外務省・新着情報

冒頭発言

【林外務大臣】4日から今日までの1週間で、メキシコ、エクアドル、ブラジル、アルゼンチンの中南米4か国を訪問いたしました。本年、G7議長国及び国連安保理非常任理事国を務めるに当たりまして、年始のこのタイミングで、我が国との長い信頼と友好の歴史を有し、基本的価値を共有する中南米諸国を訪問したことは有益でした。
 各国とは、二国間の経済関係、また協力・交流の強化とともに、ウクライナ、そして東アジアを含む地域情勢や国際場裡での協力につき幅広く議論をいたしました。国際社会が直面する現下の厳しい情勢を踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして気候変動対策など重要な国際課題への対応において更なる連携を図ることを確認いたしました。また、各地で我が国と中南米の大事な架け橋となっている日系人の方々との交流を深めるとともに、ビジネスの最前線で日々奮闘されておられる日系企業関係者と懇談し、各国との貿易投資の活性化のための方策についても議論いたしました。
 メキシコでは、エブラル外務大臣及びブエンロストロ経済大臣と会談をいたしまして、本年外交関係樹立135周年を迎えた両国の関係を、政治、経済、学術・科学技術等幅広い分野で一層発展をさせ、国際場裡における連携を深めていくことで一致いたしました。また、両国企業のビジネスの環境整備のために協力することを確認いたしました。
 続きましてエクアドルでは、ラッソ大統領を表敬するとともに、オルギン外務大臣と会談をし、貿易・投資を含む様々な分野において二国間関係を一層強化していくこと、そして両国共に本年から安保理非常任理事国を務めることを踏まえまして、安保理改革を含め広く国際社会の諸課題について協力していくことを確認いたしました。
 ブラジルでは、まずサンパウロにおいて世界最大の日系社会の方々との面会・意見交換等を行いました。ブラジリアでは、8日に発生した抗議行動に直面したわけですが、そのような中でヴィエイラ外務大臣と3時間近くにわたってじっくりと意見交換することができました。ブラジル新政権発足後の最初の賓客であったとのことであります。私からヴィエイラ大臣に対し、暴力により民主主義を脅かす行為は許されるべきではなく、民主的に選出されたルーラ大統領及び新政権への支持を改めて表明をいたしました。また、新政権のブラジルとの間でも引き続き、食料・エネルギー・鉱物資源の分野を含む二国間協力や、安保理改革を推進するG4のメンバーとして、国連を始め国際場裡での協力・連携を推進していくことで一致をいたしました。また、ブラジリアのリオ・ブランコ外交官学校において、「連帯の輪を広げるー中南米と共に歩む日本外交」というテーマで講演をいたしました。
 アルゼンチンでは、フェルナンデス大統領を表敬するとともに、カフィエロ外務大臣及びマサ経済大臣と会談をしまして、本年の外交関係樹立125周年のモメンタムを活かした二国間関係の強化について一致をしたところでございます。また、世界的な鉱物・食料資源国であるアルゼンチンとの経済関係の強化についても意見交換を行ったところであります。
 ウクライナ情勢等によって歴史の岐路に直面する中、各国において、外交を担う外相同士で、胸襟を開いた対話を行いまして、互いに一層の努力と連携をしていくことを確認するとともに、個人的信頼関係も深めることができた有意義な訪問になりました。
 なお、中南米との関係では、ハイチにおけるコレラの感染拡大への対処のため、保健、水・衛生、食料等の緊急人道支援として300万ドルの緊急無償資金協力を国際機関を通じて行うことを6日に決定をしたところでございます。ハイチ国民が直面する困難を克服する一助となるということを願っております。

 明日から米国を訪問する上で、まず、明11日、ワシントンにおいて、浜田防衛大臣と共に日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)に出席をし、我が国の戦略文書を踏まえつつ、日米が直面する安全保障上の課題について認識のすりあわせを行うとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化のための今後の協力、日米同盟の抑止力・対処力の強化や地域における安全保障・防衛協力の方向性等について、議論する予定にしております。
 12日ですが、ニューヨークにおきまして、私自身が議長として、法の支配をテーマとする閣僚級公開討論を主催する予定であります。国際社会において法の支配を実現する上で、多国間主義の中核たるべき国連と、特にその重要機関である安保理には重い責任があるわけであります。安保理メンバーのみならず広く国連加盟国に参加を呼びかけて、法の支配をめぐって国際社会が直面する諸課題につき各国と意見交換し、国際社会における法の支配の強化に資する活発な議論を行いたいと考えています。
 私からは以上です。

質疑応答

【記者】冒頭大臣からも「G7議長国として」という言及がありましたけれども、今回外遊した4か国のうちですね、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンは、G20メンバー国でもあるかと思います。G7の議長国として、今年、G20のメンバーとどのように関係を強化していくお考えでしょうか。お聞かせください。

