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冒頭発言

【林外務大臣】本日、ここ、タイのバンコクにおきまして、4年ぶりの対面開催でございますAPECの閣僚会議に出席いたしまして、アジア太平洋地域におけるコロナ後の回復や持続可能な成長といった、同地域の経済的諸課題について閣僚間で幅広く議論いたしました。
 冒頭、ロシアによるウクライナ侵略について一言申し上げます。ロシアによるウクライナ侵略は、主権及び領土一体性の侵害かつ国際法の重大な違反であるとともに、国際秩序の根幹を揺るがすものであります。ロシアの核による威嚇を深刻に懸念しており、断じて受け入れられないということでございます。ましてやその使用はあってはならないということでございます。また、ロシアによる侵略により、食料やエネルギー等の安定供給が脅かされております。また、現下の食料価格の高騰をはじめとする世界経済の悪化、これは経済制裁によるものであるという偽りのナラティブ、これが一部の国により拡散されていることに懸念をしております。ロシアによる侵略こそが問題の原因でございます。

 APEC閣僚会議においては、私からはこうした日本の立場を述べまして、ロシアの行動を厳しく非難するとともに、直ちに侵略を止めるよう強く求めたところでございます。その上で、今次会合の議題であります「バランスの取れた、包括的で持続可能な成長」につきましては、人間の安全保障の強化に向けた能力構築に貢献する考えを示しまして、さらに、女性を含めた全ての人の公平な経済的機会へのアクセス、これを確保する取組の重要性を指摘いたしました。
 そして、次のテーマであります「地域の再連結」につきましては、安全な人の越境移動の再開、これを強調して、日本の水際措置を大幅に緩和したことを紹介いたしました。また、「質の高いインフラ」の開発・投資及び透明で公正な開発金融の重要性を述べたところでございます。
 そして、「開かれた持続可能な貿易・投資」につきましては、WTOを中核とするルールに基づく公正で開かれた多角的貿易体制、この維持・強化の必要性を強調いたしまして、また、CPTPPの精神と原則を守り、そのハイスタンダードを堅持するこの旨も表明をいたしましたところでございます。
 以上、APECにおける今後の協力や、国際秩序を揺るがすロシアの侵略行為について、日本の立場をしっかりと主張するということができたというふうに思っております。

 また、バイ会談ですが、議長国であるタイ、ベトナム、パプアニューギニアとの間でそれぞれ外相会談が行われました。タイとの外相会談では、日タイ修好135周年にあたります今年、両国の今後5か年の経済分野での協力の方向性、これを定めました「日タイ戦略的経済連携5か年計画」、この発表を歓迎いたしましたほか、ウクライナ、北朝鮮、ミャンマーを含む地域・国際情勢について幅広く議論をし、緊密に連携していくことを確認したところでございます。
 またベトナムとの外相会談では、来年の日ベトナム外交関係樹立50周年に向けまして、二国間関係を新たな高みに引き上げるべく、幅広い分野での協力推進を確認したほか、地域・国際情勢についても率直な意見交換を行いまして、引き続き緊密に連携していくということを確認いたしました。
 パプアニューギニアとの外相会談では、私から日本の太平洋諸国に対する「太平洋のキズナ政策」というものがございますが、その下での日本の対パプアニューギニア協力に関する取組を説明をいたしまして、トカチェンコ大臣からは日本の取組に対する謝意が表明されましたところであります。また、太平洋島嶼国地域を含めた情勢についてですね、議論し、緊密に連携していくということで一致をいたしました。
 私からは以上です。

質疑応答

【記者】APEC閣僚会議の関係で2点お伺いします。1点目は、APEC閣僚会議の声明の発出に向けて今調整が続けられているかと思うんですけれども、それに対する大臣の受け止めと、今後声明がはたして本当に出るのかをお聞かせいただけますでしょうか。

【林外務大臣】新型コロナによる影響を克服し、アジア太平洋地域における持続可能かつ包摂的な成長、これを実現するために、安全な人の移動の再開、エネルギーや食料安全保障、気候変動等について取組を推し進めていくことをこの場で確認できたことは重要な成果と考えております。今お話のあったように共同声明の発出にはまだ至っておりませんが、私からはロシアによるウクライナ侵略に対する強い非難と共に、多角的貿易体制の支持や質の高いインフラ開発・投資などについても、時宜を得たメッセージが発信できたと考えている。日本としては、コロナ禍からの経済の回復に向け、引き続きAPECにおける議論に貢献していきたいと考えています。

【記者】もう一点APECの関係なんですけれども、APECでこれまでの会合を含めてなかなか一致したメッセージがだしきれていないとう状況があるかと思うんですけれども、こうしたことが自由貿易の要のですね、TPPやIPEFの推進に向けて決してプラスにはならないのかなという見方もあると思うんですけれども、大臣としてはその自由貿易の活性化に向けてどういうことが必要になってくると考えてますでしょうか。

