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2024年6月28日

本日、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、2050年カーボンニュートラル実現に向け、横展開可能なビジネスモデルを確立するため、経済産業省事業の一環として、2030年までの事業開始を目指すCCS事業9案件を、令和6年度「先進的CCS事業」として選定しました。
※CCS:Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素回収・貯留)

1.背景

2020年10月に、日本は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル目標を掲げ、2021年4月には2030年度において温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを宣言しました。また「GX推進戦略」(注1)において、2030年までのCCS事業開始に向けた事業環境を整備するため、模範となる先進性のあるプロジェクトを支援していく方針を示しています。
2024年5月には、貯留事業の許可制度等を盛り込んだ「二酸化炭素の貯留事業に関する法律」が成立し、我が国におけるCCSの事業化に向けた大きな一歩が踏み出されました。

2.概要

こうした背景の下、経済産業省及びJOGMECは、2030年までのCCS事業開始を目指した、横展開可能なビジネスモデルを確立するために模範となる先進性のあるプロジェクトに対し、CO2の分離・回収から輸送、貯留までのバリューチェーン全体を一体的に支援する「先進的CCS事業」として、2023年度より支援を開始しました。(注2)
今年度(2024年度)については、JOGMECにおいて、CCSコストや地下貯留に係る不確実性の低減を図ることを目的として、CCSバリューチェーン全体の設計作業や貯留ポテンシャル評価作業を行う「先進的CCS事業に係る設計作業等」の公募を新たに実施し、今後重点的に支援を行っていく事業を改めて9件選定しました。
この事業を通じて、2030年までにCO2の年間貯留量600~1,200万トンの確保に目途を付けることを目指します。

3.選定案件のポイント

今回選定した9案件は、2023年度に引き続いて発電、石油精製、鉄鋼、化学、紙・パルプ、セメント等の多様な事業分野が参画し、産業が集積する北海道、関東、中部、近畿、瀬戸内、九州等の地域のCO2の排出に対応します。また、今回選定した9案件は、合計で年間約2,000万トンのCO2を貯留することを目標としており、うち5案件が国内での貯留、残り4案件がアジア大洋州地域での貯留を想定しています。

4.選定案件の今後の取り扱い

2026年度までに事業者による最終投資決定を予定しているため、次年度以降は、原則として先進的CCS事業の新規の選定は想定しておりませんが、2030年貯留量目標達成が困難となる、内外情勢の顕著な変化がある等の特段の事情がある場合には、この限りではありません。また、CCS事業性調査への支援は引き続き検討します。なお、最終投資決定に向けて模範となるプロジェクトを継続的に支援すべく、事業の進捗に応じたステージゲートを設け、毎年度末に事業の継続を判断することとします。

(注1)「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」が閣議決定されました(経済産業省ホームページ)

(注2)「日本のCCS事業への本格始動」(経済産業省ホームページ)

【選定案件の位置及び提案企業】
画像1

【令和6年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」に選定した案件の概要(以下、北から南に記載)】

1)苫小牧地域CCS事業

会社名 石油資源開発株式会社、出光興産株式会社、北海道電力株式会社
貯留地域 苫小牧地域(帯水層)
貯留量 約150万~200万トン/年
排出源 苫小牧地域製油所、発電所
輸送方式 パイプライン
事業の特徴         CO2を資源として再利用する「CCU/カーボンリサイクル」やバイオマス発電とCCSを組み合わせた「BECCS」とのCO2輸送パイプラインの接続も視野に入れた、CCUS事業を推進する。

2)日本海側東北地方CCS事業

会社名 伊藤忠商事株式会社、日本製鉄株式会社、太平洋セメント株式会社、三菱重工業株式会社、株式会社INPEX、伊藤忠石油開発株式会社、他
貯留地域 日本海側東北地方沖(海域帯水層)
貯留量 約150~190万トン/年
排出源 日本製鉄(株) 九州製鉄所 大分地区、(株)デイ・シイ 川崎工場(太平洋セメントグループ)及び貯留候補地の地場排出事業者
輸送方式 船舶及びパイプライン
事業の特徴  鉄鋼、セメント産業等脱炭素化の達成が困難な産業を対象に、複数のCO2排出地域とCO2貯留地域を船舶輸送で結ぶ拡張性の高い広域事業を推進する。

3)東新潟地域CCS事業

会社名 石油資源開発株式会社、東北電力株式会社、三菱瓦斯化学株式会社、北越コーポレーション株式会社
貯留地域 新潟県内(既存油ガス田)
貯留量 約140万トン/年
排出源 新潟県の化学工場、製紙工場、発電所
輸送方式 パイプライン
事業の特徴 化学、紙、電力等を対象に、既存の油ガス田等を活用し、脱炭素燃料や環境価値等の付加価値創出を狙った事業を推進する。

