財務省・新着情報

日時    令和6年6月10日(月)14:58~16:42

場所財務省本庁舎(4階)国際会議室

出席者

懇談会メンバー
(懇談会メンバー)

秋山咲恵

株式会社サキコーポレーション ファウンダー

百合

株式会社日本総合研究所 理事長

和夫

阪急電鉄株式会社 会長

田中直毅

国際公共政策研究センター 理事長

田辺国昭

東京大学大学院法学政治学研究科 教授

冨山和彦

株式会社経営共創基盤(IGPI)IGPIグループ会長

広瀬道明

東京ガス株式会社 相談役

山本

東京大学名誉教授
一般社団法人青山公会計公監査研究機構 主任研究員

座長吉野直行

慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター顧問、
東京都立大学経済経営学部 特任教授

(敬称略、五十音順)

(財務省)

茶谷事務次官、宇波官房長、坂本総括審議官、新川主計局長、青木主税局長、内野関税局審議官、藤﨑理財局総務課長、飯塚国際局総務課長、鈴木財務総合政策研究所副所長

(国税庁)

住澤国税庁長官、長内監督評価官室長

(事務局)

目黒政策立案総括審議官、阪井政策評価室長

4議題

(1)令和5年度財務省政策評価書(案)について

(2)政策評価に関する基本計画の一部変更(案)について

(3)令和6事務年度国税庁実績評価実施計画等(案)について

議事録

 ○吉野座長 
 それでは、15時よりもちょっと前ですけども、皆様おそろいとのことですので、ただいまから第80回財務省政策評価懇談会を開催させていただきます。
 本日は冨山委員だけ遅れての参加ということでございます。今回も前回と同様に対面とオンラインの併用で、ハイブリッドの形で開催させていただきます。オンライン御参加の方々は、音声が聞こえなくなったとか、何かトラブルがございましたら事務局まで御連絡いただきたいと思います。
 それでは、早速議題に入らせていただきます。議題は3つございます。1番目が財務省の令和5年度政策評価書(案)、2番目が政策評価に関する基本計画の一部変更(案)及び国税庁の令和6事務年度の実績評価実施計画等(案)、この3つでございます。
 それでは、これを一括しまして目黒政策立案総括審議官から御説明をよろしくお願いいたします。

 ○目黒政策立案総括審議官 
 初めに、議題1の財務省の令和5年度政策評価書(案)につきまして、資料1に沿って御説明いたします。
 資料の右下に通しでページ番号を付しておりますが、資料1は3ページからになっておりまして、次の4ページを御覧ください。こちらは令和5年度における財務省の政策目標の体系図に目標ごとの評定を括弧書きで付記をしております。
 次に5ページから7ページ、こちらは目標ごとの評定結果を前年度と比較した一覧となります。前年度と評定が異なる目標については緑色を付してございます。評定がBとなった目標及び評定が前年度と異なることとなった目標については、その理由を後ほど御説明させていただきます。
 次に8ページを御覧ください。こちらは評定ごとの集計結果となっておりまして、一番右の欄を見ていただきますと、5年度におきましてはSが17個、Aが8個、Bが5個となっております。
 次に9ページでございますが、こちらは令和5年度における財務省の主な取組を評価書(案)から抜粋して記載したものでございますが、お時間の関係から説明は割愛させていただきます。
 次に10ページを御覧ください。こちらは令和5年度の評定が「B 進展が大きくない」となった目標について、評定理由と今後の政策への反映について記載したものでございます。B評定となった目標は全部で5つございますので、順番に御説明いたします。
 まず総合目標1、財政でございますが、中ほどの評定理由欄に記載がございますように、財政健全化に向けた取組を実施し、2025年度のプライマリーバランスの黒字化等の目標に向かっているものの、物価高による国民負担の緩和策等を含む総合経済対策等の影響もあり、我が国の財政状況は極めて厳しい状況が続いているということを踏まえましてB評定としております。そして右側の政策への反映欄に記載がございますとおり、このような評価結果も踏まえ、引き続き経済再生を図りながら、歳入・歳出両面において財政健全化に向けて取り組むこととしております。
 次に下段の総合目標6、経済財政運営につきましては、理由欄のとおり、関係府省と連携しながら経済成長と財政健全化を両立できるよう、「骨太の方針」等に沿って適切な財政・経済の運営を行ってきましたが、他方、これまでの新型コロナウイルス感染症や物価高騰等への対応に係る累次の補正予算の編成等の影響もあり、我が国の財政状況は極めて厳しい状況が続いているということで、このような状況を総合的に勘案しまして、この総合目標6についてはB評定としております。評価結果も踏まえまして、引き続き「骨太の方針」等に沿って適切な財政・経済の運営を行うとともに、自然災害からの復興の加速に取り組むこととしております。
 次に11ページを御覧ください。政策目標1-1、財政の効率化・質的改善でございますが、評定理由欄にありますように、必要な予算措置を行うとともに、様々な改革努力も積み重ねてきましたが、我が国の財政状況は極めて厳しい状況が続いており、今後とも歳出・歳入両面の改革を着実に推進し、歳出構造の更なる平時化を進める必要があるということでB評定としております。引き続き重点的な予算配分を通じた財政の効率化・質的改善を図ることとしております。
 中ほど、政策目標1-2、歳入の確保でございますが、物価上昇の影響やそれらへの対応が財政に及ぼした影響等については留意する必要があるものの、政策的経費を賄うのに十分な歳入の水準を確保できていない、また、収入増につながる具体的な制度の取組も十分に行うことができていないことなどからB評定としております。今後も物価上昇の影響等、足元の経済情勢を踏まえつつ、税収及び税外収入の確保に努めることとしております。
 一番下、政策目標11-1、たばこ・塩事業の関係でございますが、事務処理手続に時間を要した案件があったため、事業者の登録に係る標準処理期間達成率の目標値を達成することができなかったことからB評定としております。今後も塩事業法の趣旨・目的を踏まえた処理等を通じ、塩事業の適切な運営の確保等に努めてまいります。
 次に12ページを御覧ください。こちらは令和5年度の評定が前年度の評定より低くなった目標について、評定の理由等を記載したものでございます。評定が低くなった目標は3つございますが、順番に御説明いたします。
 まず政策目標6-1、国際金融システムの安定ですが、前年度はS+の評定だったところ、令和5年度はS評定となりました。これは前年度、施策6-1-4、これは国際金融システムの濫用への対応の施策でございますが、こちらの評定がs+となりまして、その結果、政策目標6-1の評定もS+となったものでございます。令和5年度においては全ての施策が「s 目標達成」であったため、政策目標6-1の評定もS評定としております。
 政策目標11-1、たばこ・塩事業の関係ですが、こちらは前年度はS評定だったところ、令和5年度はB評定となりましたが、理由につきましては先ほど御説明したとおりでございます。
 欄外の注にございます政策目標3-3、国有財産の管理・処分・有効活用、こちらにつきましては後ほど御説明をさせていただきます。
 次に13ページを御覧ください。こちらは令和5年度の評定が前年度の評定より高くなった目標について、評定の理由等を記載したものでございます。
 政策目標3-1、国債の発行でございますが、前年度はA評定だったところ、令和5年度はS評定といたしました。その理由ですが、令和4年度において日本銀行や財務省のシステムの不具合により一部の国債について入札結果の発表が遅延いたしましたが、令和5年度においては所定の時刻に発表したことから、政策目標3-1の評定をSとしたものでございます。
 次に14ページを御覧ください。こちらは理由を付して評定を行った目標について、評定の理由等を記載したものでございます。
 政策目標3-3、国有財産の適正な管理・処分及び有効活用につきましては、資材価格高騰等の影響により一部の施策の目標が達成できませんでしたが、ページの上段に記載している評価マニュアルの規定に基づきまして、他の重要度の高い施策も含めて総合勘案し、A評定としたものでございます。
 次の15ページと16ページは、参考資料として令和5年度における財務省のデジタル化の取組をまとめております。
 以上が議題1、財務省の令和5年度政策評価書(案)の説明となります。
 続きまして、議題2の政策評価に関する基本計画の一部変更(案)につきまして、資料2に沿って御説明をいたしますので、資料の18ページを御覧ください。
 中段の〇にございますとおり、今般、令和6年3月15日付で総務省におきまして規制の政策評価の実施に関するガイドラインの一部改正が行われまして、規制の政策評価について事前評価・事後評価の内容の明確化、それから規制による効果・費用の定量化の推進といった観点での見直しが実施されております。今般のガイドライン改正に伴いまして、規制の政策評価書の様式の改正や記載事項等の変更が行われておりますので、財務省の基本計画・実施要領におきましても所要の変更を行うものでございます。
 以上が議題2の説明になります。
 続きまして、議題3、国税庁の令和6事務年度実績評価実施計画等(案)につきまして、資料3に沿って御説明をいたします。
 資料の22ページを御覧ください。令和6事務年度の実施計画では、事業者のデジタル化促進を業績目標に追加することといたしました。その他の施策につきましても所要の見直しを行っておりますので、順次御説明をいたします。
 23ページを御覧ください。令和6事務年度の目標の体系図となります。先ほどの事業者のデジタル化促進は、図の左下の下線部分に業績目標1-2-3として新設をしております。
 24ページを御覧ください。24ページからは今回の計画における施策及び指標等の見直しについて記載をしております。オンラインによる税務手続の推進につきましては、e-Taxの利用率等の目標値を各手続とも引き上げます。また、法人税の添付書類を含めたe-Tax割合を今回の目標で測定指標として新設いたします。
 25ページを御覧ください。デジタルの活用による業務の効率化・高度化につきましては、オンライン照会可能な金融機関数の目標値をこれまでの実績を踏まえて引き上げます。また、共同研究の実施状況につきましては、税務大学校と外部研究者が共同で実施している税務データを活用した統計的研究の実施状況を参考指標として新設いたします。
 次に、事業者のデジタル化促進につきましては、事業者のデジタル化関連施策の周知・広報、それから関係省庁などの関係機関との連携・協力を測定指標としてそれぞれ新設いたします。
 次に26ページを御覧ください。適正な調査・徴収等につきましては、これまで測定指標としていた集中電話催告センター室における催告回数を廃止いたします。
 次に、滞納の整理促進への取組につきましては、滞納処分免脱罪の告発件数と徴収共助の要請件数を参考指標としてそれぞれ新設いたします。
 次に27ページを御覧ください。酒類業の健全な発達の促進の関係でございます。こちらにつきましては、政府の方針や社会状況の変化などを踏まえ、施策の測定指標について、資料の変更内容欄に記載のとおり見直しを行います。
 続いて28ページを御覧ください。税理士関係業務の測定指標につきましては、実績を踏まえまして、税理士会等への研修会等の評価、それから税理士専門官による指導監督等事務の割合の目標値をそれぞれ引き上げます。
 次に、29ページから31ページまでが施策等一覧となっておりまして、31ページを御覧いただきますと、一番下の欄ですが、施策等の合計を記載しておりますが、前事務年度から施策数がプラス2、定性的な測定指標数がプラス2、参考指標数がプラス3と、それぞれ増加となります。
 32ページから33ページには国税庁全体のデジタル化の推進の取組をまとめております。
 以上が議題3の国税庁の令和6事務年度実績評価実施計画等(案)の説明となりまして、事務局からの議題の説明は以上となります。よろしくお願いいたします。

