外務省・新着情報

冒頭発言

(1)核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア設置

【上川外務大臣】私(上川大臣)から3件ございます。
 まずは、核兵器のない世界に向けたジャパン・チェアについてであります。
 昨年9月の、国連総会一般討論演説におきまして、岸田総理は、「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」の設置を表明いたしました。
 米国、欧州及びアジアに所在する研究機関・シンクタンクとの間で、調整を行った結果、近く、カーネギー国際平和財団、ウィーン軍縮・不拡散センター、及び国際戦略研究所(IISS)アジアの3機関に、合わせて約30億円を拠出し、同チェアを設置することになりました。
 国際安全保障環境が一層厳しさを増す中、「核兵器のない世界」に向けた道のりが、一層厳しいものになっています。
 アカデミアや、また、実務の世界における「抑止か軍縮か」との二項対立的な議論を乗り越え、現実的かつ実践的な取組を進めていくためには、政府だけではない重層的な取組が重要であります。
 今回の「ジャパン・チェア」設置を通じまして、核軍縮・不拡散分野の関連会議への参加や開催、そして発信を促進していきます。

(2)グロッシーIAEA事務局長の訪日

【上川外務大臣】続きまして、グロッシー国際原子力機関IAEA事務局長の訪日についてであります。
 3月12日から14日まで、グロッシーIAEA事務局長が、外務省賓客として訪日されます。
 今回の訪日は、昨年7月、IAEA包括報告書の手交のため訪日されて以来となります。ALPS処理水の海洋放出開始から約半年を経て、改めてIAEAが現地を視察をし、その状況を確認すること等を目的としたものであります。
 滞在中、グロッシー事務局長は、福島県を訪問し、東電福島第一原子力発電所の視察や、また、地元の皆様との意見交換を行う予定であります。また、グロッシー事務局長は、一連の政府関係者との会談等を予定しておりまして、私(上川大臣)も会談を実施してしたいと考えております。
 我が国は、核不拡散と原子力の平和的利用の促進におきまして、重要な役割を担うIAEAの取組を重視しております。また、ALPS処理水の海洋放出に関しまして、IAEAは、そのレビューやモニタリングを通じまして、独立した第三者の立場から関与を続けております。
 この度の訪日を通じまして、日本とIAEAとの幅広い分野におきましての一層の関係強化を図ってまいりたいと考えております。

(3)ガザ地区への緊急無償資金協力

【上川外務大臣】続きまして、ガザ地区への緊急無償資金協力についてであります。
 本日の閣議におきまして、ガザ地区に対しまして、3,200万ドルの緊急無償資金協力を行うことを、私(上川大臣)から発言をいたしました。
 昨年10月7日に、ハマス等によるイスラエルに対する残虐なテロ攻撃が発生し、ガザ地区での戦闘が長引く中、連日、多数の子供たち、女性、高齢者を含みます死傷者が発生するなど、現地の人道状況は、看過し得ない状況にあります。
 今回の協力により、世界食糧計画、世界保健機関、及び国連児童基金などの国際機関を通じまして、現地で、今、特に必要とされる食料、保健などの分野で、できる限り多くの女性や子供たちに行き届くような人道支援を実施いたします。
 我が国として、引き続き、人道状況の改善や事態の早期沈静化等に向けた外交努力を、粘り強く積極的に続けてまいります。
 このような外交努力の一環といたしまして、本日から明日にかけまして、辻󠄀外務副大臣をイスラエル及びパレスチナに派遣し、改めて働きかけを行う予定でございます。
 私(上川大臣)からは以上です。

核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア設置

【中国新聞 樋口記者】冒頭御紹介ありました「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」について伺います。まず、この3機関を選んだ理由を教えてください。併せて、多分「ジャパン・チェア」というところに専門家を配置して、会議なんかでの議論を促していくということだと思うんですけれども、第一弾として決まっている取組などがあれば教えてください。

【上川外務大臣】まず、選定理由ということでありますが、「ジャパン・チェア」をどの機関に設置するかにつきましては、地域バランス、これを考慮しつつ、国際的影響力また信頼性等を総合的に判断して決定をいたしました。
 詳細につきましては、引き続き、各機関と調整中でございますが、今回の「ジャパン・チェア」には、核軍縮・不拡散を専門とするポストとして、各機関に1名が任命される予定であります。
 このポストに任命された者は、核軍縮・不拡散の研究に従事するだけではなく、関連の会議への参加、また、開催等を通じまして、その成果、これを広く発信し、当該分野におきます国際的議論を深めていくということが期待されるところでございます。

