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冒頭発言

【林外務大臣】安保理の議長として「国家間の法の支配」に関する公開討論を主催いたしました。このテーマを選びましたのは、法の支配こそが、様々な挑戦に直面する今の世界に必要と考えるからであります。
 まず、ロシアによる侵略は国連憲章を始めとする法の支配に基づく国際秩序への深刻な挑戦でありまして、日本はこれを強く非難をします。ロシアに対して、一連の国連総会決議とICJ暫定措置命令の誠実な履行を求めます。この事態に直面して、国際社会は団結すべき時にあります。
 しかし、安保理の課題はそれだけではありません。アフリカ、中東、ラテンアメリカ、そしてインド太平洋に至るまで、世界は紛争、暴力、テロ、そして地政学的緊張の中にあります。陸地でも海洋でも、力の支配ではなく、法の支配が不可欠であり、それは世界のどこであれ同じであります。
 これが、私が本日の会合で「法の支配のための結集(Uniting for the rule of law)」を呼びかけた理由です。これこそが日本のこれから2年間の安保理任期を貫く方針でもあり、本日はそのキックオフであります。
 公開討論では、私から、法の支配に関する不可欠な要素として、以下の三点を強調いたしました。まず第一に、合意を守ることであります。国連憲章、国連の決議、国際判決等の誠実な遵守であります。国際法の恣意的な解釈は許されないわけであります。第二に、力や威圧による国境の書き換えを許さないこと。第三に、国連憲章の違反に協力して立ち向かうことであります。
 本日の会合では、グテーレス事務総長、ドナヒューICJ所長、アカンデ・オックスフォード大学教授、そして3カ国の外相を含む77か国が参加をしてくださいました。多くの国が日本の問題提起に応じて、力強いステートメントをしてくれていることに感謝をいたします。
 法の支配の重要性については各国とも基本的に異論はなく、特に中小国にとってこそですね、法の支配が重要であるとの複数の指摘については、私が述べたことと軌を一にしており、強く印象に残ったところであります。本日の会合を通じて、力による支配ではなく、法の支配の重要性に関する認識が国際社会に一層深く共有されることを期待しております。
 法の支配は安保理改革とも無関係ではありません。法の支配の推進というのは多国間主義の基盤であり、切り離せないわけであります。多国間主義の砦たる国連とその重要機関である安保理の改革、これは待ったなしであります。この点も議場で述べましたとおりであります。早期の改革実現に向け努力を強化していきたいと考えております。
 次に、バイ会談などについても一言申し上げます。本日は、グテーレス国連事務総長、クールシ国連総会議長、トーマス・グリーンフィールド米国連大使、ソアレシュ・カーボベルデ外相、カシス・スイス外相、サーイグ・アラブ首長国連邦国務大臣との会談を行いました。
 これらの会談では、多国間主義を強化するために安保理改革を含む国連の機能強化や、2024年の未来サミットをはじめ各種国連関連会合に向けて緊密に連携していくことの重要性で一致をいたしました。また、北朝鮮、ウクライナ、中東、アフリカ等の地域・国際情勢についても率直な意見交換を行いまして、連携していくことで一致をいたしました。
 これに加え、会合が始める前に、エクアドルのオルギン外相、コロンビアのレイバ外相、英国のラトレー政務次官など閣僚級の皆様と懇談をいたしまして、法の支配の重要性に関する認識の一致を確認したところであります。また、同じく参加されましたウクライナのザパロヴァ第一副外相からは、G7議長国としてのリーダーシップと国連における国際的な連携について期待が表明されまして、連携していくことで一致をしたところであります。
 短い期間でしたが、濃密なNY訪問となりました。これから2年間、日本は他の理事国の仲間と協力をいたしまして、安保理が本来の責任を果たせるよう積極的に貢献していく考えであります。私からは以上です。

質疑応答

【記者】中間国への働きかけについて伺います。大臣公開討論でもこの中間的な立場を取る国について言及がありましたけれども、ASEANやアフリカには、ロシアや中国に対して中間的な立場を取る国が少なくありません。こうした中、欧米各国とは異なるどのような日本外交の強みを生かして、こうした国々に何を働きかけていくお考えでしょうか。

