いている方が間違わないかなと思いましたので、ちょっとコメントさせていただきました。
 以上です。
○五十君部会長 事務局、いかがでしょうか。
○高橋食中毒被害情報管理室長補佐 砂川先生、ありがとうございます。
 御質問のノロウイルスの発生の原因のところですけれども、令和3年、2枚貝による食中毒が特に増えているという状況は見られておりません。報告されているものとして多いのは、従業員由来のものが多く報告されている状況です。具体的な数値までは把握できてはおりませんが、傾向としては従業員由来のほうが多い状況です。
 以上でございます。
○砂川委員 どうもありがとうございます。
○五十君部会長 よろしいでしょうか。
 ほかに御質問等ございましたら、お願いします。よろしいですか。
 私から、コメントになるかと思いますが、資料の2ページ辺りを見ますと、事件数・患者数が順調に減っているようです。昨年もそうだったのですが、かなり全体的に減っているなと思われますが、500人以上の大型の事例が複数件発生していて、今年も2事例ですか、500人以上の大型事例が出ており、この患者数だけで4000人を超えています。一方、この統計では、患者数は1万1000で、そのうちの4000は大型事例だということになると、実質的には、事件数・患者数ともかなり減っているかなという印象を受けました。
 これは、恐らく新型コロナの影響なのか。あるいは、食品衛生法の改正が影響しているのか、その両者なのかといった考察がされる部分かと思います。その辺の判断は非常に難しいかとは思いますが、もう少し新型コロナの状況が変化してから、そういった考察をしていただくといいのではないかと思いました。
 事務局、これに関しては、何か追加コメントはありますか。特にございませんか。
○三木食品監視安全課長 監視安全課の三木でございます。
 五十君先生、今おっしゃられたように、食品衛生法が改正されまして、昨年6月からHACCPが義務化されております。これは、全ての営業者に義務づけされておりますので、衛生管理についてはベースアップするという見込みにはなっておりますけれども、今、全て完璧にやられているかというと、そうではないという部分もありますので、その辺については、またこちらのほうでも整理させていただいて、食中毒の発生との関連について検討させていただければと思っております。
 以上です。
○五十君部会長 ありがとうございました。
 基本的には、新型コロナ対策で手洗いが徹底されていることがかなり効いていると思います。少しずつ動向を見ながら、法律改正の影響も探っていくとよろしいと思いましたので、コメントさせていただきました。
 そのほか、委員の皆様から御質問等ございますか。よろしいですか。
 報告事項ですので、次に参りたいと思います。
 続きまして、報告事項といたしまして、「令和3年に発生した主な食中毒事件」として、富山市で発生いたしました牛乳による集団食中毒の報告になります。富山市の事例につきましては、富山市保健所の鈴木課長ほか、食中毒事件の調査や原因究明に携わった国立感染症研究所の八幡主任研究官、本部会の委員でもあります国立医薬品食品衛生研究所の工藤委員の順に御報告いただきたいと思います。
 それでは、まず鈴木課長から御発言をいただきたいと思います。富山市、鈴木課長、お願いいたします。
○鈴木参考人 富山市保健所の鈴木です。
 それでは、富山市内の学校給食で発生しました集団食中毒について報告いたします。よろしくお願いいたします。
 1ページをお願いします。事件の概要でございますが、本市の学校保健課やこども保育課などから、腹痛、下痢、嘔吐の症状による欠席者が多数発生している旨の通報がありました。患者数は1896人。その内訳は、小学校1097人、中学校481人、保育所などで318人となっております。主な症状は、腹痛、下痢、発熱です。原因食品は牛乳で、病因物質は病原大腸菌OUT(OgGp9):H18の疑いでございます。
 2ページをお願いいたします。探知情報ですが、事件は6月17日の午前に本市の学校保健課から、複数の小中学校で200人から300人が腹痛・下痢のため欠席していると情報提供がありました。このほか、本市こども保育課などからも同様の連絡がありました。保健所では、学校・保育所単位で患者調査及び検便を依頼しております。
 3ページをお願いします。本市の給食献立の状況です。
 本市の市立小学校は、5つのブロックで各学校や保育所で調理する自校調理と、2つの給食センター調理に分かれていました。メニューは、そのブロックごとに異なり、そのうち2つのブロックと1つの給食センターの学校に欠席者が多数発生していました。
 次に、欠席者が多数発生していた中学校では、給食センターで調理されたメニューを配送しており、メニューは2つのブロックで異なっていました。
 保育所は2つのブロックに分かれており、メニューはブロックで異なっており、自校で調理していました。
 その他の学校は、メニューはそれぞれ異なり、自校で調理していました。
 いずれの学校や保育所においても、適切な加熱調理や洗浄消毒が行われており、調理状況に問題はありませんでした。
 欠席者が多数発生した学校や保育所などでは、給食の献立はそれぞれ異なっており、共通食材は牛乳でした。本市では、牛乳は3社が納入していましたが、欠席者が多数発生した学校や保育所では、乳処理施設Tの牛乳が納入されていました。
 4ページをお願いします。原因施設である乳処理施設Tの従業員は、代表者を含め6名であり、月曜日から金曜日で午前5時から11時までの稼働となっていました。製造状況は、1日当たり生乳を1600kgから1800kgを受け入れ、200mLの牛乳パックを6000本から7000本、500mLや1Lを10本から20本製造しておりました。
 5ページをお願いいたします。探知後の経過です。
 保健所に連絡のあった6月17日には、学校、保育所を通じて患者調査・検便の依頼をしています。保健所では、施設Tに立入調査をしております。その際に、従業員の検便、施設の拭き取り検体を採取しています。また、この日は給食時に提供予定だった牛乳の提供を停止し、施設T社は自主回収をしております。
 翌18日には、再度、施設Tに立入調査をし、T社は営業を自粛しています。また、国立医薬品食品衛生研究所に検査依頼を行い、検体を送付しています。
 6ページをお願いします。
 19日には、1つには、患者は6月16日から17日にかけて腹痛、下痢、嘔吐、発熱等の症状を呈しており、何らかの暴露があったと判断したこと。
 2つには、複数の施設において発生した患者の共通食は、当該施設において製造・販売された食品しかないこと。
 3つには、これらのことにより、患者は当該施設において製造された食品を喫食したことから発症したものと判断したこと。
 以上のことから、施設Tにおいて製造した牛乳を原因とする食中毒と断定し、再発防止策が講じられるまで営業禁止処分としました。
 7ページをお願いいたします。
 6月19日には、富山県が緊急連絡会議を開催し、情報の共有をしております。
 20日には、保健所の検査により、6月15日と16日に提供された牛乳から大腸菌群が検出されています。
 21日には、市内の乳処理施設3か所の立入調査を開始しております。
 28日には、国立感染症研究所等と協力して調査を開始しています。
 7月1日は、第1回の専門家会議を保健所で開催し、専門家の皆様から御意見をいただいております。
 19日には、施設から改善計画書の提出を受け、改善箇所の確認をしております。
 23日には、改善した施設Tで牛乳の試作を行い、検査の結果、問題のないことを確認しております。
 28日に、第2回目の専門家会議を開催し、専門家の皆様から御意見をいただき、8月2日に営業禁止の処分を解除しております。
 8ページをお願いいたします。
 次に、症例定義でございますが、学校給食において提供された乳処理施設T製造の牛乳を6月15日、16日のいずれかの日、もしくは複数日にわたり飲用した者。牛乳を飲用した後、腹痛、下痢、嘔吐のいずれかの症状を呈した者。これらについて、調査票から確認できた者でございます。
 9ページをお願いいたします。患者の年齢別の発生状況ですが、発生施設が小学校、中学校、保育所ですので、男女とも14歳までの方が98%近くを占めてございます。
 10ページをお願いいたします。日時別の発生状況です。赤い矢印部分が給食の時間であり、16日の給食後に患者が急に増加しております。
 11ページをお願いいたします。症状別の発生状況です。腹痛77%、下痢が52%となっています。そのほかの症状としては、発熱、吐き気、頭痛、嘔吐の順に多くなっています。
 続いて、12ページをお願いいたします。患者の施設別の発生状況です。小学校、中学校、保育所ともほぼ同じ割合であり、30%程度になっております。
 13ページをお願いいたします。乳処理施設Tの製造工程です。まず、生乳受入タンクにタンクローリー車で運ばれてきた生乳が入ります。バランスタンクを経由して予備加熱をします。その後、保持タンクへ送られ、均質機、ホモジナイザーで脂肪分を潰して、
 殺菌機に送られます。当該施設の殺菌機はプレート式になっており、128℃で2秒間の加熱殺菌をし、すぐに冷却され、サージタンクに送られます。その後、充填包装機でパックに充填し、冷蔵庫に保管しております。
