内閣府・新着情報
(要旨)
(論文)
新型コロナパンデミックと日本の家計行動―就業・消費・家庭―
本稿の目的は、新型コロナパンデミックが日本の家計に与えた影響について、就業、消費、家庭の観点から、これまでの経済学分野の実証分析が示した事実を展望することによって、現時点での整理と評価を行うことである。就業に関する研究では、労働機会や収入に対するパンデミックからの負の影響が、対人サービスや人流を伴う業種、テレワーク等柔軟な働き方の困難な職種に大きく偏って発生したことが、多様なデータと手法で示された。これらの部門には非正規雇用が多く、さらに、非正規雇用に若年層や女性が多いため、それらの階層に労働機会と収入の損失を生じさせた。家計消費に関する研究では、収入減少および感染危惧という2つの要因による消費支出の減少が分析されている。前者は、定額給付金の効果の分析を通じ、流動性制約下にある家計の消費がより収入の影響を受けやすいことを示した。後者は、高齢者層で、感染危惧から外出を伴う消費機会が減少したことを指摘した。家庭に関する研究は、テレワークや育児負担に関するものが多かった。パンデミック下で普及したテレワークは、恵まれた条件の労働者が従事する傾向があるため、働き方格差を拡大させうるが、家庭へのコミットメントを高め、家族のウェルビーイングを改善する効果もある。学校閉鎖等による家事・育児負担の増大は、特に女性の雇用やメンタルヘルスに負の影響を及ぼした。
JEL Classification Codes: D10, J21, J81
Keywords: パンデミック、家計行動、格差
コロナ危機が企業に与えた影響・対策について
本稿では、新型コロナ感染症の影響が企業活動に与えた影響、企業が行った対策、政府が行った企業に対する支援策に関する先行研究の成果を取りまとめた。第1に、日本経済は諸外国に比べて回復のスピードが緩慢な中にあって、政府の支援措置の効果もあって企業の倒産数は増えていない。企業は売上の減少など実物面のショックを受けたが、金融機関を通じた資金繰り対応、休業・休職を通じた雇用面での対応を行うことでショックに対応した。コロナショック前から資金繰りが悪い企業が世界金融危機時の前よりも多く存在しており、政府が講じた支援措置の中では、民間金融機関を通じた無利子・無担保、政府系金融機関の無利子・無担保の制度の利用が最も多かった。コロナショック前の信用リスクが高い企業ほど政府系金融機関による貸出を申請しているが、ゾンビ企業の割合がコロナショック時に世界金融危機時よりも増加しているとの結果は現在までのところ報告されていない。第2に、コロナの影響が大きい宿泊業に関する支援策であるGo To トラベルの評価について先行研究では様々な結果が報告されている。またサービス業の生産性を向上させるためには稼働率を平準化させることが重要で、そのためにも時間に関する柔軟な働き方が重要になってくることが指摘された。第3に、新しい働き方がコロナにより強制的に導入された経緯があるが、在宅勤務の実施には企業のマネジメント能力やテクノロジー、無形資産の蓄積が重要になってくること、在宅勤務の生産性は職場勤務に比べて低いものの、徐々に上がってきていることが示された。今後も感染予防の観点からも在宅勤務など新しい働き方を続けていくことが望まれている。新しい働き方に即した環境整備を企業は今後も続ける必要があろう。
JEL Classification Codes: E00, E60, G20, H32
Keywords: 企業、無利子・無担保融資、ゾンビ企業、在宅勤務
パンデミックによる行動変容:研究展望
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大という形をとったパンデミックは、日本の経済社会にも多大な影響を及ぼしつつある。その影響は、感染拡大や各種規制を受けた人々の行動変容、医療供給体制、雇用、教育、家庭生活、厚生など、様々な面に幅広く、しかも深刻な形で及んでいる。それに呼応して、多くの研究が国内外で発表されつつある。本稿では、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響に関して、マクロ経済や企業行動、消費行動など狭い意味での経済活動以外の変化を行動変容として一括する。そして、行動変容に関してこれまで公表された主要な研究のうち、国内のデータに基づいて行われたものを中心にして取り上げ、得られた知見とそこから読み取れる政策的な含意を整理する。多くの研究が明らかにしているように、パンデックの影響は人々の社会経済的属性に大きく左右されており、その不平等な影響への対応が重要な政策課題となっている。
JEL Classification Codes: I12, I14, I24, I31
Keywords: 行動変容、テレワーク、精神健康
(資料)
第59回 ESRI 経済政策フォーラム「コロナショックから何を学ぶか」(概要)
- 日 時:
- 令和4 年7 月1 日(金)14:00~15:30
- 開催形式:Zoom ウェビナー
本フォーラムは、経済社会総合研究所が、令和3年度の国際共同研究プロジェクトの「コロナショックから何を学ぶか」の研究成果を幅広く周知するとともに、将来の類似の危機に対する経済社会面での知的備えを深めることを目的に開催した。本稿では、本フォーラムのパネルディスカッションの概要を紹介する。
(論文)
ミクロショックとマクロ予測―コロナ禍におけるインフレ期待―
本研究では、Kikuchi and Nakazono (forthcoming) に従い、インフレ期待に関して新しい計測手法を提案する。インフレ期待を変化率の見通しではなく、物価水準の見通しとして調査することで、インフレ期待の計測に関するいくつかの問題を解決できることを示す。また家計のインフレ期待形成に関する新しい知見も提示する。具体的には、コロナ禍における経済環境の変化を外生的な変化ととらえることで、家計レベルで観察された所得ショックが、物価見通しに影響を与えたことを示す。この結果は、ミクロ的なショックがマクロ的な期待形成に影響を与えうることを示唆している。
JEL Classification Codes: C53, D84, E31
Keywords: 期待の不一致、期待(expectations)、期待の偏り、異質的なショック、所得ショック、インフレ、期待の丸め込み、スタグフレーション
(資料)
ESRI国際コンファレンス2021「イノベーション、生産性向上に向けた企業投資」(概要)
ESRI International Conference 2021“Corporate Investment for Enhancing Innovation and Productivity”
- 日 時:
- 令和3 年12 月18 日(土) 8:00~12:00
- 場 所:
- Zoom ウェビナー
当研究所では、「イノベーション、生産性向上に向けた企業投資」をテーマに、イノベーションの担い手である企業の投資行動等を中心にNBER 及び国内のエコノミストの参加を得て、議論を深めるため、「ESRI 国際コンファレンス2021」を開催した。