【林外務大臣】力による現状変更は地球上どこであってもあってはならない、ということでありまして、そうした観点から、本日、法の支配に関する公開討論を開催いたしました。法の支配は大国よりも脆弱国・中小国にとってこそ重要な国際法上の原則でありまして、そうした認識をできるだけ多くの国と共有する努力を続けたいと思っております。
 同時に、こうしたいわゆる中間国は気候変動や食料・エネルギー危機、そして国際保健、また開発等の様々な困難に直面しておりまして、そうした国々に寄り添いながら課題解決に向けて支援の手を差し伸べていくということでございます。こうした中で多国間主義と法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序、これを推進していきたいと考えております。

【記者】安保理メンバーとしてですね、国連が機能不全に陥っているとの原因とされる中国やロシアとどう向きあっていくお考えでしょうか。また、大臣演説の中でロシアは名指しされた一方で、中国については名指しを避けられました。この理由についてなんですけども、ご自身の中国訪問を含めまして安定的かつ建設的な関係を築きたいといった思いを込めたメッセージというふうに受け止めてもよろしいでしょうか。

【林外務大臣】まずロシアと中国との向き合い方ということですが、今年1月から、日本はG7議長国として、国際社会の議論の流れづくりを主導していくことになります。力による一方的な現状変更の試みや、ロシアによるウクライナ侵略への対応を含め、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の強い意志を力強く世界に示したいと考えております。
 同時に、国連においては日本は安保理に入ったわけであります。安保理は、ロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の核・ミサイル活動に対して、有効に機能できていないわけであります。日本としては中露を含む安保理が本来の役割を果たすよう貢献していくとともに、総会や事務総長の役割強化などを通じて、国連の機能強化を進め、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化を目指していきたいと考えております。
 また中国についてですが、今回のステートメントでは、中国への言及はしていないですが、本日の会合では、法の支配の重要性を述べる中で、インド太平洋を含む地政学的緊張を指摘した上で、国際的な判決を含め合意を守ること、力や威圧による国境の書き換えを許さないこと等を強調したわけでございます。これは、東アジアを含む地球上のどこでもあてはまることだと考えております。
 その上で、中国との関係について申し上げますと、これまで一貫して述べてきたとおり、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ねて、共通の諸課題については協力するという「建設的かつ安定的な日中関係」の構築を、これを双方の努力で進めていくことが重要であるというのが政府の立場でございます。

【記者】今の話と重複するかもしれませんが、安保理改革についてお尋ねします。今日の演説の中でも安保理改革の必要性について言及していたと思います。これから非常任理事国としても安保理改革に向けて努力していくという話があったところだと思いますが、一方で、まさに今大臣がお話されたように今年G7でも議長国にもなりますけども、G7の議論の中でも安保理改革を訴えていく考えでしょうか。

【林外務大臣】日本としては、安保理改革を大変重視しておりまして、本日のステートメントでもその重要性に触れました。引き続き、G4や米英仏、アフリカを含む多くの国々と連携しながら、早期の実現に向けて、粘り強く取り組んでいく所存です。
 その上で、今年1月から、日本はG7議長国として、国際社会の議論の流れづくり、これを主導していくことになる。力による一方的な現状変更の試みや、ロシアによるウクライナ侵略への対応を含め、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意志、これを力強く世界に示したいと思います。

【記者】韓国の徴用工問題に関連して伺います。韓国外務省が、韓国政府傘下にある既存の財団が原告への支払いを行う案を検討していることを明らかにしましたが、これに対する受け止めと、今後の日本政府の対応を伺います。

【林外務大臣】韓国国内の動き、また韓国側の発言の一々についてコメントすることは差し控えたいというふうに思います。
 いずれにしても、昨年11月の日韓首脳会談におきまして、両首脳は、日韓間の懸案の早期解決を図るということで改めて一致をしておりまして、外交当局間で意思疎通を継続しているところでございます。
 1965年の国交正常化以来築いてきた友好協力関係の基盤に基づいて、日韓関係を健全な形に戻してですね、更に発展させていくために、韓国政府と緊密に意思疎通していきたいと考えております。


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