文科省・新着情報

1.日時

令和6年5月10日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

対面及びオンライン会議にて開催

3.議題

  1. 我が国の原子力政策と高速実験炉「常陽」への期待
  2. 高速炉の燃料技術開発について
  3. その他

4.出席者

委員

寺井主査
黒﨑委員
石川委員
小澤委員
高木委員
松浦委員
中熊委員

文部科学省

清浦 大臣官房審議官
奥 原子力課 課長
井出 研究開発戦略官
髙倉 原子力課 課長補佐
生方 原子力課 課長補佐
竹ノ内 原子力課 課長補佐

オブザーバー

   山口 彰 様 原子力安全研究協会 理事

   皆藤 威二 様 日本原子力研究開発機構 大洗研究所 戦略推進部 次長
   郡司 保利 様 日本原子力研究開発機構 エネルギー研究開発領域 上級技術専門官

5.議事録

原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会(第21回)
令和6年5月10日(金曜日)13時30分~15時30分

【事務局】定刻になりましたので、第 21 回原子力研究開発・基盤・人材作業部会を開催いたします。今回の作業部会は、対面とオンラインを併用したハイブリッド形式にて開催しており、これに関連した確認事項などもありますので、議事に入る前まで事務局にて進めさせていただきます。
 まず、オンラインにてご出席されている方への留意事項をご説明いたします。委員の皆様におかれましては、現在、遠隔会議システム(Webex)上で、映像及び音声が送受信できる状態となっております。ご発言を予定される場合は「挙手」ボタンを押していただくと、画面の左上に「挙手」マークが表示されますので、順番に主査よりご指名をいただきます。ご発言をいただいた後は、もう一度「挙手」ボタンを押して、手を降ろしてください。会議中に、ビデオ映像及び音声が途切れている場合、その時間帯はご退席されているものとみなします。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた際は、随時、事務局あてにお電話にてお知らせください。議事録につきましては、事務局にて会議を録音し、後日、文字起こしをいたします。事務局以外の方の会議の録画及び録音はお控えください。以上が本日の進行にあたっての留意事項となります。
 続いて、本日の配付資料の確認をさせていただきます。委員の皆様及び傍聴の登録をされた方あてに、メールにて配付資料をお送りさせていただいております。お手元に議事次第を配付しておりますが、本日は議題が3点ございます。
1点目が我が国の原子力政策と高速実験炉「常陽」への期待、
2点目が高速炉の燃料技術開発について、
最後 3点目がその他です。
 配付資料として、資料が2つと、参考資料が5つございます。お手元の資料をご確認いただき、不備等ございましたら事務局までお知らせください。またその他にも何かございましたら、随時お申しつけください。委員の皆様のご出席状況については、開始前に事務局にて確認させていただいております。 本日は、7名の委員にご出席いただき、運営規則の第3条に規定されている定足数の過半数を満たしておりますので、ご報告いたします。
また、本日は話題提供のため、
原子力安全研究協会 理事  山口 彰(やまぐち あきら) 様
日本原子力研究開発機構 大洗研究所 戦略推進部 次長 皆藤 威二(かいとう  たけじ)様 (発表予定者)
エネルギー研究開発領域 上級技術専門官  郡司 保利 (ぐんじ やすとし)様
にご参加いただいております。 

 続きまして、事務局参加者についてご連絡致します。 文部科学省からは、研究開発局原子力課課長の奥、研究開発戦略官の井出、原子力課課長補佐の髙倉、生方と私、竹之内が出席しており、大臣官房審議官の清浦が途中から出席予定です。 それでは、これから議事に入らせていただきますが、運営規則第5条に基づき、本会議は公開とさせていただきます。また、第6条に基づき、本日の議事録につきましてもホームページに掲載いたします。 
事務局からは以上です。ここからは寺井主査に議事の進行をお願いしたいと思います。 
 
【寺井主査】ありがとうございます。それではここから私の方で議事進行させていただきます。
本日の議題はお手元の議事次第にあります通り、議題1から議題3でございます。それでは早速ですが、議題1我が国の原子力政策と高速実験炉「常陽」への期待 についてお願いいたします。
まずは、原子力安全研究協会 山口理事からお願いいたします。
 