 立入調査において、下部の矢印にあるように、手洗い洗浄の工程とCIP洗浄をしている工程が判明しております。
 14ページをお願いいたします。施設Tでの6月14日から16日までの3日間の牛乳の製造状況です。14日に提供された牛乳は、11日の金曜日に製造されています。15日に提供された牛乳は、前日の14日に製造されています。16日提供分は15日に製造されています。ほぼ学校給食向けの200mLパック牛乳が主流であり、1日当たり6000本から8000本を製造しております。
 15ページをお願いいたします。立入調査で確認した衛生管理の状況です。問題のあった箇所のみ説明いたします。
 まず、製造工程でございますが、生乳の受入れの際、従業員は風味確認のため未殺菌乳を飲用しておりました。生乳受入タンクの洗浄方法でございますが、洗浄のためタンクに入る際は、タンク専用の長靴ではなく、施設内で使用している長靴を消毒液に浸した後にタンクに入っておりました。生乳受入タンク下部の洗浄ライン接合部に残留物がありました。
 16ページをお願いいたします。続いて、従事者の手袋の取扱いですが、使い捨て手袋を使用しておりましたが、汚染度の高い作業の後でも交換されていませんでした。また、紙パックの成形不良品の製造記録はありませんでした。
 続いて、17ページをお願いいたします。製造機器の管理状況ですが、ホモジナイザーの圧力計に誤差があり、実際より大きな値が表示されていました。プレート式殺菌機は、令和2年8月にプレートの交換を行っていました。温度センサーは測温抵抗体でありましたが、その絶縁がやや低下していたため、抵抗が大きくなっていました。また、設定温度になっていない牛乳を再加熱するためのデバージョンバルブ、FDVのことですが、これは測温抵抗体による温度に連動していました。
 洗浄剤・殺菌剤の使用状況ですが、直射日光が当たる場所で保管されていました。また、清拭用タオルや手袋を、洗浄剤で十分に汚れを落とすことなく、塩素水を使用していました。
 そのほか、製造日が管理されていない製品がありました。また、検食用の牛乳は保管されていませんでした。
 続いて、18ページをお願いいたします。次に、市保健所での検査状況です。
 検便は、患者64名、従業員6名から採取し、そのうち患者62名で大腸菌O型が陽性、従業員2名が同じく大腸菌O型が陽性となっています。
 牛乳については、6月15日と16日に提供されたものから大腸菌群陽性、大腸菌O型陽性となっております。
 19ページをお願いいたします。施設への立入調査で拭き取りした検体の検査結果から、セレウス菌が検出されております。
 また、外部委託業者の検査で6月14日から16日の間に提供された牛乳は、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンの陰性を確認しております。
 20ページをお願いいたします。生乳の遡り調査です。生産者は、県内5つの酪農家です。タンクローリーで初めに県内の他市町村にあります乳処理施設に約半量を納入し、残りの半量を今回の施設Tに納入しております。先に納入された施設で製造された牛乳には苦情はなく、施設Tで食中毒が発生しております。
 21ページをお願いいたします。続きまして、国立医薬品食品衛生研究所での検査状況です。
 患者64名中61名の検便検査で、大腸菌OUT(OgGp9):H18が陽性となっております。また、従業員6名中2名から、同じ型の大腸菌が検出されております。
 22ページをお願いいたします。牛乳からは、6月14日、15日、16日に提供されたものからセレウス菌が検出されております。16日に提供された牛乳からは、検便から検出された同じ型の大腸菌が検出されています。17日に提供予定であった牛乳からも、同じ型の大腸菌が検出されております。15日に提供された牛乳から、保健所の検査で検出された大腸菌を国衛研に送り、検査していただいたものからも、同じ型の大腸菌が検出されています。
 23ページをお願いいたします。立入調査で施設から拭き取りをした付着物を国衛研のほうに送りまして検査していただいた結果からは、いずれの菌も検出されていませんでした。
 24ページをお願いいたします。調査・検査結果のまとめです。
 製造工程上の問題点です。
 まず、複数の製造機械の故障が判明しており、プレート式殺菌機の温度感知機能が低下していました。また、ホモジナイザーの圧力計が故障していました。
 次に、製造機械類の洗浄方法が不適切でした。CIP洗浄をしない生乳受入タンクからバランスタンクまでの配管洗浄方法や頻度に問題がありました。
 殺菌後の牛乳を貯蔵するタンクの空気取入口であるベント部分が外気と接触する構造をしていました。
 殺菌剤の保管状況や使用時の濃度の管理が不適切でした。
 汚染度の高い作業の後でも手袋を交換していませんでした。
 各工程での記録が抜けていました。
 25ページをお願いします。それらの問題点について、従業員には次のような改善点を指導いたしました。
 1つ目、機械類の故障がありましたので、定期的な点検、校正及び必要時には交換するよう指導いたしました。殺菌後の牛乳を貯蔵するサージタンクのベント位置が外気と接する構造をしていたので、位置を変更いたしました。
 2つ目、機械などの洗浄・消毒方法に不備がありましたので、洗浄方法の変更や消毒方法の徹底を指導いたしました。
 3つ目、製品の安全管理の徹底を指導いたしました。製造機械の適正な確認の徹底。殺菌剤の適切な保管及び使用。汚染度の高い作業の後の手洗い消毒の徹底、手袋の交換。生乳受入タンク洗浄時には専用の履物を使用するよう指導いたしました。
 4つ目、生乳受入検査の適切な実施と、作業工程ごとの記録。製造ロット管理及び検食の保管を指導いたしました。
 26ページをお願いいたします。行政判断です。
 原因食品は、6月15日と16日に提供された乳処理施設T製造の牛乳です。
 病因物質は、病原大腸菌OUT(OgGp9):H18の疑いです。
 行政処分としては、旧法の食品衛生法第55条に基づき、6月19日から8月1日までの期間、営業禁止命令としております。
 理由については、記載のとおりでございます。
 27ページをお願いいたします。考察です。
 今回、食中毒に至ったと推定される要因ですが、1つ目、作業工程全般に記録が少なく、経験に基づいて製造されていたため、作業工程が確認不足になる可能性がありました。また、作業工程が変更されても、手袋を交換していませんでした。消毒液である次亜塩素酸ナトリウムを、直射日光の当たる工場内に保管していました。作業区域ごとに2つの消毒液のバケツを準備していましたが、生乳を拭いた清拭布や手袋も消毒液バケツで洗浄していたため、消毒液のバケツが汚染の原因になっていた可能性がありました。
 2つ目、殺菌前の工程です。当該施設では、生乳受入試験時に、従業員が未殺菌乳を飲用しており、従業員の検便検査の結果、当該菌を保菌していました。生乳受入タンク内の清掃時に、施設内で使用している長靴を消毒液に浸した後にタンク内に入っていたので、汚染の可能性がありました。生乳受入タンクからバランスタンクまでは、CIP洗浄が未実施で、ライン接合部には残留物があり、セレウス菌が検出されました。
 28ページをお願いします。3つ目、殺菌温度ですが、当該施設では、配電盤に表示される温度に基づき、加熱温度を調整し、殺菌機温度を自動調整するシステムでありました。温度測定は、測温抵抗体で測定した抵抗値を温度に変換するシステムでありました。測温抵抗体は、経年変化により、一部断線していることが定期点検で判明しており、交換するために発注中でありました。立入調査において、6月14日に落雷があったことを把握しており、落雷により断線が進み、抵抗値がより大きくなり、配電盤に表示される温度は殺菌する温度を示しておりましたが、実際の殺菌温度は低くなっていた可能性がありました。デバージョンバルブ、FDVは、配電盤表示温度により発動されるため、実際の殺菌温度が低くなっていても発動しなかった可能性がありました。
 4つ目、殺菌後の汚染です。国立医薬品食品衛生研究所の検査結果により、殺菌後の工程において牛乳の汚染が示唆されました。サージタンクのベントが外気と接触する構造となっていたので、その部分からの汚染の可能性がありました。また、作業前の清拭により、充填機及び牛乳パック整列台からの汚染の可能性がありました。
 29ページをお願いします。再発防止策です。
 1つ目、作業工程全般ですが、作業工程ごとの手袋の交換。作業工程ごとの手袋のアルコール消毒。消毒液の適正な保存と使用。HACCPプランの点検、見直し、更新。従業員への定期的な衛生教育。保管用冷蔵庫温度の自記記録です。
 2つ目、殺菌前の工程です。生乳受入タンクからバランスタンクまでのCIP洗浄ラインの新設。圧力計の交換です。
 3つ目、殺菌温度対策として、測温抵抗体の交換。また、接触温度計を導入し、殺菌温度保持配管での表面温度の測定と記録です。
 4つ目、殺菌後の汚染対策ですが、配管パッキンの交換、サージタンクのベント位置の変更です。
