農林水産省・新着情報

宮下農林水産大臣就任記者会見概要

日時 令和5年9月14日(木曜日)10時58分~11時50分 於: 本省講堂
主な質疑事項
  • (大臣から)就任に当たっての挨拶
  • 就任に当たっての所感及び農政をめぐる課題について
  • 農地の集積・集約化について
  • 適正な価格形成について
  • ALPS処理水放出に係る水産業への支援について
  • 酪農業への支援について
  • 農業に関する大臣のお考えについて
  • 米をめぐる状況について
  • JAグループの自己改革について
  • スマート農業について
  • 諫早湾干拓事業について
  • 中国による日本産水産物の輸入停止措置に係る対応について
  • 水産資源管理に係る予算について
  • 森林林業の将来像について

冒頭発言

大臣

  この度、農林水産大臣を拝命しました、宮下一郎でございます。今日は大臣就任会見ということで初仕事です。皆様のご質問に真摯にお答えしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

質疑応答

  • 就任に当たっての所感及び農政をめぐる課題について(1)

記者

  大臣就任おめでとうございます。これからよろしくお願いいたします。それでは、大臣就任に当たっての所感と、農政をめぐる様々な課題についてのお考えをお聞かせください。

大臣

  では、所信の一端を申し述べさせていただきます。農林水産省の最も重要な使命は、国民に食料を安定的に供給することだと考えています。一方で、昨今の食品の原材料、穀物、肥料、生産資材の価格高騰は言うまでもなく、食料や生産資材の多くを海外からの輸入に依存する我が国におきましては、世界的な人口増加、気候変動等による食料安全保障上のリスクにさらされているというのが、現状の認識です。一方で、国内の食料供給基盤に目を向けますと、国内人口は減少局面に転じていますし、それを上回るペースで生産者の減少、そして、日本全体の高齢化も進んでいます。将来にわたって持続可能で強固な食料供給基盤の構築が必要となっていると感じています。さらに、地球温暖化、生物多様性等への国際的な関心が高まる中、農業・食品産業についても例外ではなく、環境との調和が重視される産業に転換していくことが必要だというふうに感じています。このように、農業や食品産業を取り巻く情勢が大きく変化している中で、農政の基本的な方針であります食料・農業・農村基本法は、1999(平成11)年に制定されて以来、一度も改正されることなく、二十数年が経過しています。昨今の社会情勢の変化や、今後の見通し等を踏まえ、農政の基本的な方針としてふさわしいものとなるように、令和6年の通常国会への改正案提出に向けて、施策の具体化を進めるなど、しっかりと取り組んでまいる決意です。また、森林・林業、水産分野についても一言申し上げます。森林・林業分野は、人工林が成熟して、本格的な利用期を迎えていますけれども、森林・林業の持続性を高めて、その成長の底支えをすることで、社会経済生活の向上とカーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」の実現を目指すことが重要と考えます。水産分野につきましては、ALPS処理水の海洋放出に伴う支援策等を確実に講じつつ、水産資源管理の着実な実施を通じて、水産業の更なる発展を図るとともに、「海業」の振興によって、雇用機会の確保、地域の所得向上を図っていくことが重要と考えます。ALPS処理水については、8月24日に東京電力がALPS処理水の海洋放出を開始したことを受けて、中国政府が日本産水産物の輸入を全面的に暫定停止という発表がありました。一部の国・地域の輸入規制強化によりまして、水産事業者の皆様に影響が出ているというのが現状認識です。政府としては、水産業を守る政策パッケージを取りまとめ、速やかに実行していくこととしているところです。引き続き、科学的根拠に基づかない輸入規制に負けずに、我が国の水産業等が安心して継続できるように、関係省庁の皆さんと連携をして、農林漁業者に寄り添いながら、対策の実施に全力を尽くしてまいる覚悟です。もう1点、家畜伝染病も足元で喫緊の課題となっています。8月末に養豚の一大産地である九州で初めて豚熱の発生が確認されました。昨シーズンは、過去最大の流行となりました高病原性鳥インフルエンザの発生がまだ記憶に新しいところですけれども、食料安全保障の観点からも、今回の豚熱を含めた家畜伝染病について、最大限の緊張感を持って、発生予防・まん延防止等に取り組んでまいる覚悟です。以上、申し上げましたように、大局的にも大きな課題を抱え、足元でも様々な課題があります。まさに農業・食品産業を取り巻く情勢が大きく変化している中で、この食料・農業・農村基本法の改正等、大きな改革に取り組んでいくということです。我が国の農林水産業・食品産業は、国民の皆様に食料を安定的に供給する役割を果たしながら、地域の経済を支えてくださっています。国民の皆様の広い御理解の下に、我が国の農林水産業・食品産業が次の世代に確実に継承され、食料安全保障が確保されるよう職責を全うしてまいりたいと考えています。私の状況の認識は、こういうことです。もう一言加えれば、こういった状況の変化、大局的に言えば、世界人口増加、気候変動もあり、環境に配慮した持続可能な取組が必要だということもあるし、また、国内は人口減少していて、食料供給をどう支えていこうかという非常に重要な状況の時に、「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」も決定されたところです。一人一人の皆様に、食料を着実に届けることができるような、国民一人一人の食料安全保障の確立であるとか、環境等に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換、みどりの食料システム戦略もこの流れですが、そして人口減少下でも持続可能で強固な食品供給基盤の確立、こうした展開方向では3つの柱があります。こうしたことで食料・農業・農村基本法の改正もございます。こういった構造変化に対応して政策を再構築していく、改革をしていく。農林水産業とともに、前に進んでいくことが大事だと考えています。

