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令和6年2月22日
G20外相会合の会場の様子
G20外相会合に出席中の上川外務大臣
G20外相会合中の上川外務大臣及び主要出席者

 2月21日及び22日、ブラジル・リオデジャネイロにてG20外相会合が開催され、上川陽子外務大臣が出席したところ、会合概要は以下のとおりです。今回の会合では、セッション1として「現在の国際的な緊張への対処におけるG20の役割」が、セッション2として「グローバル・ガバナンス改革」がテーマとされ、議論が行われました。

1 セッション1:「現在の国際的な緊張への対処におけるG20の役割」

 本セッションでは、主にロシアによるウクライナ侵略及び中東情勢について議論が行われました。

  1. 総論
    1. 冒頭、上川大臣から、日本は、全ての人と全ての国が平和と安定、繁栄を享受できるよう、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念や、人間の安全保障の考え方に基づき、「人間の尊厳」が守られる世界を実現すべく取り組んでいく考えである旨説明しました。
    2. 上川大臣から、昨年日本が議長国として開催したG7広島サミットでは、ブラジルを含むグローバル・サウス諸国も招待し、法の支配や、主権、領土一体性の尊重といった国連憲章の諸原則の重要性につき、首脳間で認識を共有したことを紹介しました。また、こうしたG7での成果も踏まえ、昨年のインド議長下で発出されたG20ニューデリー首脳宣言でも、主権、領土一体性の尊重を含む国連憲章の諸原則の堅持について一致したメッセージを示すことができた旨述べるとともに、日本は引き続き、本年のG20議長国ブラジルを始め国際社会の幅広いパートナーと協力していく旨述べました。
    3. 上川大臣は、今日、食料やエネルギーの安全保障を始め、人々の生活基盤に重大な影響を与えている国際情勢について、こうした事態が修復不可能な段階に至る前に歯止めをかけなければならず、この観点から、ウクライナ、中東、WPS(女性、平和、安全保障)の三つについて発言したいと述べました。
  2. ロシアによるウクライナ侵略
    1. 上川大臣から、G20のメンバーであるロシアは、これまでG20のほとんどの首脳による非難にもかかわらず、今なおウクライナ侵略を継続している、これはG20の協力の基盤を揺るがす暴挙であり、各国が支えるべき法の支配への大いなる挑戦である旨述べました。
    2. 上川大臣は、本年1月にウクライナを訪問し、侵略の生々しい傷跡を直接見て、力による一方的な現状変更を決して認めてはならないと改めて確信した旨述べ、ロシアが侵略を止め、一日も早くウクライナにおける公正かつ永続的な平和を実現する必要がある旨強調しました。また、上川大臣は、ロシアの核による威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用はあってはならない旨述べました。
    3. 上川大臣から、2月19日にシュミハリ・ウクライナ首相の出席を得て、東京で日・ウクライナ経済復興推進会議を開催し、56本の協力文書に署名したことを紹介しました。また、その機会に、ウクライナ復旧・復興に女性や子供たちの視点を組み込むべく、ウクライナ政府、企業、市民社会の現場で活躍する女性達との間で有機的な議論を実施した旨紹介するとともに、今後、こうしたネットワークを拡げながら、国際的議論に貢献したい旨述べました。
    4. 多くのG20メンバーからも、ロシアが侵略を止め、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和を実現する必要性について発言がありました。
  3. 中東情勢
    1. 上川大臣は、緊迫する中東情勢により世界経済への直接的な悪影響も生じている旨指摘し、日本はハマス等によるテロ攻撃を改めて断固非難すると同時に、ガザ地区の危機的な人道状況を深刻に懸念している旨述べました。特に、ガザ地区のラファハにおけるイスラエルの軍事行動は、民間人の安全に甚大な影響を及ぼしかねないものとして、深い懸念を表明しました。
    2. 上川大臣から、日本は、人道支援活動が可能な環境の確保、人質の解放につながるような人道的停戦の速やかな実現、そして、持続可能な停戦の実現を重視している旨述べるとともに、こうした考えの下、全ての当事者に、国際人道法を含む国際法を遵守し、直ちに人道的な観点から行動することを求め、外交努力を粘り強く積極的に続けていく旨述べました。また、ガザ情勢の悪化以降、日本はパレスチナへの人道支援を積極的に実施しており、加えて、3200万ドル規模の新たな緊急無償資金協力も検討している旨説明しました。
    3. 上川大臣は、現在のような悲劇を繰り返さないため、国際社会が支持してきた「二国家解決」の実現に向け、関係国と連携しながら、積極的に貢献していく旨述べました。
    4. 上川大臣は、ホーシー派による紅海・アデン湾における船舶への攻撃を断固非難する旨述べた上で、関係国とも緊密に連携し、航行の自由の確保のために必要な対応を行っていく旨述べました。
    5. 多くのG20メンバーからも、ガザの現下の人道情勢に対する懸念が表明され、事態の改善の必要性や、「二国家解決」の重要性が強調されました。
  4. WPS
    1. 上川大臣は、上述の深刻な紛争における女性や子どもの保護は喫緊の課題である旨強調するとともに、女性自身が指導的な立場で紛争の予防や復興・平和構築に参画することで、より持続可能な平和に近づくことができる旨述べ、こうした考え方は、WPS関連の国連安保理決議でも示されている旨指摘しました。
    2. 上川大臣から、こうした観点から日本はWPSを力強く推進している旨述べるとともに、昨年12月、ルトノ・インドネシア外相と共にWPSに関するサイドイベントに出席し、国際社会におけるWPSの主流化の重要性を強調した旨紹介しました。さらに、本年のG20において、こうしたWPSを踏まえた議論がなされるよう、積極的に協力していきたい旨述べました。

