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令和5年2月25日
テレビ会議でゼレンスキー大統領の発言を聞く、岸田総理の様子 テレビ会議に臨む岸田総理(写真提供:内閣広報室)
テレビ会議で発言する、岸田総理の様子 テレビ会議に臨む岸田総理(写真提供:内閣広報室)

 ロシアによるウクライナ侵略の開始から1年となる2月24日、午後11時(日本時間)から約90分間、本年のG7議長国である我が国の呼びかけにより、G7首脳テレビ会議が行われ、岸田文雄内閣総理大臣が議長を務めたところ、概要は以下のとおりです。今回の会議では、冒頭に議長である岸田総理大臣に続いて、ヴォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領(H.E. Mr. Volodymyr ZELENSKYY, President of Ukraine)が発言し、その後G7首脳間で議論が行われました。会合後、G7首脳声明が発出されました。

1 冒頭

  • (1)岸田総理大臣は、ロシアによる決して正当化できない侵略や、国際法に反する市民や民間施設を狙った攻撃が続いている旨述べ、自国防衛のために立ち上がっているウクライナ国民の勇気と忍耐とその強さに心からの敬意を表しました。その上で、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援といった具体的な取組を通じ、ロシアに侵略をやめさせ、法の支配に基づく国際秩序を堅持するというG7の確固たる決意を示していく旨強調しました。
  • (2)岸田総理大臣は、より幅広い国際社会との連携も重要である旨指摘するとともに、2月23日にウクライナにおける包括的、公正かつ永続的な平和を求める国連総会決議案が141票の賛成を得て採択されたことは、国際社会の大多数が、ロシアに即時、完全、かつ無条件の撤退を求める強い意思を改めて表明したものであり、これを歓迎したい旨述べました。
  • (3)ウクライナとの連帯
     岸田総理大臣は、ゼレンスキー大統領が「平和フォーミュラ」において和平に向けた基本原則を示し、平和の実現に向けて真摯な努力を続けていることを支持する旨述べました。また、先般の欧州各国訪問を始めとするゼレンスキー大統領の献身的な外交努力についても、敬意を表しました。その上で、昨年のドイツのリーダーシップを引き継ぎ、本年の自身の議長下でも、G7として、引き続きウクライナを全力で支えていくとの決意を示しました。

2 制裁

  • (1)岸田総理大臣は、G7を始めとする同志国が連携して対露制裁を科すことで、一定の効果を収めてきた旨述べ、その上で、G7として引き続き連携してロシアに対しコストをかけ続ける必要があると強調しました。
  • (2)岸田総理大臣は、今回の首脳声明では、軍事・製造部門を支える物品・技術に関する追加制裁を発表し、G7として明確なメッセージを示したいと述べました。また、岸田総理大臣は、現在、特に制裁回避・迂回対策が重要であり、今般合意した制裁の調整実施メカニズムの下でしっかり議論させたい旨述べました。
  • (3)岸田総理大臣は、日本としても、新たな対露制裁として、(ア)ロシアの個人・団体への資産凍結、(イ)輸出禁止団体の追加、(ウ)ドローン関連物品等ロシアの産業基盤強化に資する物品への輸出禁止の拡大、(エ)ロシアの金融機関への資産凍結を内容とする措置を講じることを決定したことを表明しました。
  • (4)岸田総理大臣は、ロシアの侵略を一日も早く止めさせる上では、第三者からロシアへの軍事的な支援を防ぐことも重要であり、関係国と緊密に連携して対応していきたい旨述べました。