  • 農地の集積・集約化について

記者

  農地の集約の関連でお聞きしたいのですが、現在、地域計画の策定、全国で進んでおります。高齢化、人口減少、農業者も例外ではなく、むしろ進んでいる状況の中で、この中で地域計画を地域で話し合って決定していくことの意義についてのお考え、併せて現場の関係者である農業委員会や、農地バンクへ期待することなどございましたらお聞かせください。

大臣

  大変重要なご指摘だと思います。本年4月から改正農業経営基盤強化促進法が施行され、この中で位置付けられた地域計画は、地域の10年後の農業の在り方を明確化する地域農業の設計図として大変重要なものであると思っています。地域の農地を次世代に着実に引き継ぐために、農業者をはじめとして、地域の方々、市町村から、農業委員会、JA、土地改良区など、関係機関が一体で協議することが特に重要なポイントだと考えています。地域計画は令和7年3月末までに策定することとなっていますが、これを受けて現在、各地域で策定に向けて動き出していると認識しています。各地域の取組が着実に進むように、地方自治体などの関係機関と連携しながら、親身になって後押しをしていきたいと考えています。その中で農業委員会や農地バンクなどの果たすべき役割は、ますます大きいと感じています。この地域計画の策定にあたっては、農業委員会の皆様が、農地の将来の目標地図の素案を作成してやることが1丁目1番地、重要な取組であります。農地バンクには、この目標地図に基づいて、農地の集約、集積・集約化を進めていくという重要な役割を担っていただくということです。今後は地域計画策定の着実な推進とともに、その実現に向けて、農業委員会、農地バンク、JA等の関係機関が一体となって活動していただく事が期待されるところです。

  • 就任に当たっての所感及び農政をめぐる課題(2)、適正な価格形成について(1)

記者

  食料・農業・農村基本法の改正というのが大きな仕事になっていくと思いますけれども、これからそのための具体的な施策の具体化というところに入っていくと思いますけれども、特にここに力を入れたいというところがあれば教えていただきたいということと、その一環で適正な価格形成の仕組み作りというところに、生産現場から期待・関心が集まっていますけれども、一方で、関係者との調整とか難しい課題もあると思います。党の方でもこの分野についてご担当されて、検討されていたかと思うのですけれども、この点どのように進めていくか、お伺いいたします。

