外務省・新着情報

令和4年8月16日
(写真1)在ドバイ日本国総領事館での鮫島直人 公邸料理人 公邸前で(筆者) 
(写真2)インスタグラムでの和食動画発信時の様子を写した写真 インスタグラムでの和食動画発信時の様子
(写真3)ドバイの魚市場で入手した「ハムール」のお造りの写真 ドバイの魚市場で入手した「ハムール」のお造り
(お皿の右側にあるのがハムールで、
日本ではヒトミハタと呼ばれている)
(写真4)鯛の塩釜焼きを写した写真 鯛の塩釜焼き

 在ドバイ日本国総領事館の公邸料理人を務めております鮫島直人です。外務省に務める30年来の親友に薦められたことがきっかけで、公邸料理人として2020年9月にドバイに着任しました。私自身、旅行も含めて初めて体験する海外で、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)拡大の影響もあり少々不安はありましたが、ドバイの生活環境の良さもあって、仕事に励むことができています。

 主な仕事内容は、公邸内でのゲストを迎えた会食や立食レセプションの食事の準備です。ドバイに着任してまず驚いたのは、想像していたよりも遥かに多くの食材が手に入ることです。ドバイは、世界の航空ハブとなっているので、現地で入手困難な食材を日本から空輸で入手できますし、日本食材を専門に扱うお店もあります。また、現地のスーパーでも醤油や米酢などの調味料が手に入ります。一方で、会食当日に使用する食材が流通事情で届かず、買い置き食材で急遽(きょ)代用メニューを作成するなどヒヤリとさせられたこともありました。

 日本との一番の違いは、ドバイがイスラム圏にあることです。そのため、アルコール類の取扱いはごく一部の酒販屋に限られていて、料理酒や味醂(みりん)を入手するのが困難なことに加え、イスラム教徒のお客様を呼んだ会食などでは、ハラールという特別な処理を施した食材及びアルコール分や豚肉のエキスが入っていない調味料しか使えないことから、臨機応変に工夫しながら料理を作っています。例えば、煮物など日本料理で料理酒を使用する場合は、みりん風調味料を代用し、砂糖を普段より控えめにして味を調整しています。

 また、日本と同じ野菜でも育った環境で品質が異なるといった気づきもありました。ドバイの気候は、11月から3月末までは日本の初夏のようですが、4月頃から気温が上昇し、8月から9月は日中40度以上、夜でも35度を越える日が毎日続きます。一方で、1年を通してほとんど雨は降りません。こうした気候環境から、日本では一般的に夏野菜と呼ばれるパプリカ、トマト、ナスなどが、ドバイでは1年中スーパーに並んでいます。しかし、こうした現地野菜には、とても皮が硬くて噛みきれないものや、種がほとんどの野菜などが多々あるので、その辺りに気を使いながら現地で食材を仕入れています。

 会食やレセプションの際は、日本の食材の美味しさをゲストに伝えることを第一に心がけています。特に魚は、日本と同じ種類の魚が現地で売られていたとしても、魚自体の「旨(うま)味・美味(おい)しさ」が日本とは異なるように感じられます。このため、日本から直送された日本育ちの魚が持つ「美味しさ」をゲストに味わってもらうことによって、日本の良さを伝えようと毎回試行錯誤しています。

 新型コロナの流行下ではありますが、私は公邸料理人として料理を振る舞う機会がある度に、「チャレンジ精神」と責任感を常に持ち、1日1日自身が成長していけるような日々を過ごそうと思っています。

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