【山口理事】はい、原子力安全研究協会の山口と申します。ご紹介いただきました通り、日本の原子力政策と「常陽」がどういう形で貢献できるかという考えを整理してみましたのでご紹介させていただきます。結論の方からご説明したいと思います。「常陽」に期待することとして4点挙げています。1つ目が、次世代革新炉の開発・建設とバックエンドプロセスは、GX基本方針における原子力政策の柱として最重要課題であり、それに「常陽」が貢献できるということ。2点目は、日本は閉じた核燃料サイクルの確立を基本方針としている中で、エネルギー・ソブリンティ、それから資源の有効利用のために必要であること。3点目は、なぜ高速炉かという点。高速スペクトルの中性子を活用することが日本のアドバンテージを引き出すために極めて重要であり、高速中性子研究炉すなわち「常陽」が日本にあるということは、日本にとって意義あること。4点目は、高速中性子は付加価値を生み出すということ。それに加えまして、高速中性子を活用する原子力技術開発で「常陽」が実現できることとして、高速炉開発に必要な様々な環境・条件(Enabling Conditions)を構築できること、それから高速炉の価値を生み出すイノベーション、社会に発信するデモンストレーション、それが「常陽」を用いて実現できるということと考えています。それを行うためには、「常陽」の最大限活用を進めるというのはもちろん、フロントである燃料加工、バックエンドとなる燃料再処理を合わせて見ていかないといけないということになります。このような結論を念頭に置いていただいて、説明に入っていきます。最初に日本の原子力政策の方向性と行動指針について、6つのピラーがあると考えています。原子力が実現すべき価値としては、革新技術による安全向上、エネルギー供給の自己決定力、GXの牽引役、という3点を行動指針として整理しました。それに向けた政策のピラーとして、再稼働への総力結集、既設炉の最大限活用、次世代革新炉の開発・建設、バックエンドプロセス加速化、サプライチェーンの維持・強化、国際的な共通課題の解決への貢献、というものが必要になってきます。本日の「常陽」についてのテーマでは、その中でも特に、次世代革新炉の開発・建設、バックエンド、それからサプライチェーン、といったところに関連してきます。
さて、現在の既設原子力発電所の状況として、スライド3に示しますように、運転中のものが12基、緑色の丸で示しております。それから廃炉になったものが21基、赤い丸で示しております。
そして、Suspended Operationということでまだ申請もされていないものが16基あります。実はこれは廃炉が21基、16 GWe分あります。それで、既設炉(動いているもの)が運転可能なものと許認可済みのものを合わせると17 GWeぐらい、未申請が16 GWeということになります。つまり、3分の1が規制庁の審査を通って運転可能、3分の1は廃炉になっており、3分の1は未申請という状況であることがお分かりいただけるかと思います。
 それで、これは横軸に原子炉の年齢を示していて、縦軸に発電設備容量を示していますが、2050年になると60歳のプラントのボーダーというのがどこに来るかというと、この赤い線で示したところに来る。すなわち、この赤い線よりも右側のプラントは60歳を超えるプラントになるということになります。それから、更に10年、2060年になると、この青い線ということで、2060年ぐらいになると数基ぐらいしか60歳以下のプラントがないという状況になります。当然、今回60年を超えて運転をという話があるわけですが、その実績はまだありませんので、どれくらい実現するかは未知数という状況。いずれにしても、このスライドからは新しい次世代革新炉というものは2050年を超えてGXとエネルギー安定供給をやるためには意義あるものだということがお分かりいただけると思います。
 少し整理しますと、2050年代に原子力はどうなるのかというと、全てのプラントが60年間運転をしますと、2040年代前半には原子力比率は20%を下回ると。それから、更なる運転期間延長をしても2050年には原子力比率は20%を下回ると。これは2030年、原子力の発電の比率を20~22%というふうに目標設定をしていることが実現できないということ。2040年代前半には全てのプラントが稼働しても実現できないということになります。
 さらに、昨年12月、COP28で原子力3倍増宣言というものが合意された国は25カ国ありましたが、そのことはウラン需給環境が厳しくなること、実際に足元のウラン価格というものが上昇しておりまして、おそらく今は1ポンドあたり100ドルを超えているという状況かと思います。それで、2050年代にはさらに我々は30基以上の廃止措置に取り組まなければいけないと。そういう将来が見えてくるわけです。
 さて、そういったときに現在の核燃料サイクル、このスライドでまずオープンサイクルとPuサーマルを示したいと思いますが、この青い線がオープンサイクルということになります。すなわちワンススルーということで、使用済燃料を直接処分すると。日本はPuサーマルを行っていますので、この黄色いサークルのようになる。ただし、当然Puサーマルはプルトニウムの高次化等の問題で多くのサイクルはできませんので、資源の有効利用は限定的であるということです。
 さて、それに対して次世代革新炉、それからバックエンドの問題、これを踏まえた閉じた核燃料サイクルが実現しますと、ここに高速炉というものが入ってまいります。さらに、この高速炉を中心とした核燃料サイクルがこのように閉じてくるということになるわけです。このことによって軽水炉では燃料を原子炉に装荷しますと数年間ぐらいの備蓄効果があるわけですが、それが大幅に有効利用できると。当然ながら、このときには高速炉用の燃料の加工、それから高速炉の燃料の再処理というものが必要になると。これが最後の結論で書いております高速炉の有効利用に加えて燃料加工、再処理、これが非常に重要な鍵となるという点でございます。
 さて、有効利用を少し定量的に見ていきたいと思うのですが、まず、天然ウラン1 tからどれくらいのアウトプットが生み出せるかということで、結論としては右半分を見ていただきたいのですが、それをワンススルー、Puサーマル、それから高速炉を3サイクル回す、それから高速炉を無限回回してあげるということで見ますと、発電量はこのようにワンスルーですと1.7 GWdに対してPuサーマルは1.7プラス0.8ということで2.5 GWdになります。高速炉を無限回にしますと190 GWdということになって、1 GWd発電量当たりの廃棄物の量も非常に減ってくると。これは1つのサイクル当たり燃料の加工で1%、それから再処理で2%のロスを想定していて、こういう状況になってまいります。これから高速炉のサイクルを導入することによって、燃料の有効利用と廃棄物の減容ということに、これだけでも十分効果があるということがお分かりいただけると思います。
 なぜそういうことができるのかということなのですが、これは正に高速中性子を生み出せるということに尽きると思います。プルトニウム燃料にして高速炉を使ってやりますと、1 fission当たり2.45個の中性子が出ると。下の図のスペクトルを見ていただきますと、軽水炉に比べて高速炉のエネルギー領域ですとプルトニウムの中性子発生数が大幅に増えるということがあるわけです。すなわち、高速炉は様々な魅力に加えて、やはり何といってもこの中性子を有効に利用していろんなことができるという点が魅力かと思います。
 さて、それで軽水炉の使用済燃料の組成でございますが、この図のように軽水炉、左側が新燃料1 t、その中に大体45 kgのウラン235があります。軽水炉でこの燃料を燃やしてやりますと右側のように核分裂生成物、それから他のTRU核種というふうにあるのですが、ここが再処理のときに廃棄物として出てくるわけです。しかしながら、高速炉を使うことによってこのTRU核種を燃焼させると。それから、ここで出てきたプルトニウム、さらにウラン235、238といったものをもう一回使えるというところが先ほどのメリットを生み出すポイントになってまいります。
 このスライドは省略しますが、大体マイナーアクチノイドとして左側の下の方にありますように、半減期が長くて発熱量も多いようなものが出てくると。出てくる量は微量なわけですが、これが高レベル廃棄物にとって重要な問題となるというのがこのスライドを見ていただけるとお分かりいただけるかと思います。核分裂生成物は、おおよそ200~300年で半減期から大幅に減衰してくるわけですが、一方、アメリシウム、キュリウム、あるいはネプツニウム等のマイナーアクチノイドの核種、これは数百年を超えた先になると支配的な有害度の原因になってくると。これを回収して核変換するということが非常に効果的だということになります。
 これは超ウラン元素の反応チェーンを一つ示しましたが、例えばアメリシウム241、これは半減期432年なのですが、これに中性子を2つ入れますとプルトニウム239になって、これがまた核分裂の燃料として使えるということになります。
 また、このスライドにありますように、軽水炉に比べまして高速炉は核分裂の断面積の比率が捕獲断面積に対して非常に大きいということは、有効にこういった核種を燃料として使ってあげられる、核分裂をさせられるということになってくるわけです。
 さて、それで実際にこういった原子炉を実用化するというところでは、OECD/NEAのSmall modular reactor dashboardという報告書が原子力技術がプッシュをすること、そしてマーケットがプルすること、それに加えて真ん中にそれを実現するためのEnabling conditionsがあるということが不可欠といわれております。常陽を使いますと、右側にあるRI製造、あるいは資源の有効利用、廃棄物減容といった、これまでのSmall modular reactorでいわれているものに加えて、高速炉の特徴を生かした新しいマーケットを生み出すということ。更に加えて高速炉常陽は現在実際に存在している、まもなく運転を迎えようとしている炉でありまして、様々な規制の問題ですとか、あるいはサプライチェーンの維持ですとか、パブリックエンゲージメントの問題、そういった問題に対しての常陽を運転することによって大きな貢献があるというふうに思います。
 さて、イノベーションということなのですが、高速炉の意義としては、先ほどの中性子有効利用に資する新しい価値ということがあると思います。原子力の発電というのはこれまで第1世代、第2世代、第3世代、第3+の世代ということで、持続的なイノベーションの道をずっと歩んできたと。一方、ローエンド型の破壊的イノベーション、これは例えば小型炉というものは経済性を性能指標にしますと大型炉に比べてまだまだ劣るわけですが、それが経済性が向上していきますと次第に競争力を持ってくるということになります。
 一方で、SMRは非電力網というものに使える、あるいは石炭火力の代替に使えるというわけですが、ここで挙げる高速炉のサイクルというものは、資源の有効利用、廃棄物、それからRI製造、がん治療、そういった新しいマーケットを生み出すと言いました。これは異なる価値を与えるものです。すなわち原子力のイノベーション、これで新しい価値を創出し、原子力の利用の幅を広げていくものだというふうに思います。以上、結論に書いたことを縷々(るる)説明してまいりました。私の説明は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
 
 
【寺井主査】 山口理事、ありがとうございました。簡潔かつ明瞭に分かりやすくお話いただきました。時間も大分余らせていただきましたので、それでは、本件につきまして委員の皆様方から御意見、御質問等ございましたらお願いをいたします。なお、オンラインから参加の委員におかれましては、オンラインシステムの挙手機能をご活用いただきまして、指名された方はミュートを外してご発言いただきますようにお願いをいたします。事務局の方で手が挙がっていたらお知らせいただければと思います。よろしくお願いします。では、小澤委員、どうぞ。
 
【小澤委員】 小澤でございます。非常に分かりやすくて、今まで何となく知っていたような話もかなり定量的に示していただいて、非常に頭の中がすっきりしております。特に7頁目の、やはり高速炉を使う意義というところで、天然ウラン1 tから発電できる量が、一番上と一番下を見比べると100倍違うということは相当大きな意義があると思いました。なので、こういった意義をもう少し定量的に強調しながら、将来に向かってといいながらも段階的に実用化していく、社会実装していくという意義があると思いました。
 それから、いろんな課題があって、高レベル放射性廃棄物については10頁と11頁を見比べながら眺めていたわけですが、いろんな核種が使用済燃料の中にあって、それが何が問題で何が問題でないのかというところはかなり明確になってきたなと思いました。右の方のFission Product(核分裂生成物)の方も、量が少なかったり長寿命核種といいながら半減期が短かったり、それから、線量換算係数で見ると問題が小さかったりというところが分かるし、あとは半減期の中で毒性が強いといわれているところも、こういうところで燃やしてここが効き目があるのだなというのもかなり明確に分かってきたと思っております。どうもありがとうございました。
 
【寺井主査】 ありがとうございました。感想というところかと思いますが、山口理事、何かありますか?
 
【山口理事】 御意見ありがとうございます。私もそのとおりで、いろいろ資料を作ってみたりしたのは、定量性を持っているというのはやはり非常に重要だと思っているからです。それから、廃棄物の件についてはもう一つありまして、11頁、このように潜在的な有害度ということで書いてあるのですが、実はこの中の核種でもヨウ素の129とかテクネチウム99とか、水によって移行性のあるようなものとか、あるいはセシウム135のように、セシウム135を消してやろうとするとまた次に新しくセシウム135ができてきて、なかなか厄介なもの、ただし量が非常に微妙なものとか、そういった特徴がそれぞれあるので、この1枚では全て語ることはできないのですが、丁寧にそれぞれの核種の特徴を見ながらこういう評価を積み重ねていくと、いろんな形で説明性が上がっていくと思いますし、高速炉の役割とか高速炉ができることをもっとクリアに説明できるようにしていきたいなというのは、全く私も同感に思います。いろいろコメントいただいてありがとうございました。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。それでは他にはいかがでしょうか。では、中熊委員、どうぞ。
 
