外務省・新着情報

冒頭発言

【林外務大臣】日本の外務大臣として3年3か月ぶりに中国を訪問しまして、先ほど、秦剛外交部長との間で、約3時間にわたり、対面では初となる日中外相会談を行いまして、その内の1時間は、少人数のみでこの会談をいたしました。その後、45分間にわたってワーキングランチを行いました。
 今日、秦剛部長との間でお互いに顔を見ながら、諸懸案を含めて長時間にわたって率直な議論を行ったことは、有意義であったと考えます。
 冒頭、私から、日中両国には様々な可能性があるが、同時に数多くの課題や深刻な懸念に直面しており、日中関係は非常に重要な局面にあること等を指摘した上で、日中両首脳の共通認識を実施に移していくため、双方が努力を続けていきたい旨述べまして、秦剛部長から同様の考えが示されたところであります。
 その上で、私からまず、最近北京で発生した新たな邦人拘束事案について抗議をし、当該邦人の早期解放、これを含めて我が国の厳正な立場、これを強く申し入れました。
 また、私から、尖閣諸島をめぐる情勢を含む東シナ海、ロシアとの連携を含む中国の我が国周辺での軍事活動の活発化等について深刻な懸念を改めて表明をしました。その上で、双方は、安全保障分野を含めた意思疎通の重要性を改めて確認し、この観点から近く日中高級事務レベル海洋協議、これが4年振りに対面で再開されることを評価するとともに、先月31日に日中防衛当局間の海空連絡メカニズムの下でのホットラインの設置が完了したことを歓迎いたしました。さらに、私から、台湾海峡の平和と安定の重要性について述べました。また、南シナ海の状況に対する深刻な懸念を改めて表明をいたしました。
 続いて私から、ALPS処理水の海洋放出について我が国の立場を改めて明確に述べ、また、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を改めて表明をいたしました。
 その上で、昨年11月の首脳会談で一致した経済面での協力や国民交流を推進していく観点からも、私から、適切な環境を整える必要がある旨指摘をしつつ、中国において透明・予見可能かつ公平なビジネス環境、これが確保されること、また、安全面とともに正当な経済活動が保障されること、これを強く求めるとともに、技術の開示・移転を強制しようとする動きが強まっていることへの強い懸念を表明いたしました。さらに、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃、これを強く求めました。
 地域情勢については、ウクライナ情勢について、私から、岸田総理大臣の同国訪問に触れつつ、中国が国際の平和と安全の維持に責任ある役割を果たすように求めました。また、秦剛部長との間では、拉致問題、核・ミサイル問題を含む北朝鮮への対応等の地域情勢、国連における協力等の国際的課題についても意見交換を行いました。
 地域における協力という観点から、今日は特に、日中韓プロセスの重要性についても意見交換を行い、秦剛部長との間で、首脳・外相レベルを含む日中韓プロセス、これを再稼働させていくことで一致をいたしました。
 また、秦剛部長とは、引き続き首脳・外相レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことでも一致をしました。
 本日は、この後、李強国務院総理への表敬、王毅主任との会談が予定されております。先ほどの外相会談も踏まえ、さらに大局的観点から意見交換を行いたいと思っております。私からは以上です。

質疑応答

【記者】今の会談の内容をご紹介いただきましたけれども、大臣として今回の会談で得られた成果は特に何が大きいのかということをお伺いします。また、見えてきた課題についてもお願いいたします。

【林外務大臣】今回の会談では、まず、目下の懸案である邦人拘束事案、また、安全保障分野を含めて、我が国の立場をしっかりと申し入れました。同時に、懸案があるからこそ、ハイレベルを含めた意思疎通が必要であり、懸案を含めて、秦剛部長と率直な意見交換を行い、今後とも首脳・外相レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことで一致をいたしました。この関連で、秦剛部長との間でさらに、日中韓プロセスの重要性についても意見交換を行いまして、首脳・外相レベルを含む日中韓プロセスを再稼働させていくことで一致したこと、これは重要な成果だと考えております。今後とも、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、「建設的かつ安定的な日中関係」、これを構築するために、中国側との意思疎通に努めていきたいと考えております。

