厚労省・新着情報

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和6年4月25日(木)10:00~

場所

中央合同庁舎5号館19階共用第8会議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

  1. (1)職場のメンタルヘルス対策の現状等について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○夏井産業保健支援室長補佐 事務局です。本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより、「第2回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただき誠にありがとうございます。報道関係者の皆様にお願いです。カメラ撮りはここまでとしてください。
 本日の出席状況です。井上構成員、江口構成員が御欠席と伺っております。それからオンラインでの御参加状況ですが、新垣構成員、大下構成員、砂押構成員、三柴構成員、森口構成員におかれましてはオンラインで御参加と伺っております。なお、神村構成員におかれましては遅れての御参加と伺っております。
また、事務局のほうで変更がありましたので、御紹介申し上げたいと思います。3月の第1回の検討会においては、産業保健支援室で事務局を務めておりましたが、今年度から役所で組織の改変がありまして、新たにメンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室が発足いたしました。今年度からは、この新たに発足しました室で本検討会の事務局を担当させていただくことになります。それでは御紹介申し上げます。室長の富賀見です。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 富賀見でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 続きまして、中央労働衛生専門官の辻川です。
○辻川中央労働衛生専門官 辻川です。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 第1回で御紹介できておりませんでしたが、労働衛生課の労働衛生管理官をしております井口です。
○井口労働衛生管理官 井口でございます。よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 次に、オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に御発言の仕方などを説明させていただきます。会議中、御発言の際は「手を挙げるボタン」をクリックし、座長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除し御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしてくださいますようお願いいたします。また、議題に対して御賛同いただく際には、カメラに向かってうなずいていただくことで「異議なし」の旨を確認させていただきます。
 続きまして、資料の確認です。会場にお越しになっている方には机の上のタブレットで、オンラインで御参加されている方については画面共有の画面にて御確認をお願いいたします。本日の資料は、事前にお送りしておりますとおり、議事次第、資料1~3、参考資料1~8となります。なお、参考資料1、2は、職場環境改善に関するパンフレットとなっております。これについては、前回、職場環境改善がどのようなものかということで、構成員の皆様から御発言がありましたので、今回、職場環境改善に関するパンフレットを御用意させていただいております。また、参考資料3は平成26年2月4日付け労働政策審議会答申となっております。前回の検討会での議論でこの件が話題になっておりましたので、関連する資料として御用意をしております。参考資料4~8は関連する条文、指針等です。
この後、議事に沿って画面共有にて御覧いただきますが、オンラインの方におかれましては、不足などがありましたら事務局よりお送りいたしますので、コメントまたは御発言にてお申し付けください。また、会場にお越しの構成員の皆様におかれましては、タブレットの操作について御不明な点がありましたら、お申し付けいただけましたら事務局のほうで御説明にうかがいます。よろしくお願いいたします。タブレットの操作は大丈夫でしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、以降の議事進行については、川上座長にお願いいたします。
○川上座長 事務局、ありがとうございました。座長を務めさせていただきます川上です。構成員の皆様方にはお集まりいただき、座長からも御礼を申し上げたいと思います。また第1回では、非常に貴重な意見をたくさん聞かせていただきありがとうございました。それでは、これから議事に入りますが、冒頭、まず、事務局で用意した資料の説明をいただこうと思います。まだ2回ですので、その後は比較的自由に構成員の皆様方から御意見を頂こうと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 事務局の富賀見です。私から資料について御説明いたします。座長からありましたように、今回の第2回は、第1回に引き続きましてフリーディスカッションということで想定しております。
 まず、資料1を御覧ください。これは前回の第1回の検討会における主な御意見の振り返りです。3ページ以降はある程度網羅的に頂戴した御意見を列挙しておりますが、この冒頭2ページに主な御意見として、前回皆様から頂いたものを大くくりに3つの観点でまとめております。まず1つは、現行、50人以上の事業場に義務付けているストレスチェック制度の効果について。2、3として、現行努力義務の範囲になります集団分析及び職場環境改善、並びに50人未満の事業場におけるストレスチェックについてです。
 まず、1のストレスチェック制度の効果についてです。これについては、前回堤構成員から、ストレスチェック制度について一定の効果があることを示す学術論文と研究報告書等のレビューを頂きました。これに対して、これまで大企業でストレスチェックを実施してきたことによってどのような効果があったのか、それを説明できるものがないと、単に中小企業に義務付けだけしてもポジティブに取り組まれず、懸念があるという御意見や、ストレスチェックの効果に関する分析があると事業所も参考にして取り組みやすいといった御意見を頂戴しています。なお、この辺りについては、本日も資料で別途用意していますが、ストレスチェックに取り組むことにより得られる効果について、またお示ししていきたいと思っています。
 次に、2の集団分析及び職場環境改善です。職場環境改善とは、その定義にも関係しますが、現状、人事労務管理に関わるような改善策は余り実施されておらず、事業場によっていろいろな対策が取られているが、個別の事例ではうまくいったケースが見られるといった御意見や、ストレスチェック制度は職場環境改善にいかにつなげていくかという一次予防の制度であるということを、もっと周知徹底していくべきという御意見、また、そういった意味からも、集団分析、職場環境改善を義務化していくべきといった御意見を頂戴しています。ただし、一方で、コストも含めた経営者の負担は無視できず、地産保による支援や環境整備も併せて検討していくことが必要という御意見も頂戴しております。
 次に、3の50人未満の事業場におけるストレスチェックについてです。これは、労働者であれば事業場の規模にかかわらず、50人未満事業場におけるストレスチェックを義務化すべきといった御意見、またその一方で、中小企業では健康管理を行う専門的な人材が余りいないことから、本当に有効に活用できるのか疑問であり、地産保等によるバックアップは不可欠といった御意見を頂戴しております。資料1は以上です。左下の「本のマーク」の所をクリックしていただき、資料2を御覧ください。
 資料2は、ストレスチェックの効果に関する調査研究等についてです。前回、堤構成員にレビューいただきました論文、報告書等をベースに、実施内容別に整理しております。2ページを御覧ください。まず1ストレスチェック単体について、それを導入、実施することによって得られる効果です。ここにありますように、労働者におけるセルフケアの効果として、ストレス対処実施意欲の増進やメンタルヘルスに対する意識の向上、また事業場のメンタルヘルス対策の促進といった効果が報告されています。
 3ページ、2職場環境改善に取り組むことにより得られる効果についてです。セルフケアなど、個人向けアプローチに比較して効果が持続しやすいといったこと、健康指標の改善、小規模事業場での取組において労働者に達成感が得られたといった効果が報告されております。
 3はストレスチェックとともに、上は労働者全員に行った保健指導の面談、下は義務の医師面談と、少し位置付けが違いますが面談と職場環境改善を合わせて実施した場合の効果についてです。労働者の身体的ストレス反応の改善、労働者において、医師面談や職場環境改善のそれぞれに対して有用性が実感されているといった効果が報告されております。
 4ページの4は、ストレスチェックとともに集団分析と職場環境改善を合わせて実施した場合に得られる効果についてです。労働者の心理的ストレス反応の有意な低下、労働生産性の向上といった効果が報告されております。
 下の3つは、令和3年度の調査研究事業からの事例ベースの引用です。メンタルヘルスの理解ある風土の醸成、メンタルヘルス不調者の減少、総合的な健康リスクの改善、物理的環境と身体面の負担感の低下といった効果が報告されております。