【中熊委員】 電事連の中熊でございます。先生、ありがとうございます。小澤さんと同じ感想なのですが、非常に分かりやすくて、高速炉のメリットというのをしっかりと訴求していただいたと思います。
 一点質問させていただきたいのですが、私も結構悩んでいるところではあるのですが、3スライド目で、今の既設の原子力発電所が60歳を前提とすればどうなっていくかという御説明を頂戴したのですが、これに対して非常に我々も危機感を持っています。次世代革新炉の新増設・リプレース等をどういう形でやっていくかということで、我々は今は革新軽水炉、大型の軽水炉でのリプレースということをまずは志向していくというところだと思っていますが、高速炉は実証炉が2045年頃に運転開始を目指して今開発されている状況ですが、その後の軽水炉から高速炉へのシフトですとか導入規模みたいなところというのがどうあるべきかといったところで、山口先生の御意見をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
 
【寺井主査】 どうぞ、お願いします。
 
【山口理事】 大変難しい質問を頂いて、私の方がお聞きしたいぐらいなのですが、一つは高速炉。やはり今おっしゃったように2045年に実証炉の運転開始を目指すということですので、今日の説明でもお話ししましたように2040年代前半には原子力の軽水炉、全基動いたとしても20%を切るということなので、その前に手当をしないといけないとなると、次世代軽水炉をちゃんと建てていかないとというのは全く御指摘のとおりです。
 次世代軽水炉を建てていくと、おそらく60年。最近はアメリカでは80年運転の申請をするというのがどんどん出てきていまして、次の軽水炉だとおそらく60年を超えた運転が視野に入ってくると。そうすると2030年、40年から80年ということになると、二千百数十年、2120年とか、それぐらいまで軽水炉が活躍するということになると思います。ですので、高速炉の導入というのは決して軽水炉を押しのけていくということにはならないので、高速炉の運転実績を積みながら軽水炉、言い方を変えますと、これから日本が原子力の使用の割合を20%で行くのか、30%で行くのか、40%か、フランスのように50%で行くのか、そういった割合を見据えながら、ダイナミックにといいますか導入ペースは決めていくべきだと個人的には思います。ですので、やはりこういう新しいタイプの炉へのつなぎというのは連続性が非常に大事で、それは技術とか人の連続性もありますし、それから、今の既設の施設を最大限有効に使うという観点もあります。
 ということで、非常に答えにくい質問ながら、これはもうダイナミックにやりながら進めていくと。その代わり、必要になったとき、必要になったときというのは、最初にお話しましたようにもし原子力3倍宣言みたいな話になってくるとウランの値段が数倍に上がるなんていうのも当然あり得るわけですし、日本のセキュリティといいますか、そういう燃料確保の強靭性ですかね、そういうもののためには高速炉の技術というものは2045年の運転開始を目指した今のシナリオでしっかり実現するというところが重要かと思います。
 
【中熊委員】 ありがとうございます。私も近いイメージを持っておりまして、まずは革新軽水炉でしっかりとリプレースを業界としてもやっていくということだと思います。先生もおっしゃったように、先々どのくらいのポーションを原子力発電が担うべきなのか、これが政策的にしっかり示されないとなかなか先の絵が描きづらいなというところもあるので、そういう国との連携も含めてぜひまたいろいろとディスカッションさせていただければと思います。
 
【山口理事】 はい。ぜひ高速炉はこの作業部会あるいは原子力科学技術委員会で非常に重要なテーマだと思いますので、そういう議論の場をしっかり持てればよいかと思います。よろしくお願いいたします。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。おそらく2045年実証炉とここに出ていますが、その技術の革新の話とか、技術の継承の話とか、それから、先ほどあったようないろんな状況の変化に対応できるようにという、いろんな手札を持っておくというところも大きいかと思いました。そういう意味で、技術というのは一朝一夕でできるわけではないので、ある程度ロングタームにおける技術開発というのは必要であるということかと思います。その他、いかがですか。では、石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】 山口先生、どうも定量的なご説明ありがとうございました。ここは原子力研究開発・基盤・人材作業部会ですので、2045年に実証炉ということなので、やはりこれは現時点でかなり実証されている技術を主に使ってやっていくのかと思うのですが、先ほど寺井主査がおっしゃったようにロングタームということを考えたり、革新軽水炉も建てるということを考えたときに、こういう高速炉の開発をよりロングタームで見ていくときに、大学の果たす役割、人を送り込むというだけではなくて大学でするべき研究みたいなのはどういうことがあるのでしょうか。
 
【山口理事】 大学の果たすべき研究の役割は、大学の方で考えていただくとあありがたいと思うのですが。原子力って技術によっていろんなフェーズがあって、例えば軽水炉はもう非常に定着していて、むしろ運転経験も踏まえていろいろな改善をしていくというフェーズですね。高速炉も、既に運転をして実用化をしている国も数カ国あり、日本も常陽・もんじゅというものがあり、しかしながら高速炉はまだ魅力を全て引き出せていないという技術だと思うのですね。その他にまだ魅力をどんどんこれから明確にしていこうという、例えば溶融塩炉とかそういうものはそうなのだろうなと思います、そういう意味では高速炉というのは魅力を今は十分引き出せていないと言ったのですが、同時に高速炉を実際に運転をしているという現実もあります。高速炉に対してもっとその魅力を伝えること、あるいは有効活用していくための知恵とかアイデアが必要というふうに思います。
 それで、大学に期待するところは、もう少し高速炉の現場に入り込んで、例えば常陽なら常陽を使って、そういう施設を使った研究にもっと前向きに取り組んでいただくというのがよいのではないかと思います。逆に、常陽はJAEAが運転をしていますし、これから実証炉はどうなるのか分からないのですが、やはり高速炉を運転していく上では運転における様々な保守・運転の問題とかが出てくると思うのです。やはりそこはしっかり安全性の問題も含めてやらなければいけない。という役割分担になると思いますので、今まで以上に大学に期待するところは、高速炉を実際に研究開発あるいは実験炉等を運転している場に大学の方が入り込んでいって、それをもっと高速炉の価値を上げていくアイデア、知恵を出していくと。そういうものに対して多分非常に学生にとっては達成感といいますかね、そういう現場でやるというのはあるのだと思うのです。そういう期待をします。ですので、大学の中で閉じていろいろな技術開発研究をやるというよりも、現場にもう少しいろんな形で入り込んだ研究というのが、大学にぜひ常陽を特に活用してやっていただくというのは、これから意義あることだと思います。
 
【石川委員】 ありがとうございます。
 
【寺井主査】 ありがとうございました。その他、いかがですか。松浦委員、どうぞ。
 
【松浦委員】 福井工大の松浦です。山口先生、ご説明ありがとうございました。資料の14頁のところに、高速炉についての技術プッシュと市場プルということでご説明いただいたのですが、高速炉が他の革新炉と同様に、The NEA Small modular reactor dashboard, OECDの資料を基に作成と書かれていますように、小型炉の中の一つの選択肢として高速炉が説明されていると思います。少しお聞きしたいのは、今は小型炉の中の一つとしてテラパワーとか、ああいった高速炉の選択肢がいろいろ出てきているのですが、SMRで技術が進んでいって、その後でスケールアップしていこうと考えておられるのかという辺り、世界的なトレンドとしてどうなっているかというところです。ただ、事実としてはやはり電力とか廃棄物に影響・効果を出そうとするとかなりスケールメリットを求めていかないといけないかと思うのですが、そういったところが今の世界の動きと日本国内の動きというのはどんなふうになっているのかというのを少し教えていただければと思います。
 
【山口理事】 ありがとうございます。今はこの小型モジュール炉というのは非常に魅力的に見えるのですが、世界的にはどういう道筋に行くのかというのがまだもやもやとしていて見極められていない状況だと思います。ただ、重要なのは、小型モジュール炉の世界は、多くのベンチャー、スタートアップとか、その技術の分野に入ってくるいろいろなParticipantsが非常に多いと。それでこういう絵を小型モジュール炉について描いているということだというふうに理解しています。
 一方で、最近は例えばニュースケールのアイダホのプロジェクトがキャンセルになったように、元々小型モジュール炉のコストをいかに競争力を持たせるかというのは課題だというのは皆さん認識していたわけですし、私もIAEAの会議で前にイギリスの方が「400基ぐらい作れば経済性は数の効果でペイするのだ」というようなことを話している方もおられたと。それは相当ハードルが高いですね。ですので、我々としてはその小型モジュール炉のトレンドに動かされることなく、日本にとって何が必要なのかということをしっかり見極めるのがまず大事だと思います。
 その上で、この図はもちろんSMRのダッシュボードの絵を基に作ったのですが、決してSMRだけではなくて革新的な原子炉に共通する図だと思います。一つ言いたかった点は、我々はいつも原子力技術のところと右側のマーケット、ここを見てうまくいくのだと思いがちなのですが、実は真ん中の政策、規制、法律、セキュリティ、サイクル、フロント、バックエンド、サプライチェーンと縷々書いてあるのですが、ここがとても重要で、原子力の技術開発が成功するか否かは、この真ん中の部分がうまくいくかどうかに懸かっているのだと思います。そういう意味で常陽は、この真ん中のところを実際に引き上げることができると。例えば常陽を動かすと人材も育つしサプライチェーンを維持できると。それから、いろいろな経験を積むと規制の問題とかサイクルの問題にも新しいデータなり情報が得られると。そういう目でこの図を見ております。ですので、常陽は小型炉ではあるのですが、このスライドで重要なのは大型炉なのか小型炉なのかということでは決してなくて、そういうものをうまくちゃんと組み合わせてやっていくと。その上で常陽は、実は常陽を動かすとRIを作れますよとか、あるいは高速炉の技術ができますよとかいう話もあるのですが、それに加えて、その運転経験とか規制の経験とか、その真ん中の部分も大変重要なのだというところをここでご指摘したかったというところであります。
 
