外務省・新着情報

令和5年9月6日
日ASEAN首脳会議の前に、ASEAN首脳らと記念撮影を行う岸田総理大臣 ASEAN首脳との写真撮影(写真提供:ASEAN Official)
日ASEAN首脳会議が行われている様子 日ASEAN首脳会議(写真提供:内閣広報室)
日ASEAN首脳会議において、発言を行っている岸田総理大臣 日ASEAN首脳会議(写真提供:内閣広報室)

 現地時間9月6日午前11時35分(日本時間午後1時35分)から約1時間、ASEAN議長国インドネシアの首都ジャカルタにて、第26回日ASEAN首脳会議が開催され、岸田文雄内閣総理大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。今次会合では、日ASEAN包括的戦略的パートナーシップ(CSP)を立ち上げる共同声明が採択されたほか、岸田総理から「日ASEAN包括的連結性イニシアティブ」を同日発表したことを紹介しました。

1 冒頭発言

 議長であるジョコ大統領に続き、岸田総理大臣は冒頭発言を行い、概要以下のとおり述べました。

  1. 日ASEAN友好協力50周年の意義
    1. 日本は、世界に先んじて1973年にASEANとの対話を開始した。それから半世紀、日本とASEANとの関係の際だった特徴は、「心と心」の繋がる信頼できるパートナーであること。
    2. 実際我々は、地域の平和と安定、持続可能な発展と繁栄のために協力し、困難に際しては、互いに手を差し伸べ合ってきた。この礎には、幅広い分野や層での国民間のふれあいがある。
    3. 12月に東京で開催する特別首脳会議では、新たな時代を共に創るためのビジョンを共同で打ち出したい。そして後世、この一年が、永きにわたる日本とASEANの「輝ける友情」を次世代につなぐ「輝ける機会」となったと評価されるものとしたい。
  2. 日ASEAN協力
    1. 日本はASEAN中心性・一体性及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」の主流化を強く支持。開放性、透明性、包摂性、ルールに基づく枠組みといったAOIPの掲げる原則や活動に、多くの国が共感し、協力するよう共に取り組む。
    2. その一環として、3月に、日・ASEAN統合基金(JAIF)への新たな1億ドルの拠出を表明。
    3. また、本日、「ASEANインド太平洋フォーラム(AIPF)」において、ハード・ソフト両面で連結性を一層強化すべく、「日ASEAN包括的連結性イニシアティブ」を新たに発表。
    4. 日本は、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の下でのエネルギー移行支援、日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)を通じた気候変動・環境問題への対処に取り組む。またERIAのデジタルイノベーション・サステナブルエコノミーセンターの設立、ASEAN感染症対策センター(ACPHEED)の設立と早期稼働の支援、法の支配の推進のための法務・司法分野での包括的な協力、防災、食料・エネルギー安全保障面での協力、5Gインフラの構築支援など、様々な取組を推進する。
    5. JENESYSや「文化のWA」プロジェクトのような、魅力ある文化・人的・知的交流や日本語教育支援や、ヤングビジネスリーダーズサミットの開催など次世代を担う人々の連携も更に推進していく。

2 日ASEAN協力のレビューと将来の方向性

 ASEAN諸国からは、長年にわたる幅広い分野での日本の協力、ASEAN中心性やAOIPへの支持、JAIF(基金)への1億ドルの拠出に対する謝意とともに、CSP立ち上げ及び「日ASEAN包括的連結性イニシアティブ」への歓迎やAZEC構想への評価の意が示されました。自由で開かれたインド太平洋(FOIP)とAOIPのシナジー効果への言及もありました。また、本年12月の特別首脳会議において、新たな関係のビジョンを打ち出し、さらに関係を強化することへの期待が多くの首脳から示されました。

3 地域・国際情勢

  1. ASEAN諸国からは、南シナ海における航行・上空飛行の自由の重要性、法の支配に基づく国際秩序の重要性、朝鮮半島の非核化や拉致問題の解決の重要性についての発言がありました。
  2. これに対し岸田総理大臣から、この地域が成長の中心であり続けるためには、地域・国際社会の平和と安定が維持されることが不可欠である旨指摘し、そのためには、以下の点が重要との考えを示しつつ、ASEAN各国と認識を共有していきたい旨述べました。
    1. 全ての国が、主権、領土一体性の尊重といった国連憲章の原則を守ること、
    2. 対立は対話によって平和的に解決することが必要であり、国際法や国連憲章の原則に基づく公正で恒久的な平和を支持するということ、
    3. 世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みを許してはならないこと、
    4. 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと。
  3. さらに、岸田総理大臣は、ミャンマー情勢について深刻な懸念を共有し、「5つのコンセンサス」を含むASEANの取組を最大限後押ししていく旨強調しました。
     また、ロシアのウクライナ侵略により世界経済が直面する困難が深刻化していること、一日も早いロシアの部隊撤退の必要性と、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現、及び脆弱な立場の人々への支援の重要性、を指摘し、ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用はあってはならない旨を強調しました。
     さらに、東シナ海では日本の主権を侵害する活動が継続・強化されており、強く反対する旨述べるとともに、南シナ海でも軍事化や威圧的な活動が継続しているとして、海洋権益の主張や海洋における活動は、国連海洋法条約の関連規定に基づきなされるべきである旨指摘しました。また、台湾海峡の平和と安定の重要性についても指摘しました。ルールに基づく自由で開かれた経済秩序に対する挑戦である、経済的威圧にも強く反対する旨述べました。
     北朝鮮については、核・ミサイル活動の活発化を深刻に懸念し、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルのCVIDの実現に向けて、国際社会が一体となり、安保理決議を完全に履行することが不可欠安保理決議の完全な履行が不可欠である旨を強調しました。また、拉致問題の即時解決に向け、引き続き理解と協力を求めました。
  4. また、岸田総理大臣は、ALPS処理水について、国際社会において広く理解が得られているとしつつ、IAEAとも緊密に連携し、科学的根拠に基づき、高い透明性をもって国際社会に丁寧に説明していくという立場に変更はないとして、引き続き各国の理解と支持を求めました。

4 閉会発言

 岸田総理大臣は、明7日で12月の東京での特別首脳会議までちょうど100日となるとしつつ、ASEAN側と緊密に協力し、準備を加速する考えを示しました。さらに特別首脳会議においては、日本とASEANが、新たな時代を牽引し、インド太平洋、さらには世界の持続可能で繁栄した未来を共に創っていく信頼できるパートナーであることを世界に広く発信していきたい旨述べました。

[参考]岸田総理大臣の「ASEANインド太平洋フォーラム(AIPF)」出席


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