外務省・新着情報

冒頭発言

【上川外務大臣】本日、私は、ここ福島県を訪れ、まず東京電力福島第一原子力発電所を訪問しました。東電福島第一原発構内においては、廃炉に向けた取組について説明を伺い、ALPS処理水海洋放出設備などを視察しました。私は、外務大臣就任以降、国際会議・二国間会談等様々な場面で、IAEAと緊密に連携し、科学的根拠に基づくALPS処理水の海洋放出の安全性について説明・発信してきました。今回、現場を視察し、その安全性を確認できたことは、大変有意義でした。また、廃炉を着実に進め、復興につなげるという思いを改めて強くしました。
 ALPS処理水の海洋放出は、本年8月から現在まで 計3回が安全に実施されました。また、IAEAは本年10月、放出後初のレビューミッションを実施し、海洋放出は予定どおり安定して進んでいることを確認しました。
 ALPS処理水の海洋放出は数十年続くプロセスであり、我々はその第一歩を踏み出したところです。この長期にわたるプロセスを一歩一歩着実に進めていくため、常に科学的根拠に基づき、IAEAの関与を得つつ、透明性高くコミュニケーションをはかりながら、国際社会の理解・支持を得ていくことが重要です。私自身、本日の視察を今後の外交の現場に活かしていきたいと考えています。
 また、総合施設いわき・ら・ら・ミュウにおいては、 いわき市長とともに、地元水産物を試食しました。今日水揚げされた新鮮なお魚のお刺身のほか、メヒカリの唐揚げ、サンマのぽーぽー焼きなどを試食し、地元水産物のおいしさに感動しました。
 そして、小名浜魚市場を訪問し、福島県漁業協同組合連合会の方々と意見交換しました。福島の復興を進めるために、地元の方々が、様々な困難に耐えつつも懸命に努力されていらっしゃることに心から敬意を表します。
 2011年4月17日、震災直後のいわき市を訪問した際、南双葉復興センターの開所式で、「ふるさとを自分たちの力で復興する」との地元の方々の強い思いに触れ、深く感銘を受けました。それから10年が経ち、外務大臣という立場に変わりましたが、福島の復興に貢献するという私自身の思いに変わりはありません。福島の方々と一緒になって、復興を更に推進していくべく、しっかり取り組んで参ります。

質疑応答

【記者】本日、福島第1原発のアルプス処理水の放出状況を視察された受け止めを改めてお伺いしたいです。また、処理水放出を巡り中国やロシアが日本産水産物の禁輸措置を継続している。英の新聞は北海道の海岸にイワシなどが大量に漂着したことを処理水放出と関連づけて報じました。こうした状況に対し、具体的にどのように対応されていくお考えでしょうか。 

【上川外務大臣】まず、本日の東電福島第一原発視察の受け止めについてお尋ねがありました。
 冒頭も述べましたが、今回、現場を訪問し、日本の取組の安全性を自分の目で確認できたことは大変有意義と感じております。廃炉を着実に進め、復興につなげるという思いを改めて強くした。本日の視察を活かし日本の取組について国際社会に力強くアピールし、IAEAの関与も得つつ、理解・支持を広げていきたいと思います。
 また、一部の国による禁輸措置や、イワシの漂着事案に関する報道についてお尋ねがありました。
 政府としては、国内外に対し、あらゆる機会を通じて透明性高く情報発信を行ってきており、国際的にも科学的根拠に基づく冷静な対応が広がっていると実感しています。一部の国による輸入停止措置に対しては、引き続き、科学的根拠に基づく対応を求め、措置の即時撤廃を求めて参ります。
 また、北海道におけるイワシの漂流事案については、既に、水産庁から、そもそもイワシ類の漂着は珍しい現象ではなく、ALPS処理水の海洋放出を理由付ける根拠はないと説明していると承知しております。
 そもそもALPS処理水の海洋放出後、水産庁では 水産物の、環境省では海水のモニタリングを行っておりますが、一切異常な数字は検出されておらず、放出が安全に行われていることが科学的に確認されています。
 外務省としても、先週の外務報道官会見の冒頭でその旨説明したところです。引き続き、ALPS処理水の海洋放出の安全性について、高い透明性をもって、科学的根拠に基づき、丁寧に説明して、国際社会の理解・支持が一層深まるように取り組んでいきます。

【記者】東電や福島県漁連との意見交換では具体的にどういった要望があったのでしょうか。処理水放出を批判する中国への対応に関し、首脳間で合意している専門家レベルの協議開始に向けた交渉状況と、望ましい枠組みの在り方について伺います。日本産水産物の輸入規制撤廃に向け、外務省としてどのような働きかけを行っていくか改めて方針を伺います。