本号は、政府刊行物センター、官報販売所等にて刊行しております。
全文の構成
(序文)
国際共同研究「コロナショックから何を学ぶか?」主査序文(PDF形式:235KB)
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1山本 勲
(論文)
新型コロナパンデミックと日本の家計行動―就業・消費・家庭―(PDF形式:801KB)
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71.はじめに
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72.就業への影響
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213.消費への影響
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254.家庭・家族への影響
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325.男女格差
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336.まとめ
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34参考文献
コロナ危機が企業に与えた影響・対策について(PDF形式:1.44MB)
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431.はじめに
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442.コロナ禍における企業関連の経済指標の整理
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483.コロナショックに対する企業の対応
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554.コロナショックの影響が大きい宿泊業に関する研究
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575.コロナショックが企業の労働者の働き方に与えた影響
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616.おわりに
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62参考文献
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65付論1
パンデミックによる行動変容:研究展望(PDF形式:660KB)
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681.はじめに
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692.パンデミック及びパンデミック対応策への反応
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743.雇用への影響
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764.教育・家庭生活への影響
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785.精神健康・厚生への影響
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806.医療への影響
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827.財政への影響
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838.総括
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85参考文献
(資料)
第59回ESRI経済政策フォーラム「コロナショックから何を学ぶか」(概要)(PDF形式:613KB)
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93編集 経済社会総合研究所
ミクロショックとマクロ予測―コロナ禍におけるインフレ期待―(PDF形式:522KB)
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1131.はじめに
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1152.インフレ期待の測定
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1183.測定されたインフレ期待
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1214.Idiosyncratic shock がマクロのインフレ見通しに与える影響
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1285.結論と結果の含意
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129参考文献
(資料)
ESRI国際コンファレンス2021「イノベーション、生産性向上に向けた企業投資」(概要)(PDF形式:556KB)
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1351.ビデオメッセージ
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1372.基調講演
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1393.セッション1:デジタル経済が起こすイノベーション、R&Dの加速を促す政策
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1414.セッション2:投資と生産性:無形資本のリターンとレント
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1435.セッション3:日本企業の有形・無形資産への投資行動と成長のダイナミクス
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1456.セッション4:新規参入企業と既存企業の市場における関係が投資に及ぼす影響