 30ページをお願いします。今後の課題ですが、1つ目、調査については、小学校、中学校、保育所での調査は、学校単位で担任の先生等に調査していただくこと、患者数が膨大であること、父兄等から聴き取り調査や検便の協力が得られにくい状況があったこと。これらのことから、調査には限界がありました。
 2つ目、検査については、中核市の保健所では検査可能なものに限度があったため、牛乳や患者便から検出された大腸菌の病原性や遺伝子型、耐熱性などの性状については、厚生労働省を通じ、国立医薬品食品衛生研究所に検査依頼を行っております。
 最後に、御協力をいただきました厚生労働省をはじめ、国立医薬品食品衛生研究所、国立感染症研究所の関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。
 以上で報告を終わります。御清聴ありがとうございました。
○五十君部会長 富山市保健所の鈴木課長、集団事例に関しまして詳細な御報告ありがとうございました。
 続きまして、国立感染症研究所の八幡主任研究官に御説明をお願いしたいと思います。資料3-2を御用意ください。
○八幡参考人 国立感染症研究所の八幡です。よろしくお願いいたします。
 私とともに、土橋、砂川が一緒に調査に参りました、富山市の学校給食における牛乳を原因とする食中毒事例の疫学調査の解析について御報告させていただきたいと思います。
 2ページ目をお願いしたいと思います。まず、アウトブレイクの探知ということで、6月17日ですけれども、先ほどの富山市保健所さんからも御報告がありましたように、市内の学校から464人の欠席者、または早退者がいたということが把握され、アウトブレイクが探知されました。同日に、共通食材がT乳業の牛乳ということが判明したために自主回収が行われたという経過をたどっております。翌6月18日にはT乳業が自粛し、6月19日には営業禁止という処分がなされております。6月28日に国立感染症研究所実地疫学研究センターへ、富山市から調査協力依頼がありまして、我々3人が調査支援を開始いたしました。
 本調査の目的になりますけれども、アウトブレイクの全体像の把握。それから、原因の検討及び中小の牛乳製造会社における再発防止策の検討ということをいたしました。
 続いて、3ページになります。こちらは、対象と方法になりますけれども、まず調査対象は、全体像で把握するということで、市内の25の学校、保育所、幼稚園に所属する者で、令和3年6月14日から18日に消化器症状または発熱症状を呈した者で保健所へ報告があった者といたしました。
 立入調査は、T乳業に行いました。
 欠席者調査に関しましては、市内の学校、保育所及び幼稚園のうち、給食ブロックの第2と第5ブロックに在籍する児童・生徒といたしました。こちらは、絞り込みをかけてということで行っております。また、後ほどの表でお示しさせていただきます。
 それから、3つ目の調査としまして喫食調査ということで、2つの小学校の4年生から6年生を対象に全員行いました。
 方法に関してですけれども、情報収集は、まず富山市保健所さんが実施いたしました疫学調査、立入調査、聴き取り調査等の情報を収集しました。それから、26の学校が利用した牛乳業者と在籍者数、そして、6月7日から18日までの欠席者数の情報を収集しました。こちらは、解析疫学のほうに利用しております。
 それから、3つ目の喫食調査のところ、後ろ向きコホート調査で行っておりますけれども、6月7日から16日までの給食における各日のメニューに関して質問紙票を配付して回収いたしました。これは、上の対象の3のところの小学校4、5、6年生の調査になります。
 立入調査の部分に関しては、T乳業で聴き取りを行ったものとか、記録・マニュアル等の資料を収集し危害分析を行いました。
 続いて、4ページからが全体像の把握となります。
 5ページに参りたいと思います。5ページは、流行曲線が表示されています。この流行曲線ですけれども、横軸を1時間単位で作成し、示しております。矢印があるかと思うのですけれども、色別に病原体の潜伏期を示しております。
 まず、セレウス菌は緑色で表示されておりまして、下向きになっている矢印の最初のところですと最短潜伏期2時間となっていますが、最短の潜伏期を表しています。それから、上のほうに行きますと、横に長い線に矢印がついていると思うのですけれども、最短の潜伏期から最長の潜伏期、2時間から12時間までの範囲を表しています。それから、平均潜伏期が太い矢印になっています。こちらは、時間が書いてありますとおり、6時間から12時間ということになります。この潜伏期がセレウス菌です。大腸菌はオレンジとピンクに分けております。オレンジのほうが6月15日の喫食分、ピンクのほうが6月16日の喫食分ということで、最短の潜伏期間、平均の潜伏期間、そして太い線が潜伏期間の範囲ということで示しております。
 そうしますと、まずセレウス菌ですけれども、右側のほうにセレウス菌では説明がつかない発症者が発生してきているということがこちらで見えることになります。それから、オレンジの線、ピンク色の線ということで、6月15日、16日の喫食から見てみますと、大腸菌の潜伏期の範囲の中に症例が入ってきているということが、この図で分かるかと思います。
 続きまして、6ページの表になります。6ページは年齢階級別の症例数を示しております。まず、全体の症例数を見ていただきたいと思うのですけれども、年齢階級別で見ると1歳から14歳までの年齢階級のところに多く症例があることが見えます。それから、症状別に見ていきますと、多いのが腹痛、続いて下痢というものになっています。これらは半数を超えているものになります。それから、発熱に関しましても3割程度の割合で見られているということになります。
 続きまして、7ページの表になります。こちらは、学校別の年齢階級別喫食数における発症割合ということで示しております。学校、保育所、幼稚園等が掲載されていますけれども、喫食した数を分母とし、そのうちの症例数ということで発症割合を算出しております。20歳未満の方々の発症割合というのが、平均で見ますと33%になっております。それから、20歳以上のところを御覧になっていただくと、喫食した数の725が分母となりまして、症例数16としておりますが、こちらは、17人いるのですけれども、1校だけ分母の喫食数が分からないので抜いております。ですので、725人の喫食のうち16の症例が発生し、2%という状況になっておりました。
 続いて、8ページの表に参ります。保育所及び学校の便検体から検出された微生物ということで見ていきますと、最も多かったのがOgGp9ということで、先ほど富山市保健所さんの御報告にもありましたように、大腸菌が一番多く単独で出ていたということです。
 それから、他の複数の病原体が検出された件数が10件ということで、2番目に多くなっておりました。
 続いて、9ページになります。学校の牛乳と便検体から検体されたOgGp9の分布を見ております。こちらの分布ですけれども、まず11の施設の牛乳からOgGp9が検体されております。それから、症例のほうの便検体から検体されたOgGp9と、従業員も含めて10のOgGp9が出ておりました。このうち、学校と保育所のほうになりますけれども、OgGp9が牛乳、便検体の両方から出ていたのが4施設ということになります。ですので、牛乳と便検体と、両方同じものが出ていたところが4つほどあったということが、ここで確認できました。
 続いて10ページに参ります。10ページは、従業員の方への検査になります。従業員の方の検査に関しましては、6月17日から21日の事故発生後に検便したものが左のところにあります。その中で、3番と6番の方からOgGp9が検出されました。それぞれ業務担当が書かれておりますけれども、1番目と2番目の方が配達で、3番目以降の方々が様々なライン等に関しての担当ということになっております。また、この6番の方が主に殺菌機等の作業に一番従事されていたということであったり、充填機の担当もされているということが挙げられました。
 この表の一番右側になりますけれども、事件が終わって再開前の段階で採った検便に関しての結果も掲載されております。この中でOgGp9が検出された方が3番の方になります。この方は、事故後と再開前の検便でOgGp9が検出されているということになっております。
 続きまして、11ページになります。11ページは、OgGp9、それからOgGp9以外の大腸菌が検出された方々だけを流行曲線として作成してみました。
 まず、一番多かったのが6月17日の午前5時の5例ということになります。続いて多かったのが3か所あるのですけれども、6月16日の19時、6月17日の6時、12時というのが3例ということになっております。全て給食、6月15、16日の後に発生しているということも挙げられますので、潜伏期の期間を経て発症しているという様子がここでも見えるかと思われます。
 続きまして、12枚目に参ります。12枚目からは欠席者調査ということで、欠席者の方、それから乳業業者を利用しているところとの解析をいたしました。
