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令和5年1月4日
(写真1)食材を切る松本料理人 2022年12月公邸厨房にて調理中  
(写真2)挨拶をする松本料理人 2022年11月来賓の前で挨拶をする松本料理人

 2021年11月から在マイアミ日本国総領事館で公邸料理人を務める松本翔太(まつもと しょうた)料理人。日本料理を軸にしつつ、マイアミの特徴も活かした多彩で美味しい料理を提供しています。松本料理人にその経験などを語ってもらいます。

Q:どのような幼少期、学生時代を過ごしましたか。
 徳島県の藍住町という町で生まれ育ちました。藍住町は藍の産地であり、町の名前にもあるように、藍が特産の町です。ここで育つ子供の多くは地域学習で藍染をするので、手が青色になって登校する姿はある種の風物詩のようになっており、私自身も手を青くして通学していました。
 高校卒業後、大阪にある辻調理師専門学校に入学して2年間料理の基礎を学びました。選んだ学科が和洋中をオールラウンドに学ぶ学科であったことが、現在でも活きていると実感しています。また、同専門学校在学中にワインと日本酒の勉強も始め、知見を深めていきました。卒業後は、京都と大阪のレストランやホテル、ワインショップで働いていました。その際、ワインソムリエの資格を所得しました。

Q:公邸料理人となった経緯はどのようなものですか。
 私はもともと旅行や食べ歩きが好きで、漠然と日本と違う環境で働いてみたいという思いがありましたが、海外で働く上では語学の面に不安があると考えていました。私には公邸料理人として勤務している友人がおり、その友人が海外で活躍している姿を見て、まずは生活面をサポートしてもらえる環境で働き、海外生活に順応していくのも良いかなと思い、当館の公邸料理人に応募しました。

Q:マイアミに移住されて苦労している点などはありますか。
 現在の苦労はやはり言葉です。しかし、食べ歩きが好きなので、レストランで使いそうな言葉を事前にYouTubeやアプリを通して覚えてお店の人に話しかけるというのを繰り返すうちに、少しずつ解消されています。マイアミは非常に特殊なエリアです。スペイン語を第一言語にする人達が多く、街でも英語ではなくスペイン語しか聞こえないこともあります。なので、両方覚えようと、毎日英語とスペイン語を勉強しています。とりわけスペイン語を第一言語とするヒスパニック系の人達は、辿々しくもスペイン語を喋ろうとする日本人が珍しいのか、いつも優しく接してくれます。こちらの人達の優しさもあり、言葉の壁を少しずつ乗り越えています。

Q:料理を提供する上での工夫している点などを教えてください。
 私が提供する料理は、日本料理が軸となっていますが、マイアミでは寿司店はたまに見かけますが、日本で見かけるような洋食店はほとんどないことから、日本の洋食店が提供するような洋食を、コースの要所で提供しています。
 食材については、極力地元の食材を使うことを心がけています。魚介類については、タイ、クエ、メカジキ、海老、カニ、ロブスターなど、非常に多彩な種類がマイアミでは手に入ります。また、フルーツについては、マイアミには、日本には無い南国の甘くて美味しいフルーツがたくさんあるため、それらを食材として提供しています。 フルーツを調理する際、甘味と香りが強いものが多いので、お酢を足して魚や揚げ物と合わせることが多いです。最初は味醂や砂糖、醤油を少し足したりしていましたが、よく熟させるとそれも必要無いなと判断して、現在はそれらの調味料を使わないで作ることもあります。調理をする際、ただ過去の経験だけに頼ってするのでは成長がないと思い、調理時に「この方法の方がより美味しくなるのでは」と判断した際は、調理法を変えています。
 また、ベジタリアンや宗教上の理由により食材に制限のある人の料理について、常に研究しています。以前はベジタリアンの方々には全ての動物性の食材を提供してはいけないと思い込んでいましたが、公邸料理人として経験を積んでいく際に、必ずしもそうではなく、例えばチーズと卵は大丈夫など、一言でベジタリアンと言っても色々なタイプがあることに気づきました。また、宗教に関しては、事前の自己学習が重要だと考えており、宗教上の食材についても研究をしています。
 魚介類の調達に関して興味深い点があります。それは、鮮度の良い魚介類を調達しようとすると、地元の市場で魚介類を入手するより、日本から魚を注文した方が鮮度の良い場合が多いということです。魚が美味しいと思ったレストランに出会うたびに魚をどこで買っているのかを聞くと、日本という答えが本当に多いです。私は、他店のレストランとの差別化のため、またマイアミで採れた食材を極力使いたいという思いから、安易に日本から注文することはせず、直接漁師から入手するように努めています。また、日本では、漁師→市場→レストランと食材が移動する際に、いかに鮮度を保つよう気をつけているかについて痛感しました。

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