財務省・新着情報

関税・外国為替等審議会
第57回外国為替等分科会議事録

令和6年3月18日(月)

財務省 国際局

於 財務省第3特別会議室
(本庁舎4階)

1.開会

2.最近の国際金融情勢について

3.閉会

出席者
委員

五十嵐チカ

財務省

三村国際局長

伊藤恵子

土谷国際局次長

植田健一

矢作国際局審議官

片山銘人

梶川副財務官

亀坂安紀子

藤井副財務官

河野真理子

野村国際局調査課長

神作裕之

木原国際機構課長

木村

德岡地域協力課長

佐藤基嗣

陣田開発政策課長

杉山晶子

城田大臣官房参事官

田村善之

津田開発機関課長

根本直子

土生外国為替室長

原田喜美枝

大野投資企画審査室長

和田照子

武士俣大臣官房企画官

渡井理佳子

舟橋為替実査室長

臨時委員

小枝淳子

山下対外取引管理室長

佐藤清隆

村口大臣官房企画官

澤田康幸

髙木資金移転対策室長

専門委員

伊藤亜聖

山﨑大臣官房企画官

伊藤由希子

齊藤国際調整室長

玉木林太郎

氷海開発企画官


午前10時00分開会

○神作分科会長おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより第57回外国為替等分科会を開催いたします。

委員の皆様方におかれましては、大変御多用の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日、オンラインでの御参加を含め21名の委員の方々に御参加いただいております。

会議進行に当たりまして、具体的な留意点などにつき、事務局より御説明をお願いいたします。

○野村調査課長調査課長の野村でございます。おはようございます。

私のほうから、本日の会議の進行に当たりましての留意点を1点だけお願いさせていただければと思います。本日の会議につきましても前回と同じでございますが、物理的に御参加の先生方とオンラインで御参加の先生方とのハイブリッド形式でございます。そのため、会議室で物理的に御参加いただいております委員の皆様方におかれましては、オンラインで御参加の委員の先生方に音声が明瞭に伝わりますよう、お話しいただくときにはできるだけマイクに近づいて御発言いただきますようお願い申し上げます。また、オンラインで御参加の委員の先生方におかれましては、御発言時以外はミュートにしていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。また、万一、途中でWebexがつながらないといった問題が生じた際には電話会議システムでの引き続きの御参加をお願いできればと思います。

私からは以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○神作分科会長御説明、どうもありがとうございました。

それでは、早速、本日の議事に入りたいと存じます。本日の議題は最近の国際金融情勢についてでございます。初めに、事務局より御説明を頂いた後、意見交換の時間をお取りしたいと存じます。それでは、木原国際機構課長、御説明をどうぞよろしくお願いいたします。

○木原国際機構課長先生方、おはようございます。国際機構課長の木原でございます。よろしくお願いいたします。

最近の国際金融情勢についてということで、まず2ページの、1月に出ましたIMFのWEOのアップデートについて御説明させていただきます。世界経済成長率は2024年+3.1%で、10月時点から若干の上方修正です。後ほど御説明させていただきますけれども、全般的には23年中の実績を踏まえて、特に後半は予想よりも成長率が上回った国が多かったものですから、それを踏まえた24年中の引上げ、そういう印象だったかなと受け止めております。特に、そういう意味では、米国、主要国、新興国、こういうところでの堅調な成長が23年中の実績です。それ以外にインフレについては着実に、ある意味で想定以上にソフトランディングの方向に向かっている。そういうところでプラスの分があったということかと思います。

各国の見通しの部分ですけれども、アメリカは引き続き金融政策は引締めのスタンスが維持されていて、財政のほうが拡張的なスタンスから引締めの方向に転換しつつある。労働市場についても、これは月次で見ていくとまだまだ予断を許しませんけれども、若干の軟化が見られる。そういう中で、23年の成長は強かったので、24年の成長率が2.1%ということで10月時点から非常に大きく引き上げられています。+0.6%ptになっています。その分、25年は少し下がってきているということかと思います。ユーロ圏についてはむしろ逆でございまして、23年があまり強くなかった中で、24年が0.9%、その分25年が1.7%ということで、25年にかけてリバウンドが強く戻ってくるような姿が描かれています。中国についても、先般この予想が出た後、5.2%と2023年中の数字が出ていましたけれども、2023年の後半が強かったということで、24年が4.6%、10月時点と比べると0.4%pt引き上げられていることになります。

日本につきましては、引き続き潜在成長率を上回るということで、特に23年中は円安あるいはペントアップ需要、ここには明示的に書かれていませんけれども、訪日外国人観光客の回復が含まれていました。あとは投資がきちんと回復してきているということで、24年が少し下がって、ただ、25年にかけてはおおむね横ばいで推移していくという姿が描かれています。

インフレについては、先進国で2.6%、途上国で8.1%が24年でございます。多くの国でターゲットに向けて着実に低下をしていると書かれております。

リスクについては、上方・下方の間のバランスがとれた状況にある。どちらかというと、こういう見通しは下方リスクが大きいというところが書かれるケースが多いと個人的には思っていましたけれども、足元のアセスメントは両者のバランスがとれている。上方リスクについては、インフレが引き続き思ったより早く収まっていく。2つ目の財政引締めの遅延は、若干ミスリーディングなところがありますけれども、財政引締めが遅れれば、足元では成長にとって良い。ただ、中期的に見るとインフレあるいは公的債務の悪化みたいなものにつながる。そういう感じのヘッジをかけた言い方になっています。あとは、中国が予想以上に回復していく。あるいは、これは短期的にどこまで効果があるか分かりませんけれども、AIとサプライサイド改革がきちんと進んでいけばアップサイドリスクになるということが書かれております。

おめくりいただきまして、次のページの上の部分が下方リスクになりますけれども、足元の状況ですと、やはり一番先に出てくる下方リスクは地政学的なリスク、あるいは天候ショックを踏まえたコモディティ価格の上昇。従来のウクライナに加えてガザ・イスラエル、最近ですと紅海の攻撃、こういうものが言及されるケースとして明示的に出てきている。2つ目の下方リスクはインフレの継続で、これは先ほどと逆で、思ったよりもインフレが下がっていかない可能性がある。あるいは、中国も逆のことが書いてあるということでございます。また、財政政策につきましては、何らかのショックを含めて予想以上に財政引締めが進んでいけば経済にとってマイナスになるだろうということでございます。

政策対応の部分は、やはり一番初めに出てくるのは引き続きインフレへの対応で、ソフトランディングに向けて、リセッションに陥らない形で、インフレ率が非常に高い水準から引き下げていくところが足元まではある程度進んできているわけですけれども、引き続き拙速な勝利宣言は避けて、引締めの効果を十分見極めながら今後の政策スタンスを決めていくべきだと。財政余力の確保が昨年来非常に明確に言われるようになってきていまして、コロナが一段落して、少し将来のいろいろなショックに向けてリスクバッファー、あるいはFiscal Spaceみたいなものをきちんと確保していくべきだという論調が強まっているかなと思います。3つ目は、中長期的な成長の実現で、グローバルに見ると、やはり中国を含めた新興国の潜在成長率が下がっていく中で、世界経済全体の成長率も中期的に見てあまり高い水準に従来と比べるとなっていないわけなので、構造改革の必要性が非常に強く言われています。最後の部分は多国間協力による強靱性の確保で、債務ですとか気候変動ですとか、あとは後ほど御説明しますけれども、クォータ見直しのきちんとした実現が言われているところでございます。

4ページ目の数字で申し上げますと、23年のほうを見ていただきますと、特にアメリカは、真ん中の1月時点で2.5%で、10月時点と比べると0.4%pt強かった。逆に、ユーロのほうは23年0.5%になっていますけれども、10月時点より引き下がっている。特にユーロ圏で23年中不振だったのは、ドイツがマイナス成長だったところが大きいかなと思います。前回の外為審でも御質問いただきましたけれども、23年は日米で見るとGDPが逆転ということもありましたけれども、実質GDP成長率で見ると23年ドイツは決して調子がよかったわけではないと思います。

続きまして、6ページから、直近のサンパウロで2月下旬にありましたG7、G20を簡単に御紹介させていただければと思います。まず、こちらのほうで1年間の会議の日程を示させていただいておりますけれども、G7につきましては、今回短時間、G20のマージンでサンパウロで行いました。コミュニケ等を今回は出しておりませんので、後ほど口頭で概要を簡単に御説明します。ただ、こういった形でG20のマージンでやるG7につきましては、去年は日本の議長下で、ウクライナのロシアによる侵攻から1年ということで紙を出しましたけれども、むしろ今回のように紙を出さないほうが一般的かなと思っています。G7全体の日程としましては、この後5月に対面でイタリアのStrasaというところで財務大臣・中央銀行総裁会議をやって、6月の首脳会議に向けていきます。G20につきましては、今回のサンパウロが1回目の財務大臣レベルの会合でしたけれども、この後4月の春会合のマージンでの会議、7月下旬にリオでG20単独でG20の財務大臣・中銀総裁が集まります。その後、今年は首脳会議がIMF・世銀の年次総会の後、11月という少し遅いタイミングになりますので、そのサミットの前にもう1度IMF・世銀の年次総会の際に、これは短時間になると思いますけれども、G20の会議が10月24日に予定されているということでございます。

2月28日のG7につきましては、G20のマージンでしたので比較的短い時間でしたけれども、まずはウクライナについてやはり引き続きG7としてきちんと支援をしていくことを確認する議論をしております。マルチェンコ・ウクライナ財務大臣もオンラインで御参加されたところでございます。それ以外の議論としましては、世界経済の現状に対する認識の共有ですとか、あるいは2つの柱で議論している国際課税をきちんと引き続きG7としてもプッシュしていくという議論。最後に、短時間ですけれども、こちらも前回の外為審でも御議論がありましたけれども、現在G7で凍結しているロシア中銀の資産をどうやって活用していくのかという議論がなされているところでございます。

おめくりいただきまして、G20のほうはブラジル議長下で初めてということで、特に今回につきましては、地政学の文言で合意に至らず、コミュニケではなくて、議長総括になっています。米印で書かせていただいておりますけれども、ブラジルはルーラ大統領の非常に強いリーダーシップの下で、これは財務大臣プロセスだけではなくて、G20全体のプライオリティとして3つ柱を立てています。1つ目が飢餓と貧困への対応、2つ目が気候変動の観点で持続可能な開発あるいはトランジションをきちんと進めていく。3つ目がグローバルなガバナンス・機関の改革になっています。それぞれ財務トラックにおいてもこの3本の柱を念頭に置きながら今後の議論をなされてくことかと思います。

議長総括のポイントですけれども、まず地政学の部分につきましては、結局、議論がまとまらなかったことを受けまして、議長総括の脚注の部分で、ウクライナ及びガザをハイライトしつつ、進行中の戦争・紛争及び人道危機に関する意見交換を行った。財務トラックは、地政学的問題を解決するための最も適切なフォーラムではないことに留意し、ただ、この問題が引き続き議論されることを提案したということが書かれております。あわせて、議長総括におきまして、各国の議論を経て、やはり世界経済の下方リスクとして、先ほどのWEOにも出てきますけれども、戦争と激化する紛争が明記されるところでございます。