 13ページにその結果を掲載しております。こちらは、下から6月7日、8日、9日と上がっていって、一番上が6月18日までの期間について検討しています。そして、空いている12、13日は土曜日、日曜日となっております。ここでの特徴は、16日から18日までの3日間は、有意にT乳業を利用している方が利用していない方よりも欠席しているという結果になっております。そして、17日、18日はリスク比が11とか18.32ということで、非常に高い値を示しているということがこちらの所見として挙げられます。
 続いて、14ページからは喫食調査になります。学校のほうで協力が得られた児童・生徒さんたちに対してですけれども、調査票を配って、何を食べたかということと、症状が出たかというのを見ている解析になります。
 その結果が15枚目になります。15枚目を見ていただきますと、牛乳はどれもリスク比が2前後になっております。そして、95%信頼区間が1をまたいでいるということで、有意ではないというのが、まず1つの所見として挙げられます。その理由として、喫食の割合を見ていただくとよく分かるかと思うのですけれども、全て90%を超えている値になっておりますので、実は必要なサンプルサイズ等を計算していくと、かなり膨大な数の量でないとうまく計算ができないということになります。ですので、この喫食の割合が高いということで、リスク比として出しにくいということも考えられました。
 続いて、16ページになります。16ページは牛乳以外の食べ物についての解析結果を下の表に示しております。この下の表に挙げているたまねぎ、グリーンサラダ、ニンジンというのがあるのですけれども、たまねぎ、ニンジンは各施設で共通して利用されている食材ということで抽出しています。他の物はかなりばらけていたので、このたまねぎ、ニンジンというのが挙がっています。それから、グリーンサラダということで、こちらは、もしかすると生食の可能性があるということで挙げております。この解析結果になりますけれども、全て1を下回る値でのリスク比ということと、もう一つは、95%信頼区間が1をまたいでいるということで、有意ではないということが挙げられました。
 それから、どのような手順をされているのかということで、加工調理の部分ですけれども、伺ってみたところ、この2校に限ったことではなく、市内の関係する学校になりますけれども、いずれの学校も十分な加熱の殺菌をしているということが挙げられます。そして、それらについてはマニュアルに記載されていますし、記録も十分取っていらっしゃるということになります。
 それから、サラダに関しましても、生では提供していなくて、加熱調理後に提供するということが全ての施設から報告があったことになります。こちらに関しても、マニュアル、記録というものがございました。ですので、十分な調理の状況であるということが考えられました。
 続きまして、流通のほうに参りたいと思います。遡り調査と流通先の調査ということになります。これが17枚目になります。
 続いて、18枚目になりますけれども、18枚目には遡り調査と流通先調査を示しております。遡っていきますと、富山市保健所さんからもありましたように、酪農農家5軒から集乳した牛乳を2つの乳業会社に提供されました。S乳業とT乳業の2つに提供されておりまして、S乳業のほうは他の地域の学校に納入されておりまして、こちらは、有症苦情は特になかったという所見があります。
 それから、T乳業のほうですけれども、学校以外にもスーパーとか小売、病院等の医療機関、あと高齢者関連の施設ということで、特養とかケアハウスに流通がありました。そして、牛乳のタイプなのですけれども、学校関係、病院、施設等に関しましては、ほぼ200mLのタイプになっております。保育所か幼稚園が200mLタイプでしたけれども、500mLのところが1か所だけありました。あと、スーパーは1Lのタイプということですけれども、学校以外からの有症苦情というのは、T乳業からもありませんでした。
 続きまして、19ページの配送のところで何か特徴がないかということを見るために情報収集して見てみました。1号車と2号車の2つに分かれて配送が行われていることが分かりました。この1号車に関しましては、T乳業を出発するときに全ての配付先、小学校、保育所等への全ての数を載せて配送して終了というものになっています。それから、トラックの2号車のほうになりますけれども、こちらは、線が区切れていたりするのですけれども、nこども園だけ500mLを配送していたので、ちょっと区切れているのですけれども、他は200 mLです。このl小学校からr保育所まで一旦配送して、T乳業に戻り、残りのu小学校からy中学校までを配送されていたということになります。
 そして、製造番号が6月16日のところだけ少し飛んでいて、これは製造日がちょっと違うものが入っていたということで、違う表記になっていますけれども、配送自体のuからyまでの流れは変わりありませんでした。
 どこのルートとか、どこから先に特徴的に症例が発生しているという所見もこちらではありませんでしたので、配送での事故というところは所見としては挙げられませんでした。
 続きまして、20ページからが牛乳の製造ということになります。
 続いて、21ページになりますけれども、牛乳の製造工程と危害発生の可能性について、先ほど富山市保健所さんからの御報告がありました図に重ねて挙げてみました。1から9の数が書いてありますが、これがハザードとして挙げられる箇所ということで、9か所、ハザードが挙げられました。このハザードに関して、富山市保健所さんから詳細な御説明がありましたので、私のほうからは簡単な説明にしたいと思うのですけれども、まず1番目の生乳タンクですと、不適切な洗浄です。
 それから、2番目はストレーナーに行く接続部分になりますけれども、手洗いが毎日行われていなかったということで、固形物が残っていたという御報告があったとおりだと思います。
 それから、ストレーナーのところになりますけれども、バランスタンクまでの洗浄がCIP洗浄ではないということが挙げられました。
 それから、右のほうの上、均質機のところですけれども、先ほども故障していたということで、圧力計の故障が挙げられます。
 続いて、5番目の殺菌機のところですけれども、流量とか殺菌時間の目視の確認というところが挙げられたり、デバージョンバルブの辺り、温度の感知といったところでの不具合というところが挙げられます。
 続いて、6番目のサージタンクになりますけれども、牛乳の流れありと書いてありますが、こちらは、スプレーボールのところに牛乳が流れてしまうという構造がありました。レバーを引くと、スプレーボールのところに牛乳が流れるということがありました。それから、このスプレーボールを手洗いしていたということも挙げられます。通常はCIP洗浄で洗浄されているのですけれども、それに加えての手洗いというところが何らかの汚染の可能性があるということで挙げさせていただいております。
 それから、6番目から先になりますけれども、パッキンの不良とか乳漏れというところが一部あったということが挙げられます。
 続いて、充填機のところは衛生的な作業ができていなかったということで、先ほど富山市保健所さんもおっしゃっていた部分になると思うのですけれども、こちらの衛生管理がうまくできていないということが挙げられます。
 それから、冷蔵庫の部分になりますけれども、冷蔵庫は温度記録がなかったということも挙げさせていただきました。
 続いて、これらの情報を基に危害分析をし、それから発生の可能性ということを評価したものになります。
 まず、1番から4番までの殺菌前の部分、それから5番以降の殺菌後の工程ということで分けてみますと、5番から後の部分に危害が多いということが挙げられます。
 それぞれ見てみますと、殺菌機のところでは複数の危害発生の可能性あり、または否定できないというものが挙げられています。温度の検知の部分であったり、配線の話というところが特徴的かと思われます。それに付随して、フローデバージョンバブル(FDV)の動作も挙げられるかと思います。
 それから、サージタンク、先ほど申し上げましたスプレーボールの件です。
 それから、富山市保健所さんが申していらっしゃったように、ベントの部分が外気と接触するというというところでも危害の可能性がありというところで挙げさせていただいています。
 それから、充填機のところも衛生的ではないということで、危害の可能性が否定できないのではないかというところを挙げております。
 それから、一般衛生管理につきましても、富山市保健所さんの御報告のとおり、いろいろ衛生的ではない部分がありましたので、危害の発生の可能性あり、または否定できないという評価としております。
 続きまして、23ページから考察になります。
 まず、汚染の可能性ということで、6月14日から15日にT乳業が製造した牛乳を摂取した方から有症者が発生しております。
 このT乳業が製造した牛乳を摂取した児童・生徒が有意に欠席していたという所見です。
 それから、便検体、牛乳検体からこのOgGp9:H18の検出という点です。
 それから、牛乳以外の食品に関しては共通の汚染の可能性が考えにくいという点です。
 そして、T乳業の製造プロセスの危害発生の可能性という部分が多数あるということを踏まえて、原因食品としては、6月14日から15日にT乳業が製造した牛乳がOgGp9:H18に汚染されていたという可能性が考えられるという点が挙げられます。
