外務省・新着情報

令和4年10月5日
(写真1)上坂充内閣府原子力委員会委員長とグロッシーIAEA事務局長が握手している写真 (上坂充内閣府原子力委員会委員長とグロッシーIAEA事務局長、内閣府提供)
(写真2)モニターに映る高市早苗内閣府特命担当大臣の一般討論演説の様子 (高市早苗内閣府特命担当大臣の一般討論演説)

 9月26日から30日まで、ウィーンにおいて国際原子力機関(IAEA)第66回総会が開催されたところ、概要は以下のとおり。

1 高市早苗 内閣府特命担当大臣のビデオ演説

 9月26日(総会初日)、高市早苗内閣府特命担当大臣が一般討論演説(ビデオ録画)を行った(和文(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く )。なお、総会には、上坂充内閣府原子力委員会委員長と引原毅在ウィーン日本政府代表部大使が我が国政府代表として出席した。

 演説の冒頭、日本は、原子力の平和的利用及び核不拡散を推進するIAEAの活動を高く評価しており、グロッシー事務局長のリーダーシップを引き続き支援し、グローバルな平和と繁栄に貢献する旨発言した。

 次に、8月に開催された核兵器不拡散条約(NPT)第10回運用検討会議において、岸田総理が、核兵器のない世界に向けた「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表し、核兵器の不拡散と原子力の平和的利用の推進へのコミットメントを改めて表明したことに触れつつ、ロシアの反対によって成果文書のコンセンサス採択に至らなかったことは極めて遺憾であるが、日本は、IAEAとも協力しつつ、NPTを基盤とした不拡散体制の維持・強化及び原子力の平和的利用の促進に向け、引き続き取り組む旨述べた。

 併せて、ウクライナの原子力施設の状況に重大な懸念を抱いており、ロシアによる不当でいわれのないウクライナ侵略はもとより、ウクライナの原子力施設又はその付近でのロシアの軍事行為は決して許されるものではないとし、ロシアの行為を最も強い言葉で非難した。IAEAによる対ウクライナ支援やザポリッジャ原発へのミッションの派遣を含め、原子力安全及び核セキュリティの7つの柱に基づくウクライナ原子力施設の安全等の確保に向けたIAEAの継続的かつ不断の努力を評価しており、この観点から、日本はIAEAによる取組を支援するため、200万ユーロの拠出を表明していること及び、ウクライナにおける原子力施設及び核物質の安全と核セキュリティが早急に回復される必要性を強調する旨述べた。

 これに続き、原子力の平和的利用は、国際社会の繁栄に重要な役割を果たしており、原子力の有効利用により、気候変動問題やエネルギー安全保障等の様々な課題への対応及びSDGsの達成が可能となる旨述べた。また日本は、事務局長が本年2月に立ち上げた「Rays of Hope」事業に対して、PUI(ピーユーアイ:平和的利用イニシアティブ)を通じて、本年100万ユーロを拠出した旨言及した。さらに、日本は、原子力の持続的な活用に向けて、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、安全性を最優先に考えるとともに、IAEAと協働していく旨述べた。

 また、日本は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉と敷地外の環境修復活動を、独自の権限と専門性を持つIAEAの協力のもと、着実に進めており、ALPS処理水の取扱いについては、国際的な専門家の関与とともにIAEAは、ALPS処理水の安全性・規制面に関するレビューやモニタリングを行っている旨及び、独立、客観的かつ透明性のある方法で実施されているIAEAのプロフェッショナルな取組みを高く評価しており、IAEAを始め国際社会と協力し、日本は内外の安全性基準に従った透明で科学的な取組を進める旨述べた。

 さらに、核不拡散の中核的手段であるIAEAの保障措置の更なる強化・効率化に向けたIAEAの取組を強く支持し、包括的保障措置協定(CSA)や追加議定書(AP)の普遍化も強く支持する旨を述べるとともに、国際社会は地域の不拡散問題の解決のため引き続き協働すべきであり、北朝鮮の核・ミサイル開発が国際的な不拡散体制に対する重大な挑戦であり、断固として容認できず、日本として、北朝鮮に対して、全ての大量破壊兵器、あらゆる射程の弾道ミサイル及び関連する計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄に向けた具体的な動きをとることを強く求めた。また、全ての国が関連する安保理決議を完全に履行することの重要性を強調するとともに、北朝鮮の非核化を実現する上で検証は不可欠であり、IAEAは重要な役割を果たすべきである点に言及した。

 加えて、イランの核関連活動に関し、国際的な不拡散体制の観点からイラン核合意を支持しており、全ての関係国によるイラン核合意遵守への復帰を達成するための取組に積極的に貢献していく旨述べた。

 最後に、ジェンダー平等の実現は、原子力の平和利用と核不拡散分野の裾野を広げることについて述べ、日本は、立ち上げの段階からマリー・キュリー奨学金事業に協力しており、当該事業を含むジェンダー平等を達成するためのIAEAの継続的な努力を歓迎することを表明した。