続きまして、G20の財務トラックの優先課題ですけれども、まず1つ目が先ほど申し上げました、特に飢餓と貧困への対抗というブラジルの1本目の柱のコンテクストで、格差問題をきちんと議論しようというのが非常に強く出てきております。政策面では、やはり各国が国内政策をやる上で格差是正をきちんと主流化していくことが大事なのだというメッセージに合意した。国際金融機関改革につきましては、グローバルな金融あるいは経済機関の意思決定において途上国の代表性、発言力をきちんと見直していこうということが確認されております。国際課税につきましては、特に第1の柱のデジタル課税というところで言っておりますけれども、多国間条約をきちんとつくろう。これは3月末までに条約の案文に合意して、6月末までに署名をしようということで今も交渉が続いておりますけれども、こういうものをきちんとやることを確認しております。あとは、公平かつ累進的な課税に関する国際的な対話の促進をやっていこう。特に超富裕層への最低課税の導入、これはまだ具体的に議論なされておりませんけれども、ブラジルとしてはこういうものを進めていきたいんだということが議論の中ではございました。

おめくりいただきまして8ページ、続きになります。債務問題は従来からのメッセージの続きでありますが、「共通枠組」の実施ということで、必ずしもタイムリーに債務措置の議論が進んでいない中で、きちんとやるべきだというメッセージは引き続き維持されております。あとは、日本が一生懸命取り組んできております債務の透明性向上を引き続きやっていく。国際保健の分野でも、パンデミックへの予防、備え、対応の強化をきちんとやっていくことが引き続きメッセージとして書かれております。

このページの下半分の部分は、世界経済の現状、マクロ政策対応ということで、かなりIMFの経済見通しと重なる部分が多いところで、説明は割愛させていただきます。特に世界経済のソフトランディングの可能性が高まっているが、不確実性が高い。こういう議論がある中で多かったのは、ソフトランディングの可能性は高いけれども、まだランディングはしていないので、特にインフレを引き下げていく上ではサービス価格がきちんと下がっていくかよく分からない中で、引き続き慎重にいろいろな政策を運営していく必要がある。そういう議論が多かったかなという印象を持っております。

全般的に今回のG20は、ブラジル議長国になって1回目ということでキックオフ的な会合になりますので、ある意味、大枠のプライオリティについて今回の会議ではおおむねコンセンサスが得られたということで、これから11月のサミットに向けて、より具体的な弾込めといいますか、コンクリートな取組を議論していく形になっていくかと思います。

続きまして、私の御説明の最後のパーツになりますけれども、12月10日にまとまりましたIMFのクォータ見直しについて御説明させていただきます。IMFは出資のことをクォータと呼んでおります。日本のような国ですと外為特会で持っている外貨になりますけれども、各国から外貨を集めて、IMFが逆に外貨不足になっている国に融資をしてサポートしてあげる、こういう機関でございます。1国1票ではなくて、出資シェアが投票権シェアに直結している機関でございます。5年を超えない間隔で増資の必要性を見直してきております。今回12月10日の期限になっていたわけですけれども、増資をしようという合意が得られたということであります。増資の決定には総投票権の85%、極めて高い幅広い国々からのサポートが必要なわけですけれども、今回これから申し上げる内容で合意が得られたところでございます。増資規模につきましては、真ん中の点線で囲んでいる部分ですけれども、50%。今回、比例増資で、今のシェアを維持したまま各国がそれぞれ50%を増資するという合意になっております。特にシェアの見直しについてはいろいろな議論があったわけですけれども、今回はなかなかまとまらなかった中で、今のシェアを維持したまま増資をして、きちんとIMFが各国の支援をできるような資金規模は維持しようということになっています。他方で、シェアの見直しは引き続き議論が必要なので、今後のシェア調整に向けた指針となる複数のアプローチを25年6月までに策定することで全体のパッケージとして合意がなされたということでございます。日本におきましては、IMFの加盟措置法において出資上限を具体的に数字で書き込んでおりますので、それを引き上げる改正案を今国会に提出させていただいているところでございます。

おめくりいただきまして、10ページが各国のクォータ出資額シェアでございます。1位がアメリカで、御案内のとおり、出資シェアで言うと17.4%。若干になりますが基礎票の部分はありますけれども、アメリカとしては引き続き15%以上投票権を持っておりまして、先ほど申し上げました増資のような、85%以上の賛成が必要な主要な決定については引き続き拒否権を持っている状況でございます。以降、日本が中国を若干上回って2位。それ以降、ドイツ、フランスと続いておりますけれども、トップ10の中には8、9、10位でインド、ロシア、ブラジル。これは前回の2010年に合意された増資でございますけれども、トップ10にEMもかなり入ってきてはいるということでございます。他方で、右側を御覧になっていただければお分かりになりますように、特に名目GDPだけを見れば日本の地位は過去と比べるとかなり大きく変わってきている。そういう中での議論でございます。

私からは以上になります。

○城田参事官参事官の城田でございます。おはようございます。私のほうから、11ページ以降のウクライナ支援についての御説明をさせていただきます。

まず、11ページ、報道でも出ておりましたので皆様御承知のことかもしれないですけれども、2月19日に日ウクライナ経済復興推進会議を日本及びウクライナの両国政府及び経団連、JETRO共催という形で東京で実施いたしました。ウクライナからはシュミハリ首相やマルチェンコ財務大臣が来日され、日本側からは岸田首相や上川外相が参加されました。財務省からは矢倉副大臣が参加されて、租税条約の署名文書の交換をしていただいたほか、財務省関連でのウクライナに対しての財政・金融支援などの御紹介を頂いております。そちらの概要が今御覧いただいている11ページになりますけれども、まず租税条約の改正につきまして、これは1986年のソ連時代に締結した日ソ連租税条約を継承した現行の条約を全面的に改正するものとなっております。今般、経済復興推進会議のタイミングで署名交換が行われたので、今後、両国それぞれの国内手続を経た上で発効の予定となっております。

財政支援につきましては、ウクライナが戦時中ではありますけれども、基本的な政府機能を維持することが重要であることから、日本が昨年G7の議長国としてウクライナの資金ニーズに対応するためのIMFプログラムに関する議論を主導したこと。また、日本自身としましてもウクライナの流動性の状況に鑑みて、特に足元の逼迫した政府機能維持の資金ニーズに応えるためということでタイムリーな支援に努めていること。こちらは資料にもありますように、2月には4.7億ドルのグラント支援を実施したりしていること等を紹介しております。

また、3つ目の箱になりますけれども、ギリシャに本部のあります黒海貿易開発銀行という地域国際金融機関がございます。こちらとJBICの間で、今後JBICから最大1.5億ドルのウクライナ及び周辺国向けのツーステップローンを供与することに関するMOUが締結されております。

また、国際開発金融機関を通じた支援としましては、EBRDについて、日本は第2位の出資国でございますけれども、EBRDのウクライナの復興需要に対応するための増資の議論を日本として主導してきたことなどを紹介しております。そのほかに、IFCにウクライナ支援のための新ウインドウを創設、そちらに日本としても拠出すること。また、JBICがIFCとの業務協力MOUを更新してウクライナ及び周辺国支援における協力を追加することなども紹介しております。

その他技術協力としましては、IMFを通じてウクライナの国内資金動員の能力開発支援を行ったり、関税や国税分野での技術協力を行うことなどをこちらの会議では御紹介させていただきました。このような足元でのウクライナ支援をしているところでございますけれども、通算でどうなってきているのかというのが次のページにございます。

12ページを御覧ください。こちらはこれまでの資料のリバイス版で、新たな支援を記したものとなりますので、新たなところのみポイントを絞って御紹介させていただきますと、まず財政支援としましては、前のページでも御紹介しましたとおり、世界銀行を通じた財政グラントの部分につきまして2024年4.7億ドルの支援を実施しております。また、米印にございますように、現在国会で御審議いただいております令和6年度の予算案において、25億ドル分の世銀融資に対しての信用補完及び最大で10億ドルになります利子の元本化に係る信用補完を計上しているところでございます。ページ中ほどより下のところになりますけれども、能力開発支援のところで、先ほど経済復興開発会議のときにも紹介させていただいたものになりますけれども、ウクライナの能力開発を目的としたIMFのマルチドナー信託基金に200万ドルの資金貢献を実施していること。また、下の民間セクター支援のところで、世銀グループのIFCへの拠出として、日本企業を含む民間セクターのウクライナでの案件組成を支援するための拠出を行うということを記させていただいております。

次の13ページ目を御覧ください。こちらは2月15日に世銀がウクライナ政府と欧州連合と連名で、復旧・復興需要に関するウクライナ被害・ニーズ調査3、通称RDNA3を公表しております。3という名前のとおり今回は3度目の調査で、前回から1年ぶりの更新となっております。内容としましては、昨年12月末時点における今後10年間の復旧・復興需要の見積りとなっておりまして、金額にしまして4,862億ドル。こちらですけれども、Build Back Betterという概念を導入しておりまして、直接的に生じた物理的な被害総額としましては1,525億ドル程度ですけれども、新たに復旧・復興を行うに当たっては、エネルギー効率の改善ですとか現代化、あるいは環境基準対応などを現代的なものに直したベターなものにする必要があるという概念から、直接的な被害総額よりも多額なものとなっております。これ、10年間の総額ですけれども、短期的に見た場合の重点分野ですとか規模がどれぐらいなのかといいますのがこちらの「短期」として記されているところでして、2024年の最優先の復旧・復興需要につきましては153億ドルと推計されております。内訳としましては、下のポツ書きにありますとおり、産業、住宅・水道光熱、エネルギー、教育・医療などとなっております。これらの優先分野ですとか規模感を参考にしながら、今後、民間資金の導入なども含めた復旧・復興に関しての支援の議論が進められることとなっております。

簡単でございますけれども、私のほうからウクライナの復旧・復興に関しての御説明は以上です。

○野村調査課長調査課長、野村でございます。それでは、続きまして、資料の14ページ、15ページに沿いまして、ロシア制裁の最近の状況につきまして、私のほうから御説明させていただきたいと思います。

資料14ページでございます。こちらの表につきましては、これまでの審議会においても御説明させていただいているところでございますけれども、現在、我が国が行っております主な金融制裁措置でございます。黄色くハイライトさせていただいているところが前回からのアップデートのところでございまして、資産凍結の対象を前回から追加しているところでございます。具体的には銀行1つ、それから個人・団体の資産凍結措置として、前回945個人と207団体だったものが現在足元では992個人と256団体へと追加をしているところでございます。大変申し訳ございません。1つ黄色い網かけを忘れておりまして、3.の「ロシア・ベラルーシ以外の国の関係者:1団体」、これも実は追加でございまして、去年12月にやったものでございますけれども、具体的にはUAEの船会社でございます。これは、オイル・プライス・キャップの制裁をG7でやっておりますけれども、それに反した行動があったことが確認されましたので、資産凍結の対象として追加しているところでございます。それが制裁措置の現状でございます。

続きまして、資料15ページでございますけれども、最近、ロシア制裁の関係で新聞等でも出ております、ロシアの国家資産の凍結に関しまして、その取扱いをどうするかにつきまして、G7の首脳レベルでもいろいろと議論されているところでございます。昨年末の12月のG7首脳声明、そして先月、直近のものでございますけれども2月のG7首脳声明、それぞれにおきましてこれについて触れた箇所がございます。先月2月の首脳声明のほうがより具体的でございますので、こちらをベースに御説明させていただきたいと思います。

具体的には、青く色をつけさせていただいている文章でございます。すみません、文章は実は2つあるのですけれども、日本語を読んでもなかなか分かりにくいと思いますので、私のほうから平たく御説明させていただきたいと思います。

まず、2月の文章前段で、EUの措置を歓迎と書いてあるわけでございます。これは何かといいますと、現在、これは報道で出ておりますけれども、ヨーロッパにおきまして証券集中保管機関――これは日本で言いますと「ほふり」に当たるものでございますが、ユーロクリアというところが大手でこういう仕事をやっておられます。ロシアの中央銀行が持っておられますいろいろな国の証券ですね。普通、外準は国債などの証券で回しておりますので、そこからユーロクリアが預かっておられるロシア中央銀行の資産がございます。これにつきましては、普通は国債等の証券ですので、毎月の支払い、あるいは満期が来て償還された場合には、お金はすぐにロシア中央銀行に送るわけでございますけれども、現在ロシアの中央銀行も資産凍結の対象になっているということで、ユーロクリアからロシア中央銀行に対する支払い、送金ができなくなっている。そうした中で、ロシアの中央銀行の資産に起因したお金がどんどんユーロクリアの中で溜まっていっている。当然それは利子も元本も基本的にはロシア中央銀行のものでございますけれども、今それを送れないという中におきまして、毎月の支払いですとか満期の償還金をユーロクリアが自分で運用しておられる。そして、稼いだプロフィット――これを彼らはウィンドフォール・プロフィットという言い方をしております。実は年末にヨーロッパの中におきまして、まさにこうした制裁によって発生した特別な収入につきましては区分経理をしましょう。ほかのユーロクリアのオペレーションの資産とは区分経理をしましょうということが合意されています。さらに、それを実際にウクライナ支援にどう活用していくかにつきまして、これからヨーロッパの中でさらに議論していくことが合意されているところでございます。そうしたヨーロッパの動きをG7首脳声明でも歓迎しているというのが1つ目の話でございます。

2つ目の話は後段部分の文章でございます。こうしたヨーロッパの試みに限らず、それ以外にも、実際にロシアの凍結している国家資産につきまして、ウクライナ支援に活用され得るあらゆる可能な方策についてG7各国で検討して、その状況について、6月に今度はG7首脳サミットがイタリアでございますので、その前にアップデートをしてくださいということが首脳から関係閣僚に対して指示として下ろされている状況でございます。それについて現在議論をしようとしているところでございます。

ロシア制裁に関してのアップデートは、私のほうから以上でございます。

○陣田開発政策課長続きまして、開発政策課長の陣田でございます。私のほうからは、16、17ページのスリランカ債務再編について説明させていただきます。

まず、16ページです。昨年秋までの経緯ですけれども、スリランカ政府が対外債務の一時的な支払い停止を宣言してから、昨年4月に日本がフランス、インドとともに共同議長を務める債権国会合を創設して、その後、債権国会合を何度か開催しております。昨年11月29日、この債権国会合とスリランカの間で基本合意ができております。この基本合意については、再編金利、それから返済期間等の債務再編のいわゆる主要な要素について合意したもので、元本削減を伴わない、繰り延べによる債務再編を想定しているところです。このように、スリランカのような中所得国における債務再編で、パリクラブとインドのような新興債権国が基本合意したのは今回初めてということで、大きな成果と考えております。

これを踏まえ、昨年12月にIMFがプログラムの第1次レビューが理事会承認され、資金が提供されました。それから、今年1月に、鈴木大臣がスリランカを訪れてウィクラマシンハ大統領と面会。そこでスリランカの債務再編の着実な進展に向けて議論を行い、意見が一致したところです。

今後の予定ですけれども、債権国会合とスリランカの間で、現在、基本合意に沿った形で債務再編の詳細を規定する覚書を調整しているところで、この早期署名に向けて作業を進めているところです。この覚書に合意した後に、債権国がそれぞれスリランカとの間で交換公文を締結することになっております。また、こうした債務再編の進捗やIMF支援プログラムの状況を踏まえながら、日本においても円借款の再開について検討していくということです。

次の17ページです。このスリランカの対外政府債務は、右の図表にありますように、パリクラブあるいは債権国会合のメンバー以外にも中国がおります。中国は債権国会合には、オブザーバー参加しています。それから民間、これは例えば債券保有者などですが、中国や民間債権者との透明・公平な債務再編が重要ですので、こういうものにつきましても引き続きスリランカ政府と連携しながら対応していく方針です。

以上でございます。

○津田開発機関課長おはようございます。開発機関課長の津田でございます。先生方、よろしくお願いします。

最後の2枚、18ページと19ページにつきまして、MDBs(Multilateral Development Banks:国際開発金融機関)の改革と、それから、キャフと呼んでいますけれども、CAFレビューについて御説明いたします。

最初の四角で囲った部分は今回の改革の趣旨を示しております。気候変動ですとかパンデミックといった、いわゆる1か国の開発課題には還元し得ない国境を越えた課題によって貧困が深刻化し、不平等も拡大している現状の中でMDBsが何ができるかということが議論の発端でございまして、MDB改革の中で様々な方策が提案されているところでございます。これとほぼほぼ同時並行で、開発資金ニーズの増加に対応するために、MDBsが自ら持っています既存の資本を活用して新たな貸出余力を生み出すという検討が進んでおりまして、これをCAFレビューと呼んでおります。順に御説明申し上げます。

MDB改革につきましては、1つ目の点は今申し上げた点でございまして、2つ目の点は、前回の11月の分科会で御説明申し上げましたとおり、昨年G20議長国インドからの要請に基づきまして外部有識者が報告書を提出しておりましたけれども、これを受けまして、今年のG20の議長国でございますブラジルにおきまして、よりよく・より大きく・より効果的なMDBsを目指すための一つの成果文書を作ることを目標に掲げております。議論はまだ始まったばかりでございますけれども、日本も積極的に議論に貢献していく所存でございます。

同時に、目先の話ですけれども、今度の4月のワシントンD.C.で開かれます開発委員会におきまして、世界銀行につきましては譲許的資金の配分枠組みですとか、民間資金動員のための各種の方策などが提案され、議論が行われる予定でございます。

ページをおめくりいただきまして19ページで、既存の資本の活用に関するCAFレビューの概要をお示ししております。これにつきましては、2つ目の点でございますけれども、10月の開発委員会にてドナー国の保証を活用する、世界銀行のポートフォリオ保証プラットフォームに対する貢献を表明いたしました。ここまでは前回の分科会でご説明しましたが、その後の昨年12月のG7首脳声明では、日本だけではなく、各国の貢献を合計いたしまして350億ドルを超える融資余力をしっかり拡大していくことを入れさせていただいております。

最後の点につきましては、現在、世界銀行、欧州復興開発銀行、それからアジア開発銀行におきまして設立時に定められた協定上の融資上限を撤廃するために、それらの設立協定の改正が行われております。現在、日本においては、協定改正案を国会に提出しまして、今後御審議いただく予定でございます。

以上でございます。

○神作分科会長御説明、どうもありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと存じます。御発言の際は、御臨席の委員の方につきましては、これまでの慣例どおり、名札を立てていただき、オンラインで御参加の委員の方々は、事前に事務局より御説明いただきましたとおり、御発言の意思をシステム上の挙手機能にてお知らせいただければと存じます。

それでは、御質問、いかがでしょうか。植田委員、御発言ください。

○植田委員いつも御丁寧な解説をありがとうございます。2つ3つあるのですが、それほど重要ということではないのかもしれませんが、やはり重要かな。

クォータのところにまず質問があります。お話がありましたけれども、今回、比例増資により現行のシェアを維持ということですが、附属の表でも書いてあるように、名目GDPシェア的にはもっと低いにもかかわらず、比例増資では日本のシェアをしっかり維持できたということです。日本としてはありがたいのだろうと思う一方で、その前にありました、「G20財務トラックの優先課題」と7ページに書いてあるところにあるのは、ブラジルの議長下でグローバルな経済・金融機関の意思決定における途上国の代表性・発言力強化を目指すところとはやはりちょっと合っていないところもありますので、いろいろな問題が当然出てくるんだと思います。

ただ、その中で、今後どんどん議論が深まっていくとは思いますし、複数のアプローチがあるということですけれども、このように名目GDPシェアをつけていくと、それだけだと日本はもっと少なくなってもいいんじゃないかという感じにもなりかねない。そうなのかもしれません。しかしながら、IMFはお金を貸し出す機関なので、これまでの対外債権の額だとかお金を貸すところに基づいた順位なんかもある程度は出すようにして、国民の皆さんにも分かるように、日本がGDPシェア以上に高くなってもおかしくはないんだよということを見せつつ、それでもちょっと行き過ぎのところはあるけれどもと、もうちょっとうまい、何というんでしょうか。今後は国民の皆様への広報の部分もあるかと思うんですね。もし仮にシェアが落ちることになっても、それほど恐らく落ちるべきではないだろうけれども、今のままでもちょっとおかしい。だけども、GDPシェアだけが全てではないということも踏まえてうまく広報していっていただけるといいかなと思います。もちろん、その上で、できるだけしっかりと発言力を維持できるように我が国としては目指すべきだと思っております。

ウクライナの件ですけれども、ちょっと気になったのは、これはむしろ本当に質問ですが、12ページで、「令和6年度予算案にて、25億ドル分の世銀融資に対する信用補完及び、最大10億ドルの利子の元本化に係る信用補完を計上」ということです。これは、当然、場合によってはリスケする状況があるということで、いざという場合の予算を計上しているということだと思うのですが、このリスケするかもしれないような想定率というのはいつもと同じようにやっているのか。ウクライナだからやはり高めに見積もっているのか。そういうようなところをお聞きしたいと思います。

それと関連したのが最後のCAFレビューのまさにポートフォリオ保証プラットフォームのところ、これも実は似たような問題で、これもある意味で信用保証しているわけですから、この率はどうやって決めているのか。何か新しく決めているのか。今までどおりなのか。何か新しい手法を使ってどうのこうのと言っているので、率を今までより低く抑えようとしているのか。そういうようなところがもしお分かりになればと思います。

よろしくお願いします。

○神作分科会長御質問、どうもありがとうございました。

複数の方から御発言の意思を寄せていただいておりまして、これもこれまでの慣例に従いまして、時間の関係もございますため、まとめて御質問をしていただき、その後まとめて御回答いただきたいと思います。

オンラインで御参加の根本委員、木村委員、原田委員、片山委員の順で御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○根本委員ありがとうございます。3つほど質問があります。

1つは、今、植田委員もおっしゃったクォータのところです。12月にいろいろな意見があったけれど、シェア割というふうになったのはどうしてなのか。そして、植田委員もおっしゃった、日本がある意味、中国よりもGDPがかなり低いのですけれども、今後どのように発言権を維持していくようなフレームワークをお考えかというのを伺えればと思いました。

もう1つ、最後のほうでスリランカの交渉ですけれど、以前からもお伺いしていたように、新興債務国との協調も含めて非常に画期的な結果ではあったと思うのですが、最後に示していただいた図表ですか。17ページの右だったと思うのですけど、まだ完全な協調合意になっていない中国あるいは民間、この辺りがどういう状況であるのか。また、公平性を担保されるような仕組みになりつつあるのかお伺いできたらと思いました。

もう1つ、この資料にないのであまり重要でなければ結構なのですけど、CBDCに関しては今非常にいろいろな議論があって、欧州を含め、制度的にも整備が進んでいます。財務省でも検討会をされていらっしゃるようですけれど、国際局とされてはどのような意見をお持ちなのか。他国に対応が遅れることのないような進め方を取っていらっしゃるのか。その辺りを伺えればと思いました。

○木村委員御説明、どうもありがとうございました。多岐にわたる内容だと思いましたが、中でも、御紹介いただいた日ウクライナの経済復興推進会議ですね。これは重要な成果があったと思います。アメリカが国内の政局の混乱で、ウクライナへの支援――これは主に軍事支援でしょうけれども、そういう支援が滞るとか、各国に支援疲れが広がる中で、日本がこうやって積極的な姿勢を示したことは大変意義があると思います。日本でも、国内的には、物価高なのに何で海外にお金を出すのかという指摘もあるようですけど、主要国の一員として日本が国際的な責任を果たすことは非常に重要な役割だと思いますので、ここはしっかり進めていただければと思います。

その上でのコメントですけれども、今年はというか、今年も国際秩序の混迷及びその再構築が問われる年になるかなと思います。先般開かれたG20の財務トラックも地政学的問題で共同声明の採択を再び断念しました。なおかつ、議長国のブラジルがグローバルガバナンスの改革、特にグローバルサウスの発言力拡大を強く求めたことが今年も大きな課題になるのかなという感じがします。

IMFが最新のアウトルックで示しましたように、今年の世界経済はソフトランディングの可能性が高まっているようですけれども、依然としてその不確実性は高いという状況に変わりはなくて、多国間の枠組みで世界経済を支えていく重要性は変わっていないと思います。その中で、経済のフラグメンテーションというのですか、これを防ぐためにも、経済力を増すグローバルサウスも含めた国際秩序の再構築がやっぱり重要な課題になっているのかなという気はします。

この国際秩序の将来像をどう描くかですけれども、第二次世界大戦後の国際関係の基軸となってきた、なおかつ、世界経済の発展を支えてきたブレトン・ウッズ体制を維持して、G7中心で世界をリードしていくのか。それとも、グローバルサウスの発言力をもっと高めるような新たな秩序へ大きく見直すのか。極端に言えばこの2つかもしれませんが、単純にその2つに割り切れない状況と思いますけれども、グローバルサウスの側も、共通理念は反米というだけで、別に新たな秩序の具体的な構想を描いているわけでもなさそうなので、混迷がただ深まっていくだけという事態もあながち杞憂とは思えなくて、特に今年アメリカの大統領選次第ではさらに混乱していくおそれがあるということで、それを最小限にとどめるためにも、多国間の枠組みの議論を深めておく必要があるのではないかと思います。

長くなって申し訳ないですけれども、最後に、その際の日本の役割ですけれども、去年のGDPがドイツに抜かれて世界4位になってしまった。これは為替とかインフレの影響で、経済的実力は変わらないという論調は目立ちますけれども、近いうちにインドにも抜かれるのは確実でしょうし、将来的には上位10か国にも入らなくなるのじゃないかという予測も出ています。日本の国際的な地位の低下が懸念される中で、日本として発言力を確保して、主導的に国際秩序の将来像をどのように描くかということが問われていると思います。先ほどIMFのクォータに関連して植田委員あるいは根本委員からも御指摘がありましたけれども、日本としてこういう国際秩序の将来像を大きくどのように描くかということもこれから問われていると思いますので、そういう戦略というのでしょうか、そういうものをどのように描かれているのかというのがもしあればお聞かせ願えればと思います。

○原田委員多岐にわたる御説明をありがとうございました。私のほうからは意見を述べさせていただきます。冒頭2ページのIMFの世界経済見通しのところで、これはいわば外からの見方であろうと思うのですけれども、ふだん日本にいまして中からしか見ていませんので、外から中を見る、日本を見る、世界を見るという御説明はいつも新鮮に感じております。学ぶところもいろいろあると思っています。現状は上方リスク、下方リスクのバランスがとれている状態であるというふうに御説明いただいたことも自分の中の感覚とはちょっと違っていて、バランスがとれているのかというところは新鮮に感じました。

この2ページにも、AIの利用について、労働生産性が上がる。これは上方リスクであると認識されているんですけれども、日本ではもっと活用しないと労働生産性が上がらないという議論のほうが多いように思います。いまだAIの活用よりも、「ファックスありますか?」と平気で言われたりする。まだその時代なんだなと感じるところでありますので、日本ではもっと活用していってもらわないと下方リスクになるというふうに感じております。

今日この2ページの御説明を頂いたときに、たしか木原課長から個人的にはこう思うという御発言がありましたけれども、皆さん、この資料を作成なさるときにでもいろいろな議論をなさっていらっしゃるので、皆さんがどう考えて、こういった資料についてどういう御意見をお持ちであったかということなども、個人的にということで御説明を、資料には入れなくても皆さんのお考えみたいなことをお聞かせいただければ、より議論も活発になるのかなと少々考えました。

例えば7ページの下のほうですけれども、国際課税についての記載がございます。国際課税に入らないかもしれませんけれども、個人的には、昨今の中国の反ダンピング関税という、ダンピングには直結しないものでもダンピングとして扱っているような局面があるかと思うんです。例えばオーストラリア産の大麦ですとかワインですとか、そういった食品などに対して、なぜダンピングに当たるのか分からないのですけれども、一気に100%を超えるような関税を導入していて、他国に対しても似たような措置を取っていることがあると思うんです。これは国際課税に入らない議論かもしれませんけれども、国際的には協調して考える、提案するテーマの1つになるのではないかと思っております。そういったことについても、皆さんどのようにお考えであるとか、御意見などをお聞かせいただければというふうに思いました。

以上になります。ありがとうございます。

○片山委員ありがとうございます。私からは大きく2点質問させていただければと思います。

1つ目は、スリランカの債務についてですが、私も17ページの資料を見ますと、中国と民間との協議が今後重要だなと思っていますので、これについてどういった状況なのかお聞かせいただきたい。

あと、16ページで、今後の予定として円借款の再開についても検討ということですが、新興債務国なのかもしれませんが、いきなり円借款の再開で大丈夫なのかということも質問させていただければと思います。

あと、ウクライナに関してロシアへの制裁措置ですが、迂回策が取られて制裁措置が効いていないという情報もありますので、こういった点を含めて、迂回策をやっている国との協議とか含めて状況を教えていただければと思いますので、よろしくお願いします。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、オンラインで御参加いただいております伊藤恵子委員、佐藤委員、伊藤由希子委員、小枝委員の順番で御発言いただければと思います。

○伊藤(恵)委員御説明、どうもありがとうございました。

もう既に何人かの委員の先生が言及されてはいるのですけれども、1点、IMFのクォータに関連してコメントさせていただきたいと思います。この第2位というのが、たしか外為審議会の数年前にもクォータの話があったように記憶していて、当時、何とかぎりぎり2位を確保したみたいなイメージで記憶しています。GDPだけではないと思いますけど、遅かれ早かれ多分2位からは落ちるだろうし、逆に言うと、そこまでの負担を日本がしなくてもいいのではないかというふうにも思えるわけです。もうクォータのシェアとか順位云々というよりは、優秀な人材をIMFにしっかりと派遣して、なるべく高いポジション、発言権のあるポジションに日本人の優秀な人材をしっかりたくさん送る。そういう方向により力を入れていただきたいというのが私のコメントです。

国家公務員の方を送ることももちろんありますし、それだけではなくて、アカデミアから優秀な人材を送る。一方で、同時に新しいグローバルなリーダーシップを取れる人材を育成することをかなり早急に真剣に進めていただかなければいけないと感じております。なかなかすぐに人材育成できる話ではないんですけれども、ここずっと何十年も大学も運営費交付金を減らされていまして、グローバルな人材を育成しようにもどんどんお金がなくなっていく。そういう状況ですので、人材育成にしっかりとした予算をつけ、かつ、奨学金等も出すとか、とにかく戦略的に人材をいかに送るかというところを考えていく必要があるというふうに思っております。

以上です。ありがとうございました。

○佐藤(清)委員私からは主に1つコメントなんですが、その前に、今、伊藤恵子先生から御指摘があった人材育成のところ、そこには私も全面的に賛同いたします。

それでは、私からの質問というよりもコメントですけれども、2ページ目から3ページ目のIMFの世界経済見通しの中で中国経済に関する解説が入っていました。そして、中国経済は2023年の成長率が予想を上回った影響が持ち越されると書かれていた中で、上方リスクと下方リスクが書かれていました。バランスのよい解説といいますか、整理だと思うんですが、日頃からニュースなどを見ている私たちからすると、中国の場合、より下方リスクのほうが大きいのではないかという印象を持っています。中国経済を考える場合、例えば米中の間の経済的な対立でサプライチェーンがこれから再構築されていくとか、その途上にあると言われていますが、中国はアジアに対してもかなり進出しています。例えば私は先週タイにいたんですけれども、タイは、御存じのとおり、自動車産業がまさに主力の産業ですけれども、そこに中国から電気自動車のメーカーが多数進出してきました。また、中国政府もタイ政府との交渉によって、タイ政府自体が中国からの電気自動車の進出にかなり前のめりなところがあります。日本企業のタイの現地法人に取材をしますと、やはり中国からの進出にすごく大きな危機感を持っている。電気自動車のシェアも徐々に伸びてきている。中国の場合、進出しても、その現地の雇用を生まなかったり、あるいは現地の企業とか経済に対してあまりプラスの影響がない形で進出してくることがこれまで何度もありましたので、こうしたことを日本企業、自動車メーカーはかなり懸念されています。

何を申し上げたいかというと、中国経済は、下方リスクが大きくなっている中で、アジアのサプライチェーンにも非常に大きな影響を及ぼしつつあるのではないかと。日本の自動車メーカーが非常に強いタイであっても今申し上げたような状況が起きている。ですので、こうしたアジアのサプライチェーンへの影響なども、中国経済の動向を見るとき、必ずしも米中だけではなくて、中国からアジアへというところで、日本がどのように、例えば日本企業をサポートしていくかであるとか、そうしたところをもう少し見ていく必要があるのではないかと、今回の御報告を聞いておりまして強く感じたところがあります。

以上、コメントといいますか、意見となりますが、ここまでとさせていただきます。ありがとうございます。

○伊藤(由)委員御説明、ありがとうございます。

1点、今回の直接の話題ではないんですけど、円安に関するコメントと、3ページ目に関するコメントと、それから7ページ目に関する質問を申し上げたいと思います。

まず、円安に関してですけれども、やはり1ドル150円の円安、名目だけで捉えるのは非常に短絡的ではあるんですが、それによって一種の投資の需要ですとか株価の上昇などが見られているとすると、それは一定程度経済回復につながる面はあるものの、長期的な日本経済の体力を考えるとこのままでいいのかなということは非常に危惧するところです。どのような程度の円安、為替相場の目標値を持っていらっしゃるのかについてもし御見解があれば伺いたいと思いました。

それから、資料に関して、非常に整理していただいてありがとうございます。3ページ目のこれからの政策対応の中の2ポツ目に財政余力の確保という点が書いてあります。この中で中期財政計画に基づいた財政健全化と書かれておりまして、これは日本においても非常に重要な点であると考えております。昨今、コロナのことでも御記憶に新しいですけれども、当初予算とさらに別に補正予算がぼんとついて、そのほかに基金もたくさんできてというような状況になっていて、正直言うと、ちょっと規律が乱れているというふうに感じております。その時々に予算を出すことは大事だと思うんですけれども、やはりある程度中期的な計画を今後策定していかなければいけない。これは恐らく東日本大震災の前からもずっと言われていたことですが、大震災が起きてちょっとその議論が下火になって、そのままということにもなっているかと思います。改めて日本においても議論すべき点ではないかと思っております。

それから、7ページ目、国際課税に関して、先ほども先生から言及がございましたけれども、国際課税の2本の柱というのは恐らくOECDの2本の柱だと思うんですが、この合意とか署名とかは本当に毎年の課題になっていて、今年は6月末までに署名したいと。もし署名がうまくいけば発効する。そうすると国内法の改正なども必要になってくるので、そのような対応をどのように考えていらっしゃるのか。つまり、結構大きな政策変更になると思うんですね。日本では、税制改正によって、グローバルミニマムタックスという法人税枠でのミニマムタックスを導入している一方で、恐らくデジタル課税の中にはサービスタックスのように売上税という形で導入が進んでいるものもあって、先ほども御指摘があったように、ダンピングだとか報復的な国家間の貿易戦争の火種にもなりかねない。いろいろな意味で、単なる税制ですとか税の協調を超えた大きな問題があると思っております。もし、例えばG20で6月末までに署名した場合、これがどうなるか分かりませんけれども、署名した場合のその後の国内での対応について現状でのお考えがあれば伺いたいと思いました。

○小枝委員御説明、ありがとうございました。やはり地政学的な問題が深刻化する中、ブラジル議長国G20という枠組みで、課題について優先順位の遠い協力体制を組んでいくことが非常にチャレンジングな状況なのだなということを理解しながら伺っておりました。

日本はやはりマルチラテラルなフレームワークで貢献してきたわけですし、先ほど人材派遣と伊藤(恵)先生もおっしゃっていました。それにすごく同意するんですけれども、それに加えて、日本はグローバルサウスに比べると途上国の立場に立って支援をしてきたと言えると思うんですね。国際局の皆様の御尽力もあってだと思うのですけれども、グローバルサウスの国々に比べて、例えばIMFのコンセンサスのレンディングでは陰でずっと一番サポートしていたわけです、金銭的な。そういったことを途上国や低所得国の方たちに思い出していただくのも大事かなと思っています。今までいろいろ支援していたことを思い出していただいて、例えばIMFでも、クォータは小さいヨーロッパの国なのだけれども、小さな国々と意見を一致させてボードでも声の大きい国とかあったような気がするので、これからそういった協力体制をいかにしていくか。今までの貢献とかもちょっと思い出していただいて、とても難しいチャレンジングなことではないかと思いつつ、ぜひ御尽力いただきたいと思いました。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、オンラインで御参加の五十嵐委員、伊藤亜聖委員、それから会場で御参加の河野委員に御発言を頂ければと思います。

○五十嵐委員ありがとうございます。

私からまずウクライナの関連でございますが、資料の14ページ、日本国が今まで講じてきた制裁措置一覧をおまとめいただきまして、ありがとうございました。このバランスとして、日本の場合、特にエネルギー安全保障の観点から悩ましいLNGでありますとか問題があるところ、非常にバランスよく制裁措置を講じてきているとは思っております。ありがとうございます。

この安全保障の関連で、今回のテーマと直接関係しないかもしれないんですが、2月末にアメリカのほうで、懸念国(country of concern)による米国市民の機微個人データあるいは政府関連データへのアクセスの防止に関する大統領令で今立法に向けて動いているという理解なのですが、こういった機微個人データ、国家の安全保障との関連で日本として何らかスタンスであるとか方向性であるとかもしお考えがあればお伺いしたいというふうに思いました。

ウクライナへ戻りますと、資料の15ページでしょうか、G7がEUの措置について歓迎すると。それに関連して、各国の法整備であるとか国際法の観点からバランスを取りながらというところ、その方向性についてはまさしくそのとおりでございまして、日本の発言力からもこのような形で引き続きウオッチしていただければと思っております。

もう1点、木村委員からもコメントといいますか、リクエストがあったところでございますが、MDB改革でありますとかIMFにおけるクォータ、もろもろ日本の立ち位置といいますか、今後の姿勢の示し方が課題になってくるかとは思うのですけれども、グローバルサウスをどう巻き込むのか、あるいは、既存の枠組みで引き続き進めていくのかというところにつきまして、何らか戦略的なところでお考えがあればお伺いしたいと思います。

○伊藤(亜)委員伊藤亜聖です。私から、佐藤先生が御指摘のマクロの見通し、とりわけ中国関連の点について質問あるいはコメントをさせていただきたいと思います。上方リスク、それから下方リスク両方に中国が入ってきているということで、これをどう理解すればいいのか。これをたたき台に考えてくださいということだと思うのですけれども、要するに、IMFも見通せていないわけですね。アウトルックできていないというふうに私は感じています。それは、IMFを責めるわけではなくて、恐らく世界中が全人代の前後も非常に活発に議論して、これからどういう政策が出てくるかということを注目していたんですけれども、結果的にはそれほど大規模な景気刺激策は出てこないんじゃないかというのが3月時点で見えてきたことだと思います。それは成長率目標もそうだし、財政赤字のGDP比率目標も3%に取りあえずはなったのですけれども、こういった指標から見ていくと、1月時点のこのたたき台をベースにすると、どちらかというと下方リスクに近いような解釈が可能なのではないかということです。

同時に、IMFから2月2日に対中国の4条協議報告書が公表されましたが、あそこにかなり踏み込んだ情報が出てきている。セットで出てきた不動産市場に関する推計は私も非常に興味深く見て、3つぐらいシナリオがある中で、いずれにしても2026年ぐらいまで不動産投資がかなり減少すると。ピーク時に比べると45%ぐらい減るのではないかというのが結構出てくる数字としてあるんですね。これはかなり強烈な数字で、不動産投資が止まると、セメント、ガラス、鉄鋼等々かなり波及効果がありますので、そういう周りの情報もかなり出てきているのではないかという気がしております。いずれにしても、これはIMFがアウトルックを出して、必ずしも財務省あるいは委員会、皆様の見解と一致するわけではないと思うんですけれども、そういう形で、日本政府と言うとちょっと主語が大きいですけれども、恐らくもっと中で議論されていると思いますので、この辺り、ぜひ御意見をいただく、あるいは議論できればと思っております。

○河野委員私のほうから3点教えていただきたいと思います。ページ順に従って伺わせていただきたいと思います。

3ページ目で、紅海の攻撃の継続という記述が出てまいります。それから、実際、今は実はパナマ運河も渇水により必ずしもうまく使えていないという事態があります。もちろん、特に紅海での攻撃のほうは完全に政治が対応する問題ではあると思うのですけれども、ただ、これだけ国際物流に影響がある状況について、何か経済の面から、例えばG7等で何か施策を考えるような動きが見られるのでしょうか。紅海での船舶への攻撃は恐らくどうも長引くのではないかということも考えられますので、その辺り、経済に関わっておられる方々の目から見たときにどういう方策が取り得るのかということをもし伺えれば伺わせていただきたいと思います。

2番目は、7ページのデジタル課税に関してでございます。関税分科会でもやはり話題になっておりますけれども、日本の中の制度がなかなかデジタル化されていないことの指摘がありまして、こういった条約の当事国になるときに、どういうふうにデジタル化の推進を進めていかれるのか少し伺わせていただければと思います。

最後、3点目は15ページで、ロシアとウクライナの問題でございます。G7の声明のほうでも、ロシアがウクライナにもたらした損害に対して支払いを行うまでの措置を取るのだということですとか、ウクライナがロシアから賠償を得ることを支援するためのあらゆる可能な方策に触れておられます。それから、2つ目についてもユーロクリアの対応についての評価を御紹介いただきましたけれども、いつウクライナの問題が終息するのかは別として、恐らくそこで必要になってくる資金というのは2つの可能性がある。1つは、ウクライナがこれだけインフラが傷ついている中で、それをいかに復興させるか。そのために必要なお金を含めた国家間での賠償の問題が1つあると思います。それは、例えばほかの国からの支援もあるとは思いますけれども、やはりロシアからの賠償は必ず考えなければならない。ただ、もう1つの側面として、ウクライナ人でロシアの行為によって被害を受けた人々、特に深刻な人権侵害あるいは戦争の被害、それから、いわゆる戦争犯罪といったものによって損害を被った人々がいるわけで、その人々への個別の賠償も恐らくこれから考えなければいけない時期が来ると思います。そのときに、今15ページで触れておられるような賠償とか損害に対する支払いがそういう2番目のカテゴリーも含むものなのかどうか。あるいは、それは別途いわゆる国際刑事法関係の賠償の問題として扱われるのか。その辺り、もし議論があれば伺わせていただきたいと思います。

ありがとうございます。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、オンラインで御参加の亀坂委員、御発言いただけますでしょうか。

○亀坂委員ありがとうございます。私は、スライドの6枚目、7枚目のG20の動向が一番気になっております。

まず、新聞などメディアで報道されていましたけれども、地政学に関する文言で合意に至れなかったというところです。これが最も気になっております。日本はもちろんのこと、G7とかを見ても、世界のGDPに占める割合とかがどんどん下がって、グローバルサウスのほうが割合が高まってきているので、今後はやっぱりグローバルサウスの発言力をある程度高めるしかないのかなと個人的には見ております。

その上で思うことを述べさせていただきたいのですけれども、今年の議長国であるブラジルは、日本の歴史を振り返ると、日本は100年以上前から集団移民をブラジルに送っている。コーヒー栽培などですね。日本人が出稼ぎに行った。今、1990年以降とかはブラジル人が日本に結構来ている状況にあって、群馬県大泉町とかはたくさんのブラジル人が住んでいるような状況で、たまたまでしょうが、今年のG20の議長国のブラジル、グローバルサウスの一員であるブラジルと日本は、そもそも本当に歴史的につながりが強いと思います。ですので、G20で文言合意に至らなくても、日本が、例えばブラジルとのつながり、もともと強いつながりがあるブラジルとの関係を今後さらに強化していくような形でグローバルサウスを取り込んだり、あるいは日本とブラジルと互恵的な関係を築けるのではないかと私は考えております。

ブラジルという国は、私は、日本にないもの、不足しているものをたくさん持っている国だと以前から考えております。と申しますのは、ブラジルは、御存じのとおり、資源大国であります。日本は国土が狭いわけですけれども、ブラジルは広大な国土を保有している。今、世界的に、歴史的に大きな戦争、紛争は資源あるいは食料をめぐって起きやすいわけですけれども、ブラジルは資源国でもあり農業大国でもあります。国土も広大で、かつ、私は、株式ポートフォリオを運用するときには、最も違った動きをする株式――例えば為替に対する反応とか、最も違った動きをする株式を組み合わせると最もリスクを削減できるということをふだんポートフォリオ理論として教えているわけですけれども、地政学的に見ても、ブラジルは今大きな紛争や戦争が起きている地域から結構遠いわけです。日本の裏側にあるわけですから本当に日本から最も遠い国の1つで、現在紛争とか戦争が起きているウクライナからもガザからも遠い国です。ですので、本当にポートフォリオ運用的な考え方をすると、地政学的にも日本とブラジルの経済関係を今後強化したりすることは1つ、日本にとってもブラジルにとっても、世界経済の安定とか世界情勢とか、あるいはグローバルサウスの取り込みとかいう意味でも重要なのではないかと思っております。ですので、ぜひG20でも日本にも頑張っていただきたいと思います。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは、会場で御参加の渡井委員、御発言ください。

○渡井委員ありがとうございます。渡井でございます。

私も、地政学の観点について関心を持っておりました。世界経済や国際金融情勢を考える上で、地政学、地形学の観点というのは非常に重要であると思います。WTOを例にとりますと、中国とロシアが加盟したことによって世界的な広がりを持つ枠組みができた一方、米中対立をめぐるデカップリングの問題や今日御説明いただいたようなウクライナの問題が、その枠組みの分断化を進めてきております。この傾向は一朝一夕に解消できるものではないだけに、リスクに対して日本企業が法的にどのような対応をすべきかということは、喫緊の課題ではないかと考えております。

本日の議事とは外れてしまいますが、外為審ですので申し上げますと、USスチールの買収問題は、もちろん日米の民間企業間の取引の問題ではありますし、アメリカの大統領選後にはまた状況が変わることもあるかもしれませんけれども、今後の同盟国との関係や、ひいてはサプライチェーンをめぐるフレンド・ショアリングの在り方を考える上で注目に値する事案ではないかと考えております。

そこで、地政学的リスクをめぐる日本企業の対応について、法的な観点から、その最も肝要な点はどこかということを可能でしたらお考えをお聞かせいただければと思います。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは、御発言が尽きたかと思いますので、まとめて御回答いただきたいと思いますが、私から1点だけ追加の質問をよろしいでしょうか。河野委員が御指摘された3点目に関わるスライドの15ページについてです。ユーロクリアの凍結された資産の運用によるウィンドフォール・プロフィットの使用については、前回も議論になったと思いますけれども、国際法上も、あるいは民事法上も法的な問題が非常に大きいと申しますか、ハードルが高いと思いますが、その点についての打開の方向性のようなものは見えてきたのでしょうかという質問でございます。この点についても併せてお伺いできればと思います。

それでは、御回答をよろしくお願いいたします。

○野村調査課長ありがとうございます。それでは、順次御回答させていただければと思います。

最初に、制裁の関係の御質問を非常に多く頂いたところでございます。片山先生から、ロシア制裁について、第三国の迂回などについてもしっかりやるべきではないかという御指摘がございました。まさにそのとおりだと思っているところでございまして、こちらにつきましては、去年の我が国のG7議長下におきましても、迂回対策をしっかりとやっていかなければいけないということをG7の共通認識として打ち出しているところでございます。そうした認識の下におきまして、G7として、G7以外の国に対しても、G7のやっているロシア制裁に協力してくださいと呼びかけをしているところでございます。具体的に、日本の財務省の取組といたしましても、例えば去年9月、財務官の神田が中央アジア、カザフスタン、キルギスを歴訪したわけでございますけれども、その際に具体的に日本のロシア制裁の重要性を訴えまして、ロシアに本来は送ってはいけないようなものがカザフスタンやキルギスを経由して実際にはロシアの手に渡ってしまう。そういったことを防ぐために協力してくださいとお話をさせていただいているところでございます。また、そのために必要であれば税関当局等への日本からの技術支援等も我々としてはしっかりと検討していきますということをお伝えさせていただいているところでございます。

また、先ほどご説明の中でも申し上げましたけれども、第三国制裁に関しましては、UAEの船会社につきましてもオイル・プライス・キャップ違反で資産凍結の対象に追加しているということでございますので、そうした迂回対策をしっかりとやっていきたいと思っているところでございます。

それから、ロシアの制裁に関しまして、凍結資産の話がいろいろと御質問等ございました。

まず、神作先生からのお話がございましたけれども、15ページの資料に書かせていただいたところでございますが、国際法とも、国内法ともきちんと整合的にやらなければいけない。これは非常に重要な点でございまして、ロシアがやったことについては国際法違反で、特に国際法の基本原則に反するようなことを彼らはやったということで我々は制裁をしているわけでございます。その我々が国際法に違反するようなことをしてはいけないという認識は強くG7の中でも共有されているところでございます。そうした国際法との整合性をきちんと確保していく中で、我々としては対応について何ができるのかをしっかりと考えているところでございます。先ほどのEUの取組でございますけれども、この点につきましてはEUの中においてしっかりと御検討いただいた上で、今後につきましても議論がされていくものと考えているところでございます。

それから、河野先生からの御質問の中で、実際にウクライナ支援の関係で復興に対する賠償をしっかりとロシアにさせなければいけないという話と、それから実際に個々の被害者に対する救済の話とがございます。その被害者に対する救済について、今G7首脳声明で議論されております凍結されたロシア国家資産の活用の話、これが使えるのかという話がございました。被害者の救済あるいはその損害について、実は既にG7の中で、特にヨーロッパが中心となって始めている取組がございます。損害の登録機関、レジストリーというものがつくられて、実際に個人の被害も含めて損害の登録を始めているところでございます。ただ、その救済にどういった財源を充てるかにつきましてはまだ特段決まっていないものと理解しているところでございます。また、先ほど御説明させていただきましたロシアの凍結した国家資産の活用の議論につきましても、それを何に充てるかにつきまして、何か方向性、これには充てる、これには充てないといった結論が特段今出ているわけではございませんので、そうした意味では特段排除もされていない状況ではないかと理解しているところでございます。

それから、安全保障の関係でも幾つか御質問があったかと思います。

五十嵐先生からですけれども、アメリカで行われている懸念国による我々の国の重要な個人データ、個人情報へのアクセスについてどう規制していくかという話について、日本ではどうかという話がございました。もちろん、我が国の安全保障をしっかりとさせていく上で、そうしたアメリカの動きについてもしっかりとウォッチしていく必要があると思っておりますけれども、私どもは直接そこを所掌しているわけではございませんので、そうした重要性についての御指摘があったことにつきましては外務省等にはしっかりと伝えさせていただきたいと思っております。

それから、渡井先生から最後にございましたけれども、地政学的なリスクが高まる中におきまして、日本企業は今後どういったところにしっかりと気をつける必要があるのかという話がございました。私どもの所掌で申し上げさせていただきますと、やはり地政学的ないろいろな問題が起きる中におきまして、本日いろいろとご説明させていただきましたけれども、日本の外為法上、本来は対外取引自由でございますが、やはり安全保障の観点から例外的に許可制に移すとかあるいは事前審査制に付すような形での規制を、地政学的な問題の高まりとともに我が国においても実はいろいろな形で随時措置をさせていただいているところでございます。そうした外為法上、本来自由なのだけれども、例外的に現在導入されている規制につきましてはしっかりとお守りいただく必要があると考えているところでございますので、そうした点につきましては私どもとしてもしっかりと周知させていただきますけれども、日本企業の皆様におきましても、ぜひそこはよく注意していただいて、外為法違反が起きないようにしっかりと意識を持っていただければと思っているところでございます。

加えて、幾つか為替の御質問がございました。伊藤由希子先生からでございますけれども、どれぐらいを目標値として持っているかという御質問でございます。非常に具体的な御質問でございます。ただ、すみません、当局として具体的な為替相場の数字について、目標値等につきましてコメントいたしますと市場に不測の影響を与えることもございますので、大変申し訳ございませんけれども、この場でコメントすることは差し控えさせていただければと思っているところでございます。

同じく伊藤由希子先生から、中期的な財政の信認を確保していくため、中期的な財政計画が日本も重要なのではないかという御指摘がございました。ありがとうございます。私ども財政当局の中でも、当然ながら我が国の財政への信認を中期的にしっかりと確保していくことの重要性は重々認識しております。また、その重要性につきましては、国民の皆様方にもしっかりと私どもとして訴えていく必要があると思っているところでございます。先生から御指摘いただきましたことをこれらの財政当局の担当にもしっかりとお伝えさせていただきたいと考えているところでございます。

私のほうからはとりあえず以上でございます。

○木原国際機構課長国際機構課長の木原です。いろいろな御意見、御質問いただきまして、ありがとうございます。全てカバーできるかどうか分かりませんけれども、なるべくお答えしたいと思います。

まず、クォータ、あるいは今後の世界の秩序が変わりつつある中での考え方について非常に多くの御質問を頂きました。クォータの見直しの文脈に当たりましては、やはり我々は日本の国家公務員として働いておりますので、まずは基本認識として、こういった重要なグローバルな機関においてきちんと日本の発言権を確保する。こういうことはきちんと基本方針として持ちながら議論はしなければいけないというふうには思っています。その上で、今回のクォータについて申し上げれば、国民の負担という意味におきましても、基本的には外為特会で持っている外貨をやり取りすることでございますので、国民負担は必ずしも生じない、そういう中での交渉でございます。

その上で、各国こういう条件は同じでございますので、それぞれの国が自国の発言権を確保しようとしながら当然交渉に臨んでくる。そういう中で日本としてどういうふうに立ち居振る舞っていけばいいのかということを我々も絶えず悩みながらいろいろ考えているわけですけれども、今回のクォータの見直しに当たって、我々として1つ大きなメッセージとして出したいと思っていたのは、もちろんクォータ見直しは大事でありますけれども、そもそもIMFとして、どうIMFがあるべきなのか。いろいろな形でIMFを強化していかなくてはいけない中で、日本として、クォータだけにとどまらず、少し視点を広げてどういう貢献ができるか。そういう形でいろいろなメッセージを出しながらIMFの議論に貢献したい。それがひいてはIMFの強化につながるようにしたい。そういうことで交渉に臨んできたことがございます。去年秋のIMFCのステートメントに少し詳しめに書かせていただきましたけれども、その中で強調してきたのは、規模、機能、ガバナンス、この3つの観点からIMFをきちんと強化しましょうということで、当然その中にはクォータの増資も含まれるわけですけれども、それ以外の論点もかなり多く日本から前向きな提案として入れさせていただいています。増資規模50%で最終的に合意いただけましたけれども、例えばIMFが既に持っている危機予防のファシリティをきちんと強化して、危機に陥る前にIMFがきちんと必要な国に支援できるような形の支援を充実させることであったり、あるいは、アクセスリミットの見直しみたいなところで、IMFがそもそも増資だけではなくて、IMFの基準の中でも少し大き目の規模の支援ができるように後押しをIMFの中でしてあげる。そういうような形の提案もさせていただいています。あとは、クォータとは直接関係ない低所得国向けの支援、PRGTというふうにIMFでは呼んでおりますけれども、クォータとは別勘定で、無利子で長期融資をする支援、ファシリティがございます。こういうところにも日本としてきちんと貢献をして、小枝先生からも御指摘がありましたけれども、日本としては低所得国支援も引き続ききちんとやっていくんだ、そういう姿勢を示させていただいたりはしています。

ガバナンスにつきましても、少し後ほど御説明しますけれども、各国でどういうふうに具体的にシェアの見直しをするかという合意がなかなか容易でない中で、かつ、経済実態に合わせてということになりますと、実態としては低所得国のシェアはどうしても下がらざるを得ない現状がございます。そういう中で、日本として、今回、他国と一緒に1つ提案したのは、現在IMFの理事24人でありましたけれども、25人に1人増やす。その1つ増えたチェアはアフリカの国々にアロケートする、こういうような形の提案をしております。これは議論を経まして、最終的には合意のパッケージの1つとして含まれたという経緯がございます。

クォータの見直しにつきましては、テクニカルな議論を申し上げれば、そもそも何を基準とすべきなのか。GDPだけでいいのかどうか。広報の件も含めて植田先生から御指摘いただきました。ありがとうございます。これからもいろいろ考えていかなくてはいけないと思っています。GDPだけで見ても、市場価格レートで比較するのか、PPPで比較するのか。あるいは、今の計算式で言えば貿易の量というのもありますけれども、そこにユーロ圏の中のトレードを含めるのが合理的なのかどうか。技術的にはこういった議論が本当に様々ございます。そういう中でなかなか議論が進んでいかない現状があります。あるいは、新興国を見ても、ブラジルとかロシアが、今の計算式――それがそもそも正しいかどうかで議論が今申し上げましたようにありますけれども、現状では過大代表。日本ほどではないですけれども、彼らも過大代表になっていたりもします。そういう中で、冒頭申し上げましたように、日本としては、まずIMFがそもそもどういうふうにあるべきなのか。その中で、シェア見直しだけにとらわれない形で、どんな形の強化策があるのかというのは引き続きいろいろなアイデアを出しながら建設的に貢献していくことが大事だというふうに思っています。

非常に難しい御質問で、それよりもっと視野を広げて、グローバルサウスが力を広げる中でどう対応していくかということだと思いますけれども、ファクトとしてG7のシェアが下がっていて、EMのシェアがどんどん上がっていく。それはもう紛れない事実です。他方、そういう中で気候変動ですとか、あるいは金融危機もそうですし、金融規制、国際課税の問題、何でもそうだと思います。グローバルにみんなで合意をして同じ制度を入れないと、どこかで水が漏れてグローバルな仕組みとして機能しない、こういう現実があるという中であります。WTOの文脈などでは、長年なかなか難しい交渉が続いていますけれども、全会一致の法則の中で必ずしも物事がうまく決まらない。国連の安保理も同じような状況だと思います。そういう中で、どうやって合意を見出していくのか。これは、それぞれの場で必死に各国が妥協点を見出しながら議論を続けていくしかないというのが今の私の率直な感想であります。そういう中で、国際課税であれば少し進展があった。地形学の問題でG20は合意に至っていないですけれども、これも従来から申し上げていますけれども、逆にそれ以外の論点では一致が見出せていることがあると思います。これから11月のサミットに向けて今年のG20でもどうやって議論の成果を出していくのか。これは引き続き、地形学の議論は脇に置いといて、きちんと我々としてはやっていかなければいけないと認識しているところでございます。

あと、CBDCについて根本先生から御質問がありました。こちらは、G20、G7はそれぞれでまた議論の関心が高まっています。少し振り返ってみると、リブラの話が出た段階でG7の中でも非常に議論があって、CBDCあるいはリブラのようなものに対する原則を一度つくったわけですけれども、昨年のG7プロセスでは、日本議長国の下で、むしろ新興国、途上国を念頭にCBDCハンドブックというものを、日本も資金をサポートしながらIMFにつくってもらいました。これは特に新興国、途上国がCBDCをつくっていく中で、どういうことに気をつけなければいけないのか。どういうスタンダードを守っていかなければいけないのか。こういうTA、キャパシティービルディングをIMFが行っていく上で使ってもらうための教科書的なものをつくるという取組をしています。こういった形で、ある意味、マネーロンダリングですとか金融面の安定、そういうものでネガティブなインパクトをもたらし得るような制度が各国に入らない取組をグローバルにサポートしていくという議論を日本として、国際局でしてきたところでございます。

少し先行き、これからの見通しという意味で申し上げますと、G20、G7においても、クロスボーダーの決済、ペイメントをどう効率化していくのか。特にリテールの部分を念頭にファスト・ペイメント・システムのようなものがいろいろ出てきている中で、それをどう統合していったらいいのか。そういう議論が結構頻繁になされるようになっています。今年のブラジルの議長下でも議論なされることになっております。それとはまた少し別の文脈で、特にBIS中心になっておりますけれども、将来的なCBDC、DLTの活用も念頭に、特にホールセール部分で各国間の決済をどう効率化していくか、そういう議論もある中でございます。

国際局として、ハンドブックの議論、あるいは先ほど申し上げましたG7の議論がありますけれども、そういったグローバルスタンダードを誰が取っていくかということに今後つながり得るような議論は積極的に国際的な場で議論していかなければいけないと思っています。そういう取組は引き続きG7、G20それぞれの場でやっていきたいというふうに思います。

あとは、国際局が所掌として持っている意味におきましては、FATFのようなマネーロンダリングが国際的な決済の文脈では非常に重要になってくると思いますので、CBDCの文脈においても、これは理財局の会議においても、こういうところも含めて国際局の問題意識としては伝えさせていただいているところでございます。

あと、すみません。IMFのほうで1点申し忘れましたけれども、伊藤(恵)先生から非常に重要な御指摘で、人材面での貢献というのを頂きました。これは本当におっしゃるとおりで、我々も、長年うまくいっている部分、うまくいっていない部分、両方ありますけれども、一生懸命やってきています。特に足元では、エンカレッジングな動きとしましては幹部職員の方が増えつつあります。これは長年IMFでずっと10年、20年とお仕事をされている方々が、本当に1つのポストに30人、40人と応募者が来る中で1人選ばれなければいけない。こういう厳しいプロセスを勝ち上がって幹部職員になられている方は、特に女性が多いですけれども、頑張ってこられています。こういう方々への支援はきちんとやっていかなければいけないというふうに我々も思っています。

あとは、より裾野を広げていく取組も非常に大事だと思っていまして、最近も幾つか新しい取組を植田先生にも御協力いただきながらやってきています。後ほど、先生方に関連する資料なりをお送りしてどんどん周知をお願いしたいと思っています。例えば大学へのアプローチを今までやってきましたけれども、もっとそれを早めて高校生にもアプローチすることもやっています。特に帰国生が増えているような高校生、英語が非常に堪能で国際機関にも関心を有するような高校生の段階からアプローチする、こういうものを去年から始めています。あとは、植田先生に御協力いただきながら、去年初めて経済学会で、IMFはどんな仕事をしているか、どういう役割があるかというのを御紹介いただきました。今年また3月、4月にかけて同じようなイベントをやろうと思っています。あとは、IMFのほうでヘッドクォーターで特別に、なぜ日本だけやるんだという議論もあるわけですけれども、IMFの広報部局にお願いして、今IMFで働いている方々が日本語でIMFの仕事の魅力を語るというショートムービーを作成してもらっていまして、これをXでいろいろな形で発信するようなこともやっています。こんな取組を、先生方の御協力も頂きながら裾野を広げて、まさに時間がかかる取組でありますけれども、きちんとやっていかなければいけないと思っておりますので、引き続き御協力いただければと思います。

AIにつきまして原田先生からお話がありましたけれども、AIの議論は非常にいろいろな形で関心を呼んでおります。財務大臣・中央銀行のプロセスにおきましては、やはり雇用、労働市場にどういうインパクトがあるのか。特に中銀の方々だと、インフレにどういうインパクトがあるのか。財政政策で言うと、トランジションというものがいろいろな形で生じますので、そのトランジションをうまく進めるために財政政策で、特にトランジションの負担を被る方にどういうサポートが必要なのか。そういう議論を政策的にはしていくということかなと思っているところでございます。特にAIのインパクトにつきましては、例えば、今までのオートメーションとどう違うんですかというところでホワイトカラーへのインパクトが大きい等いろいろな議論がありますけれども、最近のAcemogluらが書いているようなレポートによれば、今のアメリカの方々が働いている職種の60%ぐらいは1940年にはなかったという分析があったりします。ですので、オートメーションで失われる職もあれば、オートメーションがあることによって追加で生まれる仕事もある中で、本当に労働市場、雇用の在り方がどう変わっていくのか。これは、各国、各機関あるいは研究者の皆様が引き続きいろいろな形で分析されているところだと思いますので、こういうものはきちんと我々としてもフォローアップしていきたいと思っております。

佐藤先生のほうからFDI、特に中国との関係で、あるいはアジアとの関係でというお話がありました。中国経済の見通しにつきましても伊藤亜聖先生、その他の先生から幾つか御議論があったと思います。

まず、FDI、現地に技術移転が進むのかどうか。そういうところにつきましては、去年のG7プロセスで日本から、FDIは量が大事というのはあるけれども、それに加えて質が高く、より安全にしなければいけない、そういうイニシアチブを始めさせていただいています。OECDにお願いして、特に、今まで量と質の部分はしっかりやってきたところがあると思いますけれども、安全性の部分、国家安全保障に係るような部分も含めてきちんと途上国が安定してFDIを受け入れられるような制度設計をしていく上でのサポートをOECDを通じてやろうと思っているところでございます。

中国経済の見方は、いろいろな御議論があると思いますけれども、政策対応という意味で、財政面で特に想像していたほど、あるいは、2008年のリーマン・ショックの後ほどドラスティックなフィスカル・サポートが今のところないというのは御指摘のとおりだと思います。ただ、他方で、中国ならではの株価を支持するためのいろいろな形のサポートは特に年初からかなり大規模にやられているという認識は持っているところでございます。そういう中で、去年を見れば、FDI、ネットでネガティブになったり、足元も先ほど申し上げましたように株が下がっていたりという意味で、中国が大きな流れの中で少し大きな転換点にある可能性が非常に高いのは御指摘のとおりだと思います。そういう中で、不動産の部分に今後どうやって対応していくのか。2月初めに出た中国の4条協議レポートへの言及もありましたけれども、特にまだ価格調整、マーケットで見てもそこまで進んでいない状況があったり、あるいは、中国特有の、前払いでお金を集めて、それを元手に建設が進んでいく。非常に特殊な仕組みの中で、既に建築が始まっていて、かつ、そこに住むはずの人がお金を払っている物件を、どういうふうに社会的な不安を引き起こさずに対応していかなければいけないのか。その文脈では、IMFの分析にもあったと思いますけれども、かなりの財政負担が必要になる可能性がある。そこのトランジションがうまく進むのかどうかというのはきちんと見ていかなければいけないと思っています。

国際課税についても、伊藤由希子先生、河野先生などからお話があったと思います。御指摘がありましたとおり、Pillar Twoのほう、グローバルに15%のミニマム課税を入れることにつきましては、日本も一部制度設計を既に導入していますし、今年4月1日から施行開始だったと思います。アメリカはまだですけれども、日本だけではなくて、ヨーロッパですとかほかの国々、主要国、非常に幅広い国で導入が進んでいます。2つ目の柱については、少なくとも今後、当面は実施が進んでいって、そのインパクトがどうなっていくのか見られる状況にある。そういう意味では、ポジティブなディベロップメントがあったということだと思います。

1つ目の柱のデジタル課税につきましては、御指摘がありましたとおり、各国がばらばらでデジタルサービスにGSTのような形で入れてしまうと制度が複雑になりますし、それがアメリカとの関係では貿易紛争の原因にもなりかねない中で、マルチで枠組みをつくって、それにみんなで合意しましょうということを一生懸命やってきているところです。御指摘がありましたように、期限の延長が続いていてなかなかまとめられていません。6月にマルチの条約が必要になりますけれども、その署名に向けて最終的な交渉を今主税局のほうで一生懸命やられています。この条約に署名ができれば、各国において批准に向けた手続が進んでいくことになります。これもまた各国議会との関係で議論がどのぐらいきちんと進んでいくのか予断を許さないところでありますけれども、まずは署名にきちんとこぎ着ける。その後で各国の議会プロセスが進むようにまた引き続き働きかけを続けなければいけないということで、必ずしも容易ではないプロセスでありますけれども、本当に課税権を見直す。それを物理的な拠点以外の観点で移転させるという意味では非常に大きな改革でありますので、その実現に向けて引き続き全力を尽くしていかなくてはいけないということだと思います。

あとは、伊藤由希子先生から、日本の観点から中期財政計画について御指摘があったかと思います。日本も2月上旬に4条協議のミッションが来て、その結論として、コンクルーディング・リマークスが公表されております。その中でも、今後25年以降、目標をどうしていくのか。補正の在り方、基金の在り方、あるいは中期計画をつくっていく上での経済見通しはどの程度のものを見込むのか。楽観的過ぎてはいけないし、そういう中で現実的な、あるいはマーケットから信頼が得られる中期計画をつくっていかなければいけない。そういう指摘を受けているところでございます。日本当局それぞれの文脈で最善だと思う政策決定はそれぞれしてきているわけでございますけれども、御指摘も踏まえながら今後の在り方をきちんと考えなければいけないというふうに思っております。

地形学の部分、去年の今頃であればウクライナだったわけですけれども、その後、紅海の問題、ガザの問題、パナマの話もあったかと思います。少し前で既にout-of-dateなのかもしれませんけれども、紅海の部分については、しばらく前にIMFのスタッフなどと話をしていると、今の時点ではリージョナルな問題というような認識も示されてはいたところです。ただ、今後のまさに進展次第だと思いますので、ここもグローバルサプライチェーン、インフレ、あるいは特にコモディティの価格、こういうものにどういう影響が出るのか。きちんと考えていかなければいけないというのはそのとおりかなと思っているところです。

亀坂先生から、ブラジルとの関係を念頭にG20をどうしていくのかというお話があったかと思います。ここ最近G20は新興国の議長国が続いていまして、おととしであればインドネシア、去年はインド、今年がブラジル、来年が南アフリカになっています。若干手前みそなところもあるかもしれませんけれども、インドネシア、インドとは、同じアジアの国ということもあったと思いますが、比較的建設的な議論ができたと思っています。特に、例えばインドであれば、必ずしもそうとは限らない部分もあると思いますけれども、スリランカの債務再編みたいなところでもきちんとインドがプレーヤーとして主体的に関わる側に回ってくれて、今までにないような枠組みの議論ができた。こういうことが可能になるのは、1つ、議長国を取って、自分として、いわばアウトサイドにいるのではなくて、インサイダーとして成果を出さなければいけない立場になった。そういう中でインドの姿勢が変わった部分もあるんじゃないかというふうに思っております。今年まだブラジルのプロセスが始まったばかりでありますけれども、ブラジルと一緒に、亀坂先生のお話にもあったように、どう共同しながらいい成果が出せるのかということは引き続き一生懸命取り組んでいきたいと思っているところでございます。

すみません。長くなりましたけれども、以上です。

○陣田開発政策課長スリランカの債務再編につきまして、根本委員、それから片山委員から御質問がございました。債権国会合以外のメンバーとの公平な債務再編、これは非常に重要なことでございます。まず、昨年11月の基本合意におきまして、スリランカ当局がほかの債権者と公平な条件で結ぶ。具体的に言いますと、スリランカ当局が、債権国会合が提示した条件よりも、少なくとも同国にとって有利な条件での合意をすること、また、それを確認するために透明な形で必要な情報を共有すること等を約束しております。これらの約束は、今調整中の覚書の内容にも反映され、もしスリランカ当局がこういうことを守らなければ合意は反故になるという条件を挿入する方針で調整中です。また、スリランカは、IMFプログラムの下で、一定の国際収支や財政収支について約束を負っており、これをIMFプログラムのパラメータと言っておりますけれども、仮に、例えば中国等の債権者が有利な条件で結びますと、基本的にこのパラメータを破ってしまう。すなわち、IMFプログラムを満たせなくなりますので、そのような条件では結べないということで、こういう形でも間接的に縛られているということでございます。

続きまして、円借款の再開についてですが、まず、こうした債務再編の進捗、それからIMFプログラムの着実な実施によって、スリランカの債務の持続可能性をきちんと継続的に担保しながら円借款の再開を検討していく。その際にはJICAや関係省庁とよく検討していきたいと思っております。

私からは以上でございます。

○城田参事官参事官の城田でございます。私のほうからは、12ページ目のウクライナ向け支援につきまして、植田先生から、利子の元本化に関して、これはリスケ前提なのかどうなのかといった御質問を頂きました。ここの説明をするに当たってちょっと自分自身の説明が欠けてしまったかなと思うところですけれども、まず、何かと申し上げますと、御承知のとおり、信用補完につきましては、世銀の融資に対して日本が信用補完をつけることで対ウクライナ向けの融資を実行できるようにするというものになります。これは、ウクライナ側から見てみますと、世銀のプロジェクトがどんどん進んでいってお金が入ってくるのはありがたいのだけれども、ディスバースされた半年後から原則的に利払いが始まってしまうものです。ウクライナの足元での流動性が非常に厳しい中でこの利払いを続けていくのがなかなか厳しいという話がウクライナ政府側からございまして、何かできないかと探ったところ、世銀に利払いの元本化という仕組みがあることが分かりました。我々がウクライナ側あるいは世銀側と話をしているのは、IMFのプログラム期間中、具体的には27年3月までの間にウクライナが支払わなくてはいけない利子については、支払いを一時的に元本に上乗せする。そのために必要となるような追加的な信用補完についても日本がカバーしましょうという話となっております。ですので、例えばここで何か特別な仕組をウクライナのために用意しているのかというと、そういうものではなくて、世銀の用意されている元本化というスキームに乗ったものになります。ただし、対ウクライナ向けで利払いの元本化の支援をやるのは日本が初めてのもので、ウクライナ側からは非常に感謝されているものとなっております。

やや蛇足かもしれないですけれども、リスケなどを考えているのかといいますと、信用補完につきましては、世銀の融資につきましては優先弁済権がございますので、その返済が滞ることは基本的には考えづらいとこちらとしては考えながら、この信用補完というスキームを使っております。

あと、木村先生から日ウクライナの経済復興推進会議に関しまして重要な成果であると御指摘いただきまして、誠にありがとうございました。

私のほうからは以上です。

○津田開発機関課長開発機関課長の津田でございます。先ほどの城田参事官の説明とも若干かぶるのですけれども、植田先生からポートフォリオ・ギャランティ・プラットフォームについてのデフォルト確率についてご質問をいただきました。これは、いわゆる保証を与えるに当たって保証料をもらうみたいなアクチュアリアルな世界があるわけではございませんで、quantitativeな数字はございません。他方、基本的には先ほど城田参事官が申し上げたPreferred Creditor Statusがありますので、貸倒れというのは非常に考えにくいと考えております。

あと、1つだけつけ加えるとするならば、ウクライナに出したようなバイラテラルの保証というのは、日本は初めてでございますけれども、イギリスですとかカナダは従来からやっていて、ある程度前例はありました。他方、このポートフォリオ全体に対する保証というのは本当に初めての取組になります。そういう意味でも、事務局、ドナー、それぞれ検討を進めながら出しているものでございます。

次に、伊藤恵子先生から人材の話がございました。機構課長から御説明がありましたけれども、世界銀行をはじめとしたMDBsにおきましても、高校生へのアウトリーチですとか、あるいは日本以外のアメリカやイギリスに在住の方向けのバーチャル及び対面でのリクルーティング等々いろいろ新しい取組を行っております。リクルーティングに力を入れるだけではなくて、しっかり残ってもらう。これをリテンションと我々は呼んでいます。また、それからさらに上のほうに行ってもらうのはプロモーション。これらを一気通貫で、キャリア・ライフサイクルに応じてきめ細やかなサポートを行うことを考えていきたいと思っております。

それから、グローバルサウスにつきまして、木村先生、五十嵐先生、小枝先生からご質問がございました。1点だけつけ加えさせていただきますと、去年12月に欧州復興開発銀行(EBRD)は、ウクライナ支援を目的として、40億ユーロの融資に合意をしておりまして、日本は、当時、G7議長国だったこともありまして、議論をリードして合意しています。また、先週、ラテンアメリカですとかカリブ諸国を支援しておりますIDB Investという民間支援アームがあるのですけれども、このIDB Investにつき35億ドルの増資が行われた際、日本は前向きにサポートしております。また、今年はIDA21とか、あるいはアジアの譲許的資金でありますADFの資金補充がございますけれども、こういった議論におきましても、出すときはしっかり出していく方針でございます。変に渋ってグローバルサウスの神経を逆なでするのではなくて、しっかり貢献すべきところはしていくということでございます。また、信託基金等を通じて、ただプレッジをするだけではなくて、国際保健とか防災とか債務の透明性といった分野につきまして、継続的に、これまでも政策面、知恵の面で貢献をしてきましたし、これからもしっかりやっていきたいと思っております。

最後に1点、小枝先生から、しっかりお金を出しているのだから思い出させる必要があるじゃないかということで、これは我々もまさしく非常に痛感しておるところでございます。大臣からプレッジしていただいたらすぐ終わりではなくて、継続的に我々が貢献をしていることを伝えていく。それには、ただお金を出すということではなくて、政策面、知恵面でしっかり協力をしていくことを事務局及びほかのドナー、それからほかのレシピエント国に対して継続的に訴えかけていく必要があるものと認識しております。

○德岡地域協力課長地域協力課長、德岡です。私のほうから、中国関係のお答えと、木原の説明に若干補足いたしたいと思います。

まず、原田委員から、中国の豪州に対するアンチダンピング課税のお話を頂きました。一義的にはこの問題は中国と豪州の間のバイの係争でございます。その上で決着がつかなければWTOでの紛争解決手続きということになりますので、我々が直接所掌しておりますG20の財務大臣会合で直接に議論するものではございませんけれども、他方で、先ほどのG20の資料にもありましたように、保護主義とかフラグメンテーションのまさに表れでございますので、我々としてモニターしていかなければならない問題だと認識をしております。

もう1点は、中国経済、リスク等につきまして幾つか御質問、御意見を頂いております。まさに佐藤委員からタイのお話を頂きましたけれども、中国経済を見ていくに当たっては、中国経済そのものだけではなくて、中国をめぐる資金、投資、それからサプライチェーンを全体で見ていく必要があると考えております。我々、ASEANも見ておりまして、例えば、タイとちょっと似たようなケースかもしれませんけれども、ベトナムのほうにかなり中国から企業が進出していくとか、あるいは中国に従来行っていた投資がベトナムに流れていくとか、サプライチェーンが変化する中でこういった動きが生じているという情報にかなり触れております。こうしたことも全体として見てまいりたいというふうに考えております。

それから、伊藤(亜)委員から中国経済の不動産のお話を頂きました。まさに全人代ではあまりはっきりとしたメッセージが財政分野、不動産分野に出なかったというのが我々の受け止めでもあります。IMFのレポートにつきましてお話を頂きました。一言付言をさせていただきますと、委員がおっしゃるように、IMFのほうから非常に厳しい見方が示されまして、そのレポート自体は2月に公表されたわけですけれども、1月の理事会で議論されております。その理事会の場に中国はIMFの見方に対して反論のステートメントを出しておりまして、これがかなり長く包括的なもので、IMFは悲観的に過ぎるとか、あるいは、中国はまだこれから都市化が進んでいくので需要はそんなに減らないとか、かなり具体的なことも含めて手厚い反論の文書が出され、これは公表されております。ただ、こういったやり取りが生じていること自体が中国の不動産の問題は非常に大きなリスク、問題であることの証左であろうと考えておりまして、我々としても非常に重視、注視している問題でございます。引き続き御指導をどうぞよろしくお願いいたします。

○野村調査課長一言だけ補足でございますけれども、根本先生からCBDCの関係で国際局の問題意識について御質問を頂きました。先ほど木原課長のほうから、FATFのマネロン対策もしっかりと進めていけるようなものにしなければいけないという問題意識を持っているという話がございました。加えまして、例えば資産凍結とか外為法上の様々な規制措置を今やっておりますけれども、そうした規制措置もしっかりとできるようなデザインにしていく必要がある。そうした問題意識も持って我々としては議論に参加していくところでございます。1点補足でございます。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

活発な御議論を頂き、大変ありがとうございます。そろそろ終了の予定時刻になってまいりましたので、本日の議事はこれにて終了とさせていただきたいと思います。

なお、今回の議事録の作成は私に御一任いただければと存じます。よろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございます。その際、発言部分につきまして事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、会合終了後にその旨を事務局に御一報いただければと存じます。御連絡いただきました委員の方には議事録を案の段階で事務局より御送付いただきたいと考えております。その後1週間程度の間に御意見がない場合には御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。

次回の分科会につきましては、事務局と御相談の上、御連絡させていただきます。

本日は、長時間にわたり御出席いただきまして、誠にありがとうございました。

午後0時01分閉会

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