 ○吉野座長 
 御説明どうもありがとうございました。
 それでは、対面とオンラインで御出席の委員の方々から御意見を頂きたいと思います。冨山委員は15時半頃から御参加となりますので、山本委員の後に御発言を頂きたいと思っております。
 まず最初に、対面で御出席の広瀬委員からお願いしたいと思います。それでは、お一人5分以内でお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

 ○広瀬委員 
 まず今回の財務省の評価につきましては、個々の項目ごとに踏み込んで検討されたものであり、また、国税庁の目標についても、それぞれの課題を整理・修正した上で設定されているということでございますので、どちらも特に異論はございません。その上で2点申し上げたいと思います。
 1点目は、財政についてでございます。言うまでもなく財務省の最大かつ喫緊の課題は財政の健全化だと思います。その財政を取り巻く状況がここに来て大きく変わりつつあるのではないかなと思っております。コロナで緩んでしまった財政規律を一刻も早く戻すと。これは有事から平時に戻すということで、これだけでも難題なわけですけれども、それに加えて長らく続いた低金利、ゼロ金利の時代から、いわゆる金利のある世界に入るということで、財政にとってまさに正念場を迎えたのではないかなと思っております。企業もそうなんですけれども、昔は金利が経営の重要なファクター、メルクマールだったんですけれども、今の社員の半分以上は、金利というのはあまり意識したことがない、専らROEとかIRRとか、そういったところで育った人が多いわけで、ちょっと大げさに言うと、多くの人にとって未知の世界に入るわけでございます。もちろん金利のある世界といっても昔みたいな高金利になることはないと思いますし、インフレによってメリットもたくさんありますけれども、いずれにしても大変難しい財政運営をこれから迫られるということは間違いないと思います。財政の健全化について財務省に対する国民の期待、信頼と言った方がいいかもしれませんけれども、大変大きなものがございます。是非今後とも財政のかじ取りにつきましてはよろしくお願いしたいと思います。
 2点目です。毎月「ファイナンス」という冊子を送っていただいて、大変楽しみにしておるんですけれども、5月号にGX経済移行債の特集が組まれておりました。大変分かりやすく書かれており、改めてよく理解できたわけですけれども、これは皆さんおっしゃるとおり、2050年カーボンニュートラルというのは少子化問題とともに日本にとって非常に重要な課題なんですけれども、同時に非常に難しい課題でもあります。2050年カーボンニュートラルの達成のために今後10年間で150兆円という大変巨額な投資が官民で必要であると。それをサポートするために20兆円規模の国債を発行するということでございます。今回のボンドは単なるグリーンボンドではなくて、世界初の移行債、トランジションボンドだということで、私はトランジションという、移行というのが非常に大きなファクターだと思っておりますので、そういう意味で今回の趣旨というか、狙いについては的を得ているのではないかなと思います。
 既に昨年11月、そのフレームワークが発表になっておりますけれども、使途についてもエネルギー部門から産業部門、民生部門、運輸部門と、全ての分野が網羅されておりますし、それから足元の課題から長期的、超長期的な課題、特に技術は相当な、言ってみればこれまでにないような超長期的な観点から取り組んでいかなきゃならないということで、そういったところも入れていただいております。初年度として1.4兆円を発行されるということでありますけれども、国内・海外で今IRにも努めていただいているということで、私自身、世界初のトランジションボンドの成功を祈っているわけですけれども、これは取りも直さず、日本のエネルギー環境政策の成否にも直結するのではないかなというふうに考えております。2050年カーボンニュートラルの実現には生活者、それから事業者の協力なしには実現できませんけれども、裏を返すと生活者、事業者というのが投資家でもあるわけであります。今回のトランジションボンドの発行を通して多くの人にエネルギー環境問題に対する理解と協力を頂くと、これが今回のトランジションボンドの大きな意義ではないかなというふうに思っております。是非この成功を祈っておりますし、是非長期的な取組ですけれども、よろしくお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

 ○吉野座長 
 広瀬委員、どうもありがとうございました。
 それでは、オンラインで御参加の方々からお一人ずつ5分以内で御意見を頂きたいと思いますので、マイクをオンにして御発言いただきたいと思います。
 それでは秋山委員、お願いいたします。

 ○秋山委員 
 私からは2点コメントさせていただきます。
 まず財務省の令和5年の評価全体についてですけれども、現在私たちが直面している現実とファクトを見れば、全体として適正評価であると思います。一方で今回の評価結果は、私もこの評価委員をさせていただいている中でこれまでにあまり見たことがないぐらいB評価が並ぶという厳しい評価結果になっています。とりわけB評価がついているのが財政、あるいは財政及び経済運営の部分の総合目標、政策目標の部分についてです。御説明資料を拝見しますと、本当にそのとおりだなというキーワードがたくさん並んでおりまして、幾つかピックアップさせていただくと、累次の補正予算の編成があった点、あるいは社会保障と税の一体改革をさらに推し進める必要があるという点、また、歳出構造の更なる平時化を進めなければならない、あるいは歳入についての説明責任を更にしっかりやっていかなければならない。まさにそのとおりだなと思うのですけれども、一方で、こういったことについて厳しい評価を受けるべきは、今日ここの会議室にお集まりいただいている財務省の皆さんがこの評価を受けるべきなのかということについて私は疑問を感じざるを得ないと思っています。この辺りを、国の政策運営としてどのように取り組んでいくのかというのは本当に大きな課題だなということを改めて認識した次第です。また、こういう評価のプロセスをこうやって進めていただいているわけですので、評価結果が、特に厳しい結果を受けて、それをよりよく効果あるものにしていくため、改めて政策に取り組んでいくというその中で、この評価結果がどのように反映されていくのか、あるいは、いくべきなのかということについても、改めてとても関心を持つに至った次第ですので、これはコメントとして申し上げておきたいと思います。
 2点目はデジタル化に関してです。毎年御報告を受ける中で、財務省、国税庁ともに年々進化しているなということを敬意を持って拝聴しておりますけれども、例えば今回で言うと、国税庁の目標の中に事業者のデジタル化促進という目標が新たに設定されたこと、これは社会全体のデジタル化を進めるために重要な目標設定ができたと評価しています。また、財務省の方は、特に税関などについては手続のオンライン化が進んでいるということも確認ができてよかったなと思っています。
 一方で、この評価書で御説明を頂いている範囲で拝見しますと、デジタル化の活用の仕方がまだまだ情報発信に偏っているなということがあります。例えば財務省の皆さん御自身の業務手続の、あるいは業務そのもののオンライン化の状況というのはどうなっているか、どのように進んでいるのかなというようなところが見えておりませんので、この辺り、また機会があれば、是非情報共有もしていただけるといいと思っております。
 以上です。