 最後、5ページです。これはこれまでのものとは少し違い、現在標準的に用いられている「職業性ストレス簡易調査票」が、ストレスチェックの調査票として有効に機能していることについての調査研究結果です。ストレスチェック結果と心身のアウトカムの関連性、メンタルヘルス不調者のスクリーニング効率、または1か月以上の疾病休業をアウトカムとした場合の予測妥当性、同様に、離職をアウトカムとしたときの予測妥当性、こういったところで高ストレス者に選定された者について有意な数字が認められております。
 この資料は5ページまでですが、以上が第1回の検討会で堤構成員にレビューいただいたものをベースに、ストレスチェック制度に一定の効果があるとする調査研究結果等について整理させていただいております。前回、堤構成員からも研究バイアスといったコメントもありましたが、現時点では効果がなかったという報告は確認されておりません。この資料については、引き続き、これら以外にも構成員の皆様において論文や報告書など、幅広く同様の形で整理できるものがありましたら是非御提供いただき、事務局において整理していきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いします。
 資料の一覧に戻っていただき、資料3を御覧ください。資料3は、令和3年度の厚生労働省委託事業で行った「ストレスチェック制度の効果検証に関する調査等事業」の報告書の抜粋です。2ページのように、この調査は事業場と労働者の双方にアンケート調査を実施しており、前回の第1回の資料でも一部を御紹介しましたが、事業場側のデータを中心にお示ししておりましたので、今回、その補足として労働者側から見たストレスチェックの有用性について御紹介させていただきます。
 3ページを御覧ください。「ストレスチェックの個人結果をもらったこと」で、労働者の7割は「とても有効」、「いくらか有効」と回答しております。4ページを御覧ください。ストレスチェックを実施している事業場では、いずれの規模においても、4割から5割程度の労働者はトレスチェックを通じて「自身のストレスを意識するようになった」と回答しております。
5ページを御覧ください。高ストレス判定を受けた労働者に関してです。約4割が「高ストレス状態に気付くことができた」と回答をしています。6ページは、面接指導を受けた労働者で、7割は「とても有効」、「いくらか有効」と回答しており、このグラフはその有効とする具体的な効果についての回答です。「高ストレス状態の解消に向けて適切な指摘を受けられた」を約3割が、また、職場から「就業上の措置を講じてもらえた」と約2割が回答をしております。
 最後7ページは、労働者のストレスチェックの受検に関する困り事を聞いたものです。半分以上は、「特に困り事はなかった」と回答しています。多いものでも、3割弱が「ストレスチェック質問票に記入する時間や労力が負担だった」と回答しているものがありました。資料の最後の8ページは、自由記載欄のコメントを御参考までに付けております。以上が本日御用意している資料1~3の説明です。
○川上座長 事務局、ありがとうございました。参考資料は特にここで御説明せず、各人で見ていただくということでよろしいですね。分かりました。今日の資料の御説明を頂きましたので、これから意見交換に入っていきたいと思っております。基本的には構成員の皆さんから、御自由に御発言をと思いますが、資料の説明に関する質問なども含めて結構かと思います。前回からいただいた意見もまとめてありますので、更にそれに対する御意見を深掘りする補足意見などもあれば、是非お願いしたいと思います。また、オンラインでの御参加の構成員におかれましては、御発言される場合は「挙手ボタン」を押してお知らせくださるようお願いできればと思います。それでは、御自由に御発言を頂ければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。では渡辺構成員、よろしくお願いします。
○渡辺構成員 渡辺です。よろしくお願いします。全体を通してのことですが、「ストレス」という言葉に置き換えられているのですが、ストレスには「ストレス症状」という意味合いで使われている場合と、ストレス因子という意味合いで使われている場合の両方が混在しています。現場ではほとんどがストレス症状で捉えられている。私どもが多くの職場で、「ストレスチェックとは何のチェックだと思われますか」と聞くと、ほとんどの人がストレス症状チェックというように理解されている。職場環境改善であれば、本来はストレスファクター(ストレス因子)のチェックというところ、ここの誤解と言いましょうか、ここをいかに訂正していくかが非常に大きな課題だろうと思っております。全体を通しての感想です。
○川上座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。茂松構成員、よろしくお願いいたします。
○茂松構成員 本日、学術論文のレビューをまとめていただき、誠にありがとうございました。資料2と3のストレスチェックの効果としては、やはり労働者自身に気付きが与えられていることは確かであろうと思います。ただ、こういう研究というのは被検者に回答を求めてですから、聞き方によって大分変わるということも、一つあろうかと思います。今は業種や規模別によっても、大分異なるのではないかと思います。そういうことを考えると、業種や個人の事例などに合わせて、こういう結果を出していただくことが一番いいのではないかと思っております。
 さらにこの有効性を考えたときに、職場環境改善については集団分析が一番重要になると思いますし、各職場の課題を洗い出して改善策を講じることが重要であろうと思っております。特に基本は、作業管理と作業環境改善管理であろうと思いますので、そういうことでフィードバックを受けながら、労働衛生の管理をしっかり徹底していくことも重要であろうかと思っております。実施体制を構築して、適切な実施プロセスを確立することが必要だろうと思っております。
 前回も申し上げましたけれども、一番重要なことは、やはり産業医が専門的知見から職場環境改善活動に積極的に関与していくことと、事業主と労働者の信頼関係の構築に一番問題があろうかと思っておりますので、ここを重要視していただければと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。先ほどの冒頭の部分は、業種や規模別の事例もきちんとまとめたほうがいいという御発言だったでしょうか。
○茂松構成員 こういうことに気を付けようということを全体に言うのではなく、業種別とか規模別にこういうことが重要であるとまとめることが重要ではないかと思っております。
○川上座長 ありがとうございました。オンラインのほうで三柴構成員が挙手されているということでした。三柴構成員、お願いできますか。
○三柴構成員 今出た御意見と、少し重複するところもあるかもしれません。今回、数分お時間を頂戴して、かなり思い切ったことを申し上げたいと思います。対策の実効性を考えると重要と思うため、お許しいただければと思います。健康対策、特にメンタルや生活習慣病対策では、これまでの労働衛生政策のデータをベースにした技術的な政策展開が中心だと、限界があると思っております。そもそも主観調査によらざるを得ないところもありますけれども、事件や事例に多く触れてきた立場から、もう少し踏み込んだ感触を得ております。
 前回も申し上げたとおり、労使間で価値観や能力に関する相性の悪さが背景にあることが多いからです。あまたの事件や事例を見てきて、もともと子供の頃から叱られたことがなく、上司から初めて叱られて適応障害とか、余り親に褒められたことがなく、親に褒められそうな会社に無理に入って、空回りをして心を病んだとか、上司や周囲と気が合わず、どこかでやさぐれスイッチが入ってしまって、敵対的態度を取り続けて、本人も周囲もストレスをため込んで休復職もうまくいかなかったとか、もともと定型的な仕事しかできない人を、無理に管理職や専門職に引き上げて、本人も何も言えずに調子をくずしていったとか、実に多様な背景・脈絡を背負った例が多いのです。
 本人がメランコリックで、会社が業績をあおり過ぎて過労などという単純なモデルは今や一部で、逆に業務の質や量が大きくても、価値観と能力が合っていれば何とかクリアできるし、むしろそれが必要な場面もあるだろうと思います。理系的・技術的方法論も必要ですけれども、そればかりで解決しようとしても難しいかと思います。産業医にも人と組織の機微をわきまえたり、もめ事にも肝を据えて対応できる方ばかりではありません。
 ヨーロッパでは日本と少し違って、ストレスの問題は心理社会的リスクの問題として、化学物質などと同じように、事業者の管理責任を強化しようとしている、そういう流行りがありますが、思うように成果が上がらず、ともすれば数字づくりのような感じになっているように思われます。
 では、どうするか。政策も現場もデータは根拠ではなくて参考にして、良い悪いで評価せずに、むしろ事例に応じた対応を重視することだろうと思います。「データとともに」事例が重要だと思います。また、これまでより幅広い職種に役割を与える必要があります。つまり、ストレスチェック自体は続けるべきだけれども、結果の活用場面では、点数の高い低いだけで評価しない。
 また、価値観や能力の違いを踏まえた事例対応の専門となりますと、人事と人事に詳しい法律家です。例えば、まともな人事は責任感が強く、事例検討をしていても実効的な方策を鋭く指摘しますし、社員のことも大切に考えています。人事に詳しい法律家というのは、失敗事例をたくさん知っていて、もめ事対応上も肝が座っているし、現実的な対応策も工夫できます。経営者や組織全体への説得力も非常に強いです。単なる法律家では駄目ですが、人を見る法律家、医療・心理職とも交流できる法律家であれば、予防に力を発揮します。これまでは医療者と心理職が対応の中心でしたけれども、今申し上げた二者のうち適任者を加えて、従来の関係者と積極的に対話と協働をさせるべきだと考えます。うちの学会でも、既に二者に役割を与えた事例検討の効果について、サンプリングレベルではデータを出しています。異文化交流というのは関係者を成長させて、確実に予防のレベルを引き上げると思います。鍵は技術と人、組織、社内ルールではないかと思います。長くなりまして失礼しました。以上です。
