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令和4年11月21日
ワーキングランチの様子 ワーキングランチ(写真提供:内閣広報室)
APEC首脳会議リトリート1の様子 APEC首脳会議リトリート1(写真提供:内閣広報室)
APEC首脳会議リトリート2の様子 APEC首脳会議リトリート2(写真提供:内閣広報室)

 11月18日および19日、APEC首脳会議がタイ・バンコクにて開催され、プラユット・ジャンオーチャー・タイ王国首相兼国防大臣(H.E. Mr. Prayut Chan-o-cha, Prime Minister and Minister of Defense of the Kingdom of Thailand)が議長を務め、日本から岸田文雄総理大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。

 首脳会議では、本年の議長であるタイが掲げた、「オープン、コネクト、バランス」というテーマの下、コロナ後のアジア太平洋地域の回復や包摂的かつ持続可能な成長について議論を行いました。議論の総括として首脳宣言が採択されたほか、同地域の持続可能な成長に関する「バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標」が承認されました。

1 第1セッション(議題:バランスの取れた、包括的で持続可能な成長)

 岸田総理大臣は発言の冒頭で、北朝鮮による弾道ミサイルが首脳会議当日の朝に発射され、我が国の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したとみられるところ、北朝鮮に強く抗議した旨言及しました。また、ロシアによるウクライナ侵略について、とりわけロシアの核兵器による威嚇や使用は、これまで繰り返し述べてきたとおりその考えは全く変わっておらず断じて受け入れられないことを強調しました。加えて、ロシアによる侵略は、コロナ危機からの回復を目指すアジア太平洋地域の経済の取組の足かせになっており、こうした観点からも直ちに侵略を止めるよう強く求めました。
その上で、岸田総理大臣は、国際社会が感染症、気候変動、食料・エネルギー問題などの様々な課題に直面し、人間の安全保障の危機とも言える状況にある現在、地域の成長のために我々APECエコノミーの一層の取組が求められていることを指摘し、日本として社会課題を成長のエンジンへと転換し、官民が連携して持続可能な経済をつくることをコンセプトとする「新しい資本主義」の実現を目指していく旨紹介しました。そして、コロナ後の包摂的で持続可能な成長に必要な重点要素として、以下を述べました。

  • (1)気候変動問題を「新しい資本主義」の実現によって克服すべき最大の課題と位置づけ、2050年カーボンニュートラルと整合的な2030年度温室効果ガス削減目標の確実な達成に向けた取組を加速させる。
  • (2)気候変動やエネルギー移行については、日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ2.0やアジアの実情に応じたエネルギー・トランジションの推進、上流投資の促進を通じ、エネルギー安全保障、持続可能な経済成長、気候変動対策の3つを同時に達成するバランスのとれた脱炭素化を支援する。
  • (3)データ独占・データ流通圏形成に対処するために、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の具体化に向けた国際的なルール作りに積極的な役割を果たしていく。
  • (4)付加価値を生み出す源泉は人であり、リスキリングの推進など、「人への投資」を進める。中でも女性の経済活動への一層の参画を重視しており、APECにおいても引き続き女性の能力構築に取り組み、地域の包摂的な成長に貢献する。

2 第2セッション(議題:持続可能な貿易と投資)

 岸田総理大臣は、世界経済及び貿易の減速が懸念される中、現在の世界貿易体制はなんとか持ちこたえているが、その強靭性を当然視してはならない旨強調した上で、持続可能な貿易・投資に必要な重点要素として、以下3点を述べました。

  • (1)ルールに基づく自由で開かれた、公正で透明性のある貿易・投資環境、特にWTOを中核とする多角的自由貿易体制の維持・強化が重要である。本年6月のWTO閣僚会議において、約6年ぶりに閣僚宣言が採択され、パンデミックや食料不安など、緊急時におけるWTOの対応につき合意されたことを評価するとともに、本WTO閣僚会議で漁業補助金協定交渉が妥結したことを歓迎。これはSDGsの達成に資するもので、早期発効に向けて我が国も尽力する。日本は紛争解決分野を含むWTO改革に関する議論や電子商取引交渉についても引き続き牽引する。
  • (2)我が国は自由貿易の旗手として、この地域における自由で開かれた経済秩序の構築に引き続き貢献する。CPTPPは、不公正な貿易慣行や経済的威圧とは相容れない協定であり、日本は、他の締約国と連携し、そのハイスタンダード維持に取組む。また、IPEFの具体化に向けても関係国と協力していく。
  • (3)持続可能な発展を図る上で、「質の高いインフラ」投資の普及・実践やデジタル技術を用いた貿易円滑化などの推進が重要である。また、インフラ投資が国際ルールやスタンダードに従って行われることが重要であり、日本は引き続き、アジア太平洋地域の「質の高いインフラ」投資や、透明で公正な開発金融の推進に向けた議論を牽引する。

 岸田総理大臣は最後に、「平和と安定」は経済の回復及び成長の基礎であることを忘れてはならず、ロシアの核兵器による威嚇や使用は、国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威であり、断じて受け入れられないことを強調しました。そして、本年のタイAPECの成果を礎に、アジア太平洋地域の更なる発展につなげるため、来年議長を務める米国を始めとするAPECエコノミーと引き続き緊密に連携し、APECプトラジャヤ・ビジョンの実現に向けて引き続き貢献していく決意を表明しました。
 これを受けてプラユット議長は、第2セッションのとりまとめ発言において、岸田総理大臣の発言を受け、核の問題についてはタイを含め全エコノミーが共有している懸念だと述べました。

3 会議の終了後、議論の総括として、首脳宣言が発出されたほか、同地域の持続可能な成長に向け「バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標」が承認されました。

[参考1]APEC参加国・地域(21エコノミー)

 タイ(2022年APEC議長)、日本、豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、タイ、米国、ベトナム。 (注)APECには、香港は「ホンコン・チャイナ」、台湾は「チャイニーズ・タイペイ」の名称で参加。

[参考2]バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標

 APEC地域におけるポスト・コロナの持続可能で均衡のとれた経済成長を目指すための目標。(1)環境課題への取組、(2)貿易・投資、(3)環境保全・資源管理といった分野に関して実施すべき内容、例えばパリ協定の履行、環境物品・サービス貿易の促進、沿岸・海洋資源管理等を列挙している。

[参考3]APECプトラジャヤ・ビジョン

 (1)貿易・投資、(2)イノベーションとデジタル化、(3)力強く、均衡のある、安全で、持続可能かつ包摂的な成長、という3つの経済的推進力により、「全ての人々と未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靭かつ平和なアジア太平洋共同体とすること」を目指す。

[参考4]2022年APEC首脳宣言(仮訳(PDF)別ウィンドウで開く/英文(PDF)別ウィンドウで開く)、「バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標」(仮訳(PDF)別ウィンドウで開く/英文(PDF)別ウィンドウで開く

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