 そして、汚染はどのように発生したのかということですけれども、T乳業の加熱殺菌が十分でなかったという可能性、または加熱後に汚染された可能性のいずれかではないだろうかということが考えられました。
 そして、これらの再発予防策ということですけれども、T乳業の製造工程での危害発生の可能性のある箇所について、例えば加熱の部分、サージタンクの部分、牛乳充填機などを重要管理点として捉えて、再発予防策を行うということで、例えば定期的な点検、機械類の劣化の検知、記録の整備、マニュアルの整備といったことが今後の防止策として挙げられるということになります。
 続いて、24枚目になりますけれども、遡り調査・流通先調査の点からの考察になります。
 可能性のある病原体ということで、先ほど来ありますように、便検体・牛乳検体からOgGp9が検出されているということで、OgGp9を起因病原体として考えられるということと、もう一方で、セレウス菌も出ていたので、こちらについても考察してみましたけれども、発生状況、潜伏期、症状ということで、セレウス菌は嘔吐型でしたので、嘔吐の症状を呈する者は余り発生がなかったということで、否定的なものであるということが考えられましたので、可能性のある病原体はOgGp9、病原性大腸菌ということが挙げられます。
 続いて、遡り調査・流通先調査から、T乳業と同じ農家から流通した牛乳からの有症苦情がなかったということ。それから、病院、高齢者施設、小売店からの有症苦情もなかったという結果がありました。これを踏まえて、T乳業における製造工程で起因病原体の不活化が十分にできなかった可能性、あるいは何らかの汚染ということが挙げられました。ただ、どちらかということは現状の状況とか情報から判断することは難しいということが考えられます。
 調査における制限ですけれども、思い出しバイアスという点。それから、調査中に乳業会社が改修してしまって、情報収集が十分できなかった箇所が存在しておりました。ですので、情報が十分に得られない部分があったことになります。
 続いて、25ページの提言になりますけれども、牛乳製造の最優先重点管理ということで挙げる部分として、殺菌機、サージタンク、充填機に関して、少なくとも年1回の保守点検、部品交換です。それから、機器の劣化を検知できるような体制の整備です。そして、汚染防止のためのマニュアル策定の実施ということを挙げさせていただきます。
 それから、ほかの重要管理点に関しましても、危害発生の可能性のある部分に関しては、重要管理点の作成と実施が必要であると考えております。
 それから、一般衛生管理に関しましても重要な点でありますので、指摘があった手指消毒、清潔な長靴の利用等の徹底、それから、記録といった管理が必要ということで、そういったことをすることを提言させていただきます。
 最後の26ページですけれども、御協力いただきました富山市保健所、富山県衛生研究所、富山市内の学校、保育所、幼稚園、こども園、国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部、国立感染症研究所細菌第一部の皆様に深謝いたします。
 以上で私からの説明は終了したいと思います。ありがとうございました。
○五十君部会長 八幡主任研究官、どうもありがとうございました。
 次に、資料3-3につきまして工藤委員から御報告をお願いしたいと思います。時間がかなり押しておりますので、15分程度で簡潔にお願いしたいと思います。
○工藤委員 手短に御説明いたします。国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部では、富山市保健所からの依頼を受けまして、原因食品、牛乳からの原因物質調査と、分離されました大腸菌の病原性について試験を行いましたのでの御説明をさせていただきます。
 2ページ目、お願いいたします。探知された後、比較的早い段階に富山市保健所から検体、牛乳が送られてまいりました。事前情報といたしまして、毒素型の食中毒が疑われるのではないかというコメントをいただいておりましたので、まず、ここにありますような毒素型の食中毒の原因となりますブドウ球菌エンテロトキシンなど、毒素につきまして、市販キットや機器分析によって検査をいたしましたが、いずれも陰性の結果でした。また、毒素を産出するブドウ球菌やセレウス菌について培養して検出したのですが、ブドウ球菌については陰性。セレウス菌については、嘔吐毒、セレウリドを産生する株を検出したのですが、食中毒の発生に関係ないとされる日の牛乳についても分離されておりましたので、特異的に食中毒に関連しているということではないと考えられました。
 そのため、感染型の食中毒も疑いまして、症状の下痢、腹痛、発熱、嘔吐を対象にしまして考えましたところ、ここにありますサルモネラ菌やListeria、Escherichia albertiiなど、それから大腸菌が考えられました。サルモネラ、Listeria、E. albertiiにつきまして遺伝子検出等も含めて検査しましたが、いずれも陰性でありました。ただ、病原大腸菌につきましては、食中毒の原因となったと疑われる15日、16日の両日の牛乳から特異的に大腸菌株が多数出てくるという状況でした。
 このため、この大腸菌の型別をしたのですけれども、O抗原につきましては血清凝集試験では判定が不能でありました。O抗原の遺伝子型タイピングというのがあるのですけれども、O-genotypingではOgGp9のグループに入ることが分かりました。これは、ここにあります5つの血清型のどれかということになります。ただ、この5つをひとつずつ血清凝集に当てたのですけれども、はっきりしたことが分からず、血清凝集としてはOUTとなります。H抗原についてはH18でありました。ですので、ここでは大腸菌OUT(OgGp9):H18とさせていただいております。
 次に、この大腸菌が患者の発生に関与しているのかということで、富山市保健所から便検体を培養した平板培地を送っていただきました。従業員6名と患者64名の便検体なのですが、生育コロニーを見させていただいたところ、大腸菌の特徴を示すコロニーのみが多数生育している患者さんがかなり多かったということ。それから、その大腸菌を拾ってタイピングしたところ、1個拾っても3個拾っても全部がこのOgGp9であったという状況で、結果的には従業員6名中2名、患者64名中61名がこの大腸菌を保有しているということが分かりました。この結果から、この大腸菌が原因物質であろうということを考えました。
 次のスライドをお願いします。それでは、牛乳中に汚染はどのぐらいあったのか、または汚染菌数はどのぐらいだったのかということを調査しました。
 給食提供日ごとに数本ずつ、多いときは10本以上あったのですけれども、それについてOgGp9の陽性率を見ましたところ、食中毒と関係ないであろうという14日提供のものについては検出されず、15日で約50%、16日で90%ぐらい。それから、17日、未提供ではありましたが、残っていたものを頂いたところ、30%で検出されております。
 次に、それらのうち、定量検査ができそうなものだけ定量検査をMPN法によって行っております。OgGp9ですけれども、15、16、17日、いずれの日の牛乳につきましても、約10個が得られておりました。ちなみに、生菌数も測定しているのですけれども、14から16までは数百個レベルの菌数でした。ですので、この間での殺菌効率については、この結果からは同じような殺菌効率で製造されていたのではないかなと考えられました。17日については、2万と、非常に高い菌数に平均値がなっているのですけれども、使った牛乳のうちの幾つかがとても高い菌数のものがあり、提供されなかったので、保管状況等の影響が分からないところもありますので、この原因についてはよく分かりません。
 次、お願いします。次に、この株がどういった性状を持っているのか、この食中毒の発生や製造工程の中でのキーとなる性質が分かればと思い、まず耐凍性について調べてみました。牛乳は検食で冷凍保管してありますので、それの影響というものを見たかったということです。牛乳に接種してマイナス30℃ぐらいで冷凍保管したのですけれども、1日後では1桁ぐらいの減少。繰り返したのですけれども、ほとんど減少しない。また、4週間後には最大1logぐらいの減少があるということで、1桁ぐらいの減少は見られたのですけれども、凍結による大きな減少は認められなかったという結果でした。
 次に、耐熱性なのですが、大腸菌ですので、芽胞菌と違いますので、非常に強い耐熱性はないだろうということだったのですけれども、65℃に熱した牛乳に菌を接種して、1分間で5桁の菌数の減少がありました。これは、微生物試験で使われるK-12とか腸管出血性大腸菌とか病原大腸菌と同等、またはそれよりも少し早く減少する結果でしたので、耐熱性はなかったと考えております。
 また、増殖性ですが、牛乳中に接種して25℃と37℃で置いておいたのですけれども、これも微生物試験で使われる大腸菌NBRC3972や腸管凝集性大腸菌と同じような増殖をしており、特に早いとか遅いという特徴はありませんでした。
