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 6文科高第413号 
令和6年6月14日 

 

各文部科学大臣所轄学校法人理事長
各都道府県知事               殿
 

文部科学省高等教育局私学部長   
寺門 成真

  私立学校法の一部を改正する法律等の施行について(通知)

 

 このたび,別添のとおり,「私立学校法の一部を改正する法律(令和5年法律第21号)」(以下「改正法」という。)が令和5年5月8日に公布され,また,これに伴い,「私立学校法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(令和6年政令第209号)」(以下「改正政令」という。)及び「私立学校法施行規則の一部を改正する省令(令和6年文部科学省令第21号)」(以下「改正省令」という。)が令和6年6月14日に公布され,一部の規定を除きそれぞれ令和7年4月1日から施行されます。
 改正の趣旨,概要及び留意すべき事項は下記のとおりですので,十分に御了知いただくようお願いします。また,各都道府県知事におかれては,運用に当たって遺漏のないようにお取り計らいいただくとともに,所轄の学校法人及び私立学校法(昭和24年法律第270号)第64条第4項の法人(以下「準学校法人」という。)に対して周知されるようお願いします。
 

 
第一 改正の趣旨
 今回の改正は,我が国の公教育を支える私立学校が,社会の信頼を得て一層発展していくために,社会の要請に応え得る実効性のあるガバナンス改革を推進するための制度改正であり,幅広い関係者の意見の反映,逸脱した業務執行の防止等を図るため,「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方に基づきつつ,私立学校の特性に応じた形で「建設的な協働と相互けん制」を確立することができるよう,理事・理事会,監事及び評議員・評議員会の権限分配を整理する等の所要の改正を行ったものである。
 
第二 私立学校法の一部改正の概要
 上記の趣旨を実現するため,理事,監事,評議員及び会計監査人の資格,選任及び解任の手続等並びに理事会及び評議員会の職務及び運営等の学校法人(準学校法人を含む。以下同じ。)の管理運営制度に関する規定を整備したほか,損害賠償責任等,会計並びに計算書類等及び財産目録等,寄附行為の変更,解散及び清算並びに合併,情報の公表,訴訟等,大臣所轄学校法人等の特例並びに理事等の特別背任罪等の罰則等に関する規定の整備を行ったこと。より具体的な改正内容については別添3を参照されたい。
 
第三 私立学校法施行令等の一部改正の概要
 情報通信の技術を利用する方法による評議員会の招集通知の発出に関する手続,大臣所轄学校法人等の基準,常勤の監事の選定の特例の適用に関する基準等に関する規定の整備を行ったこと。より具体的な改正内容については別添6を参照されたい。
 
第四 私立学校法施行規則の一部改正の概要
 子法人の定義,特別な利害関係,評議員会の決議を要しない寄附行為の軽微な変更,所轄庁への届出,学校法人の業務の適正を確保するための体制,理事会・評議員会の議事録の作成方法,監査報告・会計監査報告・事業報告書の作成方法,計算書類・事業報告書等の監査の方法等に関する規定の整備を行ったこと。より具体的な改正内容については別添8を参照されたい。
 
