農林水産省・新着情報

野村農林水産大臣記者会見概要

日時 令和5年8月25日(金曜日)11時30分~12時02分 於: 本省講堂
主な質疑事項
  • (大臣から)肉用子牛価格の下落に対する対策について
  • ALPS処理水の海洋放出について
  • 新潟県等における渇水の影響について
  • 令和6年度農林水産関係予算概算要求について
  • 肉用子牛価格の下落に対する対策について

冒頭発言

大臣

  今日は1点だけ私の方から報告があります。(肉用)子牛価格の下落に対する対策を決定したところであり、(黒毛和種の子牛価格は)本年5月に全国平均価格が60万(円)を割り込み、それ以降も低下傾向で推移して、8月の直近の速報値では、54万(円)。これはブロックごとに高いところ、低いところがあり、私の地元・九州地方は低い部類で、(税抜だと)40万円台というのが今、各市場での取引の平均価格になっていますので、相当の値下がりになっているということで、特に低いのが「九州・沖縄ブロック」と「東北ブロック」の2ブロックが、(全国平均価格を)下回って、大幅に下落している状況です。子牛価格の下落に対する支援としては、法律に基づく肉用子牛生産者補給金制度というのがあり、(それに加えて)令和5年限りの措置として、黒毛和種については四半期毎のブロック別の平均価格が60万(円)を下回った場合には、その4分の3を支援する臨時対策として、(和子牛生産者)臨時経営支援事業をALIC事業として措置していましたが、子牛の全国平均価格が保証基準価格55万6000円を下回ったときには、臨時対策ではなく、(肉用)子牛生産者補給金で支えることを想定していました。今般、この臨時対策を拡充することとしまして、全国平均価格が保証基準価格を下回り、(肉用子牛)生産者補給金が発動した場合にも、四半期毎のブロック別価格が、全国平均を下回った部分について、その差額の4分の3を支援することとしたところです。こうしたセーフティネットにより、繁殖農家の皆さんが少しでも安心して経営できる環境を整備したいという考えで、繁殖農家の今の窮状を救済しようという決定をしたところです。詳しいことは担当課長に聞いてください。

質疑応答

  • ALPS処理水の海洋放出について(1)

記者

  昨日、福島第1原発の処理水が放出されて、中国が日本産の水産物に関して輸入を禁止と発表しました。これの受け止めと今後どのような対策をとるのかというあたりをお聞かせください。

大臣

  まずはじめに申し上げたいのは、ALPS処理水につきましては、IAEAの(包括)報告書に明記されているとおり、人及び環境に与える放射線の影響は無視できるほどで、魚に対しても、それを食べる人に対しても、安全上の問題はないということです。このような中で行われた今般の中国の全面的な輸入停止等については、日本からの食品輸入の規制緩和・撤廃という国際的な動きに逆行する、EU等については全て(の輸入規制)を解除してくれましたので、そういう動きとは逆行するもので、極めて遺憾だと思っていまして、政府一丸となって、あらゆる機会を通じて、科学的根拠に基づき、輸入規制の早期撤廃を強く働きかけていくというのは、総理も言っておられることですので、続ける以外ないと思います。また、関係省庁と連携しながら、風評被害を防止して、漁業者をはじめとする水産関係事業者のなりわいが継続できるように、海水や水産物のモニタリングを強化して、その結果を速やかに透明性高く分かりやすく公表していくということでして、昨日から(処理水の放出が)始まったわけですが、結果は、毎日公表するということで、明日の夕方に発表・公表すると聞いています。政府として設けた、全国を対象とする、水産物の需要対策のための300億円の基金や、漁業者の事業継続のための500億円の基金を適切に運用してまいります。さらに、規制による影響を注視しつつ、状況に応じて、国内消費の拡大、国内生産の維持、加工体制の強化、新たな輸出先の開拓等、政府一丸となって臨機応変な対策に万全を期してまいりたいと思っています。国内生産を維持していかなければなりませんが、加工体制の強化、あるいは新たな輸出先の開拓をやっていかなければいけないと思っていまして、特に中国には殻つきのホタテが(輸出され)ていまして、日本の場合は、あまり殻つきは(需要が)ないものですから、こういったような加工施設も作らないといけないだろうと(思います)。それから、ホタテは大体480億(円)ぐらい、中国は輸入していたのですが、これをどこかに、仕向けるには中国みたいに、殻つき(のホタテ)では駄目なので、殻を外すには、加工施設が必要になってくるということです。さらに、殻を外したホタテをどこの国に輸出していくのかということを考えているわけでして、これらについては、政府一体となって取り組んで、臨機応変な対策に万全を期していきたいと思っています。

  • 新潟県等における渇水の影響について

記者

  水不足について伺います。新潟県では、水不足、非常に深刻な状況にあって、米への影響が、懸念されております。また福島県でも、果実への影響が言われているところでございます。今般、水不足についてのご認識と、農林水産省としての今後の対応について伺います。