【林外務大臣】今日国際社会はですね、コロナ禍にも見舞われて、また、国際秩序を根幹から揺るがすロシアによるウクライナ侵略に直面して、歴史的な転換期を迎えつつあります。こうした中で開催されるG7長野県軽井沢外相会合、そしてG7広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試み、また核兵器による威嚇、その使用を断固として拒否してですね、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志、これを力強く世界に示したいと考えております。
 また、今回のロシアのウクライナ侵略は、エネルギーや食料を始めとする様々な面で国際経済や世界の人々の暮らしに大きな悪影響を与えました。気候変動・エネルギー、食料、保健など、途上国を含む国際社会が直面する諸課題についてもG7として力強く対応したいと思っております。
 こうした諸課題への対応に当たってですね、G7での議論も基に国際社会に取組を広げていくものが多く、この点においてですね、特に国際経済協力に関するプレミア・フォーラムであるG20との連結は不可欠であると考えております。また、来年ですが、インドに続いてブラジルがG20議長国となることもあってですね、G7議長国である我が国として、中南米諸国を含むG20メンバーとの間で緊密に協力をしていきたいと考えております。

【記者】IUU漁業に関連して伺います。中南米でのIUU漁業対策について、日本として予定している取組を伺います。また、取組の対象とする国やその数、また人数の規模感などの具体的な検討状況を合わせてお願いいたします。

【林外務大臣】違法・無報告・無規制、いわゆるIUU漁業ですが、これは法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への脅威だと考えております。多くの中南米諸国にとっても大きな課題であります。今般訪問したエクアドルのオルギン外相との会談では、IUUについて議論し、互いの懸念、これを共有いたしました。また、ブラジルで行った対中南米政策に関する講演では、IUU漁業のように国際ルールに基づかない行為に対してですね、国際社会で声を上げて、対策について知見を共有することが重要であることを訴えさせていただきました。
 我が国は、IUU漁業対策能力向上に資するべく、今年の3月までに、中南米諸国の海上保安・水産等に携わる行政官を日本に招へいしまして、IUU漁業対策に関する研修を実施する予定でありまして、研修が効果的となるような対象国などを現在調整をしているところであります。また、この他にもどのような連携・協力ができるか、中南米諸国と共にですね、考えていきたいと考えております。

【記者】日系人社会の連携の取組について伺います。中南米の日系社会との連携を図るため、日本として予定している取り組みを伺います。そのうちの取り組みを具体的に開始する時期や、その規模感などの検討状況とあわせて、中南米各国との連携強化の観点から、日系人社会との連携を図る意義についての考えも合わせてお願い致します。

【林外務大臣】中南米地域には世界最多の約230万人の日系人の方々が在住し、日本と中南米との絆となるとともに、中南米諸国の日本に対する信頼や尊敬を醸成する礎となっております。先般の私のサンパウロ訪問においては、様々な日系人の方々と交流し、日本という同じルーツを持つ者同士の強い思いを実感した次第でございます。
 一方で、近年、日系社会の世代交代が進みましてですね、若い世代の日系人の方々と日本との関係の希薄化が懸念されていることもあるわけであります。
 こうした状況において、我が国と中南米地域の日系社会との絆をより強固にするための施策を実施する必要性が高まっていると考えております。こうした観点から、先般のサンパウロ訪問におきまして、日系人団体との会合した際に、近く外務省内に「中南米日系社会連携推進室」、これを設置することを発表したところでございます。
 今後、この室の下で、次世代を担う若手の日系人の方々を日本に招待し、日本の理解を深めていただく他、現地の日本文化事業、そして日系社会のネットワーク作り等を支援する考えであります。また、昨年末、中南米の日系医療団体に対する日本製医療機器供与や、そして日系農業団体に対する日本製資機材の供与など、6.4億円の支援を行うことを決定しております。中南米日系社会連携推進室の設置を含めてですね、各種取組を可能な限り早期に開始したいと考えております。

【記者】中国のビザの停止に関連してお伺いいたします。東京にある大使館は中国を訪れる日本人のビザの発給を10日から一時的に停止したと発表したことについてその受け止めと今後の成果の対応を伺います。

【林外務大臣】1月10日、中国政府が、我が国を含む一部の国に対し、中国本土での感染拡大に係る水際への措置として、査証発給を制限する旨発表したと承知をしております。
 我が国として、中国において、新型コロナの感染状況が急速に悪化するとともに、詳細な状況の把握が困難であることを踏まえ、新型コロナの国内への流入の急増を避けるために、昨年12月30日以降、入国時検査や陰性証明書の提出などの臨時的な措置を講じているところでございます。
 我が国が、新型コロナ対策を目的として、国際的な人の往来を止めるものとならないように可能な限り配慮を行って水際措置を実施している一方で、中国が、新型コロナ対策とは別の理由で査証発給の制限を行ったことは極めて遺憾であり、中国側に対して外交ルートで抗議するとともに、かかる措置の撤廃を求めたところでございます。
 我が国としては、中国の感染状況や中国側による情報開示のあり方などを見つつ、適切に対応して参りたいと考えております。

【記者】メルコスールについてお尋ねします。日本の経済界からはですね、メルコスール、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイが加盟する枠組みですけども、これとの経済連携協定を早期に締結してほしいという要望があると思います。今回の一連の外遊で、このメルコスールについて何かやりとりなどありましたでしょうか。また、日本政府として、今後どのようにメルコスールについては進めていきたいとお考えでしょうか。

【林外務大臣】日メルコスールEPAですが、これまでもメルコスールを構成する諸国、また企業関係者からですね、要望があるところでありまして、今回も関心が示されたところであります。私からはですね、メルコスールとの経済関係強化のあり方につきましては、日本国内でも様々な意見がありまして、国内で引き続き議論を継続していきたいということ等を伝えたところでございます。


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