3 ウクライナや周辺国への支援

  • (1)岸田総理大臣は、ロシアが攻撃を継続し、重要インフラを破壊している中、ウクライナは祖国の独立と民主主義を守るために敢然と戦っており、これを支援するG7の努力を誇りに思う旨述べました。また、G7メンバーが、ウクライナに対する軍事支援を迅速に進めていることに敬意を表しました。
  • (2)岸田総理大臣は、今回の首脳声明では、人道支援、エネルギー部門への支援、またウクライナの経済的・財政的安定の維持に向けた支援の継続に関してもG7のコミットメントを確認した旨述べました。また、G7として、2023年のウクライナ財政・経済支援を390億ドルに増額したこと、また、日本としても、これまでに発表した総額約16億ドルの人道・財政支援に加え、今般新たに55億ドルの追加財政支援を行うことを決定し、今後、関連する法改正等の国会承認を得るべく取り組んでいくことを表明しました。
  • (3)岸田総理大臣は、日本としても、日本の強みを活かし、人道支援、財政支援、エネルギー部門での支援等、ウクライナの人々に寄り添った支援をきめ細かく実施してきている旨説明しました。また、本年1月、日本が20年にわたり支援してきたカンボジアの参加を得て、地雷除去分野での支援を実施したほか、公平・公正な報道と民主主義の強化に貢献する放送分野での支援も実施したことを紹介しました。
  • (4)岸田総理大臣は、ウクライナの周辺国に対する支援の重要性を指摘しつつ、今般、日本がモルドバに対し1億ドル相当の円借款を供与する方針を決定したことを紹介しました。
  • (5)岸田総理大臣は、復興支援に関し、「ウクライナ復興ドナー調整プラットフォーム」の立ち上げを歓迎しました。また、日本は、地雷対策、電力等の基礎インフラ整備を含む生活再建、農業・産業振興、教育やガバナンス強化、文化財保護等の分野でこれまでの経験や知見を活用し、ウクライナの復興に貢献していく旨表明しました。

4 ロシアによる核の威嚇への対応

  • (1)岸田総理大臣は、先日プーチン露大統領が新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止や核戦力の強化に引き続き取り組む旨述べたことに言及し、「核兵器のない世界」の実現及び安全保障の確保の両面から、日本としてロシアのこうした対応を深刻に懸念している旨述べました。
  • (2)岸田総理大臣は、ロシアによる核の威嚇は国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威であり、断じて受け入れられず、ましてや、ロシアが77年間にわたる核兵器不使用の記録を破るようなことはあってはならない旨述べた上で、5月の広島サミットにおいても、この点を強く発信していきたいとの考えを説明しました。
  • (3)岸田総理大臣は、G7のみならず、幅広い国際社会からこの点について明確なメッセージが発出されることも重要であり、G20等のマルチの場においても、G7で緊密に連携していきたい旨述べました。

5 グローバル・サウスへの関与・支援

 岸田総理大臣は、いわゆるグローバル・サウスへの関与や支援の重要性を強調しました。岸田総理大臣は、グローバル・サウスを含む大多数の国が2月23日に採択された国連総会決議に賛成したことに触れた上で、G7として、法の支配に基づく国際秩序の堅持の重要性を訴えつつ、EUの連帯レーンや黒海穀物イニシアティブ等の食料分野における取組に加え、脆弱国に寄り添った支援を行い、G7としての貢献をグローバル・サウスに示していくことが重要である旨述べました。また、岸田総理大臣は、この観点からG20議長国であるインドとの連携は特に重要である旨指摘しました。

6 総括

  • (1)岸田総理大臣は、ロシアによるウクライナ侵略が続く中、昨年に続き、本年もG7として結束して取り組んでいくことを確認することができた旨総括し、力による一方的な現状変更の試みは、世界のどこにおいても決して許してはならないとの決意の下、引き続きG7首脳と議論を重ねていきたい旨述べました。
  • (2)岸田総理大臣は、5月の広島サミットでは、国際社会が直面する幅広い課題やインド太平洋を含む地域情勢についても、G7首脳との間で率直な議論を行うことを楽しみにしている旨述べました。
  • (3)議論の結果、ウクライナに寄り添い、支援を必要とする国や人々を支援し、法の支配に基づく国際秩序を堅持することについて、G7の連帯は決して揺らぐことはないことで一致しました。

[参考]別添PDF


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