【松浦委員】 ありがとうございました。大変よく分かりました。Enabling conditionsがとても大事だということと、SMRの一種の何かお祭りみたいな感じに惑わされることなく日本として見極めていかないといけないというところがよく分かりました。
 
【寺井主査】 ありがとうございました。小澤委員、どうぞ。
 
【小澤委員】 ありがとうございます。ディスカッションを聞いていてなるほどと思ったところがありまして、先ほど高速炉は軽水炉を何も押しのけるというものではないというのは非常にそのとおりだなと思った次第です。5頁目のスライドのところでは、プルトニウムが高次化していきますという話があって、7頁目のところには軽水炉のプルサーマルの1サイクルに留まっているのはおそらく高次化のためだろうと思うのですが、押しのけずに共存していくと、このプルトニウムが上に行ったり下に行ったりすると。1サイクルも2サイクルも、ひょっとしたら無限に行くかもしれない、そういった可能性があるのではないかという気はしました。
 それから、今のお話の14頁・15頁目のところも、いろんな要素があるかと思うのですが、話題の小型軽水炉も、この絵は便宜上紙に書いたから平面になっているとは思うのですけれども、第1世代、第2世代、第3世代となっていって性能が上がっていったものが小型炉になっているので、戻っているわけではないですよね。なので、ベンチャーとかスタートアップとかいろんなニューカマーが入ってきて活性化していてとても良いことだとは思うのですが、これは一つの刺激であって、いろんな社会実験的なものが行われておそらく淘汰されていくのだとは思うのですが、さらに高性能な小型炉、経済性も、単に小さくなっただけではない小型炉。それから、高速炉も平面の中は2つの平面ではなくて連続した平面の中というのですかね、立体的な箱の中で動いていくのではないかという気がしました。いろんなオプションがあり得ると思います。
 
【山口理事】 ありがとうございます。実はこの図は昔は三次元の直方体で書いていまして、その間には連続的ないろんな、評価軸があると思います。縦軸で表される価値というのを我々はどう考えるかというところは、技術の問題だけに限らなくて、もっとエネルギーシステム全体とか、原子力全体で考えるべき問題で、私も平面ではなくて、実際はこれは3次元的な空間で価値が見えるのだと思っています。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。いろんな性能指標としてこういう安全性の問題とか、そういうのも多分入ってくるので、小型炉でもいろんなタイプがあって、小型軽水炉という、モジュラー炉ですかね、この辺りはこれまでの既存の軽水炉の技術を使って小型化していくという、そういう考え方かと思うので、先ほどおっしゃったように連続的に動いていくのだろうなという感じはしております。その他、いかがですか。リモートの方もよろしいですか? それでは、大体御意見を頂きましたので、これで最初の議題1については終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
【山口理事】 ありがとうございます。
 
【寺井主査】 それでは、引き続きまして議題の2に移らせていただきます。議題の2は、高速炉の燃料技術開発についてでございます。こちらは原子力機構の皆藤様から御説明をお願いいたします。
 