2 主要な議題

(1)北朝鮮の核問題

 北朝鮮に対して、全ての核兵器及び既存の核計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での放棄並びに全ての関連活動の速やかな停止に向けた具体的措置をとることを強く求めること、また、全ての加盟国が、関連国連安保理決議に従って、自らの義務を完全に履行することの重要性を強調することなどを主な内容とする北朝鮮の核問題に関する決議がコンセンサスで採択された。

(2)保障措置の強化・効率化

 保障措置は、核不拡散のための中核的な要素であり、効果的・効率的な保障措置の必要性、各保障措置協定締結国による協定上の義務の完全な履行の重要性を強調するとともに、事務局長から理事会に対し、引き続き国レベル・アプローチの適用を通じて得られた知見を適宜報告すること等を主な内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(3)中東におけるIAEA保障措置の適用

 全ての中東域内国に対してNPTへの加入及びIAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求めるとともに、全ての関係国に対して域内の非核兵器地帯設立に向けた取組を求めること等を主な内容とする決議が賛成多数で採択された。

(4)原子力安全

 原子力発電及び放射線技術の導入を検討している国の増加に伴い、加盟国の取組及び基盤の維持・向上のためのIAEA及び加盟国間の支援を奨励すること、原子力安全関連条約の締結及びその義務の履行を加盟国に要請すること、可搬型(水上浮揚型)、小型モジュール炉、第4世代炉等の先進炉に関する原子力安全の観点からの継続的な検討をIAEAに要請すること、原子力事故時に適切に情報共有し、原子力発電及び放射線技術を扱う事業者・関係当局・公衆・国際社会における透明性を向上させること、原子力施設に対する攻撃に関し、原子力安全及び核セキュリティ、物理的防護の重要性を認識し強調すること等を主な内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(5)核セキュリティ

 国際社会の核セキュリティ強化におけるIAEAの中心的な役割を確認し、2022年の改正核物質防護条約に関するレビュー会議の成果を歓迎、サイバー攻撃に対する効果的対策を奨励し、新たな技術に係る課題への対応や人材育成の重要性、ウクライナの原子力施設への軍事行為への懸念等を確認する内容の決議が賛成多数で採択された。

(6)原子力科学・応用活動強化等

 原子力技術の応用に関し、保健・医療、水資源管理、サイバースドルフ原子力応用研究所の改修事業等にかかるIAEAの活動等についての決議がコンセンサスで採択された。

(7)原子力エネルギー

 原子力エネルギーの平和的利用に向けたIAEAの役割を確認しつつ、原子力発電所の運転及びIAEAの活動が、カーボンニュートラルの前進に向けて重要であること、小型モジュール炉を含む先進的な原子力技術に関する国際的な情報交換を促進するようIAEAに要請すること、原子力発電所の経年劣化管理に関する支援をIAEAに要請すること、原子力に関する知識管理にかかる対応をIAEAに要請すること、また、原子力分野での女性の活躍推進に向けたマリー・キュリー奨学金プログラムの実施が着実に進展していること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(8)技術協力活動強化

 技術協力活動の支援、強化に向けた加盟国の共同の責任、原子力の平和的利用の促進に向けた技術協力活動の重要性やこれら活動を通じた持続可能な開発目標(SDGs)の達成等への期待、IAEAに対し、効率的・効果的な事業の実施、資源動員の強化、加盟国やその他関連するパートナーとの協力の強化等を求める決議がコンセンサスで採択された。

(9)ウクライナ情勢を受けた原子力安全、核セキュリティ及び保障措置上の影響

 日本を含む各国がウクライナ情勢を受けたステートメントを実施。その中で、カナダは、G7やウクライナを含む49か国を代表して、共同ステートメントを読み上げ、ロシアの侵略により生じたウクライナにおける原子力安全、核セキュリティ、保障措置上の影響に対する重大な懸念を強調した。

3 第三国とのバイ会談

 政府代表として派遣された上坂充内閣府原子力委員会委員長は、IAEA総会のマージンで、グロッシーIAEA事務局長、フルビー米エネルギー省核安全保障庁(NNSA)長官、ジャック仏原子力代替エネルギー庁(CEA)長官、ティドウ独環境・自然保護・原子力安全・消費者保護事務次官、ヘファー英ビジネス・エネルギー・産業戦略省原子力・インフラ・廃炉局長及びセルキス・アルゼンチン国家原子力委員会委員長とバイ会談を実施した。
 グロッシー事務局長とは、日IAEA関係の強化に向けた方策及び東京電力福島第一原発の廃炉や安全性を確保した上でのALPS処理水の海洋放出に係る協力等につき意見交換した。その他の各国とのバイ会談では、日本と各国の原子力政策の現状につき情報共有した上で、今後の協力の在り方について意見交換を行った。


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