外務省・新着情報

冒頭発言

上川外務大臣のG20外相会合出席及びパナマ訪問

【上川外務大臣】私(上川大臣)は、2月20日から22日まで、G20外相会合に出席するため、ブラジルのリオデジャネイロを訪問いたします。その後、2月23日には、パナマを訪問します。
 G20外相会合では、ウクライナ情勢や中東情勢への対応、また、安保理改革を含むグローバル・ガバナンス改革等を議論する予定であります。年始の欧州・北米出張や、また、先週の太平洋島嶼国への出張での成果も踏まえ、「法の支配」及び、「人間の尊厳」が守られる世界を実現するとの観点から、日本の立場と取組を積極的に発信してまいります。
 ロシアによるウクライナ侵略は、G20の協力の基盤を揺るがす暴挙であり、各国が支えるべき法の支配への大いなる挑戦であります。ウクライナにおける公正かつ永続的な平和を、一日も早く実現することが急務であり、我が国といたしましても、2月19日に開催する日・ウクライナ経済復興推進会議も通じまして、ウクライナの復旧・復興を力強く推進していくことを発信いたします。
 また、ラファハにおける軍事行動といった動きもあり、ガザにおける人道状況が一層深刻さを増す中、ハマスが人質を一刻も早く解放すべきことは当然でありますが、同時に、ガザの無辜の民間人が、これ以上犠牲になることは、何としても防がなければなりません。
 このため、日本として、人道支援活動が可能な環境を確保し、人質の解放につながるような人道的停戦が速やかに実現し、そして、持続可能な停戦が実現することを期待しており、こうした考えの下、当事者に対して、直ちに人道的な観点から行動することを求めます。こうした切迫感及び危機感を各国とも共有すべく、我が国の取組も交えつつ、しっかりと発信してまいります。
 また、国際社会の構造的な変化が進む中、グローバル・ガバナンスの在り方が今まさに問われています。多国間主義の中核であるべき国連は、安保理改革を含め、その機能強化を通じて、本来の役割を果たすことが何より重要であります。さらに、多国間開発金融機関(MDBs)や、またWTOの改革も急務であります。こうしたグローバル・ガバナンスが抱える課題につきまして、積極的に議論に貢献する予定でございます。
 パナマ訪問の狙いにつきましても一言申し上げたいと思います。法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現する上で、中南米諸国は、自由民主主義等の価値や原則を共有する重要なパートナーであります。
 その中でもパナマは、我が国と120年にわたる長い外交関係を有する、海上交通の要衝であります。先日の島嶼国訪問も踏まえつつ、今回のパナマ訪問を通じまして、法の支配に基づく海洋秩序に支えられた「自由で開かれた海洋」を維持・発展させていくため、連携を強化してまいります。また、同国は、近年女性政策にも力を入れておりまして、WPSにおける連携も深めてまいりたいと考えております。
 私(上川大臣)からは以上です。

日・ブラジル関係

【読売新聞 上村記者】冒頭発言に関連してお伺いします。ブラジルは、グローバル・サウスの代表的な国でもあり、また、国連安保理改革などで、日本と利益を共有する国でもあります。ブラジルの存在感と訪問の意義について改めてお聞かせください。

【上川外務大臣】ブラジルについての御質問でございますが、本年、ブラジルは、G20の議長を務めるなど、中南米地域、ひいては国際社会で、大変重要な役割を果たしている国であります。
 日本は、そのようなブラジルと、自由、民主主義、人権、法の支配等の価値や原則を共有し、本年、「戦略的グローバル・パートナーシップ」を構築して、10年を迎えるところであります。また、世界最大の約200万人の日系社会という、特別な絆によっても結ばれている国であります。
 日本といたしましては、エネルギー・食料安全保障、また、気候変動、保健、そして、開発や平和と安定といった国際社会の諸課題へ、パートナーでありますブラジルとともに、引き続き、連携して取り組んでまいります。
 例えば、日本とブラジルでありますが、安保理改革に協力して取り組む枠組みであります「G4」、これのメンバーでありまして、安保理改革を含む国連の機能強化等、引き続き、緊密に連携してまいりたいと考えているところであります。
 また、ブラジルも重視をいたします環境・気候変動の分野におきましても、このG20リオ・サミットや、また、ブラジルでのCOP30の成功に向けました協力、これも念頭に、連携してまいりたいと考えております。例えば、アマゾン違法伐採対策などの日・ブラジル協力を基礎に、日・ブラジル両国による第三国に向けた協力等のパートナーシップを、更に強化してまいりたいと考えております。