○川上座長 非常に貴重な意見をありがとうございました。感謝いたします。それから、オンラインのほうで砂押構成員が手を挙げていらっしゃると思いましたが。
○砂押構成員 前回の資料の「メンタルヘルスに関する現状等」うち「精神障害の労災補償の状況」の部分を拝見いたしますと、支給決定件数では「パワーハラスメント」が1位、「いじめ」が4位、「セクシュアルハラスメント」が5位、「上司等のトラブル」が9位になっています。ここから見て取れますのは、やはり対人関係における職場環境の改善ということは、メンタルヘルスにとって非常に重要なものだということではないでしょうか。
 労働法を見た場合、パワハラやセクハラにつきましては、それぞれ個別法が対策を打ち出されております。相談窓口を設置するとか、プライバシーを尊重する、そして不利益な取扱いは禁止するというようになっているわけです。しかし、よく見ますと、人事の窓口に相談に行く人というのは、よほどな場合のようです。なかなか簡単には相談しに行きにくい。なぜならばプライバシーが守られると言っても、結局上司等に知られてしまい、報復人事などが行われてたりしてしまうのが現状のようだからです。会社には人事権がありますので、それなりの理由を付けて必要性などを強く主張して、「これはそういう意味ではない」と言われてしまうと、なかなか覆すのが難しいわけです。それで結局のところ、誰にも相談せず泣き寝入りということになってしまうことが多いように思います。
 その点、ストレスチェックの意義といたしまして、医師や看護師のように、法律上守秘義務が課されている人たちに相談できる点が挙げられるんじゃないかと思います。やはり相談者にとって安心感がありますし、医師は、事業者に意見を述べることになっておりますが、医師のサイドから、情報管理も含め人事労務担当者と連携した慎重な対応が行われることが前提となっておりますので、職場改善には、かなり期待が持てるのではないかと思われます。
 また、ストレスチェック結果を集団分析することで、本人を特定することなく職場でハラスメントやいじめが起きていることを知ることができるという点も、職場環境の是正に大きく寄与できる点ではないかと思います。
そこで、質問事項についてですが、ただパワハラ、セクハラ、いじめを一括りにした質問だけではなく、ハラスメントもさまざまですし、いじめというのは同僚による嫌がらせとか、同僚による村八分みたいなものが多いと思うのですが、その職場にどのようなハラスメントやいじめが生じているのか、そこら辺をもうちょっと具体化した質問によりその具体的内容を知ることができれば、その状況に応じた職場環境改善策を取ることがより容易になるのではないかと思います。
 特に、パワハラというのは非常に判断が難しいものです。仕事には叱責がつきもので、どこからがパワハラで、どこからが正当な叱責なのかを線引きすることは非常に難しいからです。パワハラがあると思っていても、実際には、パワハラに該当しない場合もありますし、個人と捉え方が大きく影響してきますし、本当にパワハラが生じているのか、その辺の質問事項にも具体化が必要な気がいたします。
 裁判例におきましても、ハラスメント、特にパワハラによる精神障害発症及びそれを原因とした自殺について争われるケースが増えております。職場のハラスメント解決の観点から、ストレスチェックの意義は大変大きいように思い、長くなりましたけれども、以上のように申し上げさせていただきました。
○川上座長 ありがとうございました。今の御発言にあった、ストレスチェックとハラスメントの関係や位置付けについて、何か事務局のほうで御発言等がありましたらどうぞ。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 先生、御意見をどうもありがとうございました。現時点での補足だけさせていただきます。パワハラやセクハラという、いわゆる職場のハラスメントは、57項目の質問票には現在含まれておりませんが、80項目の質問票には、直接的に職場のハラスメントの有無を質問する項目が含まれております。実際にその80項目やそれ以上の項目の調査票を活用している企業の割合も、今、2割ぐらいの企業で使用されています。ただ、この2割という数字は、健康経営度調査で各社、どういった調査票を使っていますかというアンケート結果の数字なのです。ですから、すごくよく取り組んでいる企業の数字になるので、世の中全体の数字よりは上乗せした数字かもしれません。
 そういったことで、ハラスメント関係の質問が含まれた調査票を使用して、先生から今御指摘いただいたような形での集団分析、その先の職場環境改善につなげてということができるようになっており、それに取り組んでいる企業も一定あるということで、状況としてはこれからです。座長にも補足いただきたいと思いますが、確か先生が関わられている所で、そういった展開の事例があるように、この前ちらっとお伺いしましたので、補足をお願いできればと思います。
○川上座長 今、補足をありがとうございました。私の事例というわけではないのですが、こうした80項目でハラスメントの項目を1問で聞いている事業者では、それを集団分析に使用して部署別のハラスメントの高低などを把握しながら、多ければ対策を立てるということをやっている所もあるという、そのようなところです。ありがとうございました。
 今、お話を伺っていて、例えば職場で弧立、弧独にしているような人がいるかどうかということも調査票にあると、今はないのですが、あるとハラスメントに近いようなことがあぶり出せるのかなと思ったりもしました。
 それでは、ほかの御発言を頂こうと思います。矢内構成員、お願いいたします。お手を挙げておいていただけたら、私のほうで見つけて順番に指名しますので。
○矢内構成員 矢内です。私のほうから現場の立場から2点発言をさせていただきます。1点目は、ストレスチェックの効果についてです。弊社でもストレスチェックを継続していく中で、高ストレス者が若干減ってきたり、健康リスクが低下してきたりと、この制度が企業の中で育って、一定の効果を実感しています。ただ、一方で国の報告にもありましたように休職者は減らない、不調者も増加するという状況の中で、不調者ケースは、三柴先生からもありましたが、やはり複雑な背景、要因を持たれており、ストレスチェックだけでは対応が難しいと思っています。実際、今フォローしている不調者がストレスチェックで何割が高ストレスになるかというと、弊社では大体3割ぐらい。そしてストレスチェックで医師面接や健康相談に来た方の中で、そのままフォローが必要になるケースは2割ぐらいということで、一定の不調者対応には有効ですが、全体を見わたしたときには、メンタル施策の一部と捉えています。
 2点目は、集団分析と職場環境についてですが、弊社も継続して実施しています。その中でストレス判定図をもとに職場への報告をし、対応を検討するというプロセスはありますが、それだけでは職場の納得感が得られないところがあって、判定図以外にも事業所規模や業種、性別、様々な属性で分析をしたデータをきちんと手元に置いた上で、職場と対峙するという形を取っています。健康だけの切り口では、なかなか現場で理解していただくことが難しかったり、ともすると片手落ちになるようなところもありますので、人事部門と連携をして、そのほかの調査との相関や労働時間、退職率など多面的に評価をしていくことで、現場と具体的な対話ができるという現状です。対話を通して、現場と上流での対策、例えば仕事の負荷が高い背景に、実は要員不足があったというときに、要員対策というところまで踏み込める可能性もあります。逆に上司の支援の中で、日々のちょっとした声掛けが足りなかった点などに気づき対応するなど、具体的で実効性のある対策につながると思っています。
 また、こういったプロセスの積み重ねが複雑な困難ケースの対応においてもしっかり対話できるような場が持てるという点が、この職場改善や集団分析の1つの効果だったと思っています。
 これはあくまでも弊社の事例ですので、事業所規模や会社の様々な背景で対応プロセスは変わってくると思いますので、改善を義務化するという方向性の場合には、定義や考え方など、事業所で今まで育ってきたよい事例が、逆に制約されるような形になったり、数字だけが先走って、やることありきになるような形にならないように、この場で本当に慎重に議論できればと感じています。
○川上座長 ありがとうございました。続けて種市構成員、及川構成員の順でお願いできればと思います。種市構成員、よろしくお願いします。
○種市構成員 ありがとうございます。種市です。職場環境改善としてストレスチェックを活用する場合と、あとは高ストレス者などが面接に行くという形で個別対応をする場合と2つあるわけですが、どちらも全てに対して万能というわけではなくて、それぞれ有効なポイントというのは違うのだろうと思います。
 職場環境改善については、例えば職場の全体の制度、あるいは職場の仕組み自体に何か個別の労働者に対して負荷を与えるということが想定されて、あるいは職場風土がある特徴を持っていて、その結果、ある部署の負荷が高くなっている。結果として、個々人が負担に感じて不調が起きているというふうに、全体的な平均値が高くなっているという形で見ることができて、対策についても例えば全体的な業務負荷を下げるなど、あるいは全体的に意見が言いやすいような職場作りをするなど、そのような形で改善されていくということが考えられるのではないか。そうすると、例えば問題上司、あるいは個別の性格の問題がどうしても職場でトラブルを起こしているという社員の問題など、そういう個別のケースについては平均値の中の1人になってしまうので、結果としてなかなかそれが見えにくい。ハラスメントの項目も30人の部署で、ある方がいじめられているというふうに言ったとしても、それは30分の1に薄まってしまうので、どうしてもなかなか届かないということがあります。