4)首都圏CCS事業

会社名 株式会社INPEX、日本製鉄株式会社、関東天然瓦斯開発株式会社
貯留地域 千葉県外房沖(海域帯水層)
貯留量 約140万トン/年
排出源 日本製鉄東日本製鉄所君津地区及び京葉臨海工業地帯の複数産業
輸送方式 パイプライン
事業の特徴 京葉臨海工業地帯におけるハブ&クラスター型CCSと大容量パイプライン導管を備えた拡張性の高い事業を推進する。

5)九州西部沖CCS事業

会社名 西日本カーボン貯留調査株式会社、ENEOS株式会社、JX石油開発株式会社、電源開発株式会社
貯留地域 九州西部沖(海域帯水層)
貯留量 約170万トン/年
排出源 瀬戸内・九州地域の製油所、火力発電所
輸送方式 船舶及びパイプライン
事業の特徴  瀬戸内地域を含む西日本広域の製油所・発電所の排ガス等を対象に、複数のCO2排出源と海域の貯留地を結ぶハブ&クラスター方式のCO2貯留事業を推進する。

6)マレーシア マレー半島沖北部CCS事業

会社名 三菱商事株式会社、ENEOS株式会社、JX石油開発株式会社、JFEスチール株式会社、コスモ石油株式会社、株式会社日本触媒、Petronas CCS Solutions Sdn. Bhd.
貯留地域 マレーシア マレー半島北東沖(減退油ガス田)
貯留量 約300万トン/年
排出源 東京湾臨海コンビナートの鉄鋼・化学・石油精製等を含む複数産業
輸送方式 船舶及びパイプライン
事業の特徴   京浜・京葉地区の幅広い産業を対象に、マレーシアPETRONASとの協力のもとマレー半島北東沖における貯留を想定した海外CCSバリューチェーン構築の事業性を検証する。
備考 審査の結果、有望と評されるものの更なる初期的検討を通した将来性の見極めが必要と評価され、その提案内容のうち、初期的検討を実施する前提で契約締結に向けた協議を行う。

7)マレーシア サラワク沖CCS事業

会社名 石油資源開発株式会社、日揮ホールディングス株式会社、川崎汽船株式会社、Petronas CCS Ventures Sdn. Bhd.、JFEスチール株式会社、三菱瓦斯化学株式会社、三菱ケミカル株式会社、中国電力株式会社、日本ガスライン株式会社
貯留地域 マレーシア サラワク州沖(海域枯渇ガス田)
貯留量 約190~290万トン/年
排出源 瀬戸内地域の製鉄・発電所・化学工場等の複数産業
輸送方式 船舶及びパイプライン
事業の特徴   瀬戸内地域のコンビナート連携による排出CO2の出荷拠点への集約に加え、コンビナート外の回収CO2も内航輸送で同拠点に集約し、マレーシアに外航輸送・貯留する事業をマレーシアPETRONASと共同で推進する。

8)マレーシア マレー半島沖南部CCS事業

会社名 三井物産株式会社、中国電力株式会社、関西電力株式会社、コスモ石油株式会社、電源開発株式会社、九州電力株式会社、株式会社レゾナック、UBE三菱セメント株式会社
貯留地域 マレーシア マレー半島東海岸沖(海域減退油ガス田、帯水層)
貯留量 約500万トン/年
排出源 近畿・中国・九州地域等の発電・化学・セメント・石油精製を含む複数産業
輸送方式 船舶及びパイプライン
事業の特徴   西日本広域の拡張性が高く多産業に跨る排出源からCO2を大規模回収し、マレーシアPETRONAS及び仏TotalEnergiesと共にマレー半島東海岸沖で開発する貯留ハブに越境輸送・貯留する事業を推進する。

9)大洋州CCS事業

会社名 三菱商事株式会社、日本製鉄株式会社、三菱ケミカル株式会社、三菱商事クリーンエナジー株式会社、ExxonMobil Asia Pacific Pte. Ltd.
貯留地域 大洋州(海域減退油ガス田、帯水層)
貯留量 約200万トン/年
排出源 中部(名古屋、四日市)の製鉄所を含む複数産業
輸送方式 船舶及びパイプライン
事業の特徴  名古屋港、四日市港の幅広い産業を対象に、大洋州の海域での貯留を想定した海外CCSバリューチェーン構想の事業性を検証する。

担当

資源エネルギー庁 資源・燃料部
燃料環境適合利用推進課 CCS政策室長 佐伯
担当者:渡辺
電話:03-3501-1511(内線 4681)
メール:bzl-s-shinen-carbon_management★meti.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。

 

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