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プレスリリース

「令和3年度アミノ酸液を原材料に含むしょうゆ中のクロロプロパノール類含有実態調査」の結果について

令和5年3月24日
農林水産省

農林水産省は、食品の安全性を向上させるため、一部のしょうゆに使用されるアミノ酸液の製造過程で意図せずして生成する有害化学物質であるクロロプロパノール類の濃度を製造方法の改善によって低減する対策について、平成18年度より関係業界と連携して進めています。

令和3年度に、アミノ酸液を原材料に含むしょうゆのうち、自社で製造したアミノ酸液を平成18年度当時に使用していた製造事業者の製品を対象に代表的なクロロプロパノール類濃度の実態を調査した結果、対策実施前の平成18年度より大幅に低い水準で維持されており、低減対策が有効であることを確認しました。

1.調査の背景・目的

しょうゆには、もろみ(蒸煮した大豆等にこうじ菌を培養したものに、食塩水等を添加したもの)を発酵、熟成させて製造するもの(本醸造方式)、もろみにアミノ酸液等を添加して発酵、熟成させたもの(混合醸造方式)、本醸造方式又は混合醸造方式しょうゆにアミノ酸液等を添加したもの(混合方式)があります。
アミノ酸液の製造時に植物性たんぱく質を塩酸で加水分解する工程で、クロロプロパノール類が意図せずして生成します。代表的なクロロプロパノール類である3-モノクロロプロパン-1,2-ジオール(3-MCPD)を多量に摂り続けると、腎臓に悪影響が生じる可能性が動物試験により示唆されています。

農林水産省が平成16年度から平成18年度に調査した結果、
(ア) 我が国のしょうゆ生産量の8割以上を占める本醸造方式しょうゆは、測定できる最小の濃度以上に3-MCPDを含まないこと
(イ) 混合醸造方式しょうゆ又は混合方式しょうゆについては、9割以上は3-MCPD濃度が低いものの、製造事業者が自ら製造したアミノ酸液(以下「自製アミノ酸液」といいます。)及びそれを使用したしょうゆの一部には、3-MCPDを高濃度で含むものがあること
が分かりました。

そこで農林水産省は、平成20年度及び24年度に関係業界に低減対策の導入を要請するとともに、平成21、23、28年度に実態調査を行い、製造事業者の低減対策により3-MCPD濃度が大きく低減したことを確認しました。
今般、前回の調査から5年が経過した令和3年度に、低減対策の有効性を改めて検証するため、平成18年度当時に自製アミノ酸液を用いていた製造事業者が製造するしょうゆ及び原材料アミノ酸液中の3-MCPDの含有実態と低減対策の実施状況等を調査しました。

2.結果概要

(1)調査対象の混合醸造方式しょうゆ又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度
平均値は0.16 mg/kg、中央値は0.024 mg/kg で、平成28年度調査結果と概ね同水準でした。
平成18年度調査結果と比較し平均値は10分の1以下、中央値は30分の1以下でした。
9割以上の試料において、コーデックス委員会注1が設定した国際基準値である0.4 mg/kg未満で、その割合は前回調査より増加しました。

(2)低減対策の実施状況
対象33事業者中、1事業者を除く全ての製造事業者が何らかの3-MCPDの低減対策に取り組んでいました。
事業者の主な対策は、自製アミノ酸液製造の停止及びアルカリ処理(主要な低減対策の1つ)され大規模に製造・販売されているアミノ酸液の購入・使用(21社)又は自製アミノ酸液の製造工程へのアルカリ処理の導入(6社)でした。

(3)混合醸造方式しょうゆ又は混合方式しょうゆに由来する3-MCPDの推定摂取量
平均的な食生活をしている日本人が、しょうゆとして、今回の調査の濃度の中央値で3-MCPDを含む製品だけを消費し続けると仮定した場合でも、3-MCPD摂取量は、国際的な専門機関注2が設定した暫定最大耐容一日摂取量注3(4 μg/kg 体重)の0.1%程度、最大値で3-MCPDを含む製品の場合でも8.5%程度と十分低い値であり、消費者の健康リスクは無視できるほど小さいことが示唆されました。

以上のことから、我が国の混合醸造方式しょうゆ又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度は前回調査以降も低い水準を維持できており、製造事業者が講じている低減対策が有効であることを改めて確認しました。

注1 コーデックス委員会:消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1963年にFAO(国際連合食糧農業機関)及びWHO(世界保健機関)により設置された国際的な政府間機関。国際食品規格を策定。

注2 FAO/WHO 合 同 食 品 添 加 物 専 門 家 会 議 (JECFA):FAOとWHO合同の専門家会合であり、FAOとWHOの加盟国及びコーデックス委員会に対し科学的な助言を提供。食品添加物、汚染物質、動物用医薬品等の安全性を評価。

注3 ヒトが一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの量

平成18年度調査時点で自制アミノ酸液を使用していた混合醸造方式又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度の比較

3.今後の対応

今回の調査結果を受け、農林水産省は、関係業界に対し、低減対策の徹底を改めて要請しました。農林水産省は、今後とも食品の安全性向上に向けた関係業界の取組を後押ししてまいります。

<参考資料>

令和3年度アミノ酸液を原材料に含むしょうゆ中のクロロプロパノール類含有実態調査結果
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/content/attach/pdf/free_survey-8.pdf

アミノ酸液及びアミノ酸液を原材料に含むしょうゆ中のクロロプロパノール類の低減対策の徹底について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/attach/pdf/mitigation-3.pdf

食品中のクロロプロパノール類に関する情報
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/index.html

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:髙岸、今林
代表:03-3502-8111(内線4453)
ダイヤルイン:03-3502-8731


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