そうすると、それを補うために一方ストレスチェックの中で、個別に相談をしたいという人がいた場合に、何らこう心理的な抵抗なく相談につなげられる仕組み作りというところが必要になるかなと。現状では医師面接の実施率も、まだまだ低いだろうと考えられます。また医師面接を希望しない者に対するフォロー、例えば産業保健スタッフによる相談というものも、まだまだ周知されたり、あるいは普及しているとは言い難いと思いますので、この2つを補うことによって全体的な対策になるのではないかと思いますので、特にその三柴構成員がおっしゃっていたトラブルが起きたときのトラブルシューティングの問題など、そういう個別の問題に対しても有能な相談者が対応するということは、個別事例として扱うと割り切って、2つに切り分けていくやり方が1つあるのではないかなと思いました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では及川構成員、お願いできますか。
○及川構成員 及川です。ありがとうございます。御説明いただいた資料3ですが、「特になし」という回答が大変多く散見されるので、どういうふうに理解をしたらよいのかなと思ってちょっとお尋ねします。例えば4ページですと、規模が小さいほど「特になし」というものが大変多くて、特に49人以下ですと、もうほぼ自身のストレスを意識するようになったと同じぐらいの44.2%が「特になし」ということが出ています。
 5ページでは、高ストレス判定を受けた者について、4割が高ストレス状態に気付くことができたと回答したということなのですが、受けたという中での「特になし」も29.4、受けていない39.9、分からないが45.7。
 6ページでは、面接の効果について「特になし」が37.9ということで、「特になし」というところでこの中をもう少し数が多いので分けなくてはいけないかなとも思うのですが、どういうふうにこの資料について受け止めていらっしゃるのか、分析されているのか教えていただければ有り難いと思います。以上です。
○川上座長 御質問ありがとうございました。事務局から何か補足できることはありますか。
○夏井産業保健支援室長補佐 御質問ありがとうございます。「特になし」の受け止めということですが、このときの調査の段階では、その調査票においては「特になし」より更に細分化した聞き方をしていませんので、このデータではこの「特になし」というところまでしかこの調査では把握をしていないです。すみません、ちょっとお答えになっていないかもしれませんが。
○川上座長 ありがとうございました。このときに私も検討会の座長をさせていただいて、この「特になし」が多い問題は気付いていましたが、確かに質問がこれ以上細かくなくて分類ができないのです。確かに「特になし」が多いのは気になるのですが、そのときに検討会の議論では少なくとも計上された半数以上の方が何らかの効果を、それぞれの側面で感じていらっしゃるのかなということで、比較的ポジティブには受け止めていました。
 それでは、中野構成員、お願いいたします。
○中野構成員 ありがとうございます。日本看護協会の中野です。先ほど御発言の中で、事例対応が重要ではないかという御発言がありました。その事例の状況に関して価値観のずれや能力と仕事のマッチングなど個別性の高い事象にどう対応していくのかを考えたときに、幅広い専門職に役割を与えることは必要ですが、例えば、事例に十分対応していくために、時間がかけられて、継続的に支援できる意味で既存の関わりのある職種を量的に確保することも、必要になってくると思います。産業医の方にしっかりと役割を果たしていただいた上で、一緒に働く、協働する医療関係職種が量的に確保されることで、個別にしっかりと対応していく体制ができると思います。
 一方で、個々の事業所様がこのような体制をそれぞれ取ることの難しさも、十分認識はしているところです。このような体制が事業所の外側、地域の中でどれだけ醸成されるのかという部分と、どれだけ使いやすいものになるかという観点から、まず第一歩は前回の議論のまとめにも書いていますように、地産保での体制を強化するなどがあるかと思います。地域の体制を強化して、支援が進むような措置のようなものも、この制度を推進していくときに一緒に考えていく必要があると思います。
○川上座長 ありがとうございました。ちょっとすみません、私が見落としていまして、大下構成員、お願いできますか。
○大下構成員 日本商工会議所の大下です。これまでの議論を踏まえ、中小企業団体としての見解を申し上げたいと思っています。
 我々としては50人未満のストレスチェックの義務化は、現時点では極めて難しく、現行制度を一律に適用拡大することは適切でないと考えております。その理由として、申し上げてきた内容との重複もございますが、1点目としては、やはり実施するリソースが十分でないということが挙げられます。中小企業では専任の人事担当者がいないケースが想定され、それをカバーできるような公的なサポートも十分にあるとは言い切れない状況下でございます。そのうえでチェックだけではなく、集団分析、職場環境改善の実施も行うことは困難です。ストレスチェック制度の性質上、プライバシーの確保ということが非常に大事ですが、従業員が2人の事業所で、プライバシーの確保が現実的に実施可能かというと、これも相当な困難が想定されます。
 2点目として、ストレスチェックが50人以上の事業所で実施をされていても、なおメンタル不調者が減らず、精神疾患による労災が減らない状況がございます。当然様々な議論がございますし、研究結果として一定の効果は見込まれていることは承知しておりますが、申し上げた通り企業側のリソースが不足している中、50人未満の事業所にも強制力を持って実施させるとしたときに、説得力のあるデータかというと、一定議論の余地があると思います。メンタル対策が必要ない、ということではなく、そうした取組を進めていく上で、ストレスチェックの義務化というのが最適な手段か点については、慎重な議論が必要ではないかと思います。
 先ほど三柴先生からお話のあった価値観の違い、あるいは個々の事例に活用は中小企業においてはより重要かと思います。大企業であれば、上司・部下間価値観の違いへの対策として配置転換なども考えられますが、中小企業では困難です。その前提に立った時、やはり個々の事例が大事であって、中小企業への一律のストレスチェックの義務化については、負担等の兼ね合いもあり、慎重に検討すべきと考えています。
 ストレスチェック制度の中小企業への義務化という方向性ではなく、むしろ引き続きメンタルヘルスの重要性について、中小事業者も含めて周知をしつつ、働く人が事業所を通さない形で、セルフチェックができる体制を作り、身近な所でいつでも相談できる状態にすることが非常に大事であると思います。
 繰り返しになりますが、メンタルヘルス対策の重要性は論を待たないと思います。それゆえに、本当に実効性のある対策について、より慎重に議論して考えるべきと思います。私からは以上です。
○川上座長 ありがとうございました。続いて、オンラインから森口構成員、挙手されていますので、お願いいたします。
○森口構成員 よろしくお願いします。森口です。先ほど種市先生がおっしゃった相談の窓口のことは私も同じような課題感を持っていまして、実際、中小企業の社員さんから面接指導の申出があったようなときに、私の前に面接にお越しになっていろいろお話をする前に、終わったら会社に意見書を書きますという話をすると、全然、制度を理解されていなくて、そんなことがあるのだったらやはり止めますということを言われることが非常に多いです。面接の場でそういう話になれば、ではこれは面接ではなくて健康相談ということで話しましょうかということに切り替えたりもできるのですが、恐らくあれが敷居の高さになっていて、申し出られないということが多くの社員さんの中で生じており、結局、自分で抱えてしまい、動けないということになっているのではないかと思っています。面接指導ということだけではなくて、既に幅広く対応している会社などもあるとは思いますが、中小企業は多分、人事・法務の方などもその辺の理解が十分ではなく、御本人への説明も足りていないのだろうと思いますので、様々な形で対応できますよということを、私自身は産業医として衛生委員会などでもよく言っています。その辺りをちょっと強調していただくと、産業医一人が対応する場合でも変わってくるかなと思ったりしています。
 また、今、大下先生がおっしゃったような部分も同じように資源不足というところは、私も感じているところで、例えば私は京都の医師会の理事をしていますが、地産保の状況などを見ていますと、かなり医師の地域偏在が大きくて、京都市内は逆に産業医が余っていると言ってもいいぐらいですが、京都北部、南部に目を向けますと、産業医をやっている余力はないと言われることがあり、限られた先生が、何度も何度も登録医として地産保の仕事をされているというような状況もありますので、この辺りがもしさらに50人未満に、この制度を広げていったときに、回るのかというところはかなり課題があるだろうというふうに思っています。
 また、職場環境改善をやって、うまくリードしていけるような素養がまだ多くの産業医の先生は持ち合わせていない可能性が高いと思っていますので、実際、そういう制度に持ち込むとすれば、産業医の教育というようなところも、更に踏み込んだ議論をしていかないと、実際、受皿として機能しないということになってしまう危惧があるなと思っています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では挙手の順で、高野構成員、茂松構成員の順でお願いいたします。
○高野構成員 日精診の高野です。よろしくお願いします。先ほどの大下構成員の御発言にも関連することなのですが、また資料1でも前回の意見の3つ目に小規模の事業所におけるストレスチェックについてということもありました。あと、第14次防でも50人未満の実質数量を上げようというようなことは、アウトプット指標にも挙げてあると思いますが、なかなか私も一筋縄ではいかないだろうなと思っています。小規模になればなるほど、お互い顔が見える関係です。実際に実施者が内部にいないだろうし、実施事務従事者、つまりそれを取りまとめる方は内部にいるけれども、小規模で顔が見えすぎる関係の中で、本音で回答しにくい環境で適正なデータを取れないと思います。そうならない環境が作れるだろうかというようなこともあると思います。実際に50人未満でも実施している事業所は幾つかあると思いますので、もし実施を進めるにしても、そういう事業所の工夫を聞いて、情報収集して、その小規模向けの実施マニュアルのようなものも準備しないと、なかなか難しいのではないかなと思います。以上です。