 ○吉野座長 
 秋山委員、どうもありがとうございました。
 続きまして翁委員、5分以内でお願いいたします。

 ○翁委員 
 令和5年度の財務省の政策評価につきましては、よく検討された内容で違和感はございません。秋山さんのおっしゃったこととも共通しますが、Bの財政健全化の評価の低いところについて、どうやってこれを改善していくのかというところにつきまして少しコメントをしたいと思います。4ページに財務省の使命とそれぞれの政策目標が書いてございまして、例えば金融政策であれば、最終目標である「国民経済の健全な発展」のために「物価の安定」が必要だということは、物価の安定が崩れればインフレになるということで、国民にとってもこれは直感的に、物価の安定が崩れれば国民経済の健全な発展が損なわれそうだということは響くように思うんですが、「財政の健全化」が財務省の使命、いわば最終目標である「健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実現する」「希望ある社会を次世代に引き継ぐ」ということにどういうふうにつながるかが、国民の腑に落ちるということが非常に重要なのではないかなというふうに思っております。既に情報発信などもいろいろなさっていますけれども、例えば国民の世論調査を定期的に行っていくとか、それによって国民の関心に沿った発信をどういうふうに心がけるかとか、また、国民の志向を考えてどういう財政再建策のメニューを出せるかとか、そういった課題をいろいろ検討していく余地はあるのではないかなと思うというのが1点目でございます。
 もう1つは、私は少子化、人口問題に大変関心を持っているんですけれども、2023年、出生率が1.2まで下がってしまって、人口動態の変化が急激でございまして、それに合わせてどうやって限られた資源の中で、財源の中で、潜在成長率や長期の社会的リターンを反映した優先順位づけをしていくか、これがますます重要になってきており、これを検討して、目に見える形で長期的財政の在り方を検討していく必要があるのではないかなと感じております。人口動態の変化は日本の危機でございまして、人口ビジョン2100というのも提言したんですけれども、著しい人手不足に伴う供給制約や少子化の進行を抑えるための若年層への配慮や経済の強靱化というのは全部やりながら、財政を長期的に持続していくことが求められるようになってきています。それから、今は円安でございますけれども、これが続きますと外国人専門人材の長期的流入も期待できなくなってしまうということがあります。ですので、こういった人口動態変化といった長期の視点で考えていくこと、そういった大事な優先順位を、メリハリをつけながら財政の持続性を確保していくことがますます重要と思っております。
 この点、御質問もさせていただきたいのですが、内閣府から2060年までの長期経済推計、財政推計が出たのですけれども、こういった長期の視点で考えた財政政策の優先順位づけに照らして、財務省としてどう受け止めているのかということにつきましても、お考えをお伺いしたいと思っています。
 最後に、国税庁の実績評価実施計画につきましては、大変これもよく練られていて違和感はございません。特に税務行政について、データ活用等による税務執行の効率化・高度化等の施策で共同研究の実施状況について参考指標が新設されたことや事業者のデジタル化促進関連施策の周知・広報が施策として新設されたことは大変重要だと思っております。特にデジタル化というのは国税庁だけで進むのではなく、事業者と全体でアーキテクチャとしてデジタル・トランスフォーメーションを進めていくことが大事ですので、これを一緒になって進めていくという姿勢は非常にいいし、重要だと私も感じております。
 以上でございます。

 ○吉野座長 
 翁委員、どうもありがとうございました。
 続きまして角委員、よろしくお願いいたします。

 ○角委員 
 残念ながら2024年3月末時点で国債や借入金などを合わせた国の借金が約1,300兆円という水準まで来てしまいました。この最大の原因は、やはりこの20年間、何とか負債の増え方を減らしてということに努力した結果、会社で言うところの経済成長について、国としての経済成長に対する投資、あるいはお金の使い方がこの20年、もう少し長く見れば約30年間、成長投資をしてこなかったということに尽きると思います。そして、ようやく積年の課題でありましたプライマリーバランスの黒字化がいよいよ2025年、非常に厳しいとは思いますけれども、何とか達成できるラインまで来たということについては、ある意味で財務省の御努力が実りつつあるというふうに感じておりますので、2025年のプライマリーバランス黒字化については是非とも達成をしていただくように御努力をお願いしたいと。ただ、プライマリーバランスの黒字化というのは、あくまでも出発点でありまして、それで満足しては当然駄目なわけで、そのプライマリーバランス黒字化の後、いかに長年にわたって怠ってきた国としての経済成長のためのお金の使い方というものを効率的に、DXを最大限に活用しながら効率的な成長投資をしていただければというふうに思います。
 社会保障費が不均衡になっている、給付とバランスが不均衡になっているということの解消が今後、超高齢社会の中で、75歳以上の人間はそれほど働いて税を納めるというわけにはいかないわけですので、これが非常に長期にわたり続くということを前提にした、いわゆる給付と負担のバランスの不均衡是正ということがまさに急務になっているように思います。少子化が日本の今最大の課題でありますけれども、少子化ということはイコール経済成長の鈍化とリンクしているわけでして、この少子化、経済成長の鈍化というものを解消するためにも、国としての経済成長を再度スタート、再スタートを切るという決断のもとに、まずその第一歩として来年のプライマリーバランスの黒字化を是非とも達成していただければというふうに思います。
 歳入改革についても、いつできるか分かりませんけれども、付加価値税について、さらに緩やかに上げていくということを行政だけではなくて政治家に対しても理解を求めて、経済成長を鈍化させないように緩やかな形で歳入改革を計画していただくということを是非ともお願いしたいと思います。
 以上です。

 ○吉野座長 
 どうもありがとうございます。
 それでは田中委員、引き続きましてお願いいたします。

 ○田中委員 
 秋山さんから評価結果についてどう考えたらいいかというお話がありました。もちろん委員を引き受けている我々が何かを言うのは重要なことですけれども、実際には日々、日本の財政の在り方、日本国家のありようについてマーケットで投資家が評価を下している。それは外国人だけではなくて、我々日本列島の中に住んでいる人たちが日々の行動を通じて評価基準を明らかにしていることが重要だと思います。
 円安ですが、大きな変化、いろいろな時期がありましたけれども、一番大きな変化は、2022年に起きたと考えていいと思います。ウクライナ戦争が長期化しそうだというときに、これがただ単にロシアの軍事行動だけではなくて、東アジアにおいても同様なことが起きかねない、専制主義的な政治体制を持った国が日本の周辺にあるということが多くの投資家の頭に入った。これはどういうことか。第二次世界大戦後、日本が享受してきた低い軍事費という前提が崩れたということにあります。要するに、今後の経済の前提になる財政の在り方について、相当大きな変化が起きると内外の人は思ったわけです。そのときから新たな円安が始まっています。
 まず最初にイタリア国債が売られました。それは2022年5月、6月ですが、これを封じ込めるために欧州中銀も、それからEUもイタリアに対する援助をするとはっきりコミットしました。これがイタリア国債の下落を辛くも止めることになりました。そして9月にはイギリスでトラス政権が生まれて、財政収支(対GDP比)について全く考慮することなく、支出増に踏み出そうとした。財政赤字が増えそうだということで大幅にポンドが売られました。トラス政権は3か月しかもちませんでした。要するにイタリア国債が売られたとき、それからポンドの危機が起きたときに、ヨーロッパに上場されている日本国債のETFは大幅に下落した。2022年12月20日に日本銀行は長期金利の変動幅について従来よりも大きくすると発表したけれども、ヨーロッパに上場されているJGBのETFを見てみますと、2022年12月20日前後で全く変わっていない。要するに、そんなことはもう織り込んでいるということです。ですから、日本における行動、例えば日本銀行の行動も、指値オペで国債価格の下落を防いでいるから問題ないということなんだろうけれども、実際にはもう起きている。世界ではそういう評価が起きている。現在起きている円安を考えてみます。イギリスにおける一人一人の国民の行動と英国政府の対応について、英国なので一番関係づけがとりやすくて、分かりやすい。1967年、また1992年に大幅なポンド安になったときには、忠良なる英国民がポンドを売っている。安くなったポンドをどこかで買い直せばいいということです。
 新NISA等で運用先について言えば、要するに円建ての金融資産なんか持っていても、ろくなことはないといわんばかりの行動を国民が取っている。ですから評価基準、評価結果について、我々がこのように議論することも必要ですけれども、おそらくもう一人一人の国民が日々これを行っていて、その結果が容易ならざるものだと、現在の情勢についてそういう評価を国民がしている。一人一人の国民にとってみますと、一体、政治というのか、日本の財政を含むトータルのシステムが自分たちに一体何を踏み絵として押しつけているのか。一人一人は忠良なる日本国民として、日本国家の在り方、日本社会の継続性について本気で思っている。しかし、自分の資産を維持しよう、あるいはロスを避けようとすれば、円が上がる以外ないではないかと。こんな選択肢を押しつけている、提示し続けている体制に対する国民の一種の反応が今回の円安には濃厚に出ていると、こう考えるべきです。
 イギリスについて言えば、1967年の大幅なポンド安以降、これは政治家を吟味し直そうと。もっと能力のある人を保守党の中においても引き上げなければならないという合意ができた。門地とか、そういうものとイギリス保守党はなかなか戦後も区別できなかったんですけれども、雑貨屋の娘さんのサッチャーが首相になるというような大きな意思決定がなされたのは、国民に対してそれまでの体制が本当に、こんな踏み絵を英国民に強いるという残念な結末となった。これを何とか変えようという意思が保守党の政治家のリクルートメントにも影響を及ぼした。私は日本の場合、今後このことは検証されると思っています。それは分析して論文を書く、本を書くというのを業としてきた私としては、こんな恰好の材料が出てきて、本が何冊も書けるなというふうに冗談めかして周りの人には言っている。それは昔、孔子様が言った「義を見てせざるは勇なきなり」、要するに日本国民に強いているこんな理不尽な選択肢を根底から変える社会変革を政治社会、あるいは行政の在り方、財務省の在り方も含めて論じないわけにはいかない。勇なきなりで止まっているわけにはいかないというところまで来ている。そういう意味では、財務省自身の手による評価、あるいはその結果を出すというのは非常に重要なことなんだけれども、でも、それを超える問題が既に起きているということを我々はもっと認識すべきではないか。
 そういう意味からいくと、永田町、あるいは一部の役所、あるいは日本銀行の一部で言われている話は、詭弁、偽善が宿っているというふうに国民のかなりが感じ始めているということに私は危機感を持つべきだと思います。それと、これは勇なきなりというわけにいかないので、私自身もできることで踏み出す以外にはないと思っていますけれども、是非委員の皆さんにも、あるいはMOFの皆さんにも考えていただきたいほど、状況が差し迫っていると私は思っています。
 以上です。