【上川外務大臣】まず、東電、そして福島県漁連との意見交換についてお尋ねがありました。
 それぞれ先方の発言を私(大臣)から詳細に紹介することは控えますが、東電関係者からは、引き続きALPS処理水の海洋放出の安全性について対外的な発信をお願いしたい旨言及がありました。また、福島県漁連関係者からは、国際的な理解を深めるために外交努力を積み重ねて欲しいとの言及がありました。
 これに対して私からは、福島の方々と一緒になって、復興を更に推進していくべく、水産庁をはじめ他省庁と連携をし、外務省としてしっかり取り組んでいくとの決意をお伝えしたところです。
 続いて、中国への対応についてお尋ねがありました。
 先般の日中首脳会談及び日中外相会談において、中国との間で、ALPS処理水については建設的な態度をもって協議と対話を通じて問題を解決する方法を見いだしていくことで一致しました。
 これを踏まえ、専門家のレベルでの科学に立脚した議論が今後調整を経た上で行われることとなります。その具体的な枠組みの在り方については、この場で詳細に述べることは控えたいと思います。
 最後に、日本産水産物の輸入規制撤廃に向けた方針についてお尋ねがありました。
 政府としては、国内外に対し、あらゆる機会を通じて、透明性高く情報発信を行ってきており、国際的にも科学的根拠に基づく冷静な対応が広がっていると認識しています。
 一部の国による輸入停止措置に対しては、引き続き、科学的根拠に基づく対応を求め、措置の即時撤廃を求めていく考えであります。

【記者】野崎・県漁連会長との懇談について、廃炉作業そのもは経産省、国外への発信は外務省によるところと思いますが、これを含めまして改めて野崎会長の要望に対する外務省のお考えをお聞かせください。また、県産水産物・常磐ものに触れられて、試食を含めた感想および外務省としての支援策を伺います。

【上川外務大臣】まず、福島県漁連との意見交換についてお尋ねがありました。
 先方の発言を私(大臣)から詳細に紹介することは控えますが、福島県漁連関係者からは、特に風評被害対策に尽力いただきたい旨言及がありました。
 これに対して私からは、福島の方々と一緒になって、復興を更に推進していくべく、関係省庁と連携をし、外務省としてしっかり取り組んでいくとの決意をお伝えしたところであります。
 また、県産物については冒頭述べたところですが、いわき・ら・ら・ミュウで地元水産物の試食をさせていただきました。
 同様に週末に開催された日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の関連行事でも、「常磐もの」の食材を使った料理を振る舞いました。大変評判がよかったところでございます。皆さんが美味しく召し上がって頂くこと、そして私自身も今日水揚げされたばかりの水産物を視力させていただきましたけれども、本当に美味しくいただけました。市場そのものが県内のみならず、県外からのお客さんにも見えているということで、こうした流れを大きな物としていくために努力していきたいと思います。
 また、今般臨時国会で承認された令和5年度補正予算においては、「風評被害抑制のための「ALPS処理水対応パッケージ」」が盛り込まれたところです。今後、これも活用しつつ、日本の取組、そして日本の産品の魅力について更に発信していく考えです。

【記者】ラヴロフ外相はインタビューで「日本を含むどの国とも領土をめぐる論争はもはや存在しない」と述べました。北方領土問題を含む平和条約交渉の中断を一方的に表明するなかで日本への強硬姿勢を改めて示した形ですが、発言の受け止め、また今後日露交渉にどう臨むのか、伺います。

【上川外務大臣】御指摘の発言は承知しています。日露間では領土問題が解決されていないが故に、平和条約交渉が行われてきました。
 ロシアは、ウクライナ侵略開始の1か月後の2022年3月に、日本の対露制裁等を理由に、日本との平和条約に関する交渉を継続するつもりはないと一方的に発表しました。しかし、現下の事態は全てロシアによるウクライナ侵略に起因して発生しているものであり、日本側に責任を転嫁しようとするロシア側の対応は極めて不当であり、断じて受け入れられません。ロシアによるウクライナ侵略によって日露関係は厳しい状況にあり、残念ながら現在平和条約交渉について何か具体的に申し上げられる状況にはないですが、政府としては、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持していきます。

【記者】政治資金をめぐる問題で今日安倍派と二階派の事務所に強制捜査が入りました。閣僚や党の役員が辞任する事態にも発展していますが、政権への影響と、政府として国民への信頼回復にどのように努めていくお考えでしょうか。また、前回の閣議後会見で大臣はこの問題について問われた際、「この場におきましてお尋ねのような政治を巡る情勢、状況につきまして、外務大臣としてお答えをすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います」と述べられました。大臣はこれまで国会答弁などでも「政府の立場」を強調されてきました。政府の立場から政府や自民党、政治の責任についてそれぞれどうお考えか、改めて伺いします。

【上川外務大臣】国会や記者会見は、外務大臣としての立場でお答えする使命を帯びている場であると考えており、お尋ねのような政治をめぐる状況については、政府の立場としても、また外務大臣の立場としても、お答えすることは差し控えたいと思います。

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