G20外相会合への出席

【朝日新聞 高橋記者】こちらも冒頭に関連してなんですが、G20について、昨年、当時の林外務大臣は、国会日程の方の兼ね合いがありまして、出席かないませんでしたけれども、今年、上川大臣ご出席されることになりまして、国会日程と外交日程との兼ね合いというのは難しいかと思いますが、そうした経緯を踏まえて、今回出席されることについてのお考えをお尋ねしたいと思います。

【上川外務大臣】昨年は、G20の外相会合への出席者については、今ご指摘があるとおり、同会合や国内での公務の日程とか内容等を総合的に判断したものというふうに承知しております。
 今年の会合でありますが、私(上川大臣)が出席することになりました。先ほど申し上げたところでございますが、国際社会の重要な課題に関します日本の立場と取組を、積極的に発信してまいりたいと考えております。

日・ウクライナ経済復興推進会議

【共同通信 桂田記者】2月19日に予定されている日・ウクライナ経済復興推進会議について、改めて会議開催の意義を伺います。また、WPSのセッションも予定されていますけれども、どのようなメッセージを打ち出されるご予定でしょうか。ウクライナ復興にWPSの視点を加えるというのは、具体的に、どのような取組が想定されるのか、大臣のお考えをお聞かせください。

【上川外務大臣】ロシアによる侵略開始から、2年を迎える24日に向けまして、我が国として、「日・ウクライナ経済復興推進会議」を開催することになりました。国際社会におきまして、我が国が率先して、「我が国ならでは」の形で、ウクライナへの連帯を示すという観点からも、極めて重要と考えております。
 私(上川大臣)がウクライナを訪問した際に、現地では、2年近くにわたりまして、国を守るための戦闘状況が続く一方で、同時に、子供の教育なども含めまして、日々の営みが、ある意味で混在している状況にあると、そういうウクライナの人々の厳しい状況を、大変目の当たりにいたしまして、深くこの問題に、どう取り組むか、ということについては、日本としての立ち位置をしっかりして、対応していく必要があると、強く認識したところであります。
 戦争が続く中においても、生活を続けているウクライナの人々のために、復旧・復興支援を着実に続けることが必要であると考えております。
 現地には様々なニーズがありますので、そうしたニーズに応えまして、初期の緊急人道支援から、中長期的な生活再建、あるいは復興、あるいは産業高度化のフェーズに至るまで、ウクライナの自立的な発展を助け、国全体の再建につなげてまいりたいと考えております。
 WPSについてのご質問がありましたけれども、この全てのフェーズにおきまして、女性や子供を含むウクライナの人々に寄り添い、WPSの視点も配慮し、具体的な取組を推進してまいりたいと考えております。
 今回の会議の成果につきましては、国際社会全体の取組につなげていくことも重要と考えておりまして、6月には、ドイツ主催のウクライナ復興会議がございますが、そういった会議も含めまして、国際的な連携、これも強化してまいりたいと考えております。

北朝鮮の金与正・副部長による談話

【日本経済新聞 根本記者】北朝鮮情勢についてお伺いします。北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)氏が、昨日、拉致問題は解決済みとの立場を示しつつ、「岸田首相が、平壌を訪れる日が来ることもあり得る」との談話を発表しました。このタイミングで、こうした談話を出した北朝鮮の意図や、日本の外交方針なども含めて、上川大臣の御所感をお聞かせください。

【上川外務大臣】金与正副部長が、談話を発出したことについては承知しております。これに留意をしているところであります。
 岸田総理は、これまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向けまして、金正恩(キム・ジョンウン)委員長との間の首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていきたいと述べてきております。
 そのために様々なルートを通じまして、働きかけを絶えず行ってきているところでありまして、外務大臣として、このような協議のための外交的な取組をリードしてまいりたいと考えております。
 なお、政府として、北朝鮮側の意図、また狙いについて述べる立場にはございませんで、コメントすることは差し控えさせていただきますが、我が国といたしましては、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するとの方針に変わりはございません。

ガザ情勢(ラファハ侵攻)

【毎日新聞 村尾記者】ガザ情勢について伺います。冒頭でもご言及ございましたけれども、イスラエル軍によるラファハへの侵攻へ、国際的な懸念が相当強まっていると思います。マクロン大統領は、ネタニヤフ首相との電話会談で、「断固反対」と述べたと伝えられています。これ以上の人道悪化を招くことが確実なラファハ侵攻に対して、日本政府としての立場を伺います。明確に反対すべきだという意見もございますが、いかがでしょうか。

