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2023年4月18日

同時発表:外務省

世界貿易機関(WTO)は、本日、我が国の申立てに基づき、WTOで審理されてきたインドによるICT(情報通信技術)製品の関税引上げ措置について、紛争処理小委員会(パネル)報告書を公表しました。同報告書は、我が国の主張を全面的に認め、インドによるICT(情報通信技術)製品の関税引上げ措置がWTO協定に不整合であると判断し、インドに対し措置の是正を勧告するものです。

1.概要

2014年以降、インドは、WTO協定上無税(0%)を約束している携帯電話、基地局、音声・画像等の送受信装置などの情報通信技術(ICT)製品の関税を10%から20%に引き上げました(税率は品目毎に異なります。)。

我が国は、2019年5月10日に、当該措置について、インドに対して、WTO協定に基づく協議要請を行い、2019年5月23日にインドとの協議を実施しました。二国間の協議では問題解決に至らなかったため、2020年7月29日にWTO紛争処理小委員会(パネル)が設置されました。

2021年10月及び2022年3月から4月には、パネル会合(口頭弁論)が開催され、我が国は、インドによるICT製品の関税引上げ措置は、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)に不整合であると主張しました。

今回、WTOが公表したパネル報告書は、我が国の主張を全面的に認め、インドに対し、措置をWTO協定に適合させるよう勧告するものです。

なお、インドの関税引上げ措置については、EU及び台湾もそれぞれパネルを立ち上げています。

2.パネル報告書の判断内容

同パネル報告書は、以下のように、我が国の主張を全面的に認め、インドに対して措置をWTO協定に適合させるよう勧告しました。

インドは、対象のICT産品について、無条件で無税とすることを譲許しているにもかかわらず関税を課しており、GATT第2条1項(a)(※ 譲許表に定める待遇より不利でない待遇を許与する義務)及び(b)(※ 譲許表に定める関税をこえる通常の関税を免除する義務等)に違反する。

なお、インドの各反論については、以下のとおり退けられました。
  1. WTO情報技術協定(ITA)(注)はWTOの「対象協定」ではなく、インドの譲許表に定められた関税譲許の範囲を限定する法的根拠とはならない。
    (注)WTOシンガポール閣僚会議(1996年12月)において合意された情報技術関連産品の関税撤廃に関する閣僚宣言
  2. インドは、条約法に関するウィーン条約第48条に規定する「錯誤」の要件を満たしていない。
  3. インドが2018年に申し立てた関連品目の譲許税率の技術的誤りについて、日本を含む複数の加盟国認めなかったのは不適切との主張は、パネルの審理の対象外。
  4. 日印包括的経済連携協定(CEPA)のもとでの無税扱いは、CEPA上の特恵原産地規則を充たすことを条件としており、すべての日本の対象産品に対し無条件に無税の取扱いをしていることにならない。

3.今後の予定

当事国は、公表から60日以内にWTO上級委員会に対して上訴することが可能です。上訴がない場合には、パネル報告書の内容でWTOとしての判断が確定することとなります。

我が国としては、本件がWTOのルールに従って適切に解決されるよう、今後の手続を進めていく予定であり、インドが同パネル報告書採択に同意し、同パネル報告書の判断及び勧告に従い、本関税措置を速やかに是正することを期待します。

4.参考 

(1)パネル設置要請の主な対象品目及び関税率

主な対象品目(インドのHS番号)(パネル設置時点のもの) 関税率
①フィーチャーフォン(HS85171219) 0%→20%に引上げ
②スマートフォン(HS85171211)  0%→20%に引上げ
③携帯電話用基地局(HS85176100)  0%→20%に引上げ
④デジタルマイクロ波通信装置(HS85176290)  0%→20%に引上げ
⑤プリント回路基板アセンブリ(HS85177010)  0%→10%に引上げ
⑥スマートフォン用LCDモジュール(HS85177090)  0%→15%に引上げ
※ いずれもインドのWTO譲許税率は0%。

(2)WTOパネルについて

政府間の協議によって問題解決に至らない場合、パネル(第1審)という準司法的な第三者機関が、WTO加盟国の要請により、問題となっている措置のWTO協定整合性について審理・判断し、違反が認められる場合にはその是正を勧告します。パネルに不服のある当事国は、上級委員会(第2審)に審理を要請することができます。

(3)上級委員会の機能停止について

WTOの上級委員会は、「小委員会が取り扱う問題についての申立てを審理する」紛争解決機関に設置された常設機関であり、「7人の者で構成するものとし、そのうちの3名が一の問題の委員を務める」とされています(紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(DSU)第17条1項)。しかし、2017年6月以降、任期終了の委員に代わる新たな委員が選任されず、2019年12月以降、新規の上訴について審理できない状態となっています。
上訴されて上級委員会に係属した事案は、上級委員会の機能が回復するまでの間、手続が進行しません。

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担当

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