○川上座長 茂松構成員、お願いいたします。
○茂松構成員 先ほど大下構成員から御説明がありましたが、やはり小規模事業場は地域との関わりが非常に大きいということと、やはり町づくりとの関連もあります。それを考えると、やはり今一番問題になっているかかりつけ医との関連で、私も整形外科をしておりますが、とにかく整形外科的に腰痛があるのか、肩凝りがあるのかということを突き詰めると、事業場での環境に問題があったという例が結構多いのです。ですから、やはりかかりつけ医がしっかり身近で相談を受けて、この患者さんはそういうところがあるなというと、それを事業場にフィードバックするとか、事業場を見ている産保の所にフィードバックするという関係づくりをしっかり作っていくと。これからは、恐らく小規模事業場において、特に10人前後ぐらいの従業員の所というのは、地域の町づくりと関連してくるので、地域医療との関わりは非常に大きいと思います。ですから、やはりかかりつけ医をもう少し充実させて、そこに産業医的な考え方をしっかり持っていただくように、日医としてもそこはしっかりと教育をしていき、進めてまいりたいと思っております。それが、今後はかなり必要になると思っております。
○川上座長 ありがとうございました。神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 産保センターの所長の立場で意見を述べさせていただきます。産保センターですので、多数の小規模の事業場、いろいろな所を拝見しております。今回の議論の中では、前回の検討会でも小規模事業場、それから地産保の重要性について、特に皆様のほぼ同意を頂いていると感じており、心強いところではあります。では、具体的にどうするかという話の中で、本日お話を伺っておりますと、例えば今の茂松構成員のお話のように、業種や規模別のほかに、森口構成員もおっしゃいましたが、地域性の問題も出てきます。そうすると、それぞれの事業場について何が必要なのかというのが、いろいろな要素があると思いますので、1つに決めてしまってこれをやらなければいけないという形でまとめていくことは、大下構成員もおっしゃっていましたが、それはとても無理があると、私も現場で実感しております。
 ですから、例えばこういう要素が必要だというところが、ある程度ピックアップされて、それについて現場で次はこういうアプローチができるのか、個別のアプローチができるのか、それから職場の改善ということはいろいろな事例があるのだという学びをしていった上で、実際の現場の対応ができていけばいいのかと思っております。本当に個別の事案、個別の事例性と、職場全体の環境を整えていくことを、少し別な方向で考えなければいけないというのが、今日のお話の中で随分進んできているように感じております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 連合の山脇です。冒頭、資料2、資料3について、分かりやすく取りまとめていただいたこと、事務局の皆さんに感謝を申し上げます。その上で、ストレスチェックの効果と今後の検討に向け、発言します。ストレスチェックの効果について、資料2、資料3によると、現行のストレスチェック制度が十分効果的であるということが全般的に示されているものと理解しています。その中でも、資料3は労働者を対象とした調査を基に分析されていりますので、これについて労働者の視点から改めて受け止めを申し上げます。
 まず、資料3の3ページ記載のストレスチェックの有効性についてですが、リード文に記載のとおり、受検した労働者の4人に3人が、ストレスチェックが有効と回答しています。また、4ページのデータからは事業所の規模の大小にかかわらず、ストレスチェックを受ける事で労働者に自身のストレスについて気付きを促していることが分かります。この結果からは、現在努力義務である50人未満の事業場で、労働者がもしストレスチェックを受検できない場合、自身のストレスに気づくことができず、メンタルヘルス不調につながるリスクが、ストレスチェックを受検している場合に比して高まるということを端的に現していると私は思います。
 次に、高ストレス者に対する面接指導についてです。6ページを御覧ください。面接指導を受けた者のうち、7割以上が有効と回答しており、面接指導がメンタルヘルス不調のリスクを低減するという、ストレスチェック制度創設の目的に大きく寄与していると理解しています。
 また、集団分析についてです。資料3の3ページでは、集団分析を活用した職場環境改善が有効かについて、有効とする割合が2割未満と記載されていますが、前回の検討会資料では、職場環境改善があったと労働者が認識をしている場合には、約8割が有効との評価をしています。資料3ページで有効との回答が2割しかないということは、集団分析がうまく活用されていないことの裏返しであると受け止めています。職場環境改善があったと労働者が認識している場合、約8割が有効であると回答しているということは、職場の有害因子を除去するのに有効な施策であることの証左ですので、集団分析がより多くの事業場で実施されることが重要と考えます。
 先ほど来、三柴先生、砂押先生をはじめ、ほかの先生からも個別事案に応じてという発言がありましたが、ストレスチェックを受けることで、少なくとも自身のストレスの状況に気付くことができているという事実があります。この検討会に臨むに当たり、連合では約10産別にヒアリングを行いました。その中では、ストレスチェックが、自分の状況を言い出しづらい労働者が言い出せる仕組みとして活用されているという実態が明らかとなりました。当然、自分の状況を正直に答えたくないという人がいる一方で、会社に自分の状況を会社に気づいてもらいたいと思っている人にこの制度が有効に使われているということからも、すべての労働者に対してストレスチェックが実施されるように制度を見直していく必要があると考えます。
 またストレスチェック制度は、事業者側から見てもアブセンティズム、あるいはプレゼンティズムによる職場への悪影響を防ぐことにもつながると思いますので、どうすればできるのかという観点で、この検討会において議論していくことが極めて重要だと考えます。
 中小企業に対する支援策とセットで議論すべきという点は前回申し上げたとおりですが、地産保の体制強化も含めて議論をしていきたいと思います。
ストレスチェックの受診を全ての労働者へ拡大することについて、前回の検討会において、私がストレスチェック制度の法律案要綱を紹介した際に、坂下構成員から当時と今で状況が変わっているかどうかを確認するという旨の発言がありました。私もこの点については賛成です。当時、政労使で合意したということは重要なファクトですので、当時と今日でどのような環境変化があるのかを検証し、大きな環境変化がないのであれば一度合意をしているということについて、改めて認識を共有し、全労働者に対象を拡大していくことを検討していくべきと思っています。
 最後に、現行の枠組みの実効性を高めるためには、集団分析や、職場環境改善の、義務化をはかっていく必要があると考えます。また、実効性確保のためには、安全衛生委員会の報告を義務化していくことも検討の俎上に上げてはどうかと考えていることは、申し添えておきたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。この後、挙手の順で、黒木構成員、渡辺構成員、坂下構成員の順でお願いいたします。まず、黒木構成員、お願いいたします。
○黒木構成員 私は、100~500人ぐらいの企業で実施者をしているので、そういった観点でお話をいたします。この制度、ストレスチェックを受けると、本人がストレスに気付く、心理的な負担を本人自身が把握するということでは、かなり有益だろうと思います。ただ、高ストレス者がどれぐらいいて、高ストレス者を次に産業医面談、あるいは高ストレス者面談につなぐというところが、なかなか企業によってはうまくいかないところがあります。そして、自分はある程度高ストレス者なので、受けると実施事務従事者に手を挙げると。しかし手を挙げても、実際に申し込んだ上で日にちがきてもなかなか来ない事例がありました。いろいろ聞いてみると、上司の関係で自分は受けることをやめましたというような事案もありましたし、高ストレス者をどうつないでいくのかというところが、なかなか現実的には難しいです。
 先ほど、種市先生、森口先生からありましたが、相談の窓口をいろいろ工夫することが必要かと思います。それから最近感じているのは、やはり職場全体を上司がどう考えているかということは、非常に大事です。このストレスチェック制度のある、なしにかかわらず、その職場の中で担当の責任者が、私が関係している所は団体職員ですが、理事が非常に一生懸命になって関わっておられます。高ストレス者というだけではなくて、職場でメンタルが心配な方を専門医に相談したらどうかと、ご本人を納得させたうえで産業医面談に連れてくるということも経験しています。このような上司とも関わりが、全体の職場のメンタルヘルスを底上げできるというようなこともあります。やはり、中小企業向けには、その制度を全部適応するのはなかなか難しいかという気がするのです。その制度担当者、実施事務従事者、あるいは産業医面談や高ストレス者面談にどうつなぐか。しかし、そこで事業主の役割や責任者がメンタルヘルス、あるいはこれをどう考えるかということが非常に重要だと考えているので、この制度を中小企業に下ろす上では、その下ろし方を考えていただきたいと思います。
○川上座長 ありがとうございました。では、渡辺構成員、お願いいたします。
