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令和5年2月9日
首脳会談を前に、マルコス大統領と握手を行う岸田総理大臣 日・フィリピン首脳会談(写真提供:内閣広報室)
日・フィリピン首脳会談が行われている様子 日・フィリピン首脳会談(写真提供:内閣広報室)
マルコス大統領とともに、共同記者発表を行っている岸田総理大臣 共同記者発表(写真提供:内閣広報室)

 2月9日、午後6時5分から約55分間、岸田文雄内閣総理大臣は、日本を公式訪問中のフェルディナンド・マルコス・フィリピン共和国大統領(H.E. Ferdinand R. Marcos, Jr., President of the Republic of the Philippines)と会談を行いました。続けて、文書交換式への立ち会い及び共同記者発表を実施した上で、午後7時30分から8時30分の約1時間、岸田総理大臣夫妻が主催する形でワーキング・ディナーを行ったところ、概要は以下のとおりです。
 会談には、日本側から林芳正外務大臣、松本剛明総務大臣、野村哲郎農林水産大臣、西村康稔経済産業大臣、浜田靖一防衛大臣、木原誠二内閣官房副長官、磯崎仁彦官房副長官他が、また、フィリピン側からは、グロリア・アロヨ元大統領、ミゲル・ズビリ上院議長、フェルディナンド・ロムアルデス下院議長、エンリケ・マナロ外務大臣他が同席し、ワーキング・ディナーにはルイーズ・マルコス大統領夫人も同席しました。
 マルコス大統領から岸田総理に対し、早期のフィリピン訪問を招請し、岸田総理はこれを受け入れました。
 その成果として、日・フィリピン共同声明(和文仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開くが発出されました。

1 日・フィリピン首脳会談

  • (1)冒頭
     岸田総理大臣から、マルコス大統領による大統領として初の訪日を歓迎し、厳しく複雑な国際情勢の中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、日本と隣接する海洋国家であるフィリピンとの連携を重視している旨述べました。
     これに対し、マルコス大統領から、今回の公式訪問にかかる日本側の歓迎に対する謝意が示されるとともに、岸田総理大臣との間で今後の日・フィリピン関係を一層発展させることへの強い期待が示されました。
  • (2)二国間協力
    • ア 経済
       岸田総理大臣から、マルコス政権の「ビルド・ベター・モア」政策を含むフィリピンの経済開発計画を支えるため、官民を挙げて来年3月までに6,000億円の支援を実施する旨述べました。これに対し、マルコス大統領から、日本による資金協力に深甚なる謝意が示されました。
       両首脳は、経済協力インフラ合同委員会を通じて、鉄道・道路橋梁等インフラ整備を始めとするODA案件の実施と官民連携(PPP)を模索していくことで一致しました。その上で、岸田総理大臣は、マニラ首都圏の南北通勤鉄道及び同延伸部分の整備に係る計3,770億円規模の借款の供与に係る交換公文の署名に至ったことを歓迎するとともに、今後、300億円の災害復旧スタンド・バイ借款の供与を行う用意がある旨伝えました。
       両首脳は、農業及び情報通信の各分野において協力覚書の署名に至ったことを歓迎しました。岸田総理大臣から、スービック湾の拠点整備等の海上保安分野、エネルギー分野、保健分野及び産業開発分野についても、引き続き具体的な協力を進めていく旨述べました。これに対し、マルコス大統領から日本による幅広い協力への感謝が示されるとともに、「アジア・ゼロエミッション共同体」構想への支持が示されました。
    • イ 安全保障・防衛
       岸田総理大臣から、国家安全保障戦略等について説明し、マルコス大統領は、自由で開かれたルールに基づく国際秩序への日本のコミットメントを歓迎しました。また、両首脳は、外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を含む二国間協議を通じ、安全保障・防衛協力の具体化を追求していくことで一致しました。
       両首脳は、「フィリピンにおける自衛隊の人道支援・災害救援活動に関するTOR」の署名を歓迎し、両国の共同訓練等を強化・円滑にするための更なる枠組みを含む方途の検討を継続していくことで一致しました。また、両首脳は、防衛装備・技術協力や日米比の協力強化に向けた検討も進めていくことで一致しました。さらに、両首脳は、経済安全保障、サイバーセキュリティ等の分野における協力も一層進めていくことで一致しました。
       また、岸田総理大臣から、今後も和平プロセスの進捗に応じてバンサモロ自治政府樹立に向けた支援を強化するとともに、スールー・セレベス海とその周辺地域における協力も強化していきたい旨述べました。マルコス大統領から、ミンダナオ和平における日本の長年の支援が和平につながっており、当該地域の発展に貢献しているとの深甚なる謝意が示されました。
    • ウ 人的交流
       岸田総理大臣から、フィリピン政府職員等に対する査証免除を表明し、マルコス大統領から同発表を歓迎するとともに、これを機に両国国民の往来・交流がより一層進展することへの期待が示されました。
    • エ その他
       今般の広域強盗事件や特殊詐欺事件に関し、岸田総理から、両国の関係当局間で必要な協力が行われていることに触れつつ、引き続き、関係当局間の連携をお願いしたい旨述べました。