 ○吉野座長 
 御意見どうもありがとうございました。
 続きまして田辺委員、お願いいたします。

 ○田辺委員 
 何点かコメント申し上げたいと思います。
 まず1つは、全体としての評定に関しましては特に異議はございません。B評価が増えたということと、特にそれが財政であるとか、経済運営であるとか、さらには各論のところでは歳入というようなところにB評価が増えているというのは、ある意味、実態もそうなのかもしれませんけれども、ある種のマクロ経済のところでコロナの時代が平常化してきて、その総体としての形というのが問題のあるときに、ここら辺に目が向かっているのであろうなという認識の表れだと思った次第です。特にプライマリーバランスの2025というのが恐らく喫緊の達成すべき課題でありますし、そこで、うまくいくか、うまくいかないのかというのが分かりますし、その次の目標は一体、財政目標は何なんだろうというのを明らかにせざるを得ない時期だと思いますので、そこに向けて、一連の活動をしていただければというのが1点目でございます。
 2点目、日本の抱える最大の問題のうちの1つは、人口減少だというのはみんな言うのですけれども、ただ、直前まで人口の推計をやっていた人間からいたしますと、人口推計は2023年に全国推計が出て、それで2023年の終わりぐらいに地域推計が出ました。ということは、逆に言いますと、これから5年はかかりませんけれども、4年ぐらい、人口に関する新しい情報というのは出てこない。今までやった推計の延長線上で対応を考えざるを得ない。これは何かというと、数字によるショック療法がこの数年できないかもしれないなということです。ただ、予想されているように急激に人口が減ってまいりますので、それに対してどうするのかという議論というのは、我々は抱えざるを得ないのかなと思っているところでございます。ただ、他方、全国推計のときに、年16万人ずつ海外からの人が入ってきて、それがネットの増加分として増えてくると推計しました。10年たてば160万人、200万人弱ぐらいになります。そこを出したときは大きすぎるのではないかと言われていたんですけれども、実際の数字を見ているとほぼ当たりまして、これをどう維持できるのか、今後16万人とか20万人とか、海外から定着するような人々を維持できるような国であり得るのかどうかということが、ちょっとまだ自信を持って言えないところでございますので、そういった政策というのも次から次へと出てくるんだろうなと思います。
 あと、人口動態の変化は、社会保障の費用負担と給付の問題にはね返ってくることは確かです。今、年金の方は行われていますけれども、ほかにも医療保険とか、それから介護保険の問題が当然のように、これにどう対応するのかというのを進めてゆかなければならない。ただ、これは財務省の問題ではないとは思うんですけれども、設けられている会議体を見ますと、例えば全世代型の社会保障会議であるとか、それから社会保障審議会で、その下にある各部会なんですけれども、結局、負担と給付を合わせて議論する場所がほとんどありません。全世代型というのは、ほぼ給付の方、特に少子化で一連の子育て世代層をどうやるのかというところに集中しましたので、あの負担をどうするのかとか、それから高齢化のもとでの負担をどうするんだという議論が、各論ベースで答えるだけでありまして、全体の議論をしない、全体を見ないで議論して片付けるということになっています。それは悪いとは申し上げませんが、ただ、フィロソフィーのない改革になりがちでありますので、一定の成果は出るのですけれども、長期的な方向性が見えにくいということです。
 3点目は、小さいところですけれども、塩のところが点数が、評価が下がっているというので、標準処理期間内に処理できなかったという、ある意味、事業の小さなミスと言えば小さなミスなのかもしれませんけれども。ただ、財務省はこういうことは絶対に失敗しない省庁だという、ある種の確信なのか、信頼なのかが、あって、それが崩れていって、大きなところにつながりかねませんので、できるだけ早期にこういうものの芽をつんでいっていただければと思います。
 ラスト、4点目、国税のところでございます。国税に関しましては、DXの計画、つまり税務署に行かなくても納税ができる体制をつくるのだというところへ着々と向かっているという感じがございます。DX化の2つの部分がありまして、外側に対してDXを使うというので、今回事業者のDX対応を迫ろうというので、非常に踏み込んだ対応だと思います。事業者の後は、恐らく国民もDXを納税に使っていただくという方向に踏み出るのだと思いますけれども、事業者のところまでは割とうまくいくんですけれども、その後の国民になるとなかなかうまくいかないというのが、例えばマイナカードの保険証利用とかというところで経験していますので、そこをうまく円滑にやっていただければと思います。かつ、内側の使い方では、AIを使って催告のタイミング等々を学習させるとかというような試みが順調に進んでいるということは、これを狙った目標設定をなされているということは高く評価したいと思います。
 以上です。

 ○吉野座長 
 ありがとうございます。
 それでは山本委員、5分以内でお願いいたします。

 ○山本委員 
 私からは事前に詳細な点は既に事務局に提出してございますので、3点ばかり申し上げたいと思います。
 1点目は、財政に係る問題であるんですが、具体的に申しますと政策目標の1-1に財政の効率化・質的改善を推進するための調査研究等に必要な経費の確保に努めるとなっております。これは私自身の責任もあるのかもしれませんが、ここは確保に努めるんじゃなくて、この調査研究は是非ともやっていただかないといけないことであるんですが、これをどうするかというのは翁委員からも問題提起があったんですが、どうやったら国民に財政健全化を訴えられるかということだったんですが、いろいろ過去の分析等を見てみますと、国民は決して財政健全化を否定しているわけではなくて、面と向かって聞かれれば、財政の健全化は必要ですねというのは認めるんですね。問題はどうしてそれが実現できないのかということにあると思います。結果的に負担を避けたい、要するに自分のところに炎はなるべくかからないようにしたい。こういうことに対する国民からの反発、あるいはそれを受けた政治家の行動にかかってきているわけですね。ですから、結果的に負担と財政健全化の関係性をどうやって説くかということになろうかと思います。今、若い方を含めて非常に、財務省の方は御承知だと思うんですが、統合政府という概念で、要するに純資産はプラスだから問題ないだろうという議論が横行しているんですが、こういったことに対しても、やはりきちんと財務省本省が反論されるということも必要かもしれません。投げられたボールに関してはきちんと論理的に投げ返すというようなことが必要だろうと思いますよね。ですから、このためにはEBPMも必要かもしれませんが、一番危惧しておりますのは、知り合いの学者に聞きますと、経済学の中で財政学というのは非常に人気がなくて、労働経済学にみんな流れるというんですね。これはこういう調査研究が、人材確保という点からも自ら人材育成というのも重要かと思うんですが、ネットワークを国際的にもう少し高めていただくようなことが是非とも必要だろうと思っております。
 これも翁委員がおっしゃったことなんですが、歳入に関する情報についての説明責任の向上、これも重要なことは、申すまでもないことなんですが、具体的にこれをどうやって説くかということですね。とりわけ歳出との連動で説明責任ということを問うていくような広報戦略なりを是非とも強めていただきたいというふうに思っております。
 あと1点、国税庁の実施計画について1点だけ申し上げますと、1-2-2-2ですか、オンライン照会可能な金融機関数を100から250に増加する、これは非常に結構なことではあるんですが、具体的にどのようなメリットがあるのか、双方にメリットがあるんだと思うんですけれども、逆に言えば日本の金融機関のどれぐらいをカバーすることになるのかというふうなことも含めて、もう少し丁寧にお書きいただくと非常にいいのではないかというふうに思います。
 以上でございます。

 ○吉野座長 
 どうもありがとうございます。
 それでは途中から御参加の冨山委員、ほかの委員の方々の御意見、お聞きになっていらっしゃらないと思いますので、重複しても構いませんから、5分程度でお願いいたします。