【上川外務大臣】イスラエルが、ラファハにおいて、大規模な空爆を伴う軍事行動、これを展開しているところでありますが、人口過密状態にあります同地区であります。民間人の避難・保護のための十分な措置が取られないまま、軍事作戦が継続すれば、更に多くの犠牲者が発生する惨事となり、人道支援活動が、ますます困難になることは明らかであります。
 ハマスが、人質を一刻も早く開放すべきことは当然でありますが、同時に、ガザの無辜の民間人が、これ以上犠牲になることは、何としても防がなければならない。
 そのため、日本として、人道支援活動が可能な環境を確保し、また人質の解放につながるような、「人道的停戦」、これが速やかに実現し、そして、持続可能な停戦が実現することを期待しておりまして、こうした考えの下で、当事者に対して、直ちに人道的な観点から行動することを求めております。
 我が国は、米国等が人質の即時解放や、また現場の人道状況改善のために精力的な外交努力を行っていることを高く評価しております。日本として、状況改善のために、何が現実的なアプローチかという観点から、関係国への働きかけ等の外交努力を積極的、かつ粘り強く行ってまいりましたし、これからも行ってまいりたいと思っております。

米国大統領選挙

【読売新聞 上村記者】トランプ前大統領の発言についてお伺いします。先日行われた集会で、トランプ氏は、在任中の発言として、NATO加盟国が国防支出を増やさなければ、ロシアからの攻撃から守らず、ロシアの行動を促す旨を発言されました。日本も米国の同盟国として、この発言をどのように評価されるかと、併せて、トランプさんは、国防支出を同盟国に求めているわけですが、日本も防衛予算の増額を決めたところ、日米同盟に対する日本の貢献はどのように評価されるかと、併せて、今年、米国の大統領選もあります。そうした状況も踏まえまして、外交当局間で、日米同盟に対する米国のコミットメントをどう確保していくか、お考えをお聞かせください。

【【上川外務大臣】質問がいくつか分かれていたので。
 まず、トランプ前米国大統領に対する発言ということでありますが、発言は承知しておりますけれども、他国の次期大統領候補の発言の逐一につきまして、我が国としてコメントすることにつきましては、まず、差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で、申し上げるところでありますが、米国は、基本的価値を共有する我が国の唯一の同盟国であります。日米同盟は、我が国の外交安全保障の基軸であります。
 2022年の末に、我が国は、国家、国民を守り抜くため、新たな国家安全保障戦略等を策定をいたしまして、2027年度において、防衛力の抜本的強化と、それを補完する取組を併せて、そのための予算水準が、2022年のGDP比2%に達するよう、所要の措置を講ずること等を決定したところであります。
 また、我が国は、昨年1月の日米安全保障協議委員会、日米「2+2」でありますが、これにおきまして、自国の防衛を主体的に実施し、そして、米国や他のパートナーとの協力の下、地域の平和と安定の維持に、積極的に関与する上での役割を拡大すると、こうした決意を再確認したところであります。
 これに対して、米国でありますが、日本の国家安全保障政策について、この同盟の抑止力強化の重要な政策であるとして、強い支持を表明したところであります。
 今後とも、我が国自身の、この防衛力を強化するとともに、日米同盟の抑止力、また、対処力の一層の強化と、日米関係の一層の強化に向けまして、日米で緊密に連携してまいりたいと考えております。

対露外交

【共同通信 桂田記者】対露外交について伺います。まもなくロシアによるウクライナ侵攻から2年となり、侵攻の前後では、対露外交をめぐる状況も大きく変化しましたが、隣国であるロシアに対して、今後長期的に見て、どういった外交的アプローチが必要と考えていらっしゃいますでしょうか。また、両国関係を考えるにあたっては、何が国益に資するかという観点から、適切に対応するとの姿勢を示してこられましたけれども、例えば、極東や北極圏でのLNG開発事業では、日本の権益を引き続き、維持されるお考えでしょうか。