大臣

  この農政の憲法ともいうべき食料・農業・農村基本法が、(制定から)約20年経過しているわけで、当時と今を比べますと、大きな構造変化としては、国内市場が縮小していること、生産者が減少し、高齢化していることなど、産業構造が大きく変化しているということがあると思います。また、昨今では、世界的な食料情勢の変化に伴う食料安全保障上のリスクが高まっていること、気候変動とか海外の市場拡大も一方であります。こうした我が国農業を取り巻く情勢が制定時には想定されなかったレベルで変化している点が、しっかり対応していかなければいけないという危機感です。このような、食料・農業・農村を取り巻く国内外の厳しい環境下で、食料安全保障を含めた諸課題に対応するために、今年6月に「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」が取りまとめられたところです。その際に総理からは、来年の通常国会への改正案提出に向けて、食料・農業・農村基本法の改正に向けた作業を加速することと、その施策の具体化を進めて、年度内を目途に工程表を取りまとめることが指示されました。現在、基本法の見直しの検討は、展開方向に従って深化させているところですけれども、さらに、食料・農業・農村政策審議会の答申を踏まえて、大きな構造変化の課題解決に向けて、どう進んでいくかという視点をしっかり見据えて、改革を進めてきたい、法律の作成に臨んでいきたいと思っています。
  それから、適正な価格形成の件ですけれども、ご指摘のように非常に大きな関心が寄せられています。持続可能な食料供給を実現するためには、生産、加工、流通、小売、消費といった食料システムの各段階の持続性が確保される必要があり、各段階での適正な価格形成が不可欠です。こういう観点から、先ほどの展開方向に基づいて、農林水産省では、生産から消費に至る食料システムの各段階の関係者が一堂に集まって協議する場として、8月29日に、「適正な価格形成に関する協議会」を設置しました。本協議会におきましては、適正取引を推進するための仕組みの構築に向けて協議を行うとともに、適正な価格転嫁についての関係者の理解醸成を図っていくということで進めています。一言、私見を申し上げれば、私も党の食料産業政策委員長で、この課題に取り組んできましたけれども、大変難しい課題だと思います。関係者も多いし、特に農産物については、価格を安定させたり持続可能な生産を維持していただくために、下支えする施策も品目ごとに様々あります。そういうこともあるし、内外の輸出入の関係で価格が決まるものもあると。一概に、この仕組みがあれば全部が解決するというようなことはなく、むしろ、どこにできるだけ早く対応しなければいけないところがあるのかというようなところも見出しつつ、一歩一歩、対応を進めていくことが大事ではないかなと思っています。

  • ALPS処理水放出に係る水産業への支援について(1)

記者

  処理水の話なのですけれども、農水省として改めてどのように漁業者、流通加工含めた水産業界全体の支援策を始めとした取組を進められていくのかということを今の段階でお考えがあれば、改めてお伺いしたいのと、これに関して、岸田総理から何か指示のようなものがあれば、それについても教えていただければと思います。

大臣

  9月4日に岸田総理の御指示があって、一部の国・地域による輸入規制強化に対して、政府として、我が国水産事業者を断固として守り、特定国・地域依存を分散させるために、1つ目は国内消費拡大・生産持続対策、2番目は風評影響に対する内外での対応、3番目は輸出先の転換対策、4番目は国内加工体制の強化対策、そして5番目は迅速かつ丁寧な賠償という5本柱からなる政策パッケージを政府としてお示ししたところです。これの裏付けとしての財源措置も500億円、300億円、そして207億円という三段重ねで、財源も確保していますし、また、5番目の賠償については、東電がしっかりやっていただくということもあります。こうした枠組みを示したところなので、農林水産省としては関係省庁と連携をしてこのパッケージを速やかに実行していく、一つ一つを具体的に形にしていくということが大事だと思っています。今後とも我が国の水産業が安心して継続できますように、水産事業者の皆様に寄り添った対策の実施に万全を尽くしてまいります。総理指示ですけれども、就任にあたりまして、昨日、全閣僚に対して指示がありました。いくつかあるのですが、その中で、東北の復興なくして日本の再生なしという強い思いの下で、被災地、特に福島の復興・再生に向けて、全力を尽くすこと。また、廃炉に不可欠なALPS処理水の放出に係る風評影響への対応に全力を挙げて取り組むと、これが指示として昨日出されたところです。今のは、全閣僚に対する指示ですけれども、一方、農林水産大臣への指示というのがありまして、その中では、水産資源の適切な管理と収益性の向上を図り、漁業・水産業の活性化に取り組む。中国による水産物の輸入停止への対応について、関係大臣と協力し、全国の水産業の支援に万全を期す。こうしたことが私に指示をされました。こうした指示を踏まえてしっかり対応してまいりたいと思います。