 ○冨山委員 
 何人かの方は聞いておりましたので、かぶる部分があることは承知の上で申し上げますが、ここに来てはっきりしていることはインフレになっても何も問題は解決しないということですね、はっきり言えば。昔のリフレの人たちみたいに、インフレになったら全て問題が氷解するということは決してないということが明らかで、むしろ何だかんだいって経済成長率の低さであるとか、あるいは財政の悪さであるとか、あるいは金利の低さというのは円安の方に明らかに効いているわけで、それが結果的にコストプッシュインフレになっていますので、一生懸命賃金を上げても追いつかないということが起きているわけです。ですから、はっきりしていることは王道に戻るべしですね、これは。当たり前ですが財政は健全な方がいいし、当たり前ですが実質的な経済成長率は上げないといけないしということに戻るわけで、加えて、これも何人かおっしゃいましたが、私も全世代社会保障会議に入っているのでつくづく痛感するんですが、今の人口減少の勢いというのは、ほぼ30年間で毎回人口が半分になる指数関数です。2分の1のn乗に今入っているわけで、当然のことながら持続可能性が厳しいというのは誰でもすぐ分かるわけで、人口減少がまるごと全世代均等に半分になるんだったら話は別なんですけど、基本的には若年層から減っていくということになりますから、要は極めて財政にとって厳しい状況が起きることは明らかなわけで、そういったことももろもろ全部含めて、多分円が弱いんだと思います。世の中、ばかではないので、そのぐらいのことはすぐ分かるので。
 ですから、その脈絡で言うと当たり前なんですが、これは財務省、執行官庁的部分と政策立案的部分が当然両方ともありますが、この評価、財務省の方でちゃんと反映してもらっていますが、やっぱり王道に戻って、財政を健全化して、負担と給付はバランスをとっていかないと、この国の未来はないというのははっきりしてきているんだと思います。だから、さらばリフレ派ですね、はっきり言って。
 そういう意味で言うと、財務省はかなり本気で頑張らないと、とにかく前から申し上げているように、企業再生においては会社が本当に危なくなったら一番仕事するのはCFOなので、要は国のCFOは財務省ですので、私としてはより期待を、ある意味では期待と使命感をより強くしているところであります。
 あと、資金循環という脈略で言うと、もともと限られた資金の中で今申し上げたような成長率を押し上げる云々というのがあるので、どちらかというと、私の感覚で言うと、今の資金循環で言うと実は何とか機構というのが一番怪しい循環になっているので、何とか機構系はちゃんとやった方がいいです。要するに形が、投資だろうが、融資だろうが、一般会計の質だろうが、お金が出ていっていることは間違いないので、正直言って機構のうちの幾つかはむしろ生産性の押上げにネガティブに機能しているにおいがあります。もっと言うと、機構だけではなくして、ここから先、我が国の経済実体としての勝負どころはひたすら付加価値労働生産性の向上です。要は労働供給制約がこの国の最大の成長の押下げ要因になるので、したがって、もともと財政が厳しい中で、なおかつ人口が減っていく中で、特に若年層が減っていく中で、経済成長を維持して、よって財政のバランスを保とうと思ったら、飛躍的に付加価値労働生産性を上げないと駄目なので、そうすると当然財務省の立場として、各省がいろいろばらまきたがるお金について、それが付加価値労働生産性の向上に本当に資しているのか、逆にそれを押し上げる方向に資していないか、私は今、例えば産業界に配られているお金のうちの正直、中小企業を含めて7~8割は逆の方向に作用していると思っています。こういう状況ですから、変に弱い、生産性の低い会社を助ける方向の支出は全く意味がありません。また、仮にそれをやめて中小企業がつぶれたとして、あるいはどこかの産業がつぶれたとして、これだけの人手不足だから実は困りません、社会は。失業問題につながらないので。
 ですから、ここから先、ある意味で予算を審査する立場で皆さんいらっしゃるので、予算審査においては是非、特に何とか機構が一番その典型なんですが、あれは一応全部生産性を上げるためにやっているということになっているので、そういった意味で財務省の側のある種のガバナンスですね、財政規律からのガバナンス機能というものをさらに拡大していくということは、まず日常的なところで財務省が果たせる重要な役割だと思うので、そこは是非厳しく、バサバサやってもらった方が私はいいと思っております。私が関わっている業界もお金をもらっておりますが、はっきり言って、切ってもらった方が企業間の優劣の差がはっきりつくので、私どもは競争力があるので全く困らないと思っておりますし、多分多くの人は内心、ユーザー、利用者も含めて内心そう思っているはずです。だって、その方が結果的に生産性の高い企業が残っていって、恐らくサービスクオリティも上がっていくし、恐らく料金も下がっていくので、そういった意味で、金が限られている中で有効にお金を使うというのは、何度も繰り返しますが、今はとにかく付加価値労働生産性が本当に上がる方にそれが機能するかどうか、その観点から是非とも財務省からも見てもらいたいと思います。
 ちなみに、付加価値労働生産性というのは非常に単純な、簡単な指標でありまして、要は企業の粗利を労働時間で割ったものが付加価値労働生産性です。これに労働分配率を掛けたら賃金です。これに総労働時間を掛けたら、そのままGDPです。GDPは付加価値の総計ですから。だから、ある意味では財務省のマクロ指標とも直結する指標なので、是非ともそういう観点で頑張っていただきたいと思います。
 以上です。

 ○吉野座長 
 冨山委員、どうもありがとうございました。
 それでは、最後に私からも数点コメントさせていただきたいと思います。
 1つは、少し大きなところでいきますと、財政政策と金融政策は大きく異なるところがあります。金融政策の場合にはインフレ目標というものを政策目標とし、金利コントロールは日本銀行の政策手段として完全に自分で決めることが出来ます。それに対して財政政策の方は、国会で決まって、政治の判断があり、財務省がこうやりたいと思っても必ずしもそのまま財政の歳出なり歳入が決まるわけでないという点があります。まさに政策立案の不確実性が財政政策は大きいと言えます。ここが恐らく財政政策と金融政策の大きな違いであると私は思います。その中で、財政政策も本当に望ましい政策の在り方に近づけるにはどうしたらよいだろうかということの議論が必要ではないかと思います。金融政策ではテイラー・ルールがあり、インフレ目標を2%として、(ただし、インフレ率2%目標が本当にいいかどうかの議論はありますが)、その目標対して金利を上げたり下げたりしていく、これは全世界に各中央銀行でやられています。これに対して、財政政策の場合にはルールをどのように決めたらよいのであろうかということになります。財政ルールでは、ヨーロッパ(ユーロ地域)では、Dept-to-GDP ratio(「公的債務残高/GDP」比率)が60%、Deficit to GDP ratio(「毎年の公的債務額/GDP」比率)が3%と設定されています。これは認められている財政ルールです。わが国では、Dept-to-GDP ratioとDeficit to GDP ratioが、それぞれ日本ではどの程度、目標値から離れているかを示し、それぞれ60%、3%の水準を達成するためにはどのようにすればよいか、学者も含めてやっていくべきだと思います。また、ヨーロッパ(EU)で議論されている財政ルールをもう少し前面に出して、その目標とされる数字と実際の数字との差を、もっと公開して、国民的な議論に発展されることが不可欠であると考えます。
 それから、山本先生からご指摘があったように、最近、マクロ財政政策を研究する学者の数が減っています。その1つの理由は、経済学者の場合、英語で査読付き論文がマクロ財政政策分野ではなかなか書けないという点があると思います。労働とか、たくさんデータが使える分野では、公表されたデータを使って計量分析し、英語で論文を発表できています。しかし、マクロ財政というスケールの大きい内容では、議論してもなかなか査読付き論文が書けないため、若い研究者たちは、マクロ財政分野での研究をあまり進められてないところがあると思います。しかし、そうは言っても何らかの形で学者も含めて国民の方々が、公的債務残高/GDP比率が、こんなに大きく拡大しているのであることを認識して、それを是正する方向に持って行く議論がなされることを望んでいます。
 その関係では、国債の利払費は、プライマリーバランスには含まれていませんので、「American Economic Review(1979)に私の指導教授だったCarl Christ教授が書いた論文で、やっぱりプライマリーバランスでは駄目で、金利まで含めた財政バランスを考える必要性を述べており、随分、昔から明確になっている議論です。
 それから、先ほどGX経済移行債のグリーンボンドに対して高い御評価があったと思います。私の今やっている研究では、カーボンタックス(炭素英)も、GX債も、カーボンプライシングも、CO2の排出量が企業毎に示すことができれば、Green Bond, Carbon Pricing, Carbon Tax, Green Credit Ratingという政策手段は、結局は全部同じ結果になることを示しています。もっとも重要なことは、各企業のCO2の排出量をしっかり計測することにあります。
 それから、冨山委員から生産性の向上、TFPのお話がございました。私たちもDSGEモデルというのを使いまして、財政政策の中身がどのように日本経済に影響を与えるかを、コロナの時期も含めて一昨日、東大―IMFのコンファランスで発表させていただきました。Singapore Economic Reviewに近刊予定の論文ですが、「給付金」は短期しか効かなく、長期な効果はありません。「政府の消費支出」、これもあまり効果がない。それから「政府の投資的支出(インフラなど)」、高度成長期には効果がありましたけれども、現在の効果は小さくなっています。最も重要な政策は、冨山委員おっしゃっているように日本のTFPを上げること、それから民間のR&D活動を活発化させるようなシードマネーとしての政府の歳出、これが一番長く日本経済の成長には役立ちます。一般均衡のDybnamic Modelでは、本当に長期的に日本経済を再生させる政策としては、R&D, TFPを高める政策を実施することがもっとも重要であるという結論が導かれています。
 国民の方々は、自分は税金はあまり払いたくない、なぜ払いたくないかというと、政府の歳出には無駄がある。だから税金を払う必要ないと言われるわけです。1つの考え方としては、各省庁のデジタル化をもっと推進する必要があると考えます。国税庁は一生懸命デジタル化をやられていますが、各省庁ともにデジタル化を進めて、そのデジタル化によって各省庁の歳出が減るんだと、こういうことを国民に見せていただいて、我々も無駄をカットするように予算でいろいろ工夫していますと。少なくとも歳出のカット、減っている部分、これを是非、見せていただいて、さらに、歳入の増加も必要なんだというようなことを言っていただけると一番いいなと思います。
 少子高齢化のところでは前から申し上げていますけども、なるべく高齢者の活用が必要であると。定年を延長していただいて社会に貢献し続けると。ただし、年功序列の給与ではなくて、生産性に応じた給与とすると。私の卒業生なんかにこういうことを何度もOB会なんかで言っていましたら、最近、先生、年取った人たちが雇い続けられているんですけど、全然彼ら、やる気ないんですよと、こういう話があります。それぞれの高齢者も生産性に応じた給与体系とし、高齢者の方々もやる気を起こして社会に貢献できるという、そういうインセンティブをしっかり持ちながら、なるべく長く働いていただかないと、高齢者は既に存在している人なので、少子化という場合には新しい子どもさんが生まれなくてはいけないわけですけども、いかに既に働いて退職をせずに長く社会に貢献していただくかが最も重要な政策であると、理論モデルと実証でシミュレーションで求められています(Yoshino-Miyamoto(2017)Japan and the World Economy).
 最後は、今日全然お話がなかった社会保障と同時に、地方になるべくお金が今後行かないようにする、高齢化の中で、これがもう1つ重要なことだと思います。それに関してはリモートワークの推進が必要であると思います。リモートワークが効くような気がいたします。例えば山梨とか高崎とか、東京近辺でいけば、そういうところまでリモートワークであれば通勤圏になります。週に1回出てくればいいわけですから。そういう意味では、リモートワークを推進することによって、地方に住めることによって東京の地価を下げて、そして地方の活性化を促し、それで地方交付税などの地域への資金を減らすという、そういうことも重要ではないかと思います。
 以上が私からのコメントでございます。
 それでは、たくさん御意見を頂きましたので、ただいまからは財務省、国税庁の方々から御発言を頂きたいというふうに思います。最初に目黒政策立案総括審議官から政策評価全般についてお願いいたします。