大臣

  最近、本当に雨の降るところと降らないところが、極端になっていまして、新潟県では、梅雨明け以降ほぼ降雨がなく、県の指導や市町村の支援のもとで、番水や消雪用の井戸の活用等の取り組みが行われていると承知しています。もうすぐ刈り取りが始まるのですけれども、実がつかないとか、あるいは実がついても非常に少量だとか、いろいろな問題が生じていますので、農林水産省としては、水管理の経費に多面的機能支払交付金等を活用できることとしており、今後とも、新潟県、あるいは水不足の県と検討しながら、対応してまいります。福島(県の一部)でも同じような渇水被害が生じていまして、その他、全国、いろいろなところで、部分的にも渇水のリスクがあると思っていますので、地方農政局において、我々も情報収集を行って、対応について検討をしてまいります。まだ全体を把握しておりません。報道で、新潟の方で、(水田に)全く水がない、あるいは干上がってるダムを見ますけれども、どこがどのような被害がでているのか。農政局を通じて、もう少し詳しい状況を調べて、多面的機能支払交付金を活用しながら対応をしてまいります。

  • 令和6年度農林水産関係予算概算要求について

記者

  令和6年度予算について伺います。昨日、概算要求の案が与党に示されましたけれども、今回の編成のねらいですとか、重点は何かお聞かせください。

大臣

  重点は、私どもは来年に(食料・農業・農村)基本法の改正をしたいということで、「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」を概算要求は中心にしながらやっていきたいと思っています。この新たな展開方向は、三つありまして、食料安全保障の強化、環境への対応、人口減少への対応の三つの柱を中心に、必要な予算を要求してまいりたいと思います。要求のポイントとしては、農業については5つありまして、一つが食料の安定供給の確保。これは通常の場合でも、あるいは不測の事態が起こっても、いつでも(食料の)安定供給ができるような仕組みを作り上げていきたいと(いうことです)。2つ目が、農業の持続的な発展。3つ目が農村の振興。4つ目が環境負荷低減に向けた取組強化。それから5つ目が多面的機能の発揮などを盛り込むほか、林野庁の予算として、総理がチーフになり、閣僚会議も開かれた花粉症対策について、林野の予算として、予算要求をしていきたいと思っています。水産庁の予算としては、適切な資源管理や水産業の成長産業化のための予算を要求をしてまいりたいと思っていまして、(更に)食料安全保障の強化に向けた対応にかかる経費を事項要求として提出をする考え方でして、8月末の要求期限に向けて、引き続き調整を進めていきたいと思っています。

  • ALPS処理水の海洋放出について(2)

記者

  処理水の関係なんですが、今おっしゃったように300億と500億の計800億の基金がありますが、経産省で用意をしています。これは多分おそらく東日本中心に想定されたと思うのですが、これが日本全国が中国の対象になるとですね、当然これで足りるのかという議論もあると思うんですが、その辺、何か今お考えとか、これからの何か今思いはありますか。

大臣

  足りるとか足らないというのは、なかなか分かりづらいところですが、政府として設けた、被災地だけではなく、全国を対象にしての300億(円)の基金、あるいは漁業者の事業継続のために、500億(円)の基金がありますので、適切に運用しますということしか申し上げられないので、足りないときはどうするのかということではなく、総理から昨日も発言がありましたように、これは(処理水の)放出が続く限り、実施していくということですから、毎年、予算要求が出てくるのではないかということしか言えませんので、今後どういうふうな仕組みでやっていくのか、今から政府内でも検討が進んでいくと思います。

記者

  これに関して、もう1点。輸出がですね、非常に好調な、この10年間伸び続けて、30年に5兆円とか、目標達成も視野に入ってきたと思うのですが、この中で中国・香港という1位2位が、もしかしたら、かなり相当減るっていうことは、これをどう受け止めたらいいのでしょうか。

大臣

  中国の発表で、我々もちょっと驚いているのですが、水産物の輸出については、中国は、昨日、(日本産水産物の輸入を)全面的に一時停止すると公表、それに引き続き、香港及びマカオが、昨日より10都県水産物の輸入を停止したと承知していますが、これらは国際的な動きに逆行するもので、極めて遺憾であり、中国等に対しては、即時撤廃を申し入れています。これらの輸入規制により、農林水産物・食品全体の輸出が減少することは、間違いなく避けられないと思っていまして、どのような影響があるかということは、現時点では正確にお答えすることは難しいと思っています。そこで、事業者からの情報なり、今後発表される品目別の輸出実績を通じて、状況を把握してまいりますが、この規制強化による影響を注視しつつ、輸出事業者(等)に対しては、海外でのプロモーションや商談会の開催、新たな輸出先の開拓等に向けて、必要な対策をとってまいりたいと思っています。先ほども申し上げたように、加工施設なり、販路の拡大についても、中国にまで輸出していくもの以上のものを取り組んでいく努力をしていかなければならないと思っています。当面は中国が輸入を禁止した分をどこに振り向けていくことについて、農林水産省だけではなく、政府全体でも検討していかないといけないだろうと思っています。