2 セッション2:「グローバル・ガバナンス改革」

 本セッションでは、安保理を含む国連改革、多国間開発金融機関(MDBs)改革、世界貿易機関(WTO)改革等について議論が行われました。

  1. 総論
    1. 冒頭、上川大臣から、現在国際社会は気候変動、食料、保健といった様々な地球規模の課題に直面しており、国際社会の構造的な変化が進む中、これらの課題に効果的に対処するためには、グローバル・ガバナンス改革が急務である旨述べ、ブラジルがこれをG20議長国としての優先課題に据えていることに支持を表明しました。
    2. 上川大臣は、こうした改革に取り組むに当たっては、「人間の尊厳」という原点に立ち返り、人間の安全保障の理念に基づく人間中心の国際協力を推進していく必要がある旨述べました。
  2. 国連改革
    1. 上川大臣は、世界で最も普遍的な国際機関であり、国連憲章を標榜する国連が、多国間主義の中核であることにはコンセンサスがあると思う旨述べました。他方で、国連設立から既に78年が経過する中、国連が現代の国際社会における喫緊かつ深刻な課題に対して役割を果たせるようになるためには、その機能を強化することが不可欠である旨述べました。
    2. 上川大臣から、国連総会の機能強化については、昨年、職員増強を始め国連総会議長を支える体制強化に加盟国が一致できたことを指摘しつつ、日本としても総会の一層の機能強化に向けて貢献していきたい旨述べました。
    3. 上川大臣は、安保理改革は急務となっており、安保理の構成が現在の国際社会の現実を反映するため、常任・非常任理事国双方の拡大が必要である旨強調し、本年の未来サミット及び明年の国連創設80周年という重要なマイルストーンを見据え、具体的な行動に移していくべきである旨述べました。
  3. MDBs改革
    1. 上川大臣は、地球規模課題に直面する途上国の支援強化にあたり、MDBs改革の更なる進展が重要である旨強調した上で、各MDBの理事会における議論を踏まえつつ、G20が横断的な視点からMDBsの機能強化を進める方向性を支持する旨述べました。
    2. 上川大臣から、途上国への融資余力拡大には、既存資本の活用や民間資金動員が不可欠である旨指摘しつつ、例えば、日本は、世界銀行やアジア開発銀行の革新的な保証の仕組みを通じて90億ドル規模の融資余力拡大に貢献する用意がある旨述べました。また、低所得国を支援する国際開発協会(IDA)やアジア開発基金(AsDF)の増資を成功させるべき旨述べました。
    3. 同時に、上川大臣から、途上国が直面する債務問題への対処は喫緊の課題であり、「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を超えた共通枠組」等による迅速な債務再編が不可欠である旨述べました。また、国際的なルールやスタンダードを遵守した透明で公正な開発金融の重要性につき、G20メンバーを含む全ての債権国及び債務国が認識を共有する必要がある旨強調しました。
  4. WTO改革
    1. 上川大臣から、世界経済の礎である、ルールに基づく自由で公正な経済秩序を堅持するためには、WTO改革による多角的貿易体制の強化が不可欠であり、まずは来週の第13回WTO閣僚会議で成果を出すことが重要である旨強調しました。
    2. 上川大臣は、特に2024年までの完全かつ良く機能するWTOの紛争解決機能の回復について具体的な成果を出したい旨述べました。また、途上国の開発課題に配慮しつつ、先進国・途上国双方に利益のある電商モラトリアムの延長、過剰漁獲の規律を定める漁業補助金協定の交渉妥結等も重要であり、G20で連携し、政治的モメンタムを与えたい旨述べました。
  5. AI
    1. 上川大臣から、現在我々が直面する新たな課題であるAIについて、AIの発展は我々に生産性の向上などの機会をもたらす一方、偽情報の拡散といったリスクも生じさせており、国際社会としての対応が必要となっている旨指摘しました。
    2. 上川大臣は、この観点から、日本は昨年G7議長国としてAIのガバナンスに関する「広島AIプロセス」を立ち上げ、国際社会のルール作りを主導している旨説明した上で、こうした経験も踏まえ、安全、安心で、信頼できるAIの実現に向け、G20での議論にも貢献していきたい旨述べました。

[参考]

  1. G20メンバー
    日本、ブラジル(議長国)、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、英国、米国、AU(アフリカ連合)、EU(欧州連合)
  2. 招待国
    アンゴラ、エジプト、ナイジェリア、ノルウェー、ポルトガル、シンガポール、スペイン、アラブ首長国連邦
  3. 国際機関
    アンデス開発公社(CAF)、国連食糧農業機関(FAO)、米州開発銀行(IDB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、新開発銀行(NDB)、国際連合(UN)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)

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