 ○目黒政策立案総括審議官 
 私からは財務省の政策評価の作業を束ねる事務局の立場から何点かお話し申し上げます。まず本日は各委員の方々から大変貴重な御意見の数々を頂きまして、ありがとうございました。今日御提示しました令和5年度の評価結果に加えまして、本日頂戴した御意見も踏まえながら、令和6年度の政策評価の方、先ほど次の政策に評価結果をしっかりと反映させるのが大事だというお話もございました。令和6年度の政策評価のPDCAサイクル、こちらについても事務局が各局とよく連携して、しっかりと回していきたいというふうに考えております。
 それから1点、個別のお話では、秋山委員からデジタル化につきまして、財務省、本省の方について、税関の手続などはあるけども、情報発信のデジタル化に偏っているのではないかというお話も頂戴いたしました。私ども本省で日々仕事をしていまして、ここも、大分仕事のやり方、ビジネスプロセスといいますか、そういったところがデジタル化に馴染むように変わってきた面もあろうかと思っております。財務本省のデジタル化につきましては、今日も資料の中で例年どおり一覧の形でお示しさせていただきましたけども、委員から御指摘いただいた点も踏まえて、業務のデジタル化、どの程度進んでいるかという点につきましても、この政策評価書の中でどのような情報提供ができるか、工夫を考えていきたいというふうに思います。引き続きどうぞ御指導のほどよろしくお願いいたします。
 私からは以上になります。

 ○吉野座長 
 それでは、財務省と国税庁の方から御発言いただきたいと思います。まず新川主計局長から、お願いしたいと思います。

 ○新川主計局長 
 今日は大変貴重な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。多岐にわたる御指摘があったと思いますので、少しまとめての御回答になることをお許しいただきたいと思います。
 まず財政健全化に向けてということでありますが、財政の足元の基本方針として一刻も早く財政の平時化を行うこと、それから金利のある新たな世界に入ってまいりましたので、それも見据えながらきちんと財政運営を行っていくということで、目前の目標としては来年度のプライマリーバランス黒字化、これを是非とも達成していくということだと思います。
 それから、これもずっと言われてきたことではありますが、プライマリーバランスは一里塚にすぎませんので、その後、達成後どうするのかということも今日幾つかの意見を頂戴いたしました。EUのルール等を踏まえますと財政収支に移行すべきということがあろうと思います。プライマリーバランスには金利という利払いの部分が落ちていますので、プライマリーバランスの達成が努力次第で視野に入ってきたこのタイミングと、それから金利のある世界に移ってくるという、たまたまこのタイミングが一致したわけでありますので、金利をどう扱っていくのかということについて、よく検討していきたいと思います。ただ、1つ留意すべきは、国の利払費というのは金利の動きからかなり遅れて利払費自体が増えてまいりますので、現状を申し上げると今払っている国の利払費というのは実力よりも相当小さくなっているということに留意する必要がありまして、それを国民の皆さんにもよく理解してもらう必要があると思います。したがって、今非常に少ない利払費を前提に財政収支をそのまま議論いたしますと、赤字3%でもいいんじゃないのかというような、割と短絡的な意見につながりがちなので、金利が上昇してきている影響というのは重層的に今後非常に大きな、例えば目の子で申し上げますと翌年度に出る利払費の10倍、9年後には発生するということを踏まえた上での財政運営ということを国民の皆さんにもよく御説明をしていきたいと思います。
 それから、財政全般に係るB評価が幾つかございまして、これは誰に宛てたものかということでございます。もちろん我々財政当局に対する評価ということになると思いますが、確かに国民の皆様がこれをどのように捉えるのかということは極めて重要、財政そのものが必ずしも我々のコントロールのもとに100%あるわけではなくて、当然国会ですとか選挙ですとか、そういった民主的なプロセスを経て財政は決まってまいりますので、国民の皆さんがどのように捉えておられるかというのは極めて重要だと思います。
 定期的なものではありませんが、1つの調査事例で割と有名な、2年前ですか、東京財団が行った事例でいきますと、経済学者200人強と一般の国民の方、できるだけ偏りなく選んだ1,000人の方で比較いたしますと、財政赤字が問題だというふうに認識しておられる人の割合は6割強で、両者あまり変わりがないということでありましたが、その原因というところを見ますと、経済学者はほとんどの方が人口問題つまり社会保障の問題というふうに捉えられているんですが、多くの国民の方はそこではなくて、政治家の無駄遣いと公務員の給料というような、間で何か抜かれているというような認識を持っておられますので、財政そのものが問題であるということ、こういう国民の健全な常識には働きかけるにしても、その間でどうしてこんな、国民一人一人、特に若い方をとってみると、給付はほとんどないのにどうしてこんなに負担が多いんだろうというのが多分こういった調査結果の背景にあると思いますので、こういった部分についてもう少し継続的に、より詳しくやった上で、別の問題になりますけれども、少子化問題に対してどのようなアプローチが要るのかということに対して考えていかなきゃいけないと思います。
 他方で、B評価は誰に宛てたということの関連で、マーケットの評価という点について御指摘もございました。現状を見ますと為替と金利と物価の関係について、国民は極めて正確にこの三者の関係を理解しておられるのではないかと思います。むしろ我々とか政治よりも、もしかしたら詳しく理解されていて、マーケットにおいて日々、自らの資産を守るためにいろいろな行動をとられているのではないかというふうに思います。そうした中で、金利のある世界というのは実はそういうマーケットが国民に影響を与え、かつ財政がそのマーケットに大きな影響を与え得るという、そういう状況になっておりますので、バイオレントなマーケットの調整だけに任せるということであれば財政当局は必要ないわけでありますけれども、そういったものをどのようにマネージャブルな変化ですとか水準にしていって、国民の皆さんの理解を得ながら財政の安定化をしていくかということが極めて重要であろうと思います。
 それとの関係で、プライマリーバランスを達成した後の成長ということでございますが、これは政府のというよりは日本全体の、民間も含めた成長ということを考えますと、やはり投資の不足という部分があると思いますので、これをきちんとやっていく必要があると思いますが、多くの先生方から御指摘がありましたように、その場合において成長に資するような投資に重点化することが必要で、そのためにはメリハリといいますか、のんべんだらりと現状維持型の支援ということを続けていったら投資はできないことは明らかでありますので、労働生産性の向上のためには、労働の移動ということについて従前以上に積極化することが必要でありますし、新陳代謝ということについても、いずれも初見ではかなり反発のあることであると思いますけれども、今の現状を見てまいりますと、そういう対処をコロナのときにしてきた国は十分成長していますけれども、それをやれなかった我が国は低水準にあえいでおりますので、そういう部分に重点化するようにしていく必要があろうと思います。
 それから、2020年以降の、これは我が国を取り巻く環境の変化でありますけれども、財政問題に大きな影響を与えてまいりましたのは、人口問題を反映した社会保障分野ということでありましたが、我が国を取り巻く環境は、更にこれに加えてナショナルセキュリティの分野、国家安全保障の分野も非常に予算全体において重要な役割を果たすようになっておりますので、将来的な予算を編成するに際しては、ナショナルセキュリティとソーシャルセキュリティ、両方の分野を見ながら必要な財源を確保していく、こういう取組が必要になってまいると思います。
 それから、大きな問題として少子化問題、人口問題ということでありますけれども、先ほどの国民の受け止めというのはまさに、実際少子化というものに対するインパクトというものを理解していただくということを通じて国民の受け止めを実態に近づけていくということが必要であろうと思います。内閣府の方で試算していただきました2060年推計の受け止めということでありますけれども、やはり人口構成の影響がこの2060年推計には強く出ておりますので、この部分に対応して、今後何十年というスパンで考えますと我が国にとって最も希少な資源というのは恐らくヒューマンリソースであろうと思います。したがって、この希少な資源をできるだけ有効に活用できるような方向で成長戦略を考えていかないと、なかなかおぼつかないんじゃないのかと。外国人の問題といいますか、外国人がある程度流入してくることを前提とした将来推計というのがあると思いますけど、これもよくよく考えていかなきゃいけないのは、外国の方が日本で働くことにメリットを感じるという状況であれば、こういったこともトレンドとして維持できるかと思いますが、そもそも日本を選んでいただけないような状況でありますと、なかなか外国の方が働きやすい環境をつくるというだけでは、そもそも人件費の差というものが最も大きく影響があると思いますので、この部分をどうするかと。それから、当然高齢者の方にもっと働いていただくというのは重要でありますし、高齢者の方が働いていただく、負担していただく、給付についても考える、全世代型社会保障の根っこというのは年齢による負担とか給付ではなくて、能力と必要に応じた負担と給付ということであったと思いますので、2060年に向けて、長期の中ではそういったことを進めていく必要があろうと思います。
 最後に、地方と国ということでありますけれども、財政の配分の仕方における地方と国の問題はかなりまた難しい問題がありまして、リモートワークですとか、そういった形で地方がそれぞれ成長できるような環境を整えていくということを念頭に置いて考えなければいけませんが、足元で起こった地方への財政上の措置というのがまさに給付ですとか、そういったものにかなり偏っていたように思いますので、これが本当の成長につながるような形でのDXなどを活用した部分というのが必要になると思います。
 1点だけ、DXについて、これは国に限りませんけれども、DXによって行政ですとか事業が効率化していくというのは当然の目標であろうと思いまして、国としてはDX化によって行政コストを3割削減するということを一応数字として掲げてやっているんですが、1つ問題があって、新しくDXに取り組んだことによって、その分野の行政コストが3割減るということは、今ある行政について3割減るということはあるんですけど、新しいものまで含めて考えると、今のところ、やや行政コストは増える傾向があります。初期投資の部分が当然ありますので最初はしようがないかもしれませんけれども、やはり行政コスト全体に対して、国・地方限りませんけれども、DXを導入することで行政コスト全体が効率化されてきたということをお示しすることも、先ほど国民の受け止めでなぜ財政赤字なのか、行政・政治に無駄があるからだというような部分について、1つの説得材料になり得ると思いますので、そうした目標を掲げて、行政の方のDX化を進めていくのも重要であろうと考えております。
 私からは以上でございます。