  • 酪農業への支援について

記者

  北海道内が主産地の酪農業についてお伺いします。北海道では生乳の生産出荷戸数が初めて5000戸を割り込んで、30年前の3分の1ほどに減っています。道内では、生乳の生産抑制に取り組んでいるのですけれども、全国的にも生産コスト高騰や需要の減少によって、離農する生産者も、道内外で広がっています。こうした酪農業に対する支援策、生産基盤の低下にも繋がっていると思うのですが、どのように考えているか、お願いします。

大臣

  現在の畜産・酪農、特に酪農乳業を取り巻く課題のうち、喫緊の課題としては、飼料価格の高止まり、生乳需給の緩和があると思います。これらに対して、配合飼料価格安定制度に設けた新たな枠組みで、飼料コストの急増でも発動しやすいように基準を変えて対応していること。畜種ごとの特性に応じて、畜産・酪農経営の安定を図る経営安定対策で畜産経営の支援をすること。業界による飼料への転用など、脱脂粉乳在庫の低減対策を行って、需給改善に向けた取組を支援していくこと。畜産農家と耕種農家との連携などによって、国産飼料に立脚した畜産経営を推進していくこと。こうしたことで、畜産・酪農の更なる発展に向けて、しっかりサポートしていきたいと考えています。

  • ALPS処理水放出に係る水産業への支援について(2)

記者

  2点お願いできますでしょうか。1点は、処理水の関係で確か北海道のホタテの4年ものがどんどん今、浜に上がっている状況で、北海道のホタテは守ることできますか。現行のやり方で十分だとお考えでしょうか。

大臣

  今、こういったパッケージができ上がって、ここから実行に移していくということなので、「動き遅いぞ」というご指摘があるのかもしれませんけれども、できるだけ早く、今、陸揚げされつつある現状を踏まえて、しっかりサポートできるように、私からも、早く手続きを進めてくれということは、昨日も申し上げています。ホタテについては、中国に殻付きで輸出して、そのかなりの部分、3割4割と聞いていますが、アメリカに(輸出)しているとすれば、国内で殻を取って、アメリカに直接輸出するという道が開ければ、かなりダメージも収まりますし、幸い多くの国民の皆様が皆で応援をしようという機運も高まっていますので、国内消費の拡大に向けてもしっかり農林水産省としても応援をしていくということで、できるところから、できるだけ迅速に、ホタテについて支援ができるように頑張っていきたいと思っています。

  • 農業に関する大臣のお考えについて

記者

  もう1点、食料・農業・農村基本法の改正のことですが、今度、自民党の総務会長になりました森山さんは、あるJAの講演で「新自由主義からの転換」だと。つまり、今まで市場に任せきりでもっと政策的なものが必要だという意味だと受け取ったのですが、大臣は農業に対するどのような哲学を持ってらっしゃいますか。

大臣

  ある意味、新自由主義からの転換と言いますか、新しい資本主義を岸田内閣は掲げていますし、市場メカニズムというのが必ずしも、全体にとって最適なものとして機能しないことが、あちこちの場面であるというのが分かってきていることで、賃金の引き上げとかも官民、政府も旗を振って皆で努力しないと、なかなか賃金が上がらない構造を変えていけないし、逆に所得が上がれば、農産物、加工品の価格も引き上げても消費が落ちないという状況ができるわけで、そういった意味でも社会全体の面からも経済も活性化し所得も上げ、農産物価格、加工品(価格)も上げられる環境を作っていくことも必要だと思いますし、もう一つは、農業において生産コストの把握というのが、現場、現場で必ずしも十分ではなくて、1年締めてみたらほとんど利益がなかった、経営がうまくいっていないということで困った、みたいなこともあるかもしれません。これからそういった生産コストをきちんと皆が把握をして、売り先とか市場に対しても、ちゃんと情報を出していく。これだけの手間、コストをかけて作っている価値のあるものなのだということで、価格決定の際にも考慮していただくとか、いろいろな情報の開示も含めて新しいやり方を取り入れて、持続可能な適正な価格が維持できるような経済社会にしていかなければいけないのではないかと思っています。