○渡辺構成員 精神科産業医の渡辺です。まだ2回目の委員会ということもありますので、少し総論的な見地になるのですが、今の皆様方のお話を聞いて、私も同感の所が多いです。結局、このストレスチェック制度の中には、メンタルヘルス不調者対応という部分と、不調者を予防する対応の2つの部分があるわけです。この2つの部分を少し整理して議論していかなければいけないと思いますし、両方大事なのです。不調になった人にどう対応するかというのも大事ですし、不調を起こさせないための対応の両方とも大事なので、少しそこを整理して話を進める必要があると思います。
 本来、このストレスチェック制度を最初に作ったときには、一次予防の制度であるということははっきりしていて、労働者1人1人が健康で生き生き働ける、それは結果としてはメンタルヘルス不調予防のみならず、生産性、業績の向上につながる制度だというのが、一番の立て付けであったわけです。ですから、中小企業の方々においても、本来は是非導入したいという制度であるべきなのです。ところが、先ほどの大下構成員のお話を聞きますと、確かに今のままでは中小企業で導入するのは難しいというような制度になってしまっているところがとても問題で、やはり中小企業の方々が是非導入したいという制度に改めていく、ブラッシュアップしていくというのが、今回のこの委員会の目的と置き換えてもいいのではないかと考えております。今、黒木先生などからも出たように、やはりそれなりの修正が必要だと思います。
 少し具体的に言いますと、私どもがやっている中小企業向けであると、例えば実施事務従事者を内部の方にやらせてしまうと、幾ら守秘義務があるといっても、本人、その総務の人が全部知ってしまうことになるわけですから、実施事務従事者はむしろ外部委託化していくなど、その方法論はそれなりにあると思います。そういった中小企業の方が是非やっていただきたい、導入したいという制度に改めていくことが大事だと思います。
 そして、一次予防の制度という観点からいきますと、三柴先生がおっしゃったように、適正配置の問題は非常に大きいわけです。確かに、今は発達障害が盛んに職場で言われるのですが、発達障害自体が問題になるわけではなくて、発達障害の人を適応障害にさせてしまって、問題化、事例化するわけです。ですので、発達障害の人の適応がうまくいけば、何も事例化しないわけです。ですので、発達障害の人が適応障害を起こしてしまった場合には、二次予防、三次予防の話になってきますが、発達障害の人に適応障害を起こさせないためにはどうすればいいか。これは、適材適所、適正配置ということになります。そのためには、能力適正、性格適正をきちんと見極めていく、これがこれからの産業医がそれができるようになっていかなければいけないと思います。しかし、適正配置、適材適所ということになると、これは産業保健スタッフだけでできるものではなくて、当然人事労務、事業者マターになってきますから、そういった健康保健スタッフと人事労務、事業者とが表裏一体でやっていかなければいけないというところがあります。
 ということで、前回も言いましたが、今の制度は事業者の責任が非常に不明確になってしまっています。実施者からスタートしてしまっているところがあるので、どうしても健康管理マターのようになってしまっていると。こういったところを改めて、本来の人事労務、事業者側と健康管理をする産業保健スタッフとが表裏一体で進めていけるような制度、体制を作っていく。そして、中小企業の人たちも、是非導入したい、むしろ一次予防の業績向上につながる制度にブラッシュアップするというのが、今回のこの委員会の目的ではないかと思っております。
 ついでに、ハラスメント問題についてですが、これもよく誤解されているので、一言だけ触れておきます。ハラスメント問題が、ハラスメントかどうかの判定みたいになってしまうと。これは、こじれて、こじれて、こじれた最後の裁判の所では必要ですが、現場ではハラスメント問題の本質は人間関係なわけですから、ハラスメント問題が問題化しないように人間関係を調整できるような、そこが一次予防ということになると思います。そういった制度に改めていくといったことができるストレスチェック制度に成長させていく、そのための検討会になればいいと考えております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、坂下構成員、お願いいたします。
○坂下構成員 経団連の坂下です。発言の機会を頂き、ありがとうございます。2点申し上げます。まず、50人未満の事業所に対してのストレスチェック実施の義務化をどう考えるかです。平成26年の第186回の国会の衆議院、厚生労働委員会の議事録を改めて読みますと、そこではどのような指摘があったかと申し上げますと、「産業医の選任義務がないなど、体制が整備されていない小規模事業所、事業場では、やはり情報管理等が適切に実施されないという懸念を払拭できません。こういったことで、従業員50人未満の事業所については、当分の間は努力義務とするという特例を設けたところです」というのが明確に残っています。非常に重要な指摘だと思っております。
 先ほど来、日本商工会議所の大下構成員からも、中小企業の実態、現場の実態について、それをベースとした懸念が示されておりましたが、今この状況において、当時国会で指摘された懸念がクリアできている、クリアできる状況にあるのか、あるいはそれができるような体制が整っているのかといったところが、義務化に進むかどうかの大きな判断要素になると思っておりますので、どういったことが考えられるのかはしっかり議論する必要があると思います。仮に、そこが十分に担保できていないということであるならば、やはり議論は慎重にしていく必要があるだろうと思っています。
 ちなみに、ではどういうことがあれば中小企業は対策できるかといったことに関してなのですが、今の渡辺先生からもありましたが、実際の実務を考えていくと、大手も同じなのですが、社内で実施実務従事者を確保するのが難しかったりするケースが結構あり、外部の機関に委託しているケースは多いです。もちろん、全て内製でやっておられる会社もあります。それは、内製したほうが効率的であったり、費用対効果においてもプラスだという観点からというお話は聞いているのですが、基本的には外部に実施をお願いしているケースが多いと思います。また、中小の場合ですと、地産保さんの協力を頂くようなケースもあると思うのですが、やはりコストの面がどうしても出てきますので、大下構成員からもありましたが、現実に中小、特に零細企業までを義務の対象にしたときに、そういった所が耐えられるのかという視点は、非常に重要だと思っていますので、この検討会でそういった観点からも議論ができればいいのかと思っています。これが1点目です。
 次に、集団分析と職場環境改善です。前回の検討会の際に、経団連としての取組が十分に把握できていないという恥ずかしいことを申し上げたのですが、その後何社かヒアリングをさせていただき、次のような実態があるのだろうということを認識しております。外部機関を通じてストレスチェックを実施していると。なるべく全員が受けられるように取り組んでいると。そうした中でも、なかなか本人が受けない方もいらっしゃるわけですが、そうした大変な努力の中でストレスチェックを実施して、多くの場合は集団分析もパッケージというか、セットになっていて、それを踏まえて、その後それをうまく使いながら職場環境改善に関する議論を職場の中で展開しているということをお聞きしました。
 その際、いろいろ聞いていて多かったのが、矢内構成員のお話でもありましたが、決してこのストレスチェックと集団分析だけを理由に職場環境改善を議論しているわけではなくて、そもそもそれとは別に働き方改革を推進していくという観点で、日頃から業務が過重業務になっていないかといったチェックであるとか、そういった場合に業務を標準化できないか、あるいはDXをうまく使って効率化できないかなど、様々な職場改善の取組を既に議論をしていて、そうした中で法令で義務になっているストレスチェック、集団分析の結果も参考にしながら議論をしているというのが実態だと聞いております。
 したがって、会社にお聞きすると、ストレスチェックそのものに効果があると認識されている企業が多いという印象ですし、職場環境改善に向けた集団分析の情報もうまく活用されていると、前向きに捉えてやっておられるという認識をしております。
 その上で、では職場環境改善で何をしているかというと、本当に職場ごとで状況が違うので、何か万能薬みたいなものや万能的な施策があるわけではなくて、その実態に応じてその職場の従業員と上司と人事が議論を重ねて、そのときできることを対応しているというのが実態だと聞いております。
 その内容も一過性のものであってはなりませんので、効果がすぐ出るようなものもあれば出ないものもありますし、同じような取組をするにしても、現場において取組の度合いや深さが違ったりします。したがって、義務化という話が少し出ていますが、義務とした場合に何を義務とするのか、何を企業に求めるかが非常に重要だろうと思っております。極めて多様な現場の実態を踏まえたときに、何かパターン的なものや、これだけあればいいみたいなものを挙げて、その実施を、義務化を求めるということは、現場の実態を十分に反映していないものになるのではないかと思っておりますので、そういった認識を持って今後の議論に臨んでいきたいと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。及川構成員、お願いいたします。
○及川構成員 私どもの会員は、ほぼ小規模事業者で、20人以下の従業員を抱える中小企業も、220万を超える数です。いろいろな構成員の方から、多種多様であると御指摘がありましたが、正しく抱える問題は本当に様々です。こういった中で、ストレスチェックという1つの手段で一律に対応するというのは、現場からすると違うのではないかと、自分たちの実態はこうだと、違うのだというような声が出てまいります。