第五 留意事項
1.理事,監事及び評議員等について
(1)理事の選任について
<1>理事の選任は理事選任機関が行うこととなること。(改正法による改正後の私立学校法(以下「改正私立学校法」という。)第30条第1項関係)
<2>理事選任機関の構成等は寄附行為に委ねられていることから,評議員会を理事選任機関とすることをはじめ,各学校法人で様々な定めとすることが可能であるが,理事の選任は評議員会の監視・監督機能を定期的に発揮させる重要な手段であることを踏まえ,理事選任機関に評議員を含めるなどの工夫により,理事会からの中立性を確保することが望ましいこと。(改正私立学校法第29条関係)
(2)監事の選任及び職務等について
<1>監事の選任は評議員会の決議によって行うこととなること。(改正私立学校法第45条第1項関係)
<2>監事の職務等として,新たに次に掲げるものが加わること。
・その職務を行うため必要があるときは,学校法人の子法人に対して事業の報告を求め,又はその子法人の業務及び財産の状況の調査をすることができること。(改正私立学校法第53条第2項関係)
・理事が評議員会に提出しようとする議案,書類等について調査しなければならないこと。(改正私立学校法第54条関係)
・理事会に加え,評議員会に出席し,必要があると認めるときは,意見を述べなければならないこと。(改正私立学校法第55条関係)
(3)評議員の選任について
 評議員の選任方法は各学校法人の寄附行為に委ねられるところ,多様な主体が評議員会に参画することの重要性に鑑み,各学校法人の規模や特性に応じて,教職員,卒業生,保護者,地域住民,有識者などバランスの取れた多様な構成とすることが望ましいこと。(改正私立学校法第61条第1項及び第2項関係)
(4)理事,監事及び評議員の資格及び構成について
 理事,監事及び評議員の資格及び構成について,次に掲げるものをはじめ新たな要件が加わること。なお,改正法の施行の際現に在任するこれらの者については,令和7年度に開催される定時評議員会の終結の時までは経過措置(改正法附則第2条第1項)が適用されることから,新たな要件の適用は,基本的に当該定時評議員会の終結の時以後となること。
<1>理事は評議員を兼ねることができない。(改正私立学校法第31条第3項関係)
<2>理事は,他の二人以上の理事,一人以上の監事又は二人以上の評議員と特別利害関係(一方の者が他方の者の配偶者又は三親等以内の親族である関係その他特別な利害関係として文部科学省令で定めるものをいう。以下同じ。)を有するものであってはならない。(改正私立学校法第31条第6項関係)
<3>他の理事のいずれかと特別利害関係を有する理事の数は,理事の総数の三分の一を超えてはならない。(改正私立学校法第31条第7項関係)
<4>監事は,他の監事又は二人以上の評議員と特別利害関係を有するものであってはならない。(改正私立学校法第46条第3項関係)
<5>評議員は,他の二人以上の評議員と特別利害関係を有するものであってはならない。(改正私立学校法第62条第4項関係)
<6>当該学校法人の職員である評議員の数は,評議員の総数の三分の一を超えてはならない。(改正私立学校法第62条第5項第1号関係)
<7>理事又は理事会が選任する評議員の数は,評議員の総数の二分の一を超えてはならない。(改正私立学校法第62条第5項第2号関係)
<8>役員又は他の評議員のいずれかと特別利害関係を有する者並びに子法人役員及び子法人に使用される者である評議員の数の合計が評議員の総数の六分の一を超えてはならない。(改正私立学校法第62条第5項第3号関係)
(5)理事,監事,評議員及び会計監査人の任期の終期について
 令和7年4月1日以後に選任される理事,監事,評議員及び会計監査人の任期は,いずれかの年度の定時評議員会の終結の時までとなること。(改正私立学校法第32条第1項,第47条第1項,第63条第1項及び第82条第1項関係)
(6)改正法の施行の際現に在任する理事,監事及び評議員の任期について
<1>経過措置について
 改正法の施行の際現に在任する理事,監事又は評議員である者の任期は,次のいずれか早い方となること。ただし,改正私立学校法における理事,監事及び評議員の資格及び構成に関する要件を満たさない者については,令和7年度に開催される定時評議員会の終結の時以後は理事,監事又は評議員であり続けることはできないこと。(改正法附則第2条第1項及び第3条関係)
・現在の任期が満了する日
・令和9年度に開催される定時評議員会の終結の時
<2>任期の延長及び短縮について
 理事,監事及び評議員の資格及び構成の要件について,経過措置(改正法附則第2条第1項)の適用は令和7年度に開催される定時評議員会の終結の時までであり,それ以後は当該資格及び構成の要件が変更となることから,これらの者の任期の終期が改正法の施行の日や令和7年度に開催される定時評議員会と近接している場合などにおいては,当該定時評議員会の終結の時に理事,監事及び評議員の選解任を行うことによって,新制度への移行を円滑に行うことも考えられる。このため,必要に応じ,寄附行為に附則を設けるなどにより,改正法の施行の際現に在任する理事,監事又は評議員である者の任期について,令和7年度に開催される定時評議員会の終結の時などがその終期となるよう,延長又は短縮することが考えられること。
 