【皆藤様】  ありがとうございます。それでは、高速炉の燃料技術開発についてということで、原子力機構の皆藤の方からご説明いたします。次の頁をお願いいたします。
 本日の報告の内容でございますが、まず高速炉の開発目標ロードマップ、それから各国の状況等をご紹介した後、高速炉の燃料開発の必要性、それから具体的な燃料としてはMOX燃料・金属燃料を考えているわけですが、この辺の開発状況、それから今後の開発、課題等をご説明いたします。その後、この燃料開発に必要な常陽の運転計画、それから常陽での照射試験をする上での今後の課題等についてまとめてございます。そして最後にまとめという構成でございます。次の頁をお願いいたします。
 まず、高速炉の開発目標でございます。こちらは戦略ロードマップからそのまま引用しているものでございますので皆さん御存じの内容かと思いますので、ポイントだけご説明いたします。開発目標としましては大きく6つございます。安全性・信頼性、それから経済性、それと環境負荷低減性という3つがございます。その後、資源の有効利用性、核拡散抵抗性、柔軟性・その他市場性ということで書かれてございます。
 特に今回お話しさせていただいいただきます燃料開発の観点からいいますと、安全性・信頼性の部分につきましては、軽水炉及びその核燃料サイクルシステムと同等以上の安全性を達成することということで、こちらの高速炉の燃料を開発していく上では、照射試験によって燃料健全性の実証、それから、設計に必要な照射挙動データをきちんと取得していくということが重要だと考えております。
 それから、②の経済性につきましては、これもずっといわれることですが、他の基幹電源と競合し得る経済性を有するこということで、こちらも燃料開発の観点から見ますと燃料サイクルコストの低減、それから原子炉出口温度の高温化による発電効率の向上というようなことによって経済性を上げていくと。そのためには高燃焼度、それから高性能な燃料を開発していく、長寿命の炉心材料を開発していくということが我々として重要なことだと考えております。
 それから、3つ目の環境負荷低減性につきましては正に書かれているとおりですが、マイナーアクチノイド(MA)を分離・回収して、燃料として利用できるようにすることということで、そのためにもMA含有燃料の製造技術もしっかり確立していくということ、それから、こちらも照射試験によって燃料の健全性等をしっかり実証していくというようなことが重要になってくるというふうに考えてございます。次の頁をお願いいたします。
 こちらは革新炉のワーキンググループの方より引用させていただいておりますが、導入に向けた技術ロードマップ(高速炉)ということで、先ほどからお話がありますように2045年実証炉の実現開始を目指すというロードマップになってございます。ここで燃料の観点でポイントになるのが、上に矢印で入れてありますが、この戦略ロードマップの方にも2026年度ごろを目途に研究開発成果・国際協力を通じて知見を得つつ、これらを踏まえて燃料技術の具体的な検討を行うということが書かれております。その2026年の燃料技術の具体的な検討というところに向けて、我々としては酸化物燃料、金属燃料のいずれかを選択するという重要な時期というふうに考えてございます。そこに向けてまずはしっかりとこれまでの技術開発の成果等を整理していくということになろうかと思います。
 それから、その下に研究開発、燃料製造施設の建設・運転のスケジュール等も示されておりますが、正にこの研究開発のところ、燃料・材料の照射データの取得といったところが、マップのご説明に直接関係することになってございます。それから、2045年に運転開始を目指すということもありますので、当然その前には燃料製造施設を整備して実証炉用の燃料を作っていく必要があるということになります。次の頁をお願いいたします。
 ここから各国の状況をご紹介しておきたいと思います。この頁の右側の表に主な高速炉の運転燃料ということで文献から引用してございますが、少し情報が古いところもありまして一部改訂しているところがございます。高速炉の開発初期は米国が中心になろうかと思いますが、金属燃料が主で開発されていったということはございますが、金属燃料のスエリングですとか融点が低いということが懸念されまして、その後主流は酸化物燃料に移っていったというような経緯がございます。現状を見ましても日本は先ほどもありましたとおり常陽・もんじゅで実績がありますが、これは酸化物燃料を採用しているということです。フランスにつきましても、ラプソディからフェニックス、スーパーフェニックス、それから計画しておりましたASTRIDについても全てMOX燃料を採用するということでございます。アメリカですが、EBR-Ⅱまでは金属燃料を使っておりましたが、一度FFTFのときに酸化物燃料を採用したという経緯がございますが、現在またテラパワー社のNatrium炉、それから、計画の段階ですがVTR、こちらについては再び金属燃料を採用していくということが決まっているかと思います。その他、ロシア・中国も現在は酸化物燃料が主流ですが、窒化物燃料であったり、中国・インドにつきましては将来的には金属燃料の採用も予定されているというような状況でございます。
 日本でも常陽・もんじゅは酸化物燃料ということですが、実証炉以降、3頁目に示しました高速炉の開発目標の達成可能性ですとか、国内の開発実績、国際協力等を考慮して、酸化物か金属のいずれかを選択するということになってございます。それが先ほど申しましたとおり2026年にまずは検討していくということになります。次の頁をお願いいたします。
 次が燃料製造の状況でございます。こちらは先ほどの説明からも当然ではあるのですが燃料製造についても現状はアメリカ以外は酸化物が主流ということです。それと、日本・フランスと開発は進めておりますが、現在正に常陽も含め運転燃料を作るというようなところが今ストップしている状況でございます。現在稼働しているという意味ではロシアが酸化物燃料の製造を行っていると。あと、インドにつきましても実験炉等の燃料製造を行っているということで、現在しっかりとこの燃料製造を行っているという意味ではロシア、インドがこのようになってきているという状況でございます。次の頁をお願いいたします。
 各国の状況については以上ですが、高速炉燃料の開発がなぜ必要なのかというようなところについて簡単に軽水炉との比較で整理してございます。こちらは左側に高速炉、MOXと金属と書いてありますが、右側の方に軽水炉、Puサーマルも含めたものを書いてございます。高速炉と軽水炉では、燃料の仕様自体がまず異なります。先ほどからお話がありましたとおり、高速炉についてはMAを入れて燃料として使っていくということで、現状最大5%ぐらいのMAを入れるというようなことを考えているということでございます。それから、被覆管の材料も軽水炉のジルカロイではなくステンレス系の材料を使っていくというようなことがございます。それから、使用条件も大きく変わりまして、軽水炉に比べますと4倍~5倍程度の燃焼度を目指しているということ、それから被覆管の温度も、MOXの場合は700℃ですとか、金属でも600℃、650℃というかなりの高温のところを目指しているというようなところでございます。
 それから、繰り返しになりますが廃棄物の減容、有害度の低減ということで、MAを燃料として使用するということもございますので、こういう高温・高燃焼度まで使用可能な燃料材料を開発するということ、それから、それを照射試験によって実証していくということが必要であるということです。それから、MA燃料につきましては遠隔で製造するという点です。こちらについても燃料として使用できることをしっかり実証していくということが必要ということで、引き続き燃料開発ということが必要になってくるということを示してございます。次の頁をお願いいたします。
 8頁がMOX燃料の方の説明に入ります。まず、開発目標的なところを少しご紹介しておきますが、経済性向上という観点では、これも先ほど申しましたとおり、燃料サイクルコストの低減、それから発電効率の向上という観点で、かなり具体的な項目になりますが、太径中空燃料の開発をしていく必要があると。それをしっかり燃料の健全性を実施していく必要があるということがございます。
 それから、長寿命の炉心材料です。これも燃料の高燃焼度化、それから冷却材の出口温度の高温化で、こちらを両立する材料を開発していく必要があるということで、右下に少し例を示しておりますが、従来の実績がありますオーステナイト系のSUS316系の材料等ですと、燃焼度でいいますと、これは下側炉心の取出し平均燃焼度の検討例ですが、大体50とか60 GWd/tとかそういうところまでということになるのですが、これをフェライト系の材料、さらにODS(酸化物分散強化型)のフェライト鋼に替えていくことで2.5倍というところまで使えるようになるというような材料でございます。こういった材料をしっかり開発していくということです。あと環境負荷低減性、これはMA燃料を開発していくということになります。次の頁をお願いいたします。
 今ご説明しました項目の実績とか今後の課題についてまとめてございます。まず太径中空燃料の健全性・実証についてでございますが、これは常陽、それからフランスのフェニックス、それから米国のEBR-Ⅱ、英国のPFR等も含めて照射実績がそれなりにございます。これは今の計画ですと実証炉でMOX燃料が選択されれば初装荷から適用を目指している技術ということで、これまでの実績に加えて早急にこういったデータをしっかり取っていく、健全性を実証していくということが必要になります。
 それから、長寿命炉心材料につきましても、今は量産技術の開発を実施しているところということですが、これをしっかり継続していく。それから実際に使っていく上では基準類の整備も必要になりますし、こちらも照射環境下での性能をしっかり確認していくということが必要になります。
 それから、環境負荷低減性。MA燃料につきましては、MA含有燃料ではこれは試験規模になりますが、アメリシウムを5%含有したもの、それからネプツニウム、アメリシウムを2%ずつ入れたMOX燃料、こちらを遠隔で製造しまして、常陽で短期になりますが高線出力の照査試験を実施してございます。右下にございますのが、こちらが実際に取ったデータでございまして、アメリシウムの再分布挙動とか熱的な挙動といったもののデータを取得してございます。こちらにつきましても現状は短期の試験のみということになっていますので、これは長期の照射試験をしっかり実施して、長期間での燃料の健全性をしっかり確認するということ、それから、MAを燃料として利用できるということをしっかり確認していくということが必要になります。
 そういった意味で、引き続き常陽の方をしっかり使って継続的な照射試験等でデータを取っていく、実証をしていくということが必要になります。それから、若干唐突感がありますが、こういうR&Dを進めていく上でも、現状は国内における燃料被覆管をはじめとする炉心材料のサプライチェーン、その製造をしていただけるメーカーさんというのが今なかなかなくなってきているという状況がございまして、これは開発の上でも当然ですが、もちろん常陽の運転ですとか実証炉への燃料供給といった観点も含めて、サプライチェーンをしっかり再構築していくということが重要になります。次の頁をお願いいたします。
 ここからがMOX燃料の製造の方のお話になります。この頁は製造技術のフローを示したものですので簡単に製造のフローだけお示ししておきますと、再処理から出てきた原料をペレットに加工して、それを被覆管に詰めて燃料要素にしていくと。これを集合体に組み立てて実際の炉に装荷していくというような、大まかにはそういう工程になっております。次の頁をお願いいたします。
 その燃料製造技術の観点での実績・課題でございます。先ほど申しました太径中空燃料につきましては、製造の観点でいきますと中空ペレットをしっかり量産していくという必要がございます。これは工学規模での中空ペレットの製造実績というのがございまして、技術的な成立性というのはある程度確認できているということなのですが、品質の安定性とか検査の技術といったものも含めて量産規模で技術実証していく必要がございます。
 あとODS鋼被覆管。被覆管自体の開発は進めてきておりますが、これを量産規模で燃料ピンに加工していくという技術も重要になっていきます。こちらは説明がなくて恐縮なのですが、ODS鋼被覆管はその名のとおりナノスケールの酸化物を母材、生地に微細に分散させて高温挙動を改善した材料でございます。そういったこともありまして、従来のTIG溶接等のいわゆる溶融溶接ですと、その酸化物の粗大化ですとか、溶接部のところに空孔ができやすいというような特性もございます。それもありまして、固相圧接の一つになりますが加圧抵抗溶接という技術を用いて、その溶接部の挙動を落とさないような技術を開発してきております。これをしっかりと量産でピン加工できるように仕上げていくというようなことが今後必要になってきます。
 それから、MA燃料です。こちらも先ほどご紹介したとおり常陽での照射実績というのがございます。そのための試験燃料の製造をしてきたという実績がございます。これは大洗の研究所の方にありますAGFという施設のコンクリートセル内に小規模の設備を整備しまして、遠隔で製造してきております。あと、炉外になりますが遠隔の製造設備のモックアップ試験等も部分的には実施してきているということですけれども、このMA含有燃料のペレットを遠隔自動で低コストで製造するという、このための技術開発、それから製造設備の遠隔保守技術というものをしっかり実証していく必要があるということです。それから、燃料製造ではないのですがMAの抽出技術、分離技術といった開発も並行してしっかりやっていくことを考えております。こういう開発を今後進めていく上では、やはりインフラの維持・整備を含めて予算規模の燃料製造技術開発ということをしっかり行っていくことを考えてございます。次の頁をお願いいたします。
 ここからが金属燃料のお話になります。御存じの方も多いかと思いますが、金属燃料の製造技術の概要の方をこちらでお示ししております。日本では電中研さんが中心に開発を行ってきているところでして、全体のフローとしましては、金属燃料のサイクルでいいますと、金属燃料を使った使用済燃料は乾式再処理という技術でリサイクルしていくと。そこから出てくるウラン、Pu、MAが入った合金を射出鋳造という形で金属の棒の状態(金属燃料スラブ)のものを製造する。それをナトリウムと共に燃料ピンに詰めて燃料ピンに加工していくということです。
 燃料ピンに加工した後の集合体組立てですとかそういった工程は、基本的にはMOX・酸化物燃料と同様な工程になっています。あと、国内ですと当然金属燃料というのは実績がございませんので、導入時につきましては軽水炉の使用済燃料からの再処理製品です。MOXの粉末になりますが、こちらを電解還元して金属にした上で射出鋳造で燃料スラグにする。そういう工程が必要になってくるというものでございます。燃料の製造のフローとしては非常にシンプルなものにはなってございます。次の頁をお願いいたします。
 こちらは金属燃料の開発実績・課題の方を少し簡単に記したものです。こちらは繰り返しになりますが電力中央研究所さんが中心となってこれまで燃料設計手法の確立、それから常陽での照射試験の準備ということで進めてきております。こちらの下に示しております絵が、実際の常陽での照射試験用の燃料ピンを作ったときのフローでございます。こちらも大洗の研究所にあります燃料研究棟というところに非常に小さなグローブボックスを設置して試験燃料を作ったというものでございます。こちらで金属燃料ピンを6本まで製造しておりまして、後は常陽の運転再開後に照射をしていくという照射待ちの状況になってございます。
 それからあと、MA燃料につきましては、これは国内ではないのですが、米国、フランス等でもこういう照射試験を電中研さんと共研でということになろうかと思いますが、照射試験を行ってきております。
 それからあと、プルトニウムは使えていないのですが、ウランを用いた工学規模の射出鋳造の試験までも行ってきているという状況でございます。これを国内で実用化していくための課題として代表的なものを3つほど挙げております。まずは金属燃料です。繰り返しになりますが、国内の照射実績が現状ないということで、これをしっかり蓄積していく必要があります。それから2つ目のポツでございますが、燃料の最適化・高性能化というようなこともやっていく必要がございますので、実用炉に向けてそういった条件での照射試験もしっかりやっていく必要があるということでございます。
 次の頁に行きますが、国内で先ほど申しましたとおりウランを用いた工学規模の射出鋳造試験を実施してきておりますけれども、プルトニウムを入れた燃料の量産規模の製造実績をR&Dをしっかりやっていく、製造実績を蓄積していくということが重要ということです。現状、これも先ほどお話ししたとおり原子力機構の大洗研究所の燃料研究棟の方で試験規模で実際にU-Pu-Zrの試験燃料を作っておりますが、これもしっかりと量産規模で実施するということ。それから、U-Zrの合金につきましては文科省さんの委託研究で射出鋳造の工学規模の試験等も実施してきておりますが、これらの実績を踏まえて、U-Zrの三元系の燃料をしっかりと量産規模で作る技術を開発していく必要があるということです。このためにも、下に書いてありますようにインフラの維持・整備。これは酸化物とも共通になりますが、量産規模の燃料製造技術開発が重要ということでございます。次の頁をお願いいたします。
 こちらが常陽のお話になりますが、こういうMOX燃料、それから金属燃料いずれが選択されても、燃料開発をしていく上ではその照射試験というのは必須というふうに考えてございます。そういった意味で常陽の運転計画、どういった照射試験を計画していて、どういう運転計画でいるのかと、それから今後照射試験を進めていく上でどういう課題があるのかということを簡単にまとめてございます。常陽につきましては御存じのとおり2026年半ばに運転再開を目指してございます。それから、当面は既にある燃料での運転を開始するわけでございますが、今2030年ぐらいまでは在庫燃料で運転していくというような計画を立ててございます。その後は、いろいろ運転の延長の方策ですとか新燃料の供給等が必要な状況になってくるということで、そこをしっかりやっていく必要があるというようなことが課題になってございます。
 新燃料の調達先の候補としましては、既存施設の活用ですとか、新規の施設を整備するとか、海外から調達するとか、あらゆる可能性について検討しておりますが、下に書きましたようにそれぞれ一長一短ございます。特にその課題として挙げておりますが、既存の施設、新規施設にしましても、特に既存の施設については新規制基準への対応等が大きな課題になります。もちろん予算の問題もございますが、規制への対応といったところが大きな課題というふうに考えてございます。
 それから、海外調達ということも考えておりますが、先ほどの前の方で海外の燃料製造の状況等をお示ししましたけれども、常陽は酸化物燃料ですので、それを前提に考えますと常陽に適用できる燃料が作れるという意味ではロシアぐらいしか今はなかなかないかということで、技術的には可能かもしれませんが国際情勢等を考慮するとなかなか難しいなというようなことがございます。
 それから、極端な例ですが金属燃料を使えないかというようなことも含めていろいろ検討していますが、常陽の運転再開のタイミングですとか、新燃料が必要になってくる時期、その辺のスケジュールの整合性等からすると、なかなかその海外調達というのもこれといったものが決められないという状況で、いろいろ検討はしているのですが、まだ機構としてもこれで行くというようなところが決められていないというような状況になってございます。ただ、いずれにしろ実証炉、その後の実用炉の実用化に向けては、この常陽の方をしっかり運転して、照射データをしっかりと実証していくということが重要だと考えております。
 最後にまとめでございます。こちらも書いてあるとおりでございますが、高速炉の燃料技術について海外の状況を含めて開発実績、それから課題等についてまとめております。
 酸化物燃料につきましては、日本・フランスを中心に世界的に開発が進められておりますが、国内・海外での運転燃料としての製造・使用実績が豊富にあって、基本的な燃料技術というのは確立しているというふうに考えてございます。ただ、課題になりますが、MA燃料につきましては各国試験燃料の製造は行っておりますが、まだ運転燃料に適用するというところまでには行っていないというところです。
 それから、金属燃料につきましては米国の方で進めておりまして、主要プロセスの成立性についてはほぼ確認済みというふうにいわれております。もう運転燃料としてもEBR-Ⅱの実績がございますし、これからNatrium炉等、商用高速炉用の燃料としての開発が進められているというものです。
 それから、これも繰り返しで恐縮ですが実用化に向けて研究開発のインフラですとかサプライチェーンの維持・整備というのは非常に重要なことになります。これはもうどちらの燃料が選ばれようとも必要になってくるものということでございます。
 二つ目のポツです。これは機構として実施していくべきものと考えておりますが、どちらの燃料が実証炉に選ばれたとしても、実用化に向けてはその燃料の高性能化・高燃焼度化、それからMA燃料といったものの実現が重要と考えておりますので、それらの量産性を考慮した製造技術開発をしっかり進めるということ。それから、照射強度データの取得、照射下における燃料健全性の実証というようなことも常陽を使って継続的に実施していくということが必要と考えております。
 その常陽の運転再開後の安定・継続的な運転というのが重要になりますので、これにつきましては今後新たな燃料確保の方策を含めて、文科省さん、経産省等、関係省庁とも連携しつつ引き続き検討を進めていきたいと考えております。かなり広範囲で駆け足になりましたが、私からの説明は以上になります。ありがとうございます。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。高速炉燃料のこれまでの技術開発の状況と今後の課題ということで、分かりやすく簡潔にご説明いただきました。それでは、本件につきまして委員の皆様方から御意見、御質問等がございましたら、よろしくお願いをいたします。いかがでしょうか。では、松浦委員、お願いします。
 
