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2023年6月28日

2050年カーボンニュートラル(CN)の達成には、大気中のCO2除去(CDR, Carbon Dioxide Removal)が必須であり、これを実現するネガティブエミッション技術(NETs)の早期の社会実装・産業化が必要です。経済産業省は、2023年3月より「ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会」を開催し、今回、その議論内容についてとりまとめを行いました。とりまとめでは、国内外におけるNETsの技術開発動向及びビジネス動向や、削減よりもコストが高いNETsの産業化に当たって重視すべき要素等を整理し、各技術の今後の方向性やルール形成等、市場創出に向けた方針について整理を行いました。

1.背景 

2050年CNの達成には、最大限の排出削減をしても最終的にCO2の排出が避けられない分野からの排出(残余排出)を相殺する手段として、大気中のCO2除去が必須となります。世界でも、2050年には約20~100億トン/年のCO2除去が必要とされる中で、近年、米国、EU、英国等の欧米を中心としてCDRの必要性と今後の取組方針を相次いで公表し、導入拡大、社会実装に向けた積極的な政策支援を開始しています。

我が国においても、2050年のCNの達成に向けては、産業や運輸の部門を中心として想定される約0.5から2.4億トン/年の残余排出を相殺するためには、約数億トン/年のCDRが必要とされています。しかし、除去コストは削減コストより高いため、自然には導入拡大が図れないことから、確実にCNを達成するためには、NETsの拡大に向けた取組を早急に開始することが重要です。

このため、経済産業省は、2023年3月より「ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会」を開催し、有識者や関連企業等へのヒアリングも行いながら、国内外におけるNETsの技術開発動向及びビジネス動向や、産業化に当たって重視すべき要素等を整理し、各技術の今後の方向性やルール形成等、市場創出に向けた方針について議論、検討を行い、今般とりまとめを行いました。

2.とりまとめ概要

(1)NETsの現状分析・今後の方向性

ネガティブエミッション市場創出に向けた方針を導くため、コストやポテンシャルといった技術的観点と、除去量の確認の容易さなどの導入環境的観点の、合わせて10の視点(参考)に基づいて個別技術の現状分析を行い、各技術の今後の方向性について提示しました。さらに、「除去効果の把握が難しい」というNETsの特殊性を踏まえ、NETsの社会実装の鍵となる、「除去効果の確認手法が確立・認知されているか」「社会・環境への影響が把握できているか」という項目を軸に、目指すべき段階と取り組むべき具体的行動、及び各技術の位置づけについて考察を行いました。

NETsの特殊性に基づいた各技術の位置づけと目標及び具体的行動

(参考)10の視点

(2)ネガティブエミッション市場創出に向けた方針

2050年CN達成のためには、避けられないCO2排出(残余排出)を相殺するための炭素除去が必要不可欠ではありますが、一般的に除去は削減よりコストが高いため、自然に導入・市場拡大が行われるものではありません。一方、除去市場を早期に立ち上げることは、我が国の排出削減目標の達成のみならず、国際的にも今後確実に拡大していく市場を獲得するために我が国が強みを有する技術の競争力強化にも資することとなります。このため、相対的に価格の高い炭素除去市場を早期に創出することが必要です。

本とりまとめでは、ネガティブエミッション市場創出に向け、①欧米等の検討状況も踏まえた、市場形成の初期段階における政府支援の検討の必要性、➁CO2除去(CDR)の価値を取引するためのカーボン・クレジット(除去クレジット)の活用環境の整備と初期需要の拡大、③コベネフィット(CO2除去以外の副次的価値)も含めたビジネスモデルの推進と需要家への理解促進、④市場獲得に向けて必要なルール形成に向けた検討体制の構築、について整理を行いました。

本報告書の内容が、関係者に広く共有され、CDRの必要性やNETsについての理解が広がるとともに、官民での議論を継続することにより、NETsの産業化を実現し、ネガティブエミッション市場が活性化していくことを期待します。

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担当

産業技術環境局 エネルギー・環境イノベーション戦略室長 三輪田
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メール:bzl-s-kankyo-innovation★meti.go.jp
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