外務省・新着情報

冒頭発言

【上川外務大臣】昨年10月7日のイスラエルへのテロ攻撃にUNRWA職員が関与したとの疑惑を受け、1月28日、我が国は、UNRWAへの令和5年度補正予算の拠出を一時停止せざるを得ないとの判断に至りました。
 我が国はその後、国連、UNRWA、関係国との間で様々なチャネルを使って意思疎通を続けてきました。私自身、第三者検証グループのコロンナ議長やグテーレス国連事務総長に加え、先週は、訪日したラザリーニUNRWA事務局長と会談したところです。自民党国際協力調査会や公明党外交部会から拠出再開に向けた提言等も頂きました。その他、国会でも各党からの様々な意見も頂きました。
 まず、お伝えしたいのは、ガザの人道状況が悪化の一途を辿っていることへの強い危機感です。国際機関の報告によれば、ガザ人口の約半分にあたる約110万人が最も深刻な段階に入ると予測され、飢饉が差し迫っています。安全な水・食料・住居、医薬品、劣悪な衛生状態にある女性や子どもの必需品など、人が生きていく上で最低限欠かせない物資が圧倒的に不足しています。
 まさに、我が国が重視する「人間の尊厳」が脅かされています。パレスチナ難民を抱える周辺国にも不安定化のリスクが広まりつつあります。国際社会では、こうした深刻な人道危機に対し、我が国が議長国を務める先月25日、国連安全保障理事会決議を採択しました。
 ここでは、ラマダン期間中の即時停戦や全ての人質の無条件・即時解放とともに、ガザ地区の悲惨な人道状況と人道支援の拡大等の緊急の必要性を指摘しました。我が国はこの決議の共同起草国として、まさに、この決議を実施していく重要なタイミングを迎えています。
 こうした支援を行うに当たり、UNRWAが不可欠な役割を果たしていることは国際社会に広く認識されていますが、先般の疑惑を受け、その役割を果たせるよう信頼を取り戻さなければなりません。
 そのためにとるべき対応策として、日本から、(1)中立性確保のための組織デューデリジェンスの強化、(2)プロジェクト資金の透明性やトレーサビリティの確保、(3)UNRWA職員の中立性を保つためのスクリーニング及び教育・研修等について働きかけてきました。UNRWAの全ドナー向けアクションプランには、こうした対策が盛り込まれ、進捗状況につき定期的に報告を受けることになりました。
 さらに、訪日したラザリーニ事務局長と私自身との会談を経て、日本に対して追加的に約束する措置として、プロジェクトの適正性を確保するための新たな枠組みである「日本・UNRWAプロジェクト管理・モニタリングメカニズム」を設置することや、女性のリーダシップ層への参画の強化、また、WPSの視点も取り入れた研修を実施していくことについても確認しました。
 今後、このモニタリングメカニズムを通じて、我が国の資金によるプロジェクトの進捗や効果などをトレースし、適正性を確保し、定期的に報告を受けます。また、不正な使用があった場合には我が国が必要なあらゆる措置をとることも確認しました。
 深刻化するパレスチナの人道状況は「待ったなし」であり、この危機に対応していくことは、国連安保理非常任理事国も務める我が国の責務であります。そしてこの人道支援には、UNRWAの関与がやはり不可欠です。
 UNRWAはガバナンス改善策を進め、我が国の資金のリスクを管理する新たな取組を始めています。これを受け、我が国としては、UNRWAへの資金拠出の一時停止を解除し、我が国資金の適正性を確認しながら支援を実施していくこととします。
 具体的には、当初予定していた約3,500万ドルについては、準備が整ったものから実際に拠出することになります。例えば、ガザ地区では、現在緊急ニーズとして求められている劣悪な衛生状態に対するもの、女性や乳幼児を対象とする物資を供与し、ヨルダン、シリア、レバノン、西岸では、医療サービスの提供等を行っていく予定です。
 10月7日以来、我が国はパレスチナの人道支援のための取組を次々と打ち出してきました。今回のUNRWAへの拠出再開をもってその規模は1億ドルを超えます。
 現在のガザでは、国際パートナーが緊密に連携して、UNRWAが運営する避難所や保健センターも活用しつつ、WFPの食料品、WHOの医療品、UNICEFの衛生用品の配布などが行われています。今後もこうした多様な国際パートナーそれぞれの強みを活用しつつ、パレスチナ難民の命を救う活動に注力して参ります。
 今後、パレスチナ難民支援において、WPSの視点も重視しつつ、「人間の尊厳」に資する外交を行っていく考えです。

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