【松浦委員】 説明ありがとうございました。2点お聞きしたいのですが、金属燃料の件と照射試験の件なのですけれども、酸化物燃料では、ロシアとかインドで実績があるのですが、米国の動きを見ると金属燃料で進める一択みたいな感じになっています。金属燃料には、スエリング等の問題があるのですが、米国の方で金属燃料で進めていくという辺りは、何か新しい知見なりブレークスルーがあったのか、そういうことがあれば教えていただきたいなと思います。日本が今後進める上でどちらの燃料を進めていくかという点でも何か知見があるのか、そういうところを少し教えていただきたいというのが1点目です。
 次に、照射試験についてですが、私は軽水炉の方の燃料の照射試験については、10GWd/tで1年ぐらい照射するのかなと思っているのですが、そうすると200 GWぐらいの照射試験だとかなりの年数が必要かと思っています。金属燃料では、大体その辺りの感覚はどうなのかというのが2点目です。この2点を教えていただければと思います。
 
【皆藤様】 金属燃料につきましては、米国の方で高速炉関係の開発が止まった後もアルゴンヌ(ANL)の方で研究を継続してきております。ブレークスルーという程でもないと思うのですが、設計の改良です。簡単に言ってしまいますと金属燃料のスエリングを許容するだけ被覆管と接触しないようにギャップを広げるというようなことをしっかりやって、スエリングの方も吸収できるようなことで高燃焼度化を図ってきているというようなことがございます。
 金属燃料も、ブレークスルーという程ではないと思いますが、そういう設計改良等を行って見通しが得られたということで、Natrium炉、VTR等でもまた金属燃料の方に回帰しているというような状況という理解でございます。
 あと、照射試験の方ですが、15頁のところに大体お示しして、具体的な数字を入れてなくて申し訳ないのですが、やはり200 GWd/tとかそういうところまで照射しようとすると、常陽での照射期間でいいますとかなりの期間を要します。常陽の稼働率をいくつにするかというようなところにももちろんよりますが、大体常陽の稼働率を4、50%ぐらいで考えてみますと、ざっくりと200 GWd/tぐらいの燃料の照射試験をしようとしますと、十数年から20年ぐらいの期間はかかってしまいます。常陽でしっかり目標とする燃焼度まで照射試験をやってデータを取るということになると、こういう長期の照射試験が必要になってくるということになります。期間的には超概略の評価になりますが、それくらいの期間が必要になります。
 
【松浦委員】 分かりました。ありがとうございます。金属燃料の方は燃料とその被覆管のギャップを広げるという話は以前にも聞いたことがあるのですが、一応その余裕で何とか行けそうだということなのですね。
 