 それから、耐酸性ですが、人の胃の中に入ってからはかなりpHが低いということで、いろいろなpHでも調べたのですけれども、pH2.5だけについて御紹介いたします。K-12とかほかの野生株の大腸菌では1桁とか3桁とか、3時間ほど放置した後に減っていたりしたのですけれども、腸管出血性大腸菌や腸管毒素原性大腸菌では減少していなかったのですが、この食中毒由来株でも減少しない、同じようなタイプであると見られました。ですので、ある程度の耐酸性は認められると思っております。
 次、お願いします。これは、調査結果の今のまとめなのですけれども、考えられるような食中毒細菌、食中毒毒素というものは検出されなくて、このOgGp9が食中毒の原因になった牛乳、それから従業員・患者の多くから優勢な大腸菌として分離されたので、原因物質であると考えられました。その汚染菌数は、牛乳100mL当たり約10個でありました。
 殺菌についてですけれども、微生物的な検討からしますと、今日、時間の都合で牛乳のゲノム解析の結果を出していないのですけれども、そこでも大腸菌が特に増えていた牛乳を使って殺菌したという様子が見えなかったことと、生菌の菌数からすると、14日、15日、16日で余り殺菌効率は変わらなかったという結果が出ましたので、汚染は殺菌後であった可能性が考えられました。ただ、限られた牛乳パックで試験しておりますので、絶対かどうかということはないのですけれども、可能性として考えられると思っております。
 次のスライドをお願いします。この大腸菌についての病原性を確認するということで、国立感染症研究所の細菌第一部と協力いたしまして解析した結果を御紹介します。
 まず、この菌のゲノム解析を行ったのですが、ゲノムの概要としましては、たんぱく質コード配列数が実験室内で使われるK-12、NBRCが4300ぐらいなのですけれども、病原大腸菌系の腸管出血性大腸菌O157といったものでは約5000、今回の食中毒由来株はその真ん中辺りの配列数であったということが分かります。
 それから、SNP解析も行っているのですけれども、ここでは牛乳から採れた株と患者から採れた株が同一であるかどうかを見たのですけれども、同一クローンであるという結果でありました。
 それから、系統等の解析を行ったところ、ゲノムからも血清型はOgGp9の中に入っておりますO17/O77であるということ。それから、H18であるということが分かりました。また、データベース上にはこの株と近縁な株は存在しないということであります。
 それから、遺伝子保有状況なのですけれども、主要な病原大腸菌の病原関連遺伝子は保有しておりませんでした。しかし、ほかの病原関連遺伝子としての付着因子とか線毛とか莢膜とか鉄の取り込みなどに関連するような、病原性に関連する複数の遺伝子を保有するということは分かりました。
 次のスライドをお願いします。それから、培養細胞への感染実験を行っているのですが、付着性試験では、牛乳由来株も患者由来株もともに付着性が認められました。しかし、腸管凝集付着性大腸菌に見られるような特異的な凝集性の付着というのは認められませんでした。
 また、侵入性については、腸管凝集付着性大腸菌と同程度の侵入、細胞内の菌数の回収数が得られたのですけれども、よく知られていますサルモネラとかと比較しては顕著な侵入があるとは言えませんでした。
 それから、腸管上皮細胞のモデルとしてよく使われますCaco-2細胞を使いまして、細胞膜透過性試験も行っているのですけれども、それについても透過性の亢進というような病原性を示す結果は得られませんでした。
 次のスライドをお願いします。さらに、動物でのモデル試験を行っております。
 マウスへの腹腔内投与試験を行ったのですけれども、ここに簡単に致死率としてお示ししております。一番下に腸管毒素原性大腸菌、ETECと書いてあるのですけれども、その菌を投与したところ、投与1日目で80%のマウスが死亡しております。2日目で90%という形になります。一方、微生物試験に使用されるK-12やNBRC3972につきましては、死亡しない、または1日目で10%、2日目で50%という結果になっております。この食中毒由来株につきましては、1日目で20、50とか、2日目で70、90%、3日で80%、90%という形で、ちょうど中間の致死性であったという結果が得られました。
 サルの一種ですけれども、コモンマーモセットにも経口投与の試験を行っております。投与後、患者さんに起こったような下痢やふん便の形状の変化は認められませんでした。ただ、投与後28日目まで、ふんから大腸菌が比較的高い菌数で検出されており、腸管に定着しているということが推察されました。
 次、お願いします。この病原性解析のまとめですけれども、遺伝子解析の結果から、主要な大腸菌の病原関連遺伝子はなかったのですけれども、付着性等の複数の病原関連遺伝子の保有があったということ。
 それから、細胞への試験では付着性が認められたということ。
 それから、動物モデル試験では、マウスの腹腔内投与で致死性が認められたということ。また、コモンマーモセットで腸管に定着が認められたことが分かりました。
 これらの結果から、分離された大腸菌OgGp9は、病原性を有する大腸菌であることが推察されました。
 最後のスライドをお願いします。
 以上をまとめますと、牛乳からは食中毒の原因となった、これまで知られているような細菌毒素や主要な食中毒細菌は検出されず、この大腸菌のOgGp9が牛乳と多くの患者さんから分離されています。
 また、先ほどの病原遺伝子や細胞感染試験や動物実験から、この大腸菌が病原性を有することが考えられました。
 これらの結果から、病因物質は病原大腸菌OUT(OgGp9):H18であるということが可能性として考えられました。
 今後、この大腸菌の病原性については、まだ研究を行っていく予定でありまして、富山市保健所、感染研細菌第一部、富山県衛生研究所の御協力を得ながら進めていく予定であります。
 以上です。
○五十君部会長 御報告ありがとうございました。
 資料3-1、2、3と、大変難しい集団事例に関する検討を詳細に御報告していただいたと思います。委員の皆様からの質問を受け付けたいと思います。いかがでしょうか。
 白井委員、どうぞ。
○白井委員 白井です。枚方市保健所の所長です。
 とても興味深い御発表、ありがとうございました。特に、私の保健所も中核市ですので、富山市保健所さんが、コロナ禍においてもこれだけ丁寧な調査をされていたことについて本当に感謝申し上げたいと思います。
 その中で、HACCPがどれだけ定着するかということについて、令和3年から対応するということになっているのですが、私どものところも小さい業種のところまで指導というのがなかなかできなくて、このような中小で課題があったところを、このようなチェックをされて、次の再発防止に結びつけていらっしゃると思うのですけれども、事前にどれだけこのような自己チェックを促すことができるのかどうかということを、もし御示唆があれば教えていただきたいということが1点と。
 もう一つ、この食中毒について、ほぼ一過性だということも含めて、先ほどの病原性のお話もありましたけれども、このような病因性のある大腸菌が食中毒で終わるものなのか、場合によっては感染対策によっては徹底できなかったら、子供たちの中で2次感染を起こす可能性があったのかということもお聞きしたいなと思いました。今、学校では、新型コロナ対策として感染対策をきちんとやっていただいているなと思いますし、むしろ業者さんのほうで大人の方々にちょっと問題があったということが残念だなと思いましたけれども、以上2点について、もしお答えいただければありがたいと思います。
 以上です。
○五十君部会長 それでは、前半のHACCP関連につきましては事務局から何かコメントいただくほうがいいですか。それとも富山市から解説いただけますか。富山市の鈴木課長、今の御質問に関して何かコメントありますか。
○鈴木参考人 富山市保健所の鈴木でございます。
 初めの御質問でございますが、富山市保健所としましては、今回の施設に特化してHACCPのことを指導していたというわけではございませんで、市内の営業施設に関して、2年前より啓発とか指導をしておりました。実際問題、今回の施設には製造所の監視を年に1回、収去検査を年6回、これまでずっと実施しておりまして、今まで現場確認や記録等は確認させていただいていたのですが、特段問題はなかったという状況でございます。
○五十君部会長 白井委員、今の件、よろしいですか。
○白井委員 ありがとうございます。
 
○五十君部会長 後半につきましてはどうですか。工藤委員お願いできますか。
○工藤委員 人から人への感染ということの危惧だと思うのですけれども、今回、牛乳100mL当たりに9.2個、検食で保管している間にもしかしたら1桁ぐらい減ったとして92個とすると、200mL飲むと約200個の菌を子供たちが飲んでいたことになります。そうしますと、大腸菌としては、ほかの大腸菌でも100個レベルで、または数十個レベルで感染することが普通成り立つということですので、感染としては比較的少ない菌数で起こっていたかもしれないとは思います。