  • 米をめぐる状況について

記者

  2点伺います。1点目は令和5年産米の需給環境についてご所見をお聞かせいただければと思います。2点目がそれに関連するのですけれども、畑地化・畑作物の振興について、お考えをお聞かせいただければと思います。

大臣

  米政策につきましては、主食用米の需要が残念ながら10万トンぐらいずつ毎年減っているということです。やはり需要に応じた生産ということが重要で、これを着実に推進することが基本だということで、近年、全国の皆様にご協力をいただきながら、推進をしているところです。令和5年産米については、主食用米等の需給について、令和4年産と同程度の作付転換が必要との見通しを示して、麦、大豆等の輸入依存度の高い畑作物等への転換が進むように、水田機能維持する山地と畑作地化する産地のいずれに対しても、支援を行っているところです。特に、食料自給率の向上ということで言えば、輸入依存の高い畑作物に変えて欲しいというのが思いですけれども、一方で畑作に切り換えた時に、米に比べて支援が薄くなってしまうのではないか、経営の持続可能性に不安があると感じられては困るので、畑地化促進事業についてはしっかり予算も確保して、皆様にそうした前向きな判断をしていただけるように頑張っていくということが必要だと思っています。

  • JAグループの自己改革について

記者

  JAグループの自己改革についてのこれまでの評価をお願いします。

大臣

  平成27年の農協法改正の時にも私は随分、議論に参加させていただいたのですけれども、結論としては、JAグループにおいて自己改革を進める。その先には、農業者の皆さんの所得向上を図る取組を実践するのだと、こういった方向性が出されていますけれども、実際、生産資材のコスト引き下げ等々について具体的に取組を進めていただいて、着実に進展していると認識しています。本年6月には規制改革推進に関する答申が出されましたけれども、ここでは「農協の自己改革について、各農協において具体的な行動が実施され、着実に取り組まれていることは評価できる」とされています。自己改革は組合員の皆様との対話を重ねながら、その取組を継続することが重要だと思います。農林水産省としては引き続き、JAグループの皆さんの自己改革を後押ししてまいります。

  • スマート農業について

記者

  スマート農業についてお伺いします。今、生産者の人口どんどん減っているということで、今後ますます必要になってくると思いますので、スマート農業に対するご認識をお伺いしたいのと、導入コストがかかるということで、まだ普及がなかなか広まっていないところもありますけれども、その普及についてもお伺いできればと思います。

大臣

  大変重要な指摘だと思います。農業人口も減っている、担い手が不足している、高齢化も進んでいると、こうした構造変化に対応すること。もう一つは、環境負荷低減に役立つような農業を実現するというニーズがあって、みどりの食料システム戦略を立てたわけですが、こうした高齢化人手不足、環境負荷低減農業を考えたときにスマート農業は重要だということで、これまで全国217ヶ所で実証のプロジェクトを推進しています。私の地元でもそうした実証をしています。これらの結果を踏まえて、労働時間の削減、収量増大の効果が確認される一方で、導入時の高価、「高いぞ」と。それから、それを使いこなす人材が不足、まだまだ現場に使うには開発が不十分だと。こうしたいろんなご指摘もありますし、今ある栽培体系に、機械をどうするというだけではなくて、栽培体系自体も特に果樹などスマート農業ロボットと親和性のあるような形で栽培をしていくとか、生産側の対応も含めて考えなければいけないのではないか、流通とか販売をどうするのかも含めて課題が明らかになっていると思います。このため食料・農業・農村政策の新たな展開方向に基づいてスマート農業を推進するための新技術の開発、生産、流通、販売方式の変革などの取組を促進する仕組みについて法制化していくということも視野に入れて、検討を進めているところです。今の課題は認識した上で、しっかり前に進めていかなければいけないということで頑張ってまいります。