【上川外務大臣】まず、対露外交の長期的なアプローチということでお尋ねがございました。
 ロシアによるウクライナ侵略でありますが、これは国際秩序の根幹を揺るがす暴挙でありまして、断じて認め得ることはできません。ロシアによるウクライナ侵略、これを1日も早く止めさせるため、我が国は、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、ロシアに対して厳しい制裁を行うなどの取組を進めているところでございます。
 同時に、例えば、漁業などの経済活動や、また海洋における安全に係る問題のように、日露が隣国として対処する必要のある事項につきましては、我が国の外交全体において、何が我が国の国益に資するかという観点から、適切に対応していくということであります。
 また北方領土問題に関しましては、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針を堅持してまいります。
 また、御質問の中に、極東や北極におきましての、LNG開発事業についてご質問がございましたが、サハリン2につきましては、これは、我が国の中長期的なエネルギー安定供給の観点から、権益を維持する方針でございます。
 北極LNG2については、昨年11月の米国制裁の影響の詳細を、引き続き、精査しているところでありますが、我が国のエネルギーの安定供給を損なうことのないよう、総合的に判断をし、そして、適切に対応してまいりたいと考えております。

ガザ情勢(イスラエルによるガザへの攻撃)

【フリー・ジャーナリスト 志葉記者】ガザについてお伺いします。大臣がおっしゃるとおり、「法の支配」というのは、極めて重要で、国際人道法違反のラファハでの大虐殺は、何としても止めないといけないと私も思います。それで質問なんですが、これ、もう日本として単に懸念を表明するだけでは不十分で、例えば、より強い姿勢での対応、日本が支援したガザ域の施設やインフラをイスラエル軍が破壊した場合、既に破壊していますけれども、それに関して、賠償、イスラエルに政府に求めるということは、民間人や民間施設の攻撃を防ぐことや、日本の納税者に対する誠意という点でも重要かと思いますけれども、大臣のお考えは、いかがかということと、それに関連してなんですけれども、過去、そういうようなことをやったのかと、ガザでは、2014年や2009年など、かなり大きな攻撃があったわけなんですけれども、日本は、そういった日本が支援した施設やインフラの被害状況を算定して、それをイスラエル側に抗議、あるいは賠償を求めたりだとか、そういった実績はあるかどうか、教えていただければ。

【上川外務大臣】まず、イスラエルによる賠償についてのお尋ねでございますが、現下の情勢におきましては、我が国の支援により建設された施設の具体的な被害状況を、現地において、直ちに調査することは困難でありますが、状況が許すようになった段階で、しかるべき確認していきたいと考えております。
 なお、イスラエルに対しては、これまでも、我が国が支援した民間施設に限らず、一般市民の保護の重要性、また、国際人道法を含む国際法に従った対応等を求めてきております。
 我が国としては、引き続き、関係国・国際機関と緊密に意思疎通を行い、全ての当事者に、国際人道法を含みます国際法の遵守、また、関連の安保理決議に基づきまして、誠実に行動することを求めてまいります。
 過去に出た被害につきましてのお尋ねがございました。過去のガザ紛争におきまして、我が国の支援により、建設された一部の施設に被害が生じた事例があったことは事実であります。こうした武力紛争による被害に対して、どのように対応していくかにつきましては、様々な事情を勘案する必要があり、本件につきましても、国際機関、関係機関でありますが、こうしたところでの調査が行われたことは、ございます。
 いずれにいたしましても、関係国際機関等と連携して対応してまいりたいと考えております。

対露制裁

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】ウクライナ情勢について、米大統領選で、トランプ氏が当選する可能性が高まっています。トランプ氏は、ウクライナ紛争の継続に固執するバイデン大統領と正反対であり、大統領就任後、すぐに停戦させると断言しています。岸田政権は、バイデン政権とぴったり歩調を揃え、戦争継続する姿勢のゼレンスキー政権へ多額の支援を行っています。仮に、トランプ氏が当選し、紛争を停戦させた場合、日本政府は、急に外交方針を180度転換するのでしょうか。今から停戦もあり得る、ロシアとも和解し得る、両面待ちの姿勢で、外交するべきではないでしょうか。ご回答をお願いします。

【上川外務大臣】ロシアによるウクライナ侵略でありますが、力による一方的な現状変更の試みでありまして、これは、既存の国際秩序の根幹、これを揺るがす暴挙であると。欧州のみならず、インド太平洋を含みます国際社会全体に影響を与えているところであります。そのような行動には、高い代償が伴うということを示していくことが必要と考えております。
 こうした考えの下、日本は、これまで、ウクライナに公正かつ永続的な平和を実現すべく、G7を始めとする国際社会と緊密に連携をいたしまして、力強いウクライナ支援と厳しい制裁措置を実施してまいりました。
 引き続き、米国を始めとするG7のみでなく、グローバル・サウスと呼ばれる諸国を含めまして、国際社会の幅広いパートナーと連携しつつ、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

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