【林外務大臣】そうですね、冒頭申しあげたとおり、この自由貿易はですね、経済発展の基礎になる、平和と安定ということを考えておりまして、APECの場でも、そういった意味から、ロシアによるウクライナ侵略に対する強い非難ということを発信させていただきました。その上で、この平和と安定の上に立って、WTOを含む多角的貿易体制、こういうものに対する支持ですね、それから貿易をやるにあたっても経済を発展させるにあたってもですね、それぞれの国に、日本ですとそれほどあまりインフラということがですね、かつてほどこの話題になる頻度が下がってきているかもしれませんが、今から発展される国の中ではですね、インフラ開発をして経済を発展させていくということが非常に大事になってまいります。そういう意味で、この質の高いインフラ開発・投資というものもですね、大きな意味で貿易投資に大いに貢献する、こういうことをしっかり地道にやっていくということがですね、この貿易や投資促進につながる、そういうことでありますので、先ほど申し上げたとおり、主張をしっかりとさせていただいたということでございます。

【記者】大臣、今回のAPECの会合の中でロシアによるウクライナ侵略がアジア太平洋地域の発展に与える影響について触れられましたけれども、具体的にAPECの経済発展にどのような影響を与えているとお考えか、というのと、そういった課題を解決するために日本政府としてどのように貢献していくか、いかがでしょうか。

【林外務大臣】このロシアによるウクライナ侵略は、まずはですね、ウクライナの主権及び領土の一体性を侵害して、国連憲章を始めとする国際法の明白な違反であります。こうした力による一方的な現状変更というのは、国際秩序の根幹を揺るがすものであり、断じて認められない、というのは累次申し上げてきたとおりであります。
 この侵略によって、食料、それからエネルギーといった物のですね安定供給、これが脅かされているわけでございます。それによってアジア太平洋地域の発展というのは大きな影響を受けていると考えております。さらにですね、これに関して、今経済が悪くなっているのはですね、ロシアに対する経済制裁であると、こういった偽りのナラティブが拡散されているということを懸念しておりまして、今回の場でも、ロシアによる侵略こそが問題であるということをですね強調させていただいたということでございます。
 先ほどお答えしたようにですね、やはり地域の平和と安全・安定というのが成長のまさに基礎であるということでありまして、その成長の基礎になる平和と安定というのを脅かしているのがまさにこのロシアの行為であるということでありまして、この点ですね、APECメンバーの間では広く共有されているものと理解をしております。したがって、この法の支配に基づく国際秩序の維持・強化、この重要性について、各エコノミー間の連帯を強化していく、というのをしっかり取り組んでいきたいと思っております。

【記者】日中首脳会談におきまして、この大臣のご自身の中国訪問については、具体的な時期も含めて、どのように調整していきたい考えでしょうか。

【林外務大臣】はい、本日の日中首脳会談におきまして、首脳レベルを含めてですね、あらゆるレベルで緊密に意思疎通をするということで一致をしております。その中で、従来より中国側から招請されております私自身の訪中についてもですね、今後調整を進めていくということで一致をした、というところでございます。

【記者】今の日中首脳会談の関係でお伺いしたいんですけども、大臣ご自身は今回三年ぶりの首脳会談に同席されてどのような印象を持たれましたでしょうか。受け止めお願いします。

【林外務大臣】今お話があったように、今回の首脳会談は対面で約3年振りになります。また、岸田総理と習主席との間では初めての対面の会談ということであります。日中関係の大局的な方向性とともにですね、課題、懸案、そして協力の可能性、こういったものについて率直かつ突っ込んだやり取りが行われた、ということでございます。
 まさに、この「建設的かつ安定的な関係」、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつですね、共通の課題については協力するという、この「建設的かつ安定的な関係」の構築にですね、繋がるような会談であったという風に考えております。
 この日中両国、様々な可能性と共に多くの課題や懸案にも直面しているわけでございますが、本日の会談も踏まえて、先ほど申し上げた「建設的かつ安定的な関係」の構築に向けて、引き続き首脳レベルを含むあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくということが重要だと考えております。

【記者】重ねて恐縮なんですけども、その中国への訪問については従来一致されていたということなんですけども、現時点でその見通し等についてなにか申し上げることができるでしょうか。

【林外務大臣】はい、あの今日は、まさに先ほど申し上げましたとおり、中国側から招請されている私自身の訪中についてですね、今後調整を進めていくということが、首脳間において、一致をしたというところまででございます。

【記者】話題が変わるんですけども、今日ミャンマーで拘束されていたジャーナリストの久保田さんが釈放されるということがありまして、これに当たって今回の拘束から解放に至るまでの経緯について大臣のご見解を改めて伺いたいのと、今後の対応について等何かありましたらお聞かせください。

【林外務大臣】久保田氏についてはですね、丸山駐ミャンマー大使などから、累次にわたって早期解放を強く求めてきておりまして、今次解放についてですね、ミャンマー側からは、日本政府からの強い要請を踏まえたものと、こういう説明があったということでございます。
 久保田氏は、丸山大使と面会した上でですね、既にヤンゴン空港を出発されており、明18日に日本に帰国することになっているというふうに承知しております。
 日本政府としてはですね、引き続き、邦人の安全確保のために万全を期すとともに、ミャンマー側に対してはですね、事態の改善に向けて強く働きかけていきたいと考えております。


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