 ○吉野座長 
 ありがとうございました。
 それでは青木主税局長、お願いいたします。

 ○青木主税局長 
 ありがとうございます。委員の先生方からはそれぞれのお立場から私どもに厳しい叱咤激励を頂きました。例えば安定的な歳入構造の構築、国民に対する歳入の説明責任の重要性、また成長分野にしっかり的を絞ること、これは歳出面だけではなく歳入面においてもということだと思いますが、そういった点を御指摘いただいた前提でいくつかコメントをさせていただきたいと思います。
 まず、皆様おっしゃっていましたように、厳しい財政の現状、そして少子化・高齢化、さらには人口減少という非常に厳しい状況の中で、やはり我々としてもここはまず王道に戻って、政策的な経費をしっかり賄えるだけの安定的な歳入構造をつくっていく必要があると思っております。同時に、それと両立させながらではございますが、まさに生産性を本当に高めるべき分野に的を絞り、歳入面でもしっかり対応していくことが必要であると思います。当面、短期的には、歳入構造の構築という意味で防衛財源の確保といった課題もございますので、こうしたことにはしっかり対応していかなければいけないと思っています。それから中長期的には、付加価値税の御指摘もいただきましたけれども、税制全体でどのように安定的な歳入構造を確保していくかということが大事だと思いますので、しっかり議論しながら取り組んでいきたいと思っております。
 もう1点、国民に対する歳入の説明責任のお話がございました。今、主計局長からもお話がありましたが、私も東京財団のアンケート調査は講演資料につけて説明するようにしています。歳出面では今話がありましたように、国民は今の財政状況の根本原因が社会保障の費用ではなく、政治の無駄遣いのように、どこかに無駄があると思っています。それとともに、税制については、消費税が逆進的で、しかも不公平で景気に非常に悪い影響を及ぼすと思っている方が相当程度いらっしゃいます。このような状況の中で我々は、そこに説明を試みていくわけですけれども、なかなか財政や税制についての理解を得ていくことは難しいと痛切に思っております。どのように国民に説明していくのか、これはまさに我々も教えていただきたい部分もありますが、例えばメディアに対して我々が御説明しますと、そこでは皆さん「財務省の言うことは理解する」という話になるのですが、そこから先で、実際に国民にどう伝わっているのか難しい面もあります。さらに言えば、新聞や本を読まずネットで情報を得ていく、こうした若い世代の皆さんに対してどのようなアプローチをしていくことが効果的なのか、ツールの問題もあると思いますし、説明の仕方の問題もあると思います。そこに対しては我々チャレンジをしておりますけれども、試行錯誤し続けることが大事かと思っております。また、もう少し直に国民の皆さんとやりとりをしていかないと、我々の説明が本当に響いているのかどうか、逆にどのような説明をしたらいいのか分からないというのがあります。我々は税制改正の説明を毎年1月以降に全国各地に出かけてやっておりますけれども、それをもう少し体系立って、どのような反応なのか、どういったところをうまく説明したらいいのかというのをもう少し真面目に取り組んでいく必要があると思います。
 すみません、長くなってしまいましたが、いずれにしても本日はいろいろな御意見を賜りまして、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。ありがとうございました。

 ○吉野座長 
 どうもありがとうございます。
 続きまして藤﨑理財局総務課長、お願いいたします。

 ○藤﨑理財局総務課長 
 理財局総務課長の藤﨑でございます。本日は叱咤激励も含めまして貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。理財局関係で2点頂きましたので、お話をさせていただければと思います。
 1点目はGX経済移行債でございます。最初に広瀬委員からお話しいただきましたけれども、その個別銘柄「クライメート・トランジション利付国債」につきましては、今年2月に1.6兆円、それから4月以降で今年度で合計1.4兆円の発行を今予定いたしております。これまで3回入札いたしておりますけれども、それぞれの入札結果、それから市場関係者の受け止めを総合的に見て、幅広い投資家から受け入れられてきているものというふうに評価をしているところでございます。海外を含めました事前IRでの投資家の受け止めというのも、総じてトランジションの重要性に理解を示していただけるものであったというふうに報告を受けてございます。お話のありましたように、GX経済移行債につきましては10年間で20兆円規模、それからそれを呼び水として今後10年間で150兆円の官民投資につながるというものでございますので、大変重要なものというふうに認識しておりまして、今後も市場関係者の方々などと丁寧な対話をしながら発行に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
 2つ目でございます。田辺委員から御指摘がございました塩事業につきまして、今年、事務ミスと申しますか、事務処理の手続に時間を要したという案件がございましてB評価ということになってございます。これに関しましては、事業者から申請を受理して処理を行った、全体で53件、申請件数がございましたけれども、そのうちの2件につきまして、税関で受理していただきましたけれども、不測の事態によりまして登録に係る通知文書発信者が不在となったことから事務処理手続に時間を要し、標準処理期間を超過したということが発生をいたしております。本件につきましては、通知文書の発信者が突発的に不在になってしまったというようなことでございましたけれども、こういった場合にも対応できるように事務処理手続の見直しを進めているところでございまして、今後同じような事案の発生を防止できるように対応してまいりたいというふうに考えてございます。ありがとうございます。