2 日・フィリピン首脳ワーキング・ディナー

  • (1)両首脳は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」及び「インド太平洋に関する及びASEANアウトルック(AOIP)」が本質的な原則を共有していることを改めて確認しました。
  • (2)両首脳は、本年12月を目処に、東京で日・ASEAN友好協力50周年特別首脳会議を開催し、将来の日・ASEAN関係のための新たなビジョンを共に発表することを期待するとの認識を共有しました。
  • (3)両首脳は、東シナ海及び南シナ海の状況に対する深刻な懸念を表明するとともに、力又は威圧を含む緊張を高め得る行為に強く反対しました。また、両首脳は、経済的威圧への懸念と強い反対を表明するとともに、透明で公正な開発金融の重要性を確認しました。
  • (4)両首脳は、ウクライナ情勢について、ロシアによる侵略を最も強い言葉で非難し、ウクライナ領内からの完全かつ無条件の撤退を要求した2022年3月2日付けの国連総会決議で示された立場を再確認しました。この文脈で、核兵器の使用や威嚇のいずれも決して許容されるものではないことを強調しました。また、両首脳は、欧州や世界のいかなる場所にも影響を与える、国際的に認識された国境の力又は威圧による変更を認めない国際秩序の根幹を危うくするいかなる試みに強く反対しました。
  • (5)両首脳は、長年にわたる北朝鮮による日本人の拉致を非難し、北朝鮮に対して拉致問題の即時解決を求める旨確認しました。また、両首脳は、昨年北朝鮮が行った前例のない数の弾道ミサイル発射を含め、北朝鮮の進行中の核兵器及び弾道ミサイル開発を非難し、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄の実現に対するコミットメントを改めて表明しました。
  • (6)ミャンマー情勢について、両首脳は、「5つのコンセンサス」を通じたミャンマー情勢の改善に向けたASEANの取組への支持を再確認しました。
  • (7)核軍縮・不拡散について、両首脳は、核兵器不拡散条約(NPT)を維持・強化するために、第11回NPT運用検討会議に向け軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)の枠組みの下での活動を通じたものを含め、引き続き緊密に取り組むことを再確認しました。

3 文書交換式・共同記者発表

 両首脳立ち会いの下、以下の二国間協力関連文書の交換が行われました。

  • (1)南北通勤鉄道延伸計画(第二期)に関する交換公文
  • (2)南北通勤鉄道延伸計画(第二期)に関する円借款貸付契約
  • (3)南北通勤鉄道計画(マロロス-ツツバン)(第二期)に関する交換公文
  • (4)南北通勤鉄道計画(マロロス-ツツバン)(第二期)に関する円借款貸付契約
  • (5)自衛隊の人道支援・災害救援活動に関する取決め
  • (6)農業に関する協力覚書
  • (7)情報通信技術に関する協力覚書

 文書交換式に続いて、両首脳は共同記者発表を行いました。


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