  • 適正な価格形成について(2)

記者

  何度か話に出ている、適正な価格形成に関してなのですけども、現場だとやはり農家の方は自分の所得が上がるのではないかとか、手取りが上がるのではないかというふうに考えている方が多いという中で、実際にはどういうふうになっていくのか、そして消費者は今、特により安いものを求める中で、農家側にも求めること、そして消費者側に求めること、そしてその中で農林水産省が果たしていく役割については大臣どのようにお考えでしょうか。

大臣

  今、まさに具体的な議論をしているところなので、あまり議論を先取りしたり、影響を与えるようなことは望ましくないなと思っていますけれども、やはり価格決定の仕組み自体をしっかり検証して、どこに問題があるのかというのを確認するということが、1丁目1番地で大事だなというふうに思っておりますし、その上で、生産現場はもっと手取りが欲しい、消費者の皆様は、安い価格で出来れば手に入れたいとこういうことですけれども、これは特に流通経路みたいなことも多様化していますので、その中で新しい取組が行われていると思います。生産現場と、消費の現場、どういうふうにつないでいくかというのは、作物によっても、いろいろなルートがあるわけですけれども、今、2024年問題、流通の問題もありますし、そうした流通システム自体も、国全体として効率化に変えていく中で、やはり流通コスト等、削減する、効率化することによって、現場の手取りが増えて、流通コスト減の分だけ、消費者の皆さんは安定した価格で物が買える。そうした、社会を実現していくというのは、これからの改革の方向として、十分考慮すべきだと思いますし、そのプレーヤーとしてはいろいろ、中間に入る中間業者の皆さん、ないしは食品加工業の皆さんが頑張って、そういう取組をやっている場面もありますし、いろいろな新たな取組が生まれている好事例も生まれていますので、そうしたことにもしっかり目を向けて学びながら、品目ごとに違うというのも、また難しいところですけれども、しっかりそれぞれの品目において、生産現場は、持続可能な農業ができるようになってきたと、そして、消費者も安定して品質の良いものが買えるようになってきたなんて言われるような出口を目指して頑張っていくことが必要だと思っています。

  • 諫早湾干拓事業について

記者

  国営の諫早湾干拓事業をめぐる国の対応について伺います。開門を命じた2010年の確定判決の無効化を国が求めた請求異議訴訟で、最高裁が今年3月、漁業者の上告を棄却して、非開門という形で司法判断が統一されました。これを受けて、有明海再生の具体的な方策を協議するため、国と沿岸4県漁業・農業関係者を共同する裁判によらない話し合いによる合意を提案する大臣談話を3月に出されました。この大臣談話を宮下大臣としても踏襲されるかというのと、現時点で話し合いの場の実現の可能性について、お考えを伺います。

大臣

  諫早湾干拓事業をめぐる問題については、非常に長い経緯があるということを認識しています。大臣談話の話も認識していますけれども、具体的に、今後、私自身としてどういう対応していくかということも含めて、まずは事務方からしっかり説明を受けた上で、適切に判断して対応していきたいと思っています。

  • 中国による日本産水産物の輸入停止措置に係る対応について

記者

  中国による日本産水産物の全面禁輸について伺います。今RCEP等、通商枠組みに基づく手続きがとられておりますけれども、事態の打開の糸口というのがなかなか見つからない状況かなと思います。規制の撤廃に向けてどのような手段を講じて中国に撤回を求めていくべきとお考えでしょうか。

大臣

  我が国としては、中国側の科学的根拠に基づかない、この輸入全面禁止措置というのは、全く受入れることができないということで、これまでも、累次にわたって即時撤廃を求めてきているところです。9月4日には、当該規制の撤廃を求める旨の反論を、WTOに書面にて提出しました。また地域的な包括的経済連携であるRCEP協定の規定に基づいて、中国政府に対して討議を要請しているところです。こうしたことを一歩一歩やりながら、引き続き関係省庁と連携をしながら、WTOの枠組みの中で何が最も効果的かという観点から、今後、様々な選択肢について検討を進めていきたいと思っています。

