内閣府・新着情報

2024年6月
濱秋 純哉
内閣府経済社会総合研究所客員研究員、法政大学経済学部准教授
井深 陽子
慶應義塾大学経済学部教授

要旨

 本論文では,遺産相続が相続人の労働供給に与える影響を推定した。相続の影響を識別するためには,相続に対する予想,親の介護,相続人の流動性制約の影響をコントロールする必要がある。これらに関する詳細な情報を含む個票パネルデータを用いて推定したところ,相続が就労確率の低下を通じて労働供給を減少させることが分かった。とくに,50歳代の回答者や39歳以下で小さな子供のいる回答者について大きな減少が見られた。労働時間の減少は,家事労働の時間や睡眠を含む余暇時間の増加につながることも分かった。一方,家計支出は相続後もほとんど変化が見られなかった。また,予想されていなかった相続は予想された相続より労働供給を大きく減少させた。さらに,相続と同時期に起こる介護の終了により,それまで介護で働けなかった回答者が労働供給を増やせるようになるが,このことを考慮せずに推定すると相続後の労働供給の減少を過小評価する恐れがあることも分かった。最後に,相続後の労働供給の変化は,回答者の相続前の流動性制約の状況には依存しなかった。


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遺産相続が相続人の労働供給に与える影響:個票パネルデータを用いた実証分析(PDF形式:1.3MB)PDFを別ウィンドウで開きます

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全文の構成

  1. 1 Introduction
    page3
  2. 2 Estimation results of previous studies
    page6
  3. 3 Data
    page7
  4. 4 Estimation model
    page12
  5. 5 Estimation results
    page14
  6. 6 Inheritance expectations, informal care,
    and liquidity constraints
    page23
  7. 7 Conclusion
    page31

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