 動物実験だと便の中で相当な菌数になっているということがサルの実験で分かっていますので、下痢した子供からまた他の子供たちの口へということも可能性はあると思うのですけれども、一方で、八幡先生のデータを見ますと、喫食数の中の症例数の割合、発症割合とかを見ますと、高いところもあれば低いところもあり、必ずしもそのようになるかどうかというのは、ちょっと分からないと思っております。今後の病原性の研究の中でも分かってくるかと思っております。
○白井委員 ありがとうございました。
 自治体と衛生研究所と国立感染研、また工藤先生のところのお話でも、連携ができて、すごくいい事例だなと思いましたので、何らかの形でまた全国的に御紹介いただきたいと思いました。ありがとうございました。
○五十君部会長 それでは、八幡先生、何か追加がございますか。
○八幡参考人 重要な所見の追加というわけではないのですけれども、学校のほうが休校になってしまったので、2次感染らしいという所見が得られるような状況はなかったということなので、もし学校が休校になっていなかったら、もしかしてお子さんたちの間での感染伝播というのがあったかもしれない可能性はあるかもしれないですけれども、多分そんなに高率にはないだろうというのは個人的に思うところです。その理由として、例えば、小学校の場合ですと、ふん便の処理が十分にできるお子さんたちの年代であると考えられますので、たくさん発生するというのはないのかもしれないという個人的な意見となります。
 以上です。
○五十君部会長 追加コメントありがとうございました。
 白井委員、よろしいでしょうか。
 それでは、大西委員から御質問いただけますか。
○大西委員 鈴鹿医療科学大学の大西です。
 少し教えていただきたいのですけれども、今までこの菌を原因とする食中毒事例というのは報告がなかったのでしょうか。
○五十君部会長 工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 国衛研の工藤です。
 このタイプのものは、多分国内でも知られていないと思います。また、ゲノム解析によりましても、同様の株のデータベースに登録がありませんので、余り知られていないものではないかと考えております。
○大西委員 ありがとうございました。
○五十君部会長 脇田委員、どうぞ。
○脇田委員 丁寧な御説明ありがとうございました。
 マーモセットで腸管に定着ということが実験的に見られたと思うのですけれども、従業員のほうで検出というのが持続したということはあったのでしょうか。
○五十君部会長 こちらは、富山市の鈴木課長、お願いできますか。
○鈴木参考人 富山市の鈴木です。
 従業員の方は陰性の確認をしておりますので、定着性という点では考えづらいのかなと思います。
○脇田委員 そうすると、検出されたのは一過性ということですか。
○鈴木参考人 富山市の鈴木です。
 そういう風に考えております。
○脇田委員 ありがとうございます。
○五十君部会長 工藤委員、何か追加ございますか。
○工藤委員 八幡先生の表にも出ておりましたが、当初は2名の従業員の方がOgGp9陽性で、1月後の検便で1人の方がそのまま保菌されていた状況です。ですので、1月ぐらいの保菌はあったと考えられると思うのですけれども、鈴木課長、よろしいでしょうか。
○鈴木参考人 すみません、富山市保健所の鈴木です。
 1か月は保菌していたと考えておりまして、最近の検査では陰性を確認しているという意味でございました。すみません、説明不足で申し訳ございません。
○脇田委員 ありがとうございます。
○五十君部会長 脇田委員、よろしいですか。
 大西委員、何か追加ありますか。
○大西委員 いえ、特にございません。ありがとうございます。
○五十君部会長 そのほか、御質問ございますか。
 上間委員、どうぞ。
○上間委員 今回、学校関連の牛乳は調査しているかと思うのですけれども、それ以外の病院とか特養ホームとかの同じ200mLタイプのミルクについては調査されていないのでしょうか。
○五十君部会長 こちらも富山市の鈴木課長、お願いできますか。
○鈴木参考人 富山市保健所の鈴木です。
 病院とか特養については、200mLの牛乳が納品されていないものですから、特に牛乳を回収しての調査はしておりません。
○上間委員 八幡先生の示された18枚目のスライドですと、200mLタイプのものが配送されているように示されているのですけれどもね。
○五十君部会長 八幡参考人、いかがですか。
○八幡参考人 我々が調査に行かせていただいたとき、一番左側のH病院だけに検食用で残っていたということで、流通していたというところまではあって、検食用で残っていたのはH病院です。そのH病院の検査結果について、陽性だったか陰性だったかというのはちょっと定かでないので、富山市保健所さんのほうが御存じかと思います。このH病院で発生前と発生後の数週間の発熱者とか消化器症状を有する方の数をお伺いしたところ、特段変化がなかったということは伺っております。
 ただし、高齢者の方々が多い医療機関の施設ですので、消化器症状についての十分な把握というのができづらいということ。これも文献的にもあるのですけれども、そういったことがありますので、確実に消化器症状が増えたとか減ったということを判断するのは難しいというところもあるので、甲乙つけがたい部分はあるのですけれども、聞いた中では急な増加は見られなかったというお話は伺っております。
○五十君部会長 上間委員の御質問は、18枚目のスライドで病院に200mLタイプが配給されているけれども、こちらは、どうであったかという御質問かと思いますが、富山市は、こちらの病院には200mLタイプは配給されていないということですか。
○鈴木参考人 富山市保健所です。
 私の認識不足で大変申し訳ございません。200mLも配送していたのですが、先ほど八幡先生がおっしゃられたように、実際に病院のほうで症状が出た方がいなかったということですので、こちらのほうで回収等は全然していなかったのです。ただ、先ほど八幡先生がおっしゃられたH病院だけは検査しておりまして、こちらの検査では大腸菌のO型で陽性となっております。
○五十君部会長 上間委員、よろしいですか。
○上間委員 ありがとうございました。
○五十君部会長 御質問ありがとうございました。
 そのほかありますでしょうか。よろしいですか。ないようです。先ほど白井委員からの御質問は非常に重要な御指摘であると思います。今回の事例は、事例報告にあるように、当該事業者の衛生的な取扱いの不備、問題点等が、かなりありましたが、HACCPの導入後ということを考えますと、いかがでしょうか。中小の業者の場合ですと、牛乳・乳飲料のHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書に従った運用・管理していくことが求められていると思います。
 今回の事例を鑑みて、原因と考えられた箇所等、あるいは手引書の内容に不足している点がなかったかどうか、あるいは手引書の修正が必要な事項があったかどうかについて検討が必要ではないかと思われます。これに関しまして事務局、何かコメントありますでしょうか。
○三木食品監視安全課長 分かりました。当該手引書については、乳業協会さんのほうで作成していただいているものですので、乳業協会さんとも相談しながら検討させていただきます。
○五十君部会長 ありがとうございます。
 今回の事例、非常に難しい事例ですが、これを例として、新たな問題となる危害要因もコントロールできるような検討をしていただきまして、手引書にもし変更等が必要ということでありましたら、業界から厚生労働省へ改正案を提出してもらいまして、HACCP技術検討会において議論していただくのがよろしいかと思われます。いかがですか。
○三木食品監視安全課長 分かりました。そのようにさせていただきます。
○五十君部会長 ありがとうございました。
 そのほか、御質問、御意見等ございましたらお願いしますが。よろしいですか。
 時間も超過しておりますので、続きまして、議題としましては、3番「その他」となります。事務局より報告事項がありますか。岡崎専門官ございますでしょうか。
○岡崎HACCP国内対策専門官 食品監視安全課の岡崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、資料4に沿って、食品のリコール公表情報について情報提供させていただきます。
 まず、資料の2枚目ですけれども、これは食品リコール情報の報告制度の全体を示したスライドになっておりまして、食品リコール情報の報告制度については、今般の食品衛生法の改正で新たに創設した内容になってございます。リコールの報告については、事業者が自主回収に着手した場合に都道府県に報告・届出をして、都道府県が国に報告して、国でそういった情報を一覧化して公表して消費者の方に情報を提供していくという制度でございます。
 報告の対象も、食品の安全性に関することということで、2点に絞っておりまして、食品衛生法に違反するもの。もう一つは、食品衛生法違反のおそれのあるものということで、この違反の食品と同じ原料を使用していたり、同じラインで作っており、違反の可能性が非常に高いようなものを対象としているということでございます。一方、適用除外も設けておりまして、例えば不特定かつ多数の者に対して販売されたものでなく、容易に回収できる場合。あとは、消費者に届いていない、まだB to Bの卸売業者間の倉庫でとどまっている場合、そういった場合においては適用除外ということで運用しているところでございます。