 ○吉野座長 
 御説明どうもありがとうございました。
 続きまして内野関税局審議官、お願いいたします。

 ○内野関税局審議官 
 恐れ入ります、今し方の理財局からの御説明にございました田辺委員の御指摘、塩の事業の標準処理期間について補足、一言だけ申し上げます。こちら比較的小さい税関、門司税関の税関長自身が亡くなったということで、塩の輸入の販売業ということで税関に委託をされていたという、その2件でございまして、20日間であるべきところがそれぞれ21日と24日になってしまったと。私どもにとりましては大変だったんだろうとは思いながらも、よくよく精査をしますと文書取扱規則上、決裁権者不在の場合の代決等の手続が総論的に書いてあるものと、それからこの個別の手続について明示的にどうあったかというところで、各税関の総務の部門の人間が解釈に迷うようなものであったのではないかという反省をいたしておりまして、ここは今事務年度中に全てきれいにするということで今手続をしてございます。
 いずれにしましても、財務省の事務処理への信頼性の維持にはしっかりと税関行政サイドからも努めてまいりたいと思っております。

 ○吉野座長 
 ありがとうございます。
 それでは住澤国税庁長官、お願いいたします。

 ○住澤国税庁長官 
 秋山委員、翁委員、それから田辺委員、山本委員から、国税庁のデジタル・トランスフォーメーションの関係で、温かい激励の言葉をいただきましてありがとうございます。
 国税庁においては、昨年、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション、税務行政の将来像2023という、中期的なプログラムを公表いたしまして、三本の柱を掲げております。
 一つ目が納税者の利便性の向上ということで、日常、皆さんが使い慣れているスマホをはじめとするデジタルツールから、簡便手続きができる環境を構築して、あらゆる税務手続きが税務署に行かずにできる社会を目指すというものでございます。
 二つ目が課税徴収事務の効率化・データ化ということで、データの活用を徹底して、組織としてのパフォーマンスを最大化するという取組でございます。
 そして3番目の柱が、皆様から御意見がございました事業者のデジタル化の促進ということで、事業者においても、様々なデータ活用を促進していくために、デジタル化を進めていただこう、そういった格好で社会全体のDXの推進に貢献していこうということでございます。
 いずれも、このデータの活用を中心に、取組を進めていくということがコアになってきているのではないかというふうに考えております。
 この申告の利便性の向上の世界におきましては、今年の確定申告期においては、約7割の方が、e-Taxによって申告をしていただくというところまで到達してきております。
 こういった取組を進める観点から、私どもとしては確定申告期に、相談会場に来署された方に対してもですね、できる限りこのスマホ等のデジタルツールを使った申告を体験していただくという取組を行っておりまして、今年の場合、来署していただいた方の6割方がこのスマホによる申告を体験されているということになってございます。
 スマホによる申告を体験していただくことによって、翌年からはですね、御自宅からe-Taxで申告される方が段々増えてくるということで、今年の場合、書面で申告をされた方が1割減少し、自宅からe-Taxで申告された方は1割増えているといったような結果になっているわけでございます。
 給与情報は、通常ですと、源泉徴収票という格好で紙で納税者の方に渡るわけですが、今年からは、e-Taxで税務署の方に提出していただいた源泉徴収票に関しては、あらかじめマイナポータルで連携をしていただきますと、e-Taxをされる際に、自動的にですね、入力した状態で、画面が表示されるというサービスも提供し始めているところでございます。
 こういったデータ活用も含めてですね、引き続きこの申告の利便性の向上に努めることによりまして、田辺委員からも国民のサイドになるとなかなかこのデジタル化がうまくいかないという御指摘もございましたけれども、データをフル活用した利便性の向上策により、この納税者の方々のDXの方にも協力していきたいと考えているところでございます。
 また課税・徴収事務の効率化・高度化については、AIや機械学習等の手法を活用したデータ分析を逐次進めておりまして、徴収事務、あるいはその調査事務において、効率的な接触の方法をAIによって判定する等々の取組を進めているところでございます。
 また、こうした税務行政の中で、データを活用するだけではなくて、翁委員からも御指摘がございましたが、学者との共同研究を通じまして、税務データを税財政施策等の発展のためにも活用していただくという取組を進めさせていただいております。
 国税庁が保有しております税務データは、申告納税制度のもとで、納税者の方々の信頼や御協力によって集積しているものでありますし、国税職員に対しては、税法上の守秘義務が課されているという制約がございますけれども、そういった中でも、こういった守秘義務に抵触しない範囲で、あるいはその個人情報、法人の利益を害するような情報に関して適切に取り扱うという前提のもとではありますけれども、極力、このデータの有効活用を、アカデミアの皆様にもしていただこうという取組を行っているわけでございます。
 その一環として、令和4年の4月から、税務大学校の職員と、外部の研究者の方々の共同研究という格好で、データ活用の取組を始めておりまして、今年で第四期の取組になるということでございます。
 また政府全体としてオープンデータ基本指針というものが定められていますが、その中で各府省庁が保有するデータは、全てオープンデータとして公開することを原則とする、という考え方が示されていることを踏まえまして、守秘義務の制約のもとで、どのような活用が考えられるかということを現在、有識者会議を設けて、御検討いただいております。
 その結果も踏まえてですね、税務データの更なるオープン化に取り組むことによりまして、先ほど、財政学の若手研究者がなかなか育たないというお話もございますが、財政学の発展にも寄与していきたいと考えているところでございます。
 また山本委員から、預貯金等の金融機関に対する照会のオンライン化についての御指摘がございました。
 国税当局においては、税務調査等で必要がある場合に、法令の規定に基づいて、対象者を絞り込んだ上で、金融機関に対して照会を実施させていただいております。
 従来からこのような照会が書面で行われていたために、行政機関と金融機関の双方にとって、大きな業務コストが生じていたということで、令和3年の10月から、オンラインによる預貯金等の情報の照会を開始してきておりまして、徐々にその範囲を広げてきております。
 今年の3月末時点では211の金融機関がオンラインでの照会に対応していただいておりまして、この数は、都市銀行、地方銀行、ネット銀行、信用金庫の約半分強に当たるところでございます。
 オンライン照会に応じていただくことによりまして、官民の双方において、ペーパーレス化により、この書面による保存や押印そして封入等の作業が不要になる、また、郵便事故がなくなるといったようなメリットもございますし、何よりもこの回答が迅速にしていただけるというメリットがございます。官民双方の業務の効率化・高度化につながるメリットがございますので、そういったところも丁寧に御説明をして、更に多くの金融機関に応じていただけるように努力してまいりたいと考えているところでございます。
 以上です。

 ○吉野座長 
 ありがとうございます。
 それでは最後に、茶谷事務次官からお願いいたします。

 ○茶谷事務次官 
 今日は貴重な御意見を多々賜りまして、どうもありがとうございます。財政全般に関わるような話が多かったかと思いますが、財政というのはある意味では国家運営そのものの一側面でありますので、様々な主体が様々な考えでそれに関わってこられるので、当然財務省自身が左右できる部分というのも一定の限度はあろうかと思いますが、ただ、国家の一組織として財政を取りまとめる責任があるということを踏まえれば、そこは厳しい評価というのは当然甘受して、その上でどう努力していくかということかと思いますが、これについてはどうしていくかということについても課題は山積しておりますが、根っこは、基本的には財政が国民生活そのものに関わるということであれば、国民の御理解をどう得ていくかということだと思います。これに関しては先ほど主計局長や主税局長から話がありましたように、国民の方と例えば学者の方の認識ギャップというのが大きいのではないかと。例えば、財政で大きな赤字の原因というのは社会保障の給付と負担のアンバランスであるとして、ただ、政治の無駄遣い、あるいは公務員の給与が高いということが国民の一番大きな御意見になっていると。この間には多分、桁が3つか4つぐらい違うようなアンバランスがあるんですが、この違いというのは実は長い間ずっとありまして、なかなかこれをどう御理解を得ていくかというのは非常に難しい課題でありましょうし、また、平成元年に消費税が導入されて以来、消費税については一定の意見がずっとある、これをどうきちんと御理解いただくかというのは我々にとって大きな課題で、前から言われていますが、なかなかうまくできていない事実ですが、様々な媒体を使いながら一つ一つ努力を積み重ねていくしかないかなと思いますが、他方、そういうことで、さりとて、そういう努力というのはきちんと進むとしても、最後は信頼ということが根っこにあるとすれば、不適切な事例というのは幾つかでもあったらいろいろ積み重ねてきた努力というのはバッと崩れるものですから、そこにもきちんと目配せしながら、我々なりに努力を重ねていきたいと思いますので、引き続き叱咤激励の言葉を賜れば幸いでございます。
 今日はどうもありがとうございます。

 ○吉野座長 
 茶谷事務次官、どうもありがとうございました。
 それでは、これをもちまして本日の議題は全て終了いたしました。次回の懇談会ですけれども、通例ですと10月頃を予定いたしております。現時点では国税庁の令和5事務年度の実績評価書を予定しておりますけれども、具体的な内容、それから日時につきましては、改めて事務局から御連絡させていただきたいと思います。
 本日は各委員の先生方から非常に貴重な御意見を頂き、ありがとうございました。財務省のウェブページに皆様からの御意見を確認した上で掲載させていただきたいと思います。財務省におかれましては、委員の方々から頂いた御意見を踏まえ、これをしっかりとPDCAサイクルで回していただくようにお願いしたいと思います。
 それでは、これをもちまして第80回の財務省政策評価懇談会を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

──了──

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