外務省・新着情報

冒頭発言

 日本はこれまで、パナマを含む中南米との間で、歴史的な二国間の友好関係に基づく深い信頼関係を築いてきました。その際、苦難の道を実直に歩んでこられた日系人の皆さんは、各国において尊敬を集め、日本と中南米との大切なかけ橋となりました。
 日本の中南米外交は、2014年の「3つのJuntos(ジュントス)」を始めとする一連の外交指針の下で、共有する価値や原則を基に、互いが互いを必要とする経済関係や人的交流を通じて(1)「共に」世界を導き、(2)「共に」発展し、(3)「共に」啓発するという、パートナーとしての信頼と友情を深めてきました。
 この「共に」という考え方は、歴史の転換点ともいえる国際情勢の中で、今日ほど重要性を増している時はないと思います。日本は全ての人が平和と安定、繁栄を享受できるよう、中南米諸国と「共に」、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、「人間の尊厳」が守られる道を、力強く歩み続けたいと考えています。
 このような思いを込めまして、今回、「中南米外交イニシアティブ」を発表します。これまでの日本の対中南米外交の理念や実績、培った信頼を基盤に、中南米諸国との対話を通じて、新たな連携を積み上げ、育てていくというイニシアティブです。
 日本と中南米の関係は、実に400年以上前までさかのぼります。この長い時間軸を意識しつつ、その上で特に、「中南米イヤー」である本年は、1年をかけて、中南米諸国とじっくりと対話を重ね、将来に向けて、このイニシアティブを育て、具体化させていきたいと考えています。
 その際には、これまで中南米外交の中核である二国間外交に加え、三角協力や地域グループとの連携に代表される「多様なネットワーキング」という新たな視点も取り入れたいと考えています。
 私は今回、パナマとの間で、「海洋」と「ジェンダー」に光を当てました。コルティソ大統領とは、日パナマ外交関係樹立120周年を契機とした二国間関係の一層の強化のために連携していくことを確認し、法の支配に基づく海洋秩序に支えられた「自由で開かれた海洋」の維持・発展のための連携、さらには、WPSを含むジェンダー平等の重要性を確認しました。
 「海洋」における更なる協力を構築する一環として、パナマ運河を訪れました。元大統領であるロヨ運河担当大臣との間で、パナマ運河の安全かつ安定的な利用環境確保を通じた海洋の連結性の維持・強化の重要性について一致しました。また、メトロ3号線も連結性強化の観点から重要な日本の協力であり、中米カリブ地域内のモデルケースとなることが期待されています。中南米との連結性強化をパナマとも協働しながら進めてまいります。
 なお、中南米は世界で最初に地域非核条約を作った地域であり、核軍縮においても協力して参ります。特にパナマは日本が国連に提出している核廃絶決議において、昨年共同提案国となるなど、日本と歩みを共にしています。
 在留邦人・日系企業関係者からは示唆に富む話を直接聞くことができました。中南米での生活やビジネス、日本語教育の普及を含めた教育などを通して、「中南米外交イニシアティブ」を豊かにする様々なアイデアも頂きました。
 今回のパナマ訪問は、中南米諸国との間で、共に未来を拓く第一歩となったと感じています。先日の島嶼国から今回の中南米へ、そして、今後はアフリカなど、日本外交が見据える水平線は長く伸びていきます。私なりの付加価値を積極的につけていきたいと考えております。
 私(大臣)からは以上です。

質疑応答

(記者)訪問全体のことでお伺いします。今触れられたとおり、今月大臣は太平洋島嶼国を訪れられ、今回パナマを訪れました。地域は違えど両方とも海洋国家な訳ですけれども、海洋国家との外交を進めることの意義についてお聞かせください。また併せては、今報道で発表がありました「中南米外交イニシアティブ」の意義についても改めてお聞かせください。

(大臣)海がもたらす恩恵によって栄え、海によって世界とつながる我が国であります。我が国にとりましては、法の支配に基づく海洋秩序に支えられた「自由で開かれた海洋」の維持・発展は死活的に重要と考えております。
 こうした観点から、先般の太平洋島嶼国訪問に続きまして、今回の「中南米外交イニシアティブ」における中南米との新たな連携のテーマとして、「海洋」における協力に光を当てております。
 今回、世界の海運の要衝であります、中南米諸国と我が国の貿易の重要な中継地でもありますパナマとの対話の中で、法の支配に基づく海洋秩序に支えられました「自由で開かれた海洋」の維持・発展のための連携、これを確認できたことは、「海洋」における協力の新たな一歩になったものと考えております。こうした今回の訪問をしっかりと踏まえて、これからの中南米外交に活かしていきたいと思います。

(記者)昨日まで大臣が御出席されたG20外相会合に関連して伺います。議長国ブラジルは議長総括の中で、「複数の国々がウクライナ侵攻を批判した」と述べた一方で、正面からロシアを批判することはしませんでした。大臣は会合の中で、ロシアの侵攻は「暴挙」である、「法の支配に対する大いなる挑戦」と強い言葉で非難されましたけれども、ブラジルの立場など諸総括をどのように受け止められたかお伺いします。

(大臣)まず御指摘の発言につきましては、ブラジルが議長国ですけれども、G20外相会合の議論を総括する形で行ったということで承知をしております。他方、ヴィエイラ大臣は「ブラジルは、武力の行使によって立場の相違を解決しようとする世界を受け入れられない」と、こうしたブラジル政府の立場を表明をしております。
 今回のヴィエイラ大臣との二国間会談におきましても、ウクライナを含む国際社会の喫緊の課題にどう対処するか、これにつきましては緊密に連携していくことを確認をしたところであります。
 私自身(大臣)は、今回の外相会合におきまして、ロシアによるウクライナ侵略はこのG20の協力の基盤を揺るがす暴挙であり、法の支配への大いなる挑戦であると述べた上で、ロシアが侵略を止め、一日も早くウクライナにおける公正かつ永続的な平和を実現する必要があると強調をいたしました。外相会合に参加した国々は、ロシアに対するウクライナ侵略へのやるせない思い、こうしたことを様々な言葉で表現していたところであります。
 我が国といたしましては、本年のG20議長国であります、価値や原則を共有する「戦略的グローバル・パートナー」でありますブラジルとも緊密に連携をし、取り組んで参りたいと考えております。


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