 また、報告された内容については、その内容のリコールされた食品がどの程度のリスクがあるのかということを分かりやすく情報を発信していこうということで、クラスを3つに分けて情報発信していくこととしております。
 CLASSIについては、喫食することによって重篤な健康被害が発生するといったものとして、例としては、腸管出血性大腸菌に汚染された生食用の野菜、フグとかの有毒魚、有毒植物。あと、硬質異物が混入したような食品というものをCLASSIとしております。一方、CLASS IIIについては、違反ではあるのですけれども、健康被害の発生の可能性はほとんどないと思われるものについては、CLASS IIIとして、添加物の使用基準の違反のようなものや、残留農薬が一律基準を少し超えているといったものを分類することとしております。CLASSIかCLASS IIIか、直ちに判断できないものについては、暫定的にCLASS IIに入れておくことにして、その後の検査の結果や調査の結果でCLASSIになったり、CLAAS IIIになるということでございます。
 こちらの制度ですけれども、令和3年6月1日から本格施行されておりまして、報告・届出が寄せられているという状況でございます。こちらは、2月末までに届出・報告された数字をまとめたものになっておりまして、食品衛生法の関連と食品表示法の関連でもリコールの仕組みがございますので、同じようにこのシステムの中で集計しているということでございます。全体で1430件ありまして、食衛法の関係ですと464件報告がございました。
 主な内容としては、例えばシール不良の製品と同じラインで製造しているとか、回収命令の食品の別ロットの食品ということで、違反のおそれのあるということで回収されているというのが約54%。その他、残留農薬とか異物の混入とかふぐの混入といった理由で自主回収されて報告されているということでございます。
 品目ごとに見ていくと、この品目の分類は日本標準商品分類のコード表に沿って分類しているところですが、一番多いのはその他の食料品ということで、これは56件で12%と見てもらえればと思います。その他の食料品ということで、例えばふりかけとかお茶漬けが届出されているということでございます。あと、その他が一番多く、67%あるのですけれども、アイスミルク、農産物のしゅんぎく、しょうゆ、菓子類、はちみつといったものが含まれているということでございます。
 続きまして、クラス分類ごとの件数と健康被害の発生状況、今後の課題ということでございます。
 クラス分類ごとに見ていきますと、CLASS IIが一番多くて291件、62%あるということです。CLASS III、CLASSIと続いております。中身を見ると、CLASSⅠは硬質異物、金属片の混入、有毒魚種の混入、レトルトの殺菌不足というものがございます。CLASS IIとしては、規格基準の不適合のものとかカビの発生。CLASS IIIについては、残留農薬の不適合、添加物のヨウ素化塩の使用といったものが見受けられます。
 健康被害については、2件あったということで報告されておりまして、1つが揚げかまぼこに混入していた硬質異物、プラスチック片で口腔内の裂傷が起きたということ。もう一つは、牛乳の風味異常ということで、頭痛とか喉の痛みとか腹痛、吐き気が起きたといった事例が1件の計2件ございました。
 今後の課題としては、今、個々のリコール情報の報告をもらって集めているのですけれども、各リコールの報告内容から水平展開をしていって、共通の原因の有無というものを探知していくような分析の仕方というのが今後必要になってくるという認識をしているところでございます。
 簡単ではございますが、以上でございます。
○五十君部会長 御説明ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明に関しまして、御質問、御意見等がございましたらお願いします。いかがでしょうか。特にございませんか。
 今回の食品衛生法改正によって、こういった情報が集まってくることになってきたわけですので、食中毒というところまで行く前の段階についてもある程度掌握できるようになってきていると思います。
 
 以上で、本日準備しました全ての議題が終了いたしましたが、これまでの議題を振り返りまして、御意見あるいは御質問等で言い忘れたことがございましたら受け付けたいと思いますが、いかがですか。特にございませんか。
 亀井委員、どうぞ。
○亀井委員 ありがとうございます。埼玉医大の亀井でございます。
 前半の食中毒の事例について、現場の方の御努力、それから、調査に当たって御尽力されたことに感銘を受けました。ありがとうございました。
 1点質問がございます。小学校、中学校、高校といった学校現場で食中毒事案が発生し、その調査がなかなか大変だったというご報告を富山市保健所さんから伺いました。行政組織上の管轄ですが、例えば市であれば教育委員会、国ですと文部科学省になると思うのですけれども、教育関係の行政組織との情報共有はどうなっているのでしょうか。また、今後、学校関係者に今回の事案等に関する情報を提供して、今後このような事案が発生した場合にはぜひ協力してほしいという連絡をしておいてはどうかと考えますが、どのような対応をされているか教えてください。
 よろしくお願いいたします。
○五十君部会長 まず、富山市保健所の鈴木課長からコメントがありましたらお願いします。
○鈴木参考人 富山市の鈴木です。
 今ほど、亀井委員さん、おっしゃっていただきましたように、調査のほうは教育委員会等を通じての調査、もしくは保育所でありましたら保育関係の所管の課を通じての調査ということになりまして、大変苦労したということがございます。今後、こういった調査があれば積極的に協力していただきたいという思いは持っているのですが、教育委員会を通じての依頼というものは、今、実際のところはしておりませんで、そこは大きな課題の一つかなと思っております。
 もう一つ、余り具体的なところは言えないのですが、管轄外の学校もございまして、そういったところとは直接やり取りをさせていただいて、どちらかというとスムーズにできたのかなという評価を我々はしているのですが、さらにその上部団体と話をして協力の依頼をしたということはございませんで、その辺りも、私ども保健所単位での働きかけがいいのか、それよりももうちょっと上の組織での働きかけがいいのかというところは、考えさせていただきたいと思っております。
 以上です。
○五十君部会長 亀井委員、よろしいですか。学校給食と厚生労働省の間の連携という気がいたしますが、事務局から追加があるようです。
○今川食中毒被害情報管理室長 事務局、今川でございます。ありがとうございます。
 まず、厚生労働省と文部科学省で情報共有させていただきながら、こういった事例について進めさせていただいているところでございます。一方、現場レベルでは、特にこういった大きな事例のときは保健所だけでは調査がなかなか難しいということもあって、教育委員会とも連携させていただきながら進めていくことになろうかと思います。こういった大きな事例にあっても、基本的には教育委員会のほうも各現場で非常に協力いただいているところだと思いますけれども、事例が大きくなればなるほど、教育委員会もこういった調査に慣れているわけではございませんので、難しい面はあろうかなと思います。
 今後もこういった事例が起きてほしくはないのですけれども、起きた場合に、今回の富山市さんの事例なども参考にさせていただきながら、引き続き文部科学省とも連携を取りながら行っていきたいと思います。
 事務局、以上でございます。
○五十君部会長 亀井委員、よろしいですか。
○亀井委員 よく分かりました。ありがとうございました。
○五十君部会長 御質問ありがとうございました。
 そのほかございますか。よろしいですか。
 それでは、その他、事務局から何かありますか。
○高橋食中毒被害情報管理室長補佐 例年、食中毒部会は年度末に開催して、前年の食中毒発生状況を御報告させていただいておりますけれども、年度途中におきましても、必要に応じて本部会を開催し、御報告等させていただくこともございますので、開催となった暁には、また御協力、御出席等をよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○五十君部会長 ありがとうございます。
 それでは、本日の食中毒部会はこれで終了いたしたいと思います。御報告をいただきました3名の先生方、どうもありがとうございました。
 それから、長時間にわたる熱心な御議論をいただきました委員の皆様、ありがとうございました。時間をかなり超過してしまいまして、大変申し訳ありませんでした。
 それでは、これで終了させていただきます。御参加ありがとうございました。

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