【中国新聞 樋口記者】その具体的なイメージなんですけれども、まず、そっちから伺います。なんでしょうか、その一人を任命することによって、どういうふうに、なんていうんでしょうね、この議論を深めていくかというのが、若干ちょっと、一般の方には、若干分かりにくいのかなと思ってまして。そのあたりのことが、もし分かればというのと、あとちょっと、これ大きな話なんですけれども、まさにさっき、大臣、おっしゃった「軍縮か抑止か」ということの二項対立を乗り越えていくと、これは、去年の秋の国連総会でも、首相が、総理が言ってらっしゃいましたけれども、このあたりの意義というか、なかなか今おっしゃったように、多分厳しい状況だと思うんですけど、停滞しているという状況だと思うんですけれども、それを前に進めていくために、このチェアが果たす役割というところを、お考えがありましたらお願いします。

【上川外務大臣】「ジャパン・チェア」の、これから、その詳細につきましては、まさに、各機関と調整してまいりたいと思いますし、また、ポストとして、各機関に1名任命ということでありますが、その任命された専門家の方とも、よくそのアクティビティにつきましても、詳細を詰めながら、成果をしっかりと上げていくということが、重要であるというふうに考えております。
 今、国際安全保障環境が、大変厳しさを増している状況でありますので、この「核兵器のない世界」に向けた道のりというものは、一層厳しくなっているという状況の中であります。
 先ほど申し上げたとおり、「抑止か軍縮か」と、こういった二項対立的な議論、これを乗り越えていくということが、極めて重要であるというふうに考えておりますので、まさに現実的かつ実践的な取組を、この3機関を中心に、それぞれの機関と連携しながら進めていくということが、重要であるというふうに思っております。
 まさに、政府による取組にとどまらず、こうしたアカデミア、更には、そのことを中心とした会議体、そうしたものを継続的に実施することによりまして、重層的な取組が実現できるのではないかということであります。
 そのことの意味を、これから、より具体的に、詳細的に詰めていく必要があるというふうに考えております。
 また、先ほど申し上げたように、研究者は、研究だけに没頭するということでは留まらないわけでありまして、まさに、会議を開催する、あるいは会議に参加をする、そうした中で、様々な議論を先に進めていくためのリーダーシップも発揮していただきたいというふうに思っております。
 このことにつきましても、任命されるポストでありますので、その方の特性をしっかりと踏まえた上で、最終的なアウトカムが、しっかりと達成できるようにしてまいりたいと考えております。

ガザ地区での戦闘休止をめぐる交渉

【NHK 五十嵐記者】中東情勢の関連で伺います。イスラエルとハマスの戦闘休止と、人質解放をめぐる交渉について、米国のバイデン米大統領は、近く双方が合意し、週明けの来月4日にも、戦闘休止が始まることに期待を示しました。イスラエル側は、およそ40人の人質の解放を条件に、6週間の戦闘休止する案に同意したとも報じられていますが、双方の合意に至るかどうかは、不透明な状況です。日本政府としての受け止めや、今後の対応をお聞きします。

【上川外務大臣】まず、ガザ地区南部のラファハには、多数のパレスチナ人の方々が、集中して避難している状況であります。また、人々に人道物資を届ける上でも、大変重要な場所となっているところであります。人口過密状態にありますこの同地区におきまして、民間人の避難・保護のための十分な措置がとられないまま、本格的な軍事作戦が展開されるということになりますと、更に、多くの犠牲者が発生する惨事となるところでありまして、その意味では、人道支援活動が、ますます困難になるということは明らかと考えております。
 今もまさに、この人質解放と、戦闘の休止をめぐりまして、関係国の仲介によるギリギリの調整が行われておりまして、我が国といたしましても、このような動きが実現するよう、関係国と緊密に連携しつつ、二国間での働きかけ、また、安保理やG7の一員としての外交努力等を通じまして、環境整備に取り組んでいる状況でございます。
 日本としては、人道支援活動が可能な環境を確保し、また、人質の解放につながるような人道的停戦、humanitarian ceasefireが速やかに実現し、そして持続可能な停戦、sustainable ceasefireが実現することを期待しておりまして、こうした考えの下、当事者に対しまして、直ちに、人道的観点から行動することを求めているところでございます。
 本日から、先ほど申し上げたように、辻󠄀外務副大臣のイスラエル・パレスチナ訪問ということになっておりますので、こうした機会を通じまして、引き続き、一般市民の保護の重要性については、強調をするとともに、イスラエルを含みます、全ての当事者に対しましては、国際人道、これを含みます国際法の遵守の徹底、そして、人道状況の改善、及び人道支援活動が可能な環境の整備・確保等に向けて、しっかりと働きかけをしてまいりたいと考えております。

