外務省・新着情報

令和6年1月4日
南豪州総督邸内厨房
総督邸チーフ・シェフのサポートを得て調理

 在外公館は任国政府等との交渉・情報収集・人脈形成等の外交活動の拠点であり、在外公館長の公邸において任国関係者、各国外交団等を招待して会食等の機会を設けることは、最も有効な外交手段の一つです。

 実際に、在メルボルン総領事公邸では、ビクトリア州政府関係者、経済関係者、学界等の有識者、領事団、ビジネス関係者等様々な分野の方々を対象とした会食や天皇誕生日祝賀レセプションなどを開催し、外交活動を行っています。

 そこで活躍しているのが、在メルボルン総領事の公邸料理人・大津尚也氏です。大津公邸料理人は在メルボルン総領事公邸で公邸料理人として働くまでは、京料理の名店、花郷・六本木店で腕を振るっていました。当地においても、できる限り地元の食材を使い、四季折々の創意工夫を凝らした本格的な和食はとても高い評価を得ています。

 エピソードを一つ紹介すると、領事団の行事に顔を見せることが少なかったビクトリア州の首相(当時)が日本総領事の招待に応じ、在メルボルン総領事公邸で和食を大いに楽しんだことは州の閣僚の間で話題になりました。その後、多くの閣僚が在メルボルン総領事公邸を訪れ、大津公邸料理人の和食を満喫していったことは、政界・経済界でも語り草となっています。中には繰り返し訪れる閣僚もいらっしゃいます。

 しかし、他州政府要人が用務でメルボルンに出張し、在メルボルン総領事公邸を訪れることは殆どありません。在メルボルン総領事館がビクトリア州のほかに管轄する、南オーストラリア州とタスマニア州については、大津公邸料理人の和食を提供しながら外交活動の機会を設けることは難しい状況にあります。

 このような背景のもと、4月下旬、様々な分野における日本と南オーストラリア州の関係強化について意見交換することを目的に、アダムソン総督と面会する機会を捉え、紅葉の美しい南オーストラリア州アデレードのアダムソン総督邸にて、大津公邸料理人が和食でおもてなしをするという企画を行いました。

 総督邸の厨房をお借りすることは難しいかと思いましたが、前例にこだわらない元外交官のアダムソン総督は快く受け入れてくださりました。できるだけ南オーストラリア州の地元の食材を使うことだけが条件で、あとは自由に、キッチンも前日から何時までも使ってもらって良いということでした。これほどまでに我々のチームを信頼してもらっていることに心を打たれました。

飛騨牛を炭火で調理
会食時の集合写真

 アデレードで調達できない調味料、備長炭、和食器、調理器具などはメルボルンから持参しました。大津公邸料理人はアデレード到着後、総督邸チーフ・シェフの案内でマーケットへ。一緒に歩いて回って食材を調達しました。その後、いよいよ総督邸のキッチンへ。そこで大津公邸料理人は時間をかけて仕込みに励みました。

 夕食会本番では、秋の食材を使い、季節感を感じさせる盛り付けで、あたかも日本にいるかの如く雰囲気となりました。いちじく、柿、栗、さつま芋を使った「先付け」から始まり、メインの「焼き物」では、岐阜県の飛騨牛を炭火で焼いてお出ししました。そして、炊き込みご飯や甘味、日本茶で夕食会は無事に終了しました。総督夫妻は、本格的な和食のコース料理をご自身の総督邸で食べることができたことに大満足の様子でした。総督邸での夕食会は和やかな雰囲気の中行われ、日本と南オーストラリアとの関係がますます緊密化してきていることを実感した夜となりました。

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