2.会計並びに計算書類等及び財産目録等について
(1)作成する書類について
 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に従い,会計処理を行い,会計帳簿,計算関係書類(計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下同じ。)及びその附属明細書をいう。以下同じ。)及び財産目録を作成すること。(改正私立学校法第101条~第103条及び第107条関係)
(2)計算書類等及び財産目録の閲覧及び公表について
 改正私立学校法第103条第2項,第106条及び第107条に基づき作成及び閲覧に供する計算書類等(計算書類及び事業報告書並びにこれらの附属明細書をいう。以下同じ。)及び財産目録と,改正私立学校法第137条第2号及び第151条第2号の規定により公表する計算書類等及び財産目録の内容は同一のものであること。なお,改正私立学校法第19条第3項に規定する収益事業に係る計算書類についても,閲覧及び公表の対象となるものであること。(改正私立学校法第103条,第106条,第107条,第137条及び第151条関係)
(3)監査について
<1>会計監査人を設置しない学校法人においては,計算書類等及び財産目録について,監事の監査を受けること。(改正私立学校法第104条第1項関係)
<2>会計監査人を置く学校法人においては,計算関係書類及び財産目録(貸借対照表に対応する項目に限る。)について,会計監査人の監査を受けること。この場合において,会計監査人の監査の方法及び結果の相当性並びに会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項について,監事の監査を受けること。(改正私立学校法第104条第2項及び改正省令による改正後の私立学校法施行規則(昭和25年文部科学省令第12号)(以下「改正私立学校法施行規則」という。)第35条関係)
<3>私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)が改正され,改正法による改正後の私立学校振興助成法第4条第1項又は第9条に規定する補助金の交付を受ける学校法人のうち,会計監査人を置く学校法人においては,その終了した会計年度に係る計算関係書類及び当該会計年度の翌会計年度の収支予算書に,改正私立学校法第86条第2項に規定する会計監査人の監査報告書を添付すること(補助金の額が少額である場合において所轄庁の許可を受けたときを除く。)。(改正法による改正後の私立学校振興助成法第14条第4項関係)
(4)経過措置について
 会計帳簿並びに計算書類等及び財産目録の作成及び閲覧並びに公表に関する改正私立学校法の規定は,令和7年度以後の事業年度に係る会計帳簿並びに計算書類等及び財産目録について適用すること。また,令和6年度に係る財産目録,計算書類及び事業報告書の作成及び閲覧並びに公表については,「私立学校法の一部を改正する法律等の施行に伴う財務情報の公開等について(通知)」(平成16年7月23日16文科高第304号)及び「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令等の施行について(通知)」(令和元年9月27日元文科高第518号)において定めた様式参考例を参考とされたいこと。(改正法附則第4条関係)
 
3.大臣所轄学校法人等について
(1)大臣所轄学校法人等の基準について
 文部科学大臣が所轄庁である学校法人のほか,それ以外の学校法人で次の<1>及び<2>のいずれにも該当するものは,改正私立学校法第143条に規定する大臣所轄学校法人等(以下単に「大臣所轄学校法人等」という。)に該当することになり,会計監査人を置かなければならないことをはじめとする改正私立学校法第4章に規定する特例が適用されることとなること。(改正私立学校法第4章,改正政令による改正後の私立学校法施行令(昭和25年政令第31号)(以下「改正私立学校法施行令」という。)第3条及び第5条並びに改正私立学校法施行規則第52条及び第53条関係)
<1>事業の規模に関する基準として,次のいずれかに該当すること。
・最終会計年度に係る収支計算書に基づいて計算した経常的な収益の額が10億円以上であること。
・最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が20億円以上であること。
<2>事業を行う区域に関する基準として,次のいずれかに該当すること。
・3以上の都道府県の区域内に私立学校,私立専修学校又は私立各種学校を設置していること。
・学校教育法(昭和22年法律第26号)第54条第3項に規定する広域の通信制の課程を置く私立高等学校(私立中等教育学校の後期課程を含む。)を設置していること。
(2)会計監査人の設置時期について
 大臣所轄学校法人等は,令和7年度に開催される定時評議員会の終結の時以後は,会計監査人を置かなければならないこと。
(3)評議員会の決議が必要となる寄附行為の変更の範囲について
 大臣所轄学校法人等において評議員会の決議が必要となる寄附行為の変更に関し,当該決議を要しない軽微な変更を定めたこと。これにより,大臣所轄学校法人等においては,次に掲げる事項に関する寄附行為の変更には,評議員会の決議を要することとなること。(改正私立学校法第150条及び改正私立学校法施行規則第54条関係)
<1>目的
<2>名称
<3>設置する私立学校や学部等の名称等(届出事項を除く。)
<4>理事の定数,任期,選解任,理事長の選定等
<5>監事の定数,任期,選解任等
<6>評議員の定数,任期,選解任等
<7>理事会及び評議員会の決議
<8>理事選任機関の構成,運営等
<9>収益事業の種類等
<10>解散
<11>寄附行為の変更
(4)常勤の監事の選定の特例の適用に関する基準について
 令和7年度に開催される定時評議員会の終結の時以後は,大臣所轄学校法人等のうち,次の<1>又は<2>のいずれかに該当するものは,常勤の監事を定めなければならないこと。(改正私立学校法第145条第1項,改正私立学校法施行令第4条及び第5条並びに改正私立学校法施行規則第52条関係)
<1>最終会計年度に係る収支計算書に基づいて計算した経常的な収益の額が100億円以上であること。
<2>最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること。
 