【記者】言及ありました邦人拘束の件ですけども、大臣から具体的にどのような形で中国側に日本の立場を求めたのか、また向こうからどのような返答があったのか、早期解放に向けて具体的な進展があったのか合わせて教えてください。

【林外務大臣】今回の会談では、私から秦剛国務委員兼外交部長に対して抗議するとともに、当該邦人の早期解放を含めて、我が国の厳正な立場を強く申し入れたところでございます。これ以上のやり取りについては、先方の発言を含めて、外交上のやり取りでありまして、今後の見通し等についても、事柄の性質上、お答えすることは差し控えたいと思います。海外にいる邦人の安全と安心、これは外務省にとって極めて優先度の高い課題であり、引き続き邦人保護の観点から、最善を尽くして参りたいと考えております。

【記者】今回の中国訪問ですけども、日本では今月G7外相会合、それから、来月は広島でG7サミットが開かれますが、G7議長国として、今回の訪問の成果をどのように議論をつなげていくかお聞かせください。

【林外務大臣】G7外相会合及びG7広島サミットにおきましては、中国を含めて、インド太平洋地域の様々な課題についても議論する考えでございます。今回の私の訪中においても、先ほど述べましたとおり、ウクライナ問題や北朝鮮への対応等の国際的課題を含めて、G7としての共通の問題意識も踏まえながら、中国側と率直な議論を行いました。こうした議論、これをしっかりと踏まえた上で今後のG7プロセスにおいて議長国として議論を主導していきたいと考えております。

【記者】国際社会では米中摩擦が激しさを増しています。更に対立が深まれば最前線で日本が(音声不明)を被ることにもなりかねませんが、米中間で日本外交の果たせる役割は何でしょうか。その中で日中間では原発処理水や、半導体の輸出規制、日本への団体旅行の制限など、主張の異なる問題がありますが、会談ではどのようなやり取りをされて、今後日本政府としてどのように理解を得ていくお考えでしょうか。
 更に、もう一点邦人拘束について、フォローアップで質問させていただいたいと思います。拘束された方は長年、北京のビジネス界を引っ張ってこられた方でしたけれど、拘束理由が全く分からずに、中国の在留邦人の間では次は自分かもしれないというかなり不安の声が高まっています。中国への出張を控える企業も出てきていますが、日中の経済関係を根底から揺るがしかねない事態になりかねない危惧がでております。大臣は今回の拘束が、日中関係全体に与える影響をどのようにお考えでしょうか。

【林外務大臣】米中両国の関係の安定、これは国際社会においても極めて重要でありまして、引き続き同盟国たる米国との強固な信頼関係のもとで、様々な協力を進めつつ、中国に対して大国としての責任を果たしていくよう働きかけていきたいと思っております。
 また、ALPS処理水の海洋放出については、私から中国側の科学的根拠に基づかない対外発信に抗議し、科学的見地に基づいた議論を行うよう強く求めたところでございます。また、半導体製造装置の輸出管理についてですが、日本の措置は特定の国を対象としたものではない旨、また、日本は国際的な平和及び安全の維持の観点から、国際ルールと整合的な形で厳格な輸出管理を行っておりまして、今後もこの方針のもとで適切な対応を行っていく旨述べたところでございます。また、団体旅行の制限についてのやり取りはございませんでした。
 これら問題を含めて、日中双方で意見の相違はありますが、本日の対面での意見交換を通じて秦剛部長との間で相互理解を深めることができたと考えておりまして、今後も様々なレベルで緊密に意思疎通を行っていきたいと考えております。
 また、拘束事案につきましては、先程申し上げたとおりでございますが、私から秦剛国務委員兼外交部長に対して抗議をするとともに、当該邦人の早期解放を含めて、我が国の厳正な立場を強く申し入れました。本件について、当該邦人の早期解放、更には領事面会の早期実施といったことを求めるとともに、一般論として司法プロセスの透明性を求めておりまして、引き続き、先ほどお話のあったいろいろな方の懸念、こういうものも踏まえて様々なレベルで中国側に対して粘り強く働きかけてまいりたいと思っております。


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