 特に、一律に1つの手段をかけるということになりますと、都市と地方の小規模事業者の格差拡大、すなわち専門家がいる、いない、あるいは外部の機関との連携ができるかできないかなど、様々な実効性ある手段にするには、まだ問題が多いと感じております。まずもって、中小企業は小さいがために、そこで働く者には大変やりがいがある経営組織体だと思っています。そのような良い面ができるようなことで、議論を深めていきたいと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。あと20分ぐらいになってまいりましたが、ほかにも御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。堤構成員、お願いいたします。
○堤構成員 堤です。考え方からですが、これまで何人かの構成員がおっしゃっていただいていましたが、予防の考え方の中に一次予防、二次予防、三次予防とありますが、ストレスチェックの本旨は一次予防で、副次的に二次予防が入っているというような考え方が十分浸透していっていただくのが有り難いことかと思っています。
 マニュアルにも書かれていますが、それぞれの事業場の状況に合わせて、二次予防、三次予防とうまく組み合わせて使っていくというようなことが考えられております。メンタルヘルス対策自体には、皆さんはやはりこれは進めていくべきだと思っておられる部分であると思いますので、このようなストレスチェックの考え方が一次予防重視の部分で、うまく使われるツールのような形で浸透していければいいかと、まず総論的には考えているところです。
 前回レビューをさせていただいたことに補足をいたします。前回は、ストレスチェックの効果ということでレビューをさせていただきましたので、ストレスチェックが行われ始めてからのお話をいたしました。ストレス対策には、これ以前にもいろいろなものがあり、その中の1つで少し印象的なものが、いわゆるストレスの調査を労働者にお返ししただけでは効果がないという、かなりしっかりとした研究が幾つかあり、そういう状況が前にはあったということです。前回のレビューで私も少し勉強になったのが、工夫をされている所がストレスチェックの内容や読み方といった職場環境の見方を、労働者や職場に伝えて効果を上げている事例が多くありました。言ってみれば、ストレスチェックの使い方を職場で十分に理解しながら進めていっているところは、学んだところです。そういうものが事業場では求められるのかもしれませんし、またそれを支えるような支援があって、このストレスチェックのようなものがいきてくるのではないかというような考え方を持ちました。
 ストレスチェックの評価自体も、やはり実効性があるような条件下で行うべきなのかもしれませんが、どちらにせよ、そのようなツールをうまく使えるような形の議論ができればいいのではないかと考えております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。神村構成員、それからオンラインで大下構成員、お願いいたします。
○神村構成員 再度発言させていただきます。中小企業のメンタルヘルス対策をしっかりやっていくのは、これは問題のないここの会議体のミッションではあると思います。その中には、中小企業であれ、個別性、それから事業場ごとという様々なものがありますし、コストも考えてあげなければいけないというのが、特に中小企業では大きいと思います。 前回も発言いたしましたが、厚生労働省の無料プログラムが、もっと使いやすくブラッシュアップされたものとなっていただければ有り難いです。1つには、ストレスチェック制度が始まってから、もう7年です。この間、毎年毎年きちんと受けている労働者たちにとっては、これは1つの健康診断と同じ、ある数値であって、去年は駄目だったけれども、あのときはとても忙しかったから、今年はよくなりましたというようにおっしゃる方も多いわけです。そのように、ある程度健康診断の採血をした指標と同じように捉えている方も増えていて、問題意識を持っていない方が「特になし」というお答えをされたのかもしれないという印象は持っております。
 そして、一次予防の観点から言いますと、既に問題意識というか、何となくモヤモヤを抱えていらっしゃる方と、全くそういうことを感じていらっしゃらない方の中で、このストレスチェックに対するスタンスは違うけれども、やはり数字はもらっておくと役に立つと。こちらも産業医として面接指導をするときに、話のついでに「ストレスチェックのほうはどうなのですか」と聞くと、原本を見せてもらうわけではないですが、先ほど申し上げたように、去年はこうで、今年はこうでみたいな、時期が悪いよねというようなお話もあり、様々に活用して受け止めているということは、私は感じております。ですので、無料プログラムの拡充については、是非お願いしたいと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、オンラインの大下構成員、お願いいたします。
○大下構成員 日本商工会議所の大下です。ありがとうございます。皆さんの御意見を更にお伺いし、中小企業の実態をしっかりと受け止めていただいて有り難く思っておりますし、また、大変勉強になっております。
 中小企業が取り組みやすく、取り組みたいと思える制度にする、これは非常に大事だと思います。また「できない理由を探すのではなく」という御発言は全くそのとおりだと思います。ただ、その際に私が申し上げたいのことは、実施の意味がある制度にするためには、今あるストレスチェックというツールを、中小企業にも広げていくということが、そもそも手段として最適なのかどうかということは、改めてしっかり考えていく必要があると思います。またもう1点大事な点として、現在の大企業が実施している制度が、中小企業において果たして実行可能であるかというところです。
例えば、企業単位ではなく集団として、中小企業で働いている人にもストレスチェックを受けてもらうという方法や手立ての検討、業界、あるいは地域単位も検討可能だと思います。我々も、中小企業支援の際、個社支援ではなく集団指導ということを実施する場合があります。このような方法も含め、現行制度を単に中小企業にそのまま当てはめるのではなく、働いている人が適切にメンタルヘルス対策ができる方策を考えていくことが必要なのだと思いますし、何とか良い方法を皆さんとの議論の中で編み出していければと思っております。私からは以上です。
○川上座長 ありがとうございました。三柴構成員、御発言をお願いいたします。
○三柴構成員 これは今お答えいただかなくてもいいのですが、大下構成員、及川構成員に対して少しだけ御検討をお願いしたい。何とかその実施可能な資源や技術を用意できる前提で、そのストレスチェック制度に相当するような、例えば面談といったものであれば賛成できるのか。ただ、かえってコストが掛かると思いますけれども。その際、例えば、適当な場合にストレスチェックを活用する、させるということは賛成か。それから、人数的に、50人より下げるということに賛成されるかということは、ちょっと御検討いただけないかなと思いました。
 もう一点だけ、個別と集団の関係について、御発言がありました。分けること自体は私も賛成なのですが、ただ、つながっているという意識は必要かと思っています。例えば、不適応事例というのは結構増えていて、1人への対応でかなり組織が消耗する例もありますし、1つの案件が、たとえ例外のように見えても、原因や対策をしっかり考えることで、周りの人が育ったり一次予防につながる部分があるということ。最後に、価値観と能力の相性合わせという問題は、実は労使双方の自己分析につながっているという認識があるためです。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。大下構成員、今、特には御返事はありませんでしょうか。
○大下構成員 いただいた御意見を踏まえて検討いたしますが、この場で申し上げられることとしては、やはり繰り返しとなりますが、今ある制度をそのまま全ての事業者に適用することは、リソースと、適切な方法であるかという2点で懸念があります。例えば、通常の健康診断は中小事業所にも受診義務があり、その中では医師の問診もあります。このような別のルートを使って、メンタル不調の状況を見いだすことができないかといった方策には検討の余地があると思います。私の懸念として、現行制度同様企業経由での実施となる場合、リソースに加えてプライバシーの点でも課題があると思います。そこで、これまでとは別のルートで中小企業で働いている人に、メンタルチェックをしてもらう。他方で、事業者側にはメンタルヘルス対策はの重要性や、働いている人の状況を注視するよう周知する。比較的大規模な事業所ですと、経営者の目が行き届かないこともあると思いますが、10人、50人といった比較的小規模な事業所であれば、状況にも左右されますが、気付き得る要素は大企業より大きいのではないかと思います。事業者側への啓発と、中小企業で働いている人に、地産保さんなど既存制度とは別の方法でチェックを受けてもらえるような仕組みができれば、中小事業所においても、ストレスチェックの機会を与えるということに異論はありません。あくまで現行制度そのままの適用となると、大きな課題があるというのが今の認識です。いただいた御意見踏まえ、改めて検討いたします。
○川上座長 ありがとうございました。及川構成員も御発言がありましたら。
○及川構成員 私どもも、ちょっと考えてみたいと思っていますが、健診ですと、自治体だとか、いろいろな健診の種類が民間にもありますし、いろいろなタイプもあると思います。ここで法定化するというところはこういうところだというスコープ、範囲もしっかりしていますので、もっと、民間を含めて何かいい知恵がないのかということがあると思います。
 それから、小規模事業者にとって一番大変なのは、やった後の措置が経営者、事業者に大変な負担になる。やった後でどういうように改善していくのか、その後、どういう措置をしていくのか、その対応に時間とコストがすごく掛かってくるということだと思います。そういったところも含めて考えさせていただきたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。大分、時間がなくなってまいりましたけれども、いかがでしょうか。砂押構成員が挙手されています。砂押構成員、お願いします。