  • 水産資源管理に係る予算について

記者

  水産資源の回復に向けた、科学研究の予算獲得に向けた姿勢をお聞きしたいというのが質問の趣旨です。近年、全体として水産資源が減っていると見られる中で、その減ってしまった原因の分析が立ち遅れているのではないかというのが貴省の中でも外でも言われていると思います。実際に水産庁としても、来年度の予算要求で、資源分析の予算を増やします、そこに注力しますと公言されているのですけれども、2018年から昨年までの予算を見ていると、8月の段階でその資源関係の予算は増額しますと言って、12月に予算を見るとつかない。どちらかというと業界団体とかが求めていた補助金にお金が多く流れるということが続いたのかなと思います。今年は本当に12月までしっかり資源、特にその科学的な研究に対して予算をつけていこうという姿勢は続くのでしょうか、実際に業界団体の方々に、必要性を説明する必要があるのだとしたら、具体的にどのようなことをされたいか、今言える範囲で、もしお聞きできればという質問になります。

大臣

  説明というのは何に関する説明ですか。

記者

  予算を資源の回復とかに寄せていくということは、補助金がもらえるより当然嫌だなと思う業界の方は多いと思うので、どういう理由で大事なので、こういう予算が必要なのですと説明する必要があると思うためです。

大臣

  ご指摘のように、やはり科学的な根拠に基づいて資源管理していかなければいけないということで、農林水産省では最大持続生産量(MSY)、これに基づく漁獲可能量(TAC)に関する管理を基本とした新たな資源管理システムを推進しています。令和2年9月に、資源管理のためのロードマップを公表して、令和12年には漁獲量を321万トンから444万トンまで回復させるという目標を立てて、令和5年度までに、資源評価の対象魚種を50種から200種程度に拡大すること、水揚げ情報の電子的収集を新たに400市場以上で実施すること、TACの対象業種を漁獲量ベースで6割から8割に拡大すること等を目指して、現在、取組を進めているところです。そのためにも、必要な予算確保を含めてしっかりと対応していきたいというのが、農林水産省としてのスタンスです。平成30年は水産資源調査・評価推進事業、31億円しかありませんでしたけれども、令和元年度に54億円、令和2年は52億円でちょっと減りましたけれども、令和3年度、4年度、5年度で60億円、57億円、54億円と、かつてに比べれば倍ぐらいの水準できています。令和6年度については60億要求して、しっかりこれは予算確保して資源管理を前に進めたいと考えています。

  • 森林林業の将来像について

記者

  森林林業についてお伺いします。かつての自民党農林部会でも森林林業の将来像についての詳しい議論をされていたかと思いますけども、改めてこの森林業に対する将来像についてどのようにお考えか、お聞かせください。

大臣

  農林水産省としましては、森林・林業基本計画に基づいて、国産材の安定的かつ持続可能な利用及び供給と、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、1つには都市等における木材利用の拡大、2番目は木材加工流通施設の整備、3つ目として担い手の育成、路網整備などの森林・林業・木材産業政策を展開しているところです。併せて、喫緊の課題として、花粉発生源対策、また森林環境譲与税の譲与基準の見直し、こうしたことにしっかり取り組んでまいりたいと考えています。森林・林業、これも先ほど、新たな資本主義、新資本主義からの脱却みたいな話もありましたけれども、安いから輸入材ということではなくて、やはり世界全体から見ても、これだけの戦後植林された木材が伐採期を迎えて、まさに活用しなければもったいないという状態にあります。これを皆で活用していく、そしてエリートツリー等々にしっかり植え替えていくことによって、CO2吸収量も増えるし、全体としてカーボンニュートラルなグリーンな社会にしていく、その中核に森林・林業の振興、活性化があると思っていますので、そうした国民運動として皆で森林林業応援していく機運を高めて前に進めていきたいと思います。

報道官

  よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。

以上

 

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