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2023年10月6日

無人航空機の安全利用のためには、他の航空機や無人航空機との衝突を回避することが喫緊の課題であり、技術開発を進めています。一方で、こうした技術開発に当たっては、「どのような運航手順で、衝突回避のための制御を行うのか」が統一されていない場合、例えば機種が異なると回避が不十分になるおそれもあります。
今回、無人航空機の衝突回避に関し、そのための運航手順を中心とした国際規格の改定を日本が主導し、国際標準化機構(ISO)より国際規格として正式に発行されました。本規格により、ドローンに関わるステークホルダーにおけるグローバルな衝突回避技術の開発や運用実証、事業化検討が促進され、社会実装の加速化が期待されます。

1.背景

一般にドローンと呼ばれる小型の無人航空機や、より大きなセンサーなどを搭載できる中型の無人航空機は、既に農業分野などで利用が広がっており、さらには災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどへの用途拡大が大いに期待されています。
一方で、無人航空機とドクターヘリなど有人航空機とのニアミス実例※1が国内で報告されるなど、他の航空機との衝突をいかに回避するかが無人航空機の安全利用における喫緊の課題です。また、無人航空機の社会実装に必要不可欠な「目視外飛行※2」及び「第三者上空飛行※3」を実現する上でも、衝突回避は重要な技術です。
無人航空機の衝突回避に関する技術開発は、これまでも各国で行われてきましたが、衝突回避の手順や手段は国際的に統一されていませんでした。そのため、特定のメーカーの機体同士や限定されたサービスの中でしか回避できず、空の安全が十分に確保できないおそれがありました。
こうした中で、経済産業省では、国内外での幅広いドローンの利活用の実現に向け、無人航空機の衝突回避に関する国際規格化提案の支援に取り組んできました。

図1
図1 衝突回避技術のイメージ

2.規格改定の概要

2019年11月に初版が発行された「ISO21384-3」は、無人航空機の運航手順を国際規格化したものでしたが、初版では他の航空機や無人航空機との衝突を回避する手順については規定されていませんでした。 2023年10月2日の改定で、衝突回避のCONOPS(Concept of Operations:運用構想)を新たな章として追加し、「対象物の探知」、「ターゲットの認識」、「回避機動」、「回避結果の確認」、「元ルートへの復帰」及び「元ルートでの飛行」の6ステップからなる基本的な手順を規定しました(図2)。今後、無人航空機はこの6ステップに従い、統一された回避機動をとることになります。
本規格の改定は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2017年より進めてきた「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト※4」の成果を基に、2021年より株式会社SUBARU、日本無線株式会社、株式会社ACSLが進めてきたものであり、日本が国際標準化機構(ISO)における検討を主導しました。

図2

図2 衝突回避の基本手順

3.期待される効果

世界各国のドローンに関わるステークホルダーが、個別に進めてきた無人航空機の衝突回避技術の開発や運用実証、事業化検討などを本規格に基づいて行うことで、グローバルな情報共有や技術開発、社会実装に向けた取組の加速化が期待されます。さらに、衝突回避に関する運航手順が標準化されることで、他の航空機を探知し回避するシステムや、その試験方法などの標準化も促進され、さらなる空の安全確保が期待できます。

注釈
※1 有人航空機とのニアミス実例 
「航空機と無人航空機、無人航空機同士の衝突回避策等について(国土交通省航空局、2016年11月8日)」外部リンクのp.16を参照しています。
※2 目視外飛行
無人航空機の操縦者が、自分の目によって無人航空機の位置や姿勢及び航行の安全性を確認できない飛行のことです。長距離の物流やインフラ点検に必須ですが、その実現には、操縦者の目視に代わる安全措置の実施や、衝突回避技術の実装などが必要になります。
※3 第三者上空飛行
無人航空機の運航に関与しない第三者の上空を飛行することです。市街地などで物流を実施する場合などに必須ですが、その実現には、高い安全性や信頼性を確立する技術が必要になります。
※4 ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
NEDOが2017年より推進する、【1】ロボット・ドローン機体の性能評価基準等の開発、【2】無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発、【3】ロボット・ドローンに関する国際標準化の推進、【4】空飛ぶクルマの先導調査研究の4項目により、省エネルギー社会の実現を目指したプロジェクトです。
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担当

  • 国際標準について

    産業技術環境局 国際標準課長 西川
    担当者:田中、水野、十亀
    電話:03-3501-1511(内線 3423) 
    メール:bzl-s-kijun-ISO★meti.go.jp
    ※ [★]を[@]に置き換えてください。

  • ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクトについて

    製造産業局 航空機武器宇宙産業課
    次世代空モビリティ政策室長 滝澤
    担当者:石尾、坂口
    電話:03-3501-1511(内線 3621) 
    メール:bzl-s-seizo-soramobi★meti.go.jp
    ※ [★]を[@]に置き換えてください。

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