【皆藤様】 そうですね。金属燃料についてはナトリウムボンドになりますので、ある程度スエリング分を考慮したギャップを設けても熱的には大分許容できますので、それでギャップを広げて、ある程度見通しがあるということです。ただ、やはり燃料のスエリングによる燃料の性能自体の劣化というのも当然ございますので、そういう観点で大体今は実績として190か200ギガぐらいまでの照射実績はありますが、大体その辺が目標かとこちらは評価をされていると理解しております。
 
【松浦委員】 分かりました。ありがとうございます。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。多分金属燃料のリバイバルというのは、一つは合金燃料と被覆管との相互作用といいますか、そこのところで共晶ができるといわれていたのが、うまく設計をすればそこはある程度逃れられるというところが一つ大きかったような記憶がございます。昔の知識ですが。
 それから、照射に関していうと、やはり高速炉スペクトルでないと意味がないということで、ピンセル照射だとあまり意味がないのですよね。ですので、そういう意味では今西側諸国で使える高速炉というのが常陽しかないというのは極めて貴重であるということで、常陽での照射試験というのが強く待望されるということかと理解しています。
 
【皆藤様】 ありがとうございます。おっしゃるとおりでございます。
 
【寺井主査】 それでは、高木委員、どうぞ。
 
【高木委員】 ご説明ありがとうございました。7枚目のスライドの高速炉燃料開発の必要性のところで、これから作ろうとしている燃料の仕様でMAの含有率が5%程度とありますが、これについてお伺いします。将来世代の負担を軽減させるべく、高レベル放射性廃棄物の有害度を低減しようということでこのMAを燃料に混ぜるということは承知しているのですが、この5%とする消費でそれが十分達成されるという見通しなのでしょうか。若しくは将来は必要性に応じ段階的に引き上げるといったチャレンジもあり得るのだけれども、ひとまず現時点では5%としているのでしょうか。この有害度の低減というのも高速炉の大きな目的の一つだったかと思うので、それが達成できるかどうかという検討や見通しをたてられているようでしたら教えていただければと思います。
 
【皆藤様】 ありがとうございます。MAにつきましては、この5%というのはどちらかというと高い数字でございまして、軽水炉からの移行期ですとか、あと軽水炉と共存していくような状況であれば、軽水炉の使用済燃料を再処理したものから出てくるMAをしっかり高速炉で燃やしていくということで、今の評価ですと平均で3%ぐらいということを高速炉で燃料として使っていくということを考えております。ただ、局所的に5%ぐらいになるところもあるということで最大5%という数字をお示ししております。それで十分にMAの方は高速炉の燃料サイクルの中に閉じ込めていくことができるというような評価になっております。
 もっと言いますと、完全に高速炉だけの世界に仮になったとしますと、高速炉の並行サイクルになれば、MAとしては1%ぐらいになりますので、その1%ぐらいのMAがずっと高速炉の燃料サイクルの中にずっと閉じ込めた状況でずっと回っていくと。そういう評価になっているという理解です。
 
【高木委員】 ありがとうございました。よく分かりました。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。5%のところで実証できれば、それより低いところでは問題なく行けるという考え方という理解でよろしいですかね。
 
【皆藤様】 おっしゃるとおりです。そういう意味で、平均3%という数字ですが、開発する側としては最大で5%といわれておりますので、そこのデータをしっかり健全性を確認していくということが必要だと考えております。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。その他、いかがでしょうか。では、小澤委員、どうぞ。
 
【小澤委員】 ありがとうございます。先ほどクリステンセンの立体的な絵を見て頭の体操をしたところで、この15頁目の絵を見ていると、先に常陽があって、次に実証炉という、今の計画だとすると、多数キーワードが出てきていて、燃焼度を上げていくとか、サプライチェーンをずっと維持していくとかというのが、このタマだけでやっていくのは相当しんどそうな印象を受けています。実証炉のためにはある程度技術は絞っていくのだと思うのですが、同時に国際協力というキーワードがあって、それがどういうふうにしたたかに技術をその先残していくかというのが、整理が必要なのではないかというふうに感じた次第です。
 今は正に開発競争みたいな感じになっていますが、いずれ実用化されて共存していくにしても、高速炉が商業炉になっていくときには、やはり世界で通用する一番良いものが魅力的になっていくような気がするので、そこに向かって日本だけでデータを取るとか、日本だけでサプライチェーンを維持するというのが本当に正しいのかどうかというのは、工夫の余地がありそうな感じがすると思った次第です。もちろん日本でフルセット持つのが理想的ではあるのですが、そうはいってもというところがあるかと思うので、何か国際協力の中でこれは生かしていきたいとか、データを活用したいというのがもしあればお考えを伺いたいなと思います。いかがでしょうか。
 
【皆藤様】 ありがとうございます。5頁のところで説明を少し省いてしまいましたが、実証炉の燃料の選択のところで、もちろん日本のデータだけで判断できるかというのはなかなか難しいというところもございまして、酸化物燃料につきましては日仏でこれまでもフランスでASTRIDの計画をされていた頃からずっと続いておりますが、結構R&Dのところの協力というのは進めてございます。
 それから、金属燃料につきましては、日米の共同研究、年度でいいますと昨年度ですが、今年の1月に共同研究契約の方を締結しておりまして、米国のこれまでの実績、具体的なデータ等にもアクセスできるようなことで共同研究契約を結んでおりまして、特に金属燃料については米国からの技術導入的な話は始まったところでございます。
 
【小澤委員】 そうすると、先ほど200 GWまで拡張するのに十数年、20年掛かってしまうということであれば、工程表のところでいうと、最初は日仏協力・日米協力で得られている拡張された技術から導入していって、その先実験で確認されたものが徐々に、燃焼度を上げていくとか、そんな感じの認識でよろしいでしょうか。
 
【皆藤様】 はい。燃料につきましてはプラントによって違いますので、取り替えていくものになります。ですので、初装荷を含めて初期炉心につきましてはある程度技術の確立しているものをまず適用していくという計画でございます。現状の計画としてはそういうことを考えております。
 高燃焼度燃料、高性能燃料の開発が追いついていけば、またその許認可ですとか安全審査とかが必要になるとは思いますが、取替燃料から高性能のものに取り替えていく、長寿命化していく、高燃焼度化していくとか、そういうことを考えております。
 あと、日本ではまだ許可を得ていないので実施ができるかどうかはこれから検討が必要かと思いますが、照射の場としても今は常陽だけしかないということですし、小型炉ですので照射できる場所、装荷できる試験の物理的な量とかにかなり制限があります。ですので、ある意味その役割分担みたいなことを考えてもよいと思うのですが、常陽で基礎的なデータはしっかり取ると。そしてその実証していく部分については実証炉自体、例えば先行照射みたいなことを考えていくとか、そういうことも考えながら効率的に開発を進める必要があるかというふうには思っております。
 
【寺井主査】  ありがとうございました。黒崎委員、どうぞ。
 
【黒崎主査代理】  ありがとうございます。私の方からは3つお話しさせていただきます。1つが常陽の位置付けの話でして、これは前も言ったのですが、やはり高速炉の実験炉が日本で稼働するということの意義はもう本当に大きくて、例えばロシアとか中国は先を走っているのですが、いわゆるOECD諸国ではこの高速炉の中性子照射場というのはもう唯一のものだというところです。なので、それをもっと我々は誇りに思ってよいのではないかというふうに常に思っていますし、もっとアピールできるのではないかとか、これはすごく日本の強みになるのではないかと思っています。これが1つ目です。
 2つ目が常陽の使い方です。動いた後の常陽をどう使っていくのかという話なのですが、今日の話は実証炉の開発に向けたいろんな活用方法があるというところで、当然それは本家本流といいますか、そのためにこうやっていく、特に材料照射とかいうところは非常に大事です。一方で、先ほども言いましたが、これはOECD諸国で唯一のものということで、本当に人を引き付ける求心力になるすごく良いものです。なので、世界中から人が集まってここで最先端の原子力研究をするのだというような、そういうことができる場になるものだと思っています。それは例えば、今日は出てこなかったですがRI製造の話などもあったと思いますし、そういう新しい原子力の価値を生み出すような研究というのができる場所なので、そういうところでの活用というのも、非常に重要な用途だというふうに思いました。これが2つ目です。
 3つ目が、動かしていくと、今ある在庫燃料だと2035年の手前ぐらいで燃料が尽きてしまうという話で、これはやはり非常に危機的な状況で、せっかく良いものがあるのに燃料がないから動かせないという事態にならないように、だからこそ今こういう議論をしているのでしょうけれども、今のうちから準備を万端に整えておくということは非常に大事なのではないかなと思います。これはサプライチェーンの話もありましたが、そういったところを含めて、人材も含めての話だと思います。燃料製造をやるということで、ここでも技術が磨かれると思いますし、継承されると思いますので、単に燃料を作ってというだけではなくて、それ以上の効果というのが出てくるはずのものだと思っています。なので、ここについては途切れることなくきちんとやっていただきたいなというふうに思った次第です。以上3点でした。よろしくお願いします。
 