  • 肉用子牛価格の下落に対する対策について

記者

  子牛が下落してるというのは、枝肉価格が上向かないというのがあって、その一番大きな原因は多分、物価高に対する消費者マインドではないかなと考えてるのですけれども、そういったところの国内市場をどう上向かせていくかっていうのと、国内で売れなければ、やっぱり海外に持っていくっていうこともあると思うのですけど、そのあたりの農水省としての枝肉(価格)を上向かせるための対策等について教えてください。

大臣

  今の子牛の価格の下落というのは、物価高によるものではなくて、やはり牛肉の消費の減退といいますか、なかなか売れないというところもあります。農林水産省としては、この子牛の下落にどう対応するかということを中心に検討してまいりました。餌が上がったからとか、あるいは高止まりしているからということではなく、どんどん競り市で値段が下がっていく。生産農家・繁殖農家のやる気がなくなってくると、子牛が枯渇し肥育農家が逆に今度は困ってきますので、何とかここをもう一遍、盛り返していかなければいけないということで、子牛対策に限って検討をさせていただいたところです。詳しくは(担当)課長に(聞いてください。)(今回の拡充により)何とか生産農家がやる気を起こしていただければいいなと思っているところで特に子牛生産地帯は関心が高いので丁寧に記事をお願いします。

  • ALPS処理水の海洋放出について(3)

記者

  先ほど中国の輸入規制について驚いているという発言もありましたが、処理水放出後、中国は何らかの輸出規制強化していることなど、想定されていらっしゃったのか。もし想定されていらっしゃったなら、全面的に停止という措置については、どう思われたのか教えていただけますでしょうか。また、影響について販路拡大という話がありましたが、具体的にどういった国に拡大していくなど、現時点でお考えありましたらお聞かせください。

大臣

  我々の想定として、最初は報道にもあったとおり、10都県対象という話だったので、10都県は対象になるのかなと思っていましたが、全面的に日本の水産物の輸入を禁止するということには、やはり驚きました。私の地元・鹿児島でもブリを輸出しているもので、先般組合長が来たときも、ブリの輸出は香港が中心ですけども、止まったら困るという話はしていました。しかし、10都県だけではなく、日本のすべての都道府県の水産物の輸入が禁止されたということで、報道などで「想定外だった」というようなことが載っていたらしいのですけれども、想定出来たのは、10都県は対象になるだろうというくらいのもので、どのくらい拡大していくのかということは全く想定していませんでした。我々も一昨日の中国の発表で、驚いているところですが、これを何とか対応しなければならないということで、販路の拡大等々、いろいろな方法でやっていかなければならないと思っています。中国への水産物の輸出で一番大きかったのはホタテ貝ですから、どうするかと検討していますが、やはり時間がかかります。中国へのホタテの輸出はほとんど殻がついたものでして、殻を外して中国は北米とか他の国に輸出をしていましたので、(日本が殻を外したものを輸出することになると、)中国はもうできなくなるわけで、どこのホタテを今度は使うか分かりませんけれども、日本のホタテの売り込みということを強力にやっていかなければならないと(思います)。その前に日本の皆様方に、もう少しホタテを食べていただければと思います。ぜひご協力ください。

  • ALPS処理水の海洋放出について(4)

記者

  処理水の関係ですけれども、中国や香港が実際にこうした対応に出たことについて、水産事業者にお話聞いていますと、処理水の放出自体には納得しているし、理解もしているけど、こうやって実際に被害が出てしまって、もっと中国や香港がこういった対応をとらないように、事前にもっと手を尽くすことができたのではないのかとか、本当にこのタイミングでの放出が適切だったのか、そういった思いをお話している方もいらっしゃったりします。どういうふうに思ってらっしゃるでしょうか。

大臣

  (放出)時期の問題については、前々から総理から記者会見等で、夏頃とか8月頃とかというのは(発言されていたので、)皆さんも値頃感はあったのではないかと思います。ただ、8月のいつなのかというのは、私も先日、22日に開かれた関係閣僚会議において、初めて総理から24日をめどにという話が出たぐらいで、それまで全く知りませんでした。相当、綿密に総理も検討されて、この日を決めたのだろうと。政治日程がありますから、それとの関連も含めて考えられたのではと思っています。だからこれは(海洋放出の日を)早く言えばいいとか、あるいはあまりに急じゃないかというご意見もあると思いますけれども、皆さん方の中でも、いつ頃ということはある程度想定をされていたのではないかと。これは私の個人的な考えですけれども、そういうことはあったのではないかなと思うのです。このタイミングが良かった悪かったというのは、いずれにしてもやらなければならない話ですので、トップシークレットとして総理がきちんと判断をしたということだと思います。

報道官

  よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。

以上

 

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