外務省・新着情報

令和6年3月11日
スピーチする上川大臣の様子
講演会場の様子

 3月11日、上川陽子外務大臣は、日本経済団体連合会(経団連)において「新しい経済外交のフロンティア」と題する講演を行ったところ、講演の概要は以下のとおりです。

  1. 冒頭、上川大臣は、地政学的競争の高まり、気候変動を始めとする地球規模課題の深刻化、民主主義下での意思決定の難しさ、AIを始めとする先端技術の急速な進展の中、私たちは、市場経済という「神の見えざる手」だけに導かれる世界にはもはやおらず、自分たちの頭で広範で複雑な問題を総合的に考え、自分たちの力で未来を切り開いていく時代にいる旨指摘しつつ、こうした状況は我々にリスクだけでなくチャンスを与えており、「失われた30年」を反転させ、持続可能な未来を残していくのは、私たちの世代の責任である旨を述べました。
  2. また、上川大臣は、日本にとり、ルールに基づく自由で公正な経済秩序を維持、拡大していくことが不可欠であり、それを整備していく上では、多国間での取組に加え、二国間での取組も重要である旨述べました。また、「経済的威圧」に対抗するためには、エビデンスの収集の面も含め官民連携が不可欠であり、我が国在外公館に設けている日本企業支援窓口において、企業からの相談にも対応していく旨、また、AIについての課題は、人間の知性と道徳性が問われる課題であり、技術を良き目的のために使うため、科学技術外交により力を入れていきたい旨述べました。
  3. 続いて、上川大臣は、「グローバル・サウス」について、大臣自身が訪問し外交の現場で感じたことに言及しつつ、東南アジア、太平洋島嶼国、中南米、アフリカにおける取組の方向性を紹介しました。また、各国・各地域との外交を展開していくにあたり、様々なステークホルダーとのつながりを重層的に構築しつつ、外交活動と連動させていく「アウトリーチ型の外交」を積極的に推進してきているとして、これを更に充実させていきたい旨述べました。
  4. さらに、新しい経済外交のフロンティアを拓いていくには、官民連携の形も新たな時代の要請に応えて変化させる必要があるとして、縦割りの打破が最大の課題である旨強調し、これを打破するための体制として「経済外交強化のための『共創プラットフォーム』」と名付ける新たな考え方について言及し、在外公館が有するネットワークと外務本省が有するネットワークをそれぞれ強化し、両者を有機的に結合させることにより、関係する全てのステークホルダーが緊密に情報交換を行い、オールジャパンとしてのより効果的な連携を目指す旨述べました。また、スタートアップ・中小企業海外進出、インフラシステム海外展開の後押し、EPAを含む新たなルールメイキングにおける経済界とのインタラクティブなやりとりの強化、日本企業による第三国輸出に向けたハブ拠点の設置等の取組の支援、現地企業との第三国市場での連携も視野に入れたネットワーキングやマッチング機会の提供、経済広域担当官の設置の検討を表明するとともに、日本企業と日本人研究者等の現地のアカデミアとの連携へのサポートにも取り組んでいく旨述べました。
  5. 最後に、上川大臣は、外務省自身の新しい挑戦として、官民の垣根を越えた資金動員のためのODA改革や、主要外交政策の一つとしての女性・平和・安全保障(WPS)の推進を紹介するとともに、日本が強くしなやかな経済力で世界に存在感を示せるよう、外務省としてもリソースを動員し、経済外交の新たなフロンティアの開拓に果敢にチャレンジすべく組織を強化していく考えであり、経済界との協力を一層していきたいとの決意を述べました。
  6. 講演の後、上川大臣は出席した経団連幹部との間で、活発な意見交換を行いました。意見交換では、上川大臣の講演を踏まえ、東南アジア、インド、中東、中南米、アフリカなどの各国・地域における日本との経済関係強化へ向けた取組の方向性につき、経団連幹部の側から具体的な論点が提示され、これを受けて上川大臣から政府の今後の方針を説明するなど、日本の経済外交における地域的戦略と経済界のニーズを連動させる上で有益な議論が行われました。

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