【寺井主査】 黒崎委員、ありがとうございました。3点のコメントですが、JAEAさんからは何かございますか。
 
【皆藤様】 ありがとうございます。非常に応援していただいているというふうに理解いたします。あと、常陽の使い方につきましては、今回は高速炉の燃料技術開発ということでそこに限定したお話になっていますが、前々回の作業部会の方で常陽の運転再開や活用の話などもさせていただいておりますが、そこでもいろいろなRI製造のお話、それから黒崎先生からありました大学とか他の国際的な研究機関とかでも人が集まってくれるような施設にというようなお話も含めて、当然我々としても考えておりますので、しっかりそれを実現に向けて進めていきたいと思っております。
 
【寺井主査】 ありがとうございました。その他、いかがでしょうか。石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】 ご説明ありがとうございました。酸化物燃料か金属燃料かみたいな話で、これはどちらを選ぶかで、その炉心の設計とか、安全面も含めてなのですが、どれくらい違ってくるものなのでしょうか。大抵の炉型はどちらにも対応できるというものなのか、それぞれにカスタマイズした方が必要になるのか、どうなのでしょう。
 
【皆藤様】 基本的にそれほどプラントへの影響は大きくないとは思っております。ただ、やはり安全に対しては酸化物だとこういうものが必要だとか、金属であればこういうものが必要というような部分が出てくるかと思いますが、基本的な設計の部分では大きく変わらないというふうに考えております。ただ、炉心の性能はやはり変わってくるというようなこともございますし、金属燃料の場合は特に出口温度が下がる方向になりますので、そういったことも考慮して、今正にプラントの概念設計を今年度から始まっているところですが、それは三菱さんの方を中心に両方の燃料を見つつプラントの概念設計は始めているという状況です。
 
【石川委員】 分かりました。ありがとうございます。
 
【寺井主査】 その他、いかがでしょうか。なければ、少し2点ほどお伺いしてよろしいでしょうか。1つ目は、どちらも同じなのですが、15頁の運転計画と今後の課題というところで、実証炉に関しては2026年にMOX燃料か金属燃料の選択というのが入っていますよね。これは先ほど石川委員がおっしゃった炉心にどれくらいの影響あるかという話に関わってくるのですが、ここでの選択というのは、どちらかに決めるということなのですか? あるいはそうではなくて、優劣といいますか、ファーストプライオリティをどちらにして、セカンドプライオリティをどちらにするとか、そういうふうなレベルの話なのでしょうか?
 
【皆藤様】 そこは我々も機構として答えられないところもあるのですが、冷却材としてナトリウムを選ぶとか、高速炉のプラントとしてMFBRさんが提案したものを選ぶというようなことをこれまでしてきていますが、この戦略ワーキンググループの下の高速炉技術評価委員会の所で26年までの成果を踏まえて優劣を付けるのかどちらかに決めるのかというような辺りの議論はこれからされると思っております。ただ、本当に10:0で選ばれなかった方は一切もうやらないということになるのか、先生がおっしゃったようにFaCTといわれるような主概念があり副概念がありみたいな位置付けにするのかというのは、今後だと思っています。そうはいいましてもリソースは限られておりますので、かなり選択された方に開発のリソースは投資されてくることになるのではないかというふうに思っております。
 
【寺井主査】 分かりました。ありがとうございます。設計から後はその燃料開発のところですよね。そこのところでやはり研究開発が必要になってくるのでということで、酸化物は割とこれまでかなり実績はあるけれども、金属燃料は特に国内で余り実績がないので、そこのところをどう考えるかということも多分大事なのだろうなと思います。先ほどおっしゃったFaCTでもそういう話があったと理解しているのですが。その辺の過去の経緯も踏まえて、どういう進め方が良いのかというところは引き続き、これは機構さんの仕事ではないかもしれないのですが、ワーキンググループかもしれませんけれども、そこでいろいろご検討いただけると。
 
【寺井主査】 いろんなところで適切にそこはご議論いただいて、うまく研究開発が限られたリソースの中で進むとよいなというふうに思います。
 それから、もう1点はこのスライド15なのですが、新燃料、つまりこれは常陽のドライバー燃料ですよね。これをどうするかというのは常陽を運転しようと思うと必須の話なので重要な課題だと思うのですが、既存施設の活用というのは元々多分プルトニウム燃料第三開発室ですよね。新規の建設で新しく作ると。海外調達はなかなかロシアなどは難しいので、同志国とうまく連携してという話になるのでしょうけれども、その辺りは今後の検討課題だと思うのですが、プルトニウム燃料第三開発室に関していうと安全規制の話があって、これも多分目的が変わってくるのでしょうね、製造施設になるのかな。なので、その辺の話もあるので結構難しいということは聞いていますが、ただ、生産能力からいけばおそらくこれまで常陽燃料を作ってこられているので割と行けるのですよね。その辺りはいかがでしょうか。
 
【郡司様】私の方からお答えさせていただきますが、おっしゃるとおりプルトニウム燃料第三開発室はこれまでももんじゅと常陽を作ってきまして、生産能力という観点では十分な実績と能力は持ってございます。ただ、やはり常陽の燃料を作るとなると加工事業という事業を取らなくてはならないということで、加工事業を取得するためには新規制基準をクリアしなくてはならないということと、改めて設工認とか後続規制をしっかりやって検査に合格していかなくてはならないということになります。ただ、プルトニウム燃料第三開発室も既に40年経っているプラントでして、やはりいろんなところに痛みも出ていますし、そういうときに新規制基準の対応を本当にクリアできるのかというのは非常に厳しいかというふうに思っているところでございます。
 そういう意味では、我々としても新規施設、単に常陽の燃料だけを作るというわけではなくて、今回の御説明の中でもやはり量産規模での技術開発をしっかりやっていくということが重要だということをご説明させていただいていると思いますが、そういう形で技術開発をしながら常陽の燃料も作っていくみたいな形で、そういう形の目的としてやるという方法もあるかというふうに思っています。
 ただ、新規となるとコスト的にも大きな問題も出てきますし、実際取り扱う量というのは非常に小さくございますので、そういう意味では規制の方にもグレーデッドアプローチみたいなことを一応取り入れてもらうとか、そういうことも踏まえながらいろんなところと調整しながら最も合理的な方法はどういうものかというのを議論させてもらいながら、いろいろ今後引き続き関係省庁とも協議しながら進めていきたいというふうに思っているところです。
 
【寺井主査】 分かりました。問題の場所がはっきりしてきたような気がいたします。今後引き続きいろんなところでご議論いただきながら、経済性の問題も当然重要ですし、それから、後は時間の問題ですよね。どれくらいの期間で作り出せるかというところもありますので、その辺も含めて引き続きご検討をよろしくお願いをいたします。ありがとうございました。その他、いかがでしょうか。石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】 今の話に関連して素朴な疑問なのですが、金属燃料ではNatrium同様に開発がされているということなので、そちらが進めばそれを買ってくるみたいなことも現実にはあり得るのでしょうか? 先ほど何か日米の共同の必要があるみたいなお話がありましたが。
 
【皆藤様】 Natriumの燃料につきましては、こちらはU-Zr-Puの燃料でございます。今はこの燃料ですと常陽の方と異なるので、炉心性能の観点からは単純に買ってくるというだけでは難しいなというところです。あと、一応今は日立GEさんの方でリリースが出たかと思うのですが、Natriumにつきましては燃料の方はアメリカのGNFで作るということで、工場を整備するプレスリリースも出ていましたので、しっかりU-Zr-Puの燃料になりますが作っていくのだと思います。ただ、今の常陽では能力的に足りないというところです。
 
【石川委員】 ありがとうございます。
 
【寺井主査】 炉心を替えるというのは、結構常陽はこれまで何度も替えてはいるのですが、ずっと酸化物をやってきましたので。
 
【石川委員】 そうですね。これだと本末転倒ですね。なので大丈夫です。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。その他、いかがでしょうか。それでは、これで2番目の議題を終了させていただきます。どうもありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。議題3のその他ですが、特に本日の予定はございません。ということで、本日予定していました議事は以上で終了いたしますが、全体を通して御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか? ありがとうございました。それでは、最後に事務局から連絡事項等をお願いいたします。
 
【事務局】 ありがとうございます。最後に事務局から今後の予定についてご連絡をいたします。参考資料5をご覧ください。次回の作業部会は6月7日13時30分からの開催を予定しております。テーマは試験研究炉の今後のスケジュールでございます。また、本日の議事録につきましては、出来次第メールにてご確認を頂いた後に文部科学省のホームページに掲載をさせていただきます。以上でございます。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。それでは、これで第21回の原子力研究開発・基盤・人材作業部会を終了いたします。

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