○砂押構成員 この制度が作られましたとき、重要視されたのがプライバシーです。つまり、受ける人が、検査結果を誰かに知られるかもしれない、特に、人事考課を行う上司に知られるかもしれないと感じてしまったら、自分のメンタルが弱いという所を見せたくないと考え、正直に答えることをしなくなってしまう、このテスト自体の効果というのは全くないのと同じになってしまうことになります。ですから、制度ができたとき、プライバシーが知られないように実施しないと意味がないということで、そういう制度設計となったんだと思うのです。ですが、今のお話を伺っていて、中小企業はプライバシーが守られないということになってしまうと、ストレスチェックテストの前提が崩れてしまうというように思ってしまいます。そうなりますと、結局実効性のないものになるわけですから、今お話を伺っていて、コストももちろんですが、そこがかなり非常に重要な点ではないかなというように感想を持ちましたので、ちょっと発言させていただきました。
○川上座長 ありがとうございます。高野構成員、御発言をお願いいたします。
○高野構成員 日精診の高野です。小規模事業場の情報管理の問題に対し、参考意見程度ということで述べます。義務化される前に職場環境改善を目的に無記名で集団分析をやっていた、大企業などでもよくやっていた事業場をいくつか知っているのですけれども、例えば、50人未満や小規模の事業場は無記名にして、そもそも部署ごとの集団分析ができる人数ではありませんが、事業場全体の集団分析により職場環境改善に役立てると、そんな方法もあるのかなというのは、ちょっと思い付き程度ですけれど、参考意見として。以上です。
○川上座長 ありがとうございます。種市構成員、お願いします。
○種市構成員 思い付き程度なのですけれども、50人未満の事業所についてもストレスチェックを実施しなければいけないとした場合に、例えば、個々人が「こころの耳」のサイトにあるような個人でできるストレスチェックを実施して、実施したことだけを、例えば何か通知で出すと、企業の側は実施したかどうかだけを把握できるというような形にすれば、いわゆるセルフケアとして自分が活用するということはできるし、プライバシーも保たれるというようなこともできるかなと思います。7年前に制度ができた頃よりは、ずっとその技術も進んでいることなので、何か、今の技術で解決できることがないかという検討もしてはどうかなというように思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございます。渡辺構成員、お願いします。
○渡辺構成員 渡辺です。ちょっと時間があるようなので、いつかは課題にしなければいけないと思うことをちょっと2、3。1つは、やはり派遣社員さんのメンタルヘルス、ストレスチェック関連なのです。派遣社員さんに対するストレスチェックは、派遣元と派遣先の両者でやるのが望ましいとされていて、派遣元のほうが義務化、絶対にやりましょうということになっているわけですが、その派遣社員さんの職場環境改善を考えると、当然、派遣先での職場環境改善なわけですよね、それは派遣元で、例えば面接などをしたとして、派遣元に職場環境改善の実施義務がありますよと言っても、では、職場環境改善は派遣先でやらなければいけないわけですよね、ところが、派遣元と派遣先とのいろいろなパワーバランスがありますから、なかなかそこは難しいという現状があります。この辺り、派遣社員さんの職場環境改善に関して、どう対応をしていくかというのは、いつかは議論しなければいけないということだろうと思います。
 もう1つ、今、50人以上、50人未満という、50人という数字が出ているのですが、実は、この50人のカウントの仕方が非常にいろいろあるのです。実はストレスチェックの実施義務のある事業所を50人カウントするときは、就業時間が週に正規の4分の3未満でもカウントをしなさいと、なので、例えば毎週20時間働いている人が何十人かいたら、50人以上いればストレスチェックの実施義務があるのです。ところが、ストレスチェックを受ける人に関しては、4分の3以上働いている人になっているのです。そうすると、実はこういうケースがあったのですが、ストレスチェックを実施しなければいけない事業所なのですが、受ける人は10人ですよというような矛盾があります。こういった50人のカウントの仕方が非常に今、矛盾しているということがあります。
 もう1つ、今、これから建設業、運送業で非常に問題になってくると思うのですが、いわゆる個人事業主として請け負っている人たち、建設業であれば大工さん、運送であれば運搬をしている人、あの人たちのメンタルヘルスの問題、これはクリニックで見ていると非常に問題があります。非常に苛酷なストレス状況で働かされているというのがあるので、この人たちのメンタルヘルスを考えるときに、このストレスチェック制度というのを利用していくかどうかといったことも議論をしていく必要があるのではないかなと考えています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。個人事業主に関しては、先ほどガイドラインを作成されたような気がしますが、何か、事務局のほうで御説明はありますか、今はよろしいですかね。
○夏井産業保健支援室長補佐 今ほど個人事業者の話を頂きました。個人事業者等の健康管理については、3月の労働政策審議会安全衛生分科会のほうで、個人事業者等の健康管理に関するガイドライン(案)について御議論、御意見を頂いたところです。3月の段階で、労働政策審議会の安全衛生分科会としては御了承を頂いており、現在、国のほうで最終的な発出、策定、公表に向けて準備を進めているところです。その中で、メンタルヘルス対策をどう書いているかですが、先生がおっしゃっていただいたとおり、まず、個人事業者等の方についてはセルフケアが大事であると考えており、その1つの手段として、このストレスチェックを御自身で定期的にやっていただいて、その結果として、ちょっと自分どうかなとお思いになるときには、医師等に御相談いただくということを、ガイドラインの中で推奨するという形で書いております。
 もう1つ、個人事業者の方に対して仕事を注文する方もいらっしゃいます。その方については、仕事の注文条件によって、例えば長時間になってしまう、それによって疲労が蓄積するなどといった場合もあるかと思うのですが、そういった場合について、注文条件によって、個人事業者の方が長時間になって疲労が蓄積しているということであれば、その個人事業者の方が申出をされると、その個人事業者の方に対して、医師による面談の機会を提供してくださいといった記載もしています。
 もう1つ、メンタルヘルス対策ということで申し上げると、先ほど、ハラスメントのお話もありましたが、注文者と個人事業者との関係において、ハラスメント対策、ハラスメントの防止ということについて書いております。ちょっと個人事業者の話が出ましたので、御紹介程度にお話申し上げました。
○川上座長 御紹介ありがとうございました。そろそろ時間がなくなってまいりましたが、本日、是非、もう少し御発言をされたいという構成員の方がおいでになれば、どうぞ、山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 今、渡辺先生のほうから御提起があった1点目と3点目については、私も各論のほうで発言を予定していたところですので、是非お願いしたいと思います。特に、3点目の個人事業者への対応については、安全衛生分科会において、健康管理ガイドラインとしてとりまとめられるものと承知しています。具体的にどう対応できるのか、、こういうツールが使えるのではないかという具体案も含め、この検討会の中でも議論できればと思っておりますので、事務局には御検討いただきたいと考えます。
 また、先ほど三柴先生の御発言を受け、大下構成員と及川構成員からは、具体的にどういう内容であれば全ての労働者へ適用拡大を実現できるのかということを時価の検討会でお示しいただけるということでした。その内容に期待したいと思いますが、あくまでもストレスチェックを含め、安衛法の枠組みでは事業者に責務があるということが大前提ですので、その基本線が崩れることのないようにしていただきたいということは申し述べておきたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。いかがでしょうか、おおむね本日の議論、御発言は終了に近くなっているでしょうか、もし、特別に御発言の要望がないようでしたら、少し時間は早いですが、一旦、検討会の2回目を終了して、事務局のほうにお返ししたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、そうさせていただきたいと思います。どうも、本日も非常に貴重な御意見、意見交換をありがとうございました。では、事務局、よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 事務局です。ありがとうございます。事務局から連絡事項がございます。次回の日程は5月31日の開催を予定しております。また、期日が近づきましたら、皆様には改めて御連絡を差し上げたいと思います。
 本日の議事録ですが、皆様方には内容を御確認いただいた上で、厚労省ホームページに掲載させていただきたいと思います。追って、議事録の内容確認を依頼させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
○川上座長 ありがとうございました。本日の御意見についても、事務局のほうでまた論点を整理して、次回お示しさせていただきたいと思っております。それでは、本日の検討会は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。

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