対露制裁強化

【共同通信 桂田記者】対露制裁について伺います。ウクライナ侵攻2年の節目に発出された先日の「G7首脳声明」では、対露制裁強化や武器調達を支援する第三国の企業や個人への追加制裁が表明されましたけれども、日本として追加制裁の方針を教えてください。

【上川外務大臣】日本時間2月25日に、G7首脳テレビ会議が行われまして、岸田総理がご出席されました。
 その中で、岸田総理からは、日本としてG7メンバーと連携しつつ、これまで、厳しい措置を講じてきており、今回、新たに、ロシアの個人・団体の指定を含みます追加的な対露制裁の措置を取ることを表明したところであります。
 その詳細につきましては、現在、最終調整中でありまして、追って正式に発表する予定であります。

在日米軍のPCB廃棄物の処理

【北海道新聞 荒谷記者】在日米軍のPCBポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理について伺います。この3月末で、西日本の処理施設が閉鎖されるのに伴い、在沖縄米軍のPCB廃棄物について、防衛省が、北海道室蘭市の処理施設などで、肩代わり処理することも選択肢として検討しています。防衛省、これまで、在日米軍のPCB廃棄物を日米地位協定を理由に肩代わり処理してきましたが、環境省が、今月の20日に、室蘭で開いた説明会では、「米国に持ち帰ってもらう方向で、防衛省や外務省と協議している」と説明しています。外務省の考え方を伺います。

【上川外務大臣】御指摘の説明会におきまして、環境省の説明は承知しているところでございます。
 在日米軍施設・区域から発生したPCB廃棄物への対応につきましては、環境省をはじめとする関係省庁で連携して、様々な選択肢を検討しながら、米側と協議を行っている状況でございます。
 住民説明会におきます環境省の説明内容は、こうした日米政府間での協議の状況を踏まえて行われたものと認識しております。

外務大臣の国会対応

【産経新聞 原川記者】国会審議と外交の関係についてお伺いしたいと思います。
 今、令和6年度予算案が、衆議院で審議中で、大臣も予算委員会に何度も出席されておられますけれども、例えば、2月5日から7日にかけて行われた、総理をはじめとする全閣僚出席の基本的質疑、3日間で私が集計したところ大体22時間ぐらいあったんですけれども、質問があったのは2問だけ。初日の5日1問、7日1問、中日の6日は0問。答弁時間約7分ぐらいでした。ですので、残り21時間53分ぐらいは、大臣はずっと座っておられたという計算になろうかと思います。9日の午後の、外交と農業をテーマにした集中審議でも、大臣への質問は、数えたところ、お二人から合計4問でした。この答弁されてない時間を、もしも外交に当てるとすると、いろいろな、電話外相会談とか、あるいは駐日大使の表敬を受けたりとか、あるいは、大臣が積極的に取り組んでおられるアウトリーチ外交とか、いろいろな外交に使える時間にもなるなとも思うと、非常に勿体なく、非効率であると、国会による外務大臣の無駄遣いだと言ってもいいかと思うんですけれども、以上ご指摘させていただいた上で伺いますが、こうした状況を、率直に、大臣はどうお考えなのかというところをぜひ伺いたいと思います、どうお考えなのか、また、どういう気持ちで、委員会室にいらっしゃるのか、そういうことを伺えればと思います。よろしくお願いします。

【上川外務大臣】私(上川大臣)は、就任以来、国民の皆様から理解をされ、支持される外交をということで、それを基本方針の一つとしてまいりました。国民の皆さんに理解されてこそ、はじめて外交は成り立つものでありますし、信頼がなければ、外交は、真のものにならない、という認識であるということから、そうした方針を立ててまいりました。
 同時に、国会での議論でありますが、内政上の諸課題も、外交と分けて考えるということは、なかなかできないものであると認識しておりまして、私(上川大臣)自身が、外務大臣として、今おっしゃったように答弁の機会が非常に少ないというお話がございましたけれども、その答弁の機会に限らず、国会には、常に、そうした同じ姿勢で臨むという方針で、今まで出席をしてきたところであります。
 引き続き、国民の皆様の理解とご支持を得ることができるように、国会での議論にも、しっかりと臨んでまいりたいと考えております。

ガザ情勢(イスラエルへの外交姿勢)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】(以下は英語にて発言)
 パン・オリエント・ニュースのカルドン・アズハリです。
 ガザについて質問です。大臣は、繰り返しハマスを非難されてこられました。在日アラブ大使評議会は、先週、日本に対し、イスラエルによるパレスチナ人の「大量虐殺」を非難するよう求める声明を発表しました。
 日本は、ガザの人々への人道的支援を呼びかけ、大臣がおっしゃったような経済支援も行っており、それらは、とても良いことで感謝されていますが、イスラエルは、ガザを侵略して、ガザの病院や学校を破壊し、市民を殺し続けています。
 日本は、イスラエルの反発を避けるため、政治的にあいまいな立場を取っておられるようですが、その結果、イスラエルの占領による大量虐殺の継続を助けています。
 アラブ評議会の大使は、なぜ日本は、イスラエルのガザでの大量虐殺を非難できないのかと尋ねています。ありがとうございました。

【上川外務大臣】昨年の10月のハマス等によりますテロ攻撃発生以来、私(上川大臣)自身、現地の人道状況の改善や、また、事態の早期沈静化に向けまして、何が現実的なアプローチなのかという観点から、様々な外交努力を続けてまいりました。安保理理事国としても、安保理がその責務を果たすことができるよう、関連の決議第2712号及び第2720号の採択等につきましても、最大限の外交努力を重ねてきたところであります。
 また、イスラエルに対しましては、国際人道法を含みます国際法の遵守や、また、先ほど述べた、安保理決議に基づき、誠実に行動することを繰り返し訴えてまいりました。1月26日に発出されましたICJ(国際司法裁判所)の暫定措置命令につきましても、「外務大臣談話」を発表いたしまして、同命令は、当事国を法的に拘束するものであり、誠実に履行されるべき旨を強調したところでございます。したがいまして、御指摘は当たらないと考えております。
 その上で、現在は、一刻も早い現地の人道状況の改善、及び、この人道支援活動が可能な持続的な環境の確保は、最重要課題であります。このため、人道支援活動が可能な環境を確保する。そして、人質の解放に繋がるような「人道的停戦 – humanitarian ceasefire」、これが速やかに実現をし、そして「持続可能な停戦 – sustainable ceasefire」が実現することを期待しておりまして、こうした考えの下で、イスラエルを含みます当事者に対して、直ちに、人道的な観点から行動することを求めております。
 今般の辻󠄀副大臣のイスラエル・パレスチナの訪問の機会も通じまして、我が国として、人質の即時解放、そして人道状況の改善、そして事態の早期沈静化に向けました外交努力を、引き続き、粘り強く積極的に行ってまいります。

内閣支持率低下と国民の期待

【朝日新聞 松山記者】内政の関連で伺います。昨年、自民党の派閥の裏金問題が明るみに出て以降、岸田政権の内閣支持率は各社過去最低を記録するなど、低迷状態にありますけれども、こちら閣の一員として、上川大臣、どのように受け止められているかを、まず、伺います。それと併せて、内閣支持率が低迷しているとともに、国民からは、「上川大臣を次期首相に」という声も上がってきており、世論調査などでも、その結果が表れてきていますが、ご自身として、どのように受け止められているか、もし、何か意欲などもございましたら、併せてお願いします。

【上川外務大臣】今、私(上川大臣)自身は、内閣の一員として、全力で岸田政権の中の外務大臣としての役割を、十全に果たすということに、全力を傾注しているところであります。
 国民の皆様からの支持率については、様々なご意見があるということについては承知しておりますが、見方があるということも承知しておりますが、大変厳しい内外の情勢でございますので、こうした一つずつの課題に、しっかりと取り組んでいくと、この方針の下で、今、岸田政権が役割を担うべく、私(上川大臣)自身も、外務大臣としての役割を、全力を傾注して果たしてまいりたいと考えているところでございます。
 今、私(上川大臣)、就任してから170日近くがたとうとしておりまして、国際環境は、極めて厳しい状況にあるということを、日々肌で感じている状況であります。
 こうした中におきまして、今は日本の将来、また、その将来を担う若い世代のために、何をすべきかということを考えながら、外務大臣としての職務に、一意専心、脇目も振らずに取り組むと、こういう覚悟で、今、臨んでいる状況でございまして、これが、私(上川大臣)の率直な気持ちであります。

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