4.附帯決議について
 改正法に係る国会における審議において,別添9のとおり附帯決議がなされているところ,各学校法人及び各都道府県においては十分に留意されたいこと。
 
5.改正法等の施行に向けた準備について
(1)全ての学校法人において,寄附行為の変更をはじめ,改正私立学校法に適合するための対応が必要になることから,各学校法人においては,所轄庁が定めるスケジュールに従い適切に対応されたいこと。
(2)各都道府県においては,所轄の学校法人が改正私立学校法を踏まえ,寄附行為の変更をはじめとした適切な対応を行うことができるよう,寄附行為作成例の作成や所轄の学校法人向けの説明会の開催など,必要な対応を実施されたいこと。
(3)改正私立学校法の規定の趣旨や解釈等については,文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiritsu/mext_00001.html)において資料等を掲載しており,その内容は定期的に更新しているので,各都道府県及び各学校法人においては適宜参照されたいこと。また,改正法に関する不明点がある場合には,同ホームページに掲載している専用問い合わせフォームから問い合わせられたいこと。
(4)改正法により,学校法人会計基準がステークホルダーへの情報開示を主な目的とする基準として私立学校法に位置づけられることとなったことから,その内容の改正を予定していること。その改正については追って通知する予定であるが,改正の方向性や様式イメージについては,文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/126/mext_00029.html)において掲載している「学校法人会計基準の在り方に関する検討会報告書」を適宜参照されたいこと。
 
6.その他
(1)所轄する学校法人に関する情報の管理について
 今回の改正により学校法人の台帳の調製及び保存等に関する規定が削除されるが,各都道府県においては,それぞれの公文書管理条例等に基づき,引き続き,所轄する学校法人に関する情報を適切に管理されたいこと。また,学校法人の所轄庁に異動を生じた場合には,新所轄庁への情報の引き継ぎ等に遺漏なきよう対応されたいこと。
(2)アナログ規制の見直しについて
 「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(令和4年6月3日デジタル臨時行政調査会)においてアナログ規制の見直しを実施することとされ,「デジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに係る工程表」(2022年12月21日デジタル臨時行政調査会)が作成されたことに基づき,以下2点について整理したので,遺漏無きよう対応されたいこと。
<1>改正私立学校法第135条第3項第2号の「資料の閲覧」については,近年の急速なデジタル技術の進展の状況を踏まえ,閲覧者の利便性の向上の観点から,オンライン上で行うことを基本とすること。
<2>改正私立学校法第136条第1項の「報告」及び「検査」については,事務所等に実際に立ち入って実施するほか,高精度カメラやオンライン会議システム等のデジタル技術を活用して実施することも可能であること。デジタル技術を活用した方法により立入検査を行う際にも,オンライン会議システムの画面越しに,関係者に対して職員証を提示するなどの対応をすること。なお,今般の改正でその解釈を変えたものではなく,従前から以上のような運用が可能であった旨申し添える。

 

お問合せ先

   高等教育局私学部私学